2021.08.10鉄道「ラ・マル 備前長船」誕生! 観光列車「La Malle de Bois」(ラ・マル・ド・ボァ)赤穂線ルートを鉄道写真家・村上悠太が実乗レポート
デビュー以来初の赤穂線ルート運行開始! その名は「ラ・マル 備前長船」
せとうちエリアで運行されているJR西日本の観光列車「La Malle de Bois」(ラ・マル・ド・ボァ)に、この夏、デビュー以来初となる赤穂線を経由する「ラ・マル 備前長船」が誕生しました。岡山と日生(ひなせ)を特定日に1日1往復運行されています。
今回はそんな新ルートとなる「ラ・マル 備前長船」の魅力を、実乗レポートでお届けします。
「La Malle de Bois」(ラ・マル・ド・ボァ)ってどんな列車?
「La Malle de Bois」とはフランス語で「木製の旅行かばん」という意味で、旅の楽しみがたくさん詰まっているような列車になっています。エクステリアデザインは黒い太線を配置し、窓枠を「かばん」のように見立て、旅にまつわる旅情を誘う絵柄や言葉の数々がデザインされています。
車内に入れば、そこはホテルのような高級感あるフローリングのデッキが広がり、現代アート作家の作品展示スペース、サイクリングが盛んなせとうちエリアではうれしい、自転車を分解せずにそのまま収納できるサイクルスペース(特定列車・区間のみ利用可、事前予約制)に、沿線ご当地の品々を揃えた車内販売カウンターなど、列車旅を楽しむ工夫が盛りだくさんです!
車内はカウンタータイプとリクライニングタイプの2種類のシートが並ぶ
ドア横には現代アートも設置されている
カウンタータイプの座席は窓に向くと固定される。解除には支持部のレバーを操作すればOK!
旅に関する本がまとめられた車内上部の本棚もおしゃれなデザイン
金・土休日を中心に運行され、それぞれ日にちごとに運行区間が異なるのも特徴の一つ。
どの列車も岡山を起点とし、それぞれ宇野を結ぶ「ラ・マル せとうち」、福山を経由し尾道を結ぶ「ラ・マル しまなみ」、瀬戸大橋を超えて四国は琴平を目指す「ラ・マル ことひら」がこれまでに運転されてきましたが、今回はその中に新たに「ラ・マル 備前長船」が仲間入りした形になります。列車は全席指定のグリーン席ですが、きっぷの区分では「La Malle de Bois」は普通列車扱いなので、必要なのは乗車券と普通列車の「指定席グリーン券」です。特急のグリーン券に比べてリーズナブルなのも嬉しいポイント。
各列車の運転日、料金は公式Webサイトを確認してみてください。なお、サイクルスペースについては「ラ・マル 備前長船」を含む、一部列車では使用することができません。
特定の列車・区間で使用できるサイクルスペース。なお自転車を分解、折り畳んで輪行袋に入れれば他の列車同様にどの区間でも車内に持ち込み可能
「ラ・マル 備前長船」 いざ赤穂線、日生へ!
岡山駅の特別な装飾が施されたホームから出発
「ラ・マル 備前長船」が目指す「日生」は、駅のすぐ目の前に港がある港町。走行する赤穂線も日本六古窯の一つ「備前焼」の産地「伊部」や、日本刀の産地として栄えた「長船」など、見どころが多い路線です。
「ラ・マル 備前長船」日生行きは岡山駅を9時41分に出発し、終点の日生駅には10時50分に到着。折り返しの岡山行きは日生駅14時30分と現地での滞在時間もたっぷり!各地観光や昼食などゆっくりと楽しむことができます。
岡山駅に登場した「ラ・マル 備前長船」
乗務員さんもこんな腕章をつけて乗務しています!
ホームまで続く細かな装飾が旅感を高めてくれる
さて、「La Malle de Bois」は岡山駅の5番線から出発します。ホームにはこの列車に合わせた特別な装飾がされており、旅のスタートを素敵に演出してくれます。
車両に掲げられている「ヘッドマーク」は行き先ごとにモチーフが異なっており、「ラ・マル 備前長船」は備前焼や日本刀を彷彿とさせる「炎」がモチーフ。出発時にはホームに設置されている「八点鐘」が鳴らされ、その様子はまるで船の出港のようです。ホームにはたくさんの方がお見送りに来てくれていました。
観光列車らしい楽しいシーンがホームに広がる
出発時間になるとホームに八点鐘が鳴り響く
大勢に見送られていざ、赤穂線日生を目指す!
沿線カフェのこだわりメニューがいっぱい!
