カメラ片手に紅葉狩り! 紅葉+鉄道の楽しみ方
日に日に木々が色づき、いよいよ本格的な紅葉シーズンが到来です! 今年の秋はちょっとお得に旅ができる大チャンスの秋。列車に乗って車窓から眺めるもよし! 途中下車をして、気ままにスナップするのもよし! それぞれのスタイルでカメラを片手に今年の紅葉旅を楽しみましょう。今回はいろいろな楽しみ方ができそうなスポットをご紹介します。今年の秋たびの候補にいかがですか?
絶景木曽路を駆け抜ける中央本線。普通列車での途中下車の旅もおすすめ
首都圏に住んでいる方だと「中央線」と聞くと、もしかしたら八王子や高尾までの路線というイメージがあるかもしれません。でも実はこの中央線、正式名称は中央本線といい、東京から新宿、高尾、甲府を通って名古屋までを結ぶ全長396.9キロメートル(営業キロ)の長大路線なのです。東海道本線と並んで、関東と中部を結ぶ重要路線で、道中は山道を行くため四季折々の風景が楽しめる路線です。特急列車も多く運転され、全線乗り通すのも難しくはありません。途中、塩尻駅でJR東日本とJR東海の管轄が変わります。
そんな中央本線ですが、僕が今回おすすめしたいのが、塩尻~名古屋間のJR東海エリアの中央本線です。通称、中央西線と呼ばれ、普通列車のほか長野~名古屋間に特急ワイドビューしなのが運転されています。ただ、沿線には中山道の宿場町や景勝地も多いので普通列車で途中下車しながらの旅も楽しいですよ!中央本線普通列車で活躍する313系は快適な転換クロスシートが採用され、ゆったりと旅を楽しむことができます。この写真を撮影した藪原~奈良井の一帯区間は中央本線の中でも山深さが一段と深まる区間で、ほかの区間に比べ紅葉の進行が早い場所になります。一方で背景に写るカラマツは、ほかの木々よりも紅葉の進行が遅いのでピークを見極めるのが少し難しいシチュエーションです。加えてこの撮影日は強風が吹き、目の前の紅葉がどんどん落葉していくような状況でした。「葉っぱよ、なんとか列車まで耐えてー!」と祈りながら撮影しました。
撮影地:中央本線 藪原~奈良井
【村上悠太のワンポイント】
中央本線は左右どちらの席に座っても景色が楽しめますが、上松~倉本にある景勝地「目覚の床」は名古屋方面行きの場合、進行方向右側に見えます。
天竜川すれすれを走る飯田線。早朝の列車に乗車すれば朝霧の風景に出会えるかも!?
愛知県豊橋駅と長野県辰野駅を結ぶ飯田線は、列車以外での到達が難しい「秘境駅」が多くある絶景秘境路線です。東海道新幹線との接続駅である豊橋駅から辰野駅を目指して乗車していくと、最初は比較的ひらけた風景の中を列車は進んでいきますが、進むにつれ風景は一転して山の中へ。水窪駅を出発し、長い大原トンネルを抜けるとここから一気に秘境駅連続区間を走行していきます。進行方向左側に天竜川を見ながらしばらく沿うように走り、平岡駅を過ぎるといよいよ線路は川面ギリギリのところを進みます。
この区間、おすすめなのは早朝に乗車すること。実は平岡駅には宿泊施設が併設されており、早朝の出発も可能です。秋の夜に気温がぐっと下がり、夜明けとともに気温が上がるとその温度差から「朝霧」が発生することがあります。川辺の紅葉風景に、朝霧・・・車窓にはまさに絶景が広がります。川の風景を楽しむなら辰野方面に向かって進行方向左側に座りましょう。飯田駅を過ぎると今度は信州の山々が車窓を飾ります。全線にわたって変化にとんだ絶景が続く、長時間乗車も飽きない絶景路線です。
飯田線 平岡~為栗
【村上悠太のワンポイント】
写真は11月上旬の8:00ごろに撮影しています。あまりに早朝過ぎるとまだあたりが暗いので、平岡7:52発飯田行きの列車あたりが狙い目です。
季節ごとの彩りが楽しめる矢祭山は秋の散策にぴったり! 撮影のポイントは「光」
首都圏からも比較的アクセスしやすい水郡線。水戸駅と郡山駅を久慈川の風景を見ながら進んでいく路線です。現在、上小川~常陸大子間でバス代行となっていますが、そのほかの区間は通常通り運行中です。秋の水郡線といえば絶対に外せないのが矢祭山のもみじです。矢祭山は春の桜がとても有名ですが、初夏はつつじ、秋はもみじと季節ごとに水郡線の車窓を彩ってくれます。矢祭山駅からも歩いてすぐなので、列車旅の間に撮影を楽しむことも可能です。周囲には飲食店もあり散策に最適です。
もみじを美しく撮るポイントはなんといっても「光」です。ぜひ「逆光」の状況で撮影してみてください。今回の写真では太陽も入れ込んで秋空の爽快感を表現しています。木々の間に太陽を配置しているのですが、木々も風で揺れますし、太陽もどんどん移動するので少し撮影にはコツが必要ですが、一番大切なのは「構図を臨機応変に変更する」こと。太陽の位置は列車が来る寸前まで動くので、常にカメラ位置を微調整しながら列車を待ちましょう。また、逆光の時は露出補正をプラス補正にするなど、明るめに撮影するもの忘れずに!そうすることで逆光下の透過光によって、色づいた葉っぱたちがキラキラと輝いて写ります。
水郡線 矢祭山~東舘
【村上悠太のワンポイント】
途中の常陸大子は奥久慈しゃもと温泉が名物の町。ぜひ旅程の中に組み合わせてみてください。駅前の玉屋旅館では「奥久慈しゃも弁当」も販売しています。
秋の京都は紅葉の日本代表。山陰本線の車窓からも秋色に染まる保津峡を楽しめる
紅葉といえば京都、と思い浮かべる人もきっと多いはず。日本を代表する紅葉スポットが多く集まる京都エリアはやはり外せませんね。ただ、京都×紅葉というとどこも混雑気味ですが、車窓からそれを楽しめばゆったりと楽しめます。京都駅の一番端の32、33番ホームから出発する山陰本線は観光地、嵯峨嵐山へのアクセスにも便利ですが、この嵯峨嵐山駅を過ぎると亀岡まで「保津峡」を超えて走っていきます。かつては現在、「嵯峨野観光鉄道」が走っている旧線を走っていましたが、現在ではトンネルが続く新線を山陰本線は走ります。トンネルが続きつつもその合間から見られる保津峡の景色は絶景です。運が良ければ、保津川下りの舟を見かけるかも。
もし、時間がある方は普通列車に乗って「保津峡駅」で降りてみましょう。ちょうど保津川の川面の上にかかるこの駅は、ホームに降り立つだけで保津峡の魅力的な風景と空気、風を感じることができます。眼下には保津川、さらには嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車が走る旧山陰本線が走っているので、このホーム上から保津峡の紅葉とトロッコ列車を手軽に撮影することもできます。このJRの保津峡駅からしばし歩けばトロッコ保津峡駅に向かうこともできます。散策を兼ねてゆっくりと歩いてみるのもおすすめです。保津峡駅は無人駅ですが交通系ICカードが使え、飲み物の自販機もあります。
山陰本線 保津峡~亀岡
【村上悠太のワンポイント】
川面や山の上などいろいろな角度から撮影できるこの区間。最近ではアクセスできなくなった場所もありますが、列車からは保津峡の風景が俯瞰で楽しめます。
往路と復路で異なる食事や地域のおもてなしが魅力の観光列車でじっくり楽しむ、秋の土讃線
四国を縦断して走る土讃線は四国の中でも特に四季が楽しめる路線です。ハイライトは吉野川に沿って走る大歩危小歩危エリア。列車は数回、吉野川にかかる鉄橋を渡るので左右どちらの席からも吉野川の急流を眺めることができます。さて、大歩危小歩危エリアを訪れるならぜひ乗りたいのが土日祝日を中心に運転される観光列車「四国まんなか千年ものがたり」です。多度津~大歩危間で1往復運転されています。全席指定グリーン車の特急列車ですが、速達性が高い特急「南風」のような列車ではなく、料金的に「特急」というだけでゆっくりと走る風景を楽しんだり、地元の方のおもてなしがあたたかい観光列車です。
秘境駅坪尻やビュースポットでの徐行運転、事前予約で味わうことのできる食事など、土讃線の絶景をより深く楽しむことのできるのがこの列車。写真の第二吉野川橋りょうでも「四国まんなか千年ものがたり」は止まりそうなスピードでじっくりと通過していきます。この撮影スポットの付近は地元の味「祖谷そば」が味わえるお店や、コンビニ、有料の展望台などが完備されている観光拠点になっています。さらにもう少し歩けば温泉ホテルもあり、宿泊だけでなく日帰り入浴もできます。ぜひ観光の途中に鉄道撮影+地元の味+温泉と、四国の「まんなか」を心ゆくまで満喫してみませんか?
土讃線 大歩危~小歩危
【村上悠太のワンポイント】
第二吉野川橋りょうは土讃線の撮影スポットの中でも代表的なポイント!特急南風も2色のアンパンマン列車を含めてたくさんの車種で運行中です。
秋色に染まる由布院へと続く森を行く特急「ゆふいんの森」。セオリーどおりでなくてもシャッターチャンスはある!
この10月には新しいD&S列車「36ぷらす3」がデビューし、観光列車がさらに拡充されるJR九州。そんなJRの観光列車の礎ともなったのが久大本線を走る「ゆふいんの森」です。キハ71系とキハ72系の2車種で運転されていますが、現在は先の大雨の影響でキハ72系でのみ運行され、運転区間も博多~豊後森間となっています。ただ、豊後森~由布院間については、「ゆふいんの森」に接続する代行バスが運行されており、スマートな接続ができるようになっています。
四季を通して美しい風景を見せてくれる久大本線ですが、紅葉ももちろんきれい!今回は沿線で見つけた小さないちょうの木とコラボレーションしてみました。あいにくの曇り空ではありましたが、晴天時に比べてコントラストがつかず、どこかしっとりと、次の季節である冬の気配を感じられるような写真をイメージしました。曇天=シャッターチャンスがないわけではないですし、画面内で真っ白く写ってしまう曇天は構図の中では空を入れずにカットしたほうがいいというのはあくまでもセオリーです。セオリーは写真技術の向上の近道でとても大事なことですが、なにはともあれ、一度撮ってみて自分がイメージした内容が写真で表現され、そのイメージが見る人に伝わるかという点を大切にすれば、セオリーに縛られる必要もないのでは、と僕は考えています。
久大本線 豊後中川~天ケ瀬
【村上悠太のワンポイント】
「ゆふいんの森」の車内には沿線の味やおみやげを販売するビュッフェもあり、列車旅をより満喫することができます。
見ごろを逃さず、紅葉狩りの列車旅へ
北から南へ、見ごろのエリアが移っていく紅葉。撮影は晴天時が一般的ですが、雨天時は紅葉の色が濃く写り、また湿度を感じる写真に仕上げることもできます。霧が出ることもあります。落葉の前に楽しむためにも、見ごろ優先で出かけてみましょう。もしコンディションが多少悪くても、その景色を見られるのはその時だけ。イメージを膨らませ、シャッターを切ってみてください!
著者紹介
- ※写真/村上悠太
- ※掲載されているデータは2020年10月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。