観光列車の楽しみといえば車内でのひとときですが、「ラ・マル 備前長船」ではほかの「La Malle de Bois」とはちょっと違う点がいくつかあります。まず、車内のアート作品。常設の車内アート作品の他にも、日本刀の聖地「長船」にちなみ、日本刀やその制作過程で用いられる道具や砥石などが1号車のカウンターに展示されています。そしてこれは全部本物の品々!車内にいながら、本物だけが持つ風格を感じることができます。
本物の刀と道具が展示されている1号車の車端カウンター
続いて2号車車内販売カウンターでのメニューも「ラ・マル 備前長船」ならではのラインナップが勢揃い!通常、こちらのカウンターでは「La Malle de Bois」オリジナルグッズやせとうちのおいしいものなどが販売されていますが、「ラ・マル 備前長船」ではそれらに加えて、運行区間沿線のカフェやジェラード工房、ブルワリーに備前焼などこの列車のみの限定メニューが展開されています。
2号車には車内販売カウンターがあり、沿線の「えぇもん・うめぇもん」が並ぶ
特に「牛窓カフェ」の「牛窓産レモンのレモネード」は暑いシーズンにぴったり!びっくりするほどごろっと入った牛窓産レモンと同じく牛窓産のはちみつを使ったこだわりのレモネードで、その味わいもフレッシュそのもの。ていねいに一杯ずつ、カップにすくってサーブしてくれます。
軽食には同じく「牛窓カフェ」の「牛窓産のガラエビとたっぷり野菜のパエリア風おべんとう」がおすすめ。殻ごと食べられる地産のガラエビや瀬戸内市産の旬の野菜にこだわった本格派のパエリアです。レモネードと合わせて、沿線の味を楽しみましょう。
カフェの味をそのまま車内に持ち込んでいる「牛窓産レモンのレモネード」。ゴロゴロしているのは全部レモン!もちろん食べられます
「ラ・マル 備前長船」だけで楽しめる限定アイテムの品々。中央にあるのが「牛窓産のガラエビとたっぷり野菜のパエリア風おべんとう」
こちらは「La Malle de Bois」全列車で楽しめる「旅するせとうちスイーツBOX」
「La Malle de Bois」のレギュラーメニューは「ラ・マル 備前長船」ではワゴンにて販売される。オリジナルグッズも人気
なお、「旅するせとうちスイーツBOX」は、乗車日前日の正午までにこちら(https://freshtart-style.com)で予約が必要です。
各下車駅から観光スポットへ快適アクセス!
さて、「ラ・マル 備前長船」は上下列車ともに途中、東岡山・長船・伊部に停車するので、日生以外の途中駅で下車しても、再び「ラ・マル 備前長船」に乗って岡山に戻ることができます。
長船駅では無料のシャトルバスに乗り継いで「備前長船刀剣博物館」に向かうことが可能です。通常、こちらの博物館の入館には事前予約が必要ですが、「ラ・マル 備前長船」の乗客は11時〜12時に限り、事前予約なしで入館することができる特典があります。現在、こちらの博物館では9月12日まで国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」が特別展示されていますので、この機会に訪れるのもよいでしょう。
どこまでもつづくのどかな車窓は赤穂線の魅力のひとつ
続いて伊部駅では、駅周辺の備前焼の窯元やギャラリーを地元のボランティアガイドさんから、説明を受けながら周ることができるガイドツアーや、備前焼作陶体験、旧閑谷学校行きの無料シャトルバスが運行されています。
最後に日生駅からは8月14、28日の2日、「ラ・マル 備前長船」に接続して観光船「NORINAHALLE」(のりなはーれ)が運航!水戸岡鋭治氏デザイン監修の人気船で、日生諸島を巡る、約60分のクルーズ。日生名物の牡蠣の養殖筏も間近で見られますよ!
終点日生駅でも「ラ・マル 備前長船」を熱烈歓迎!
駅のホームからも日生湾が見える
日生といえば地元の牡蠣をふんだんに使った「カキオコ」が有名!
日生駅から徒歩20分程度歩くと新鮮な海産物が並ぶ「五味の市」に着く。港町の散策も楽しい
「ラ・マル 備前長船」の乗車方法は?
2021年7月から新しく設定された、赤穂線を走る「ラ・マル 備前長船」はその他の「ラ・マル せとうち・しまなみ・ことひら」とともに、金土休日を中心に運行されています。詳しい運行日は公式Webサイトをチェックしてみてください。
たくさんの「旅行かばん」が並ぶ「La Malle de Bois」
岡山〜日生間は片道1640円(乗車券・普通列車指定席グリーン券込)です。全席指定なのでオンライン予約が可能な「JRおでかけネット」か全国のみどりの窓口で普通列車指定席グリーン券を予め用意しておきましょう。
「La Malle de Bois」は、「晴れの国おかやま」の太陽がよく似合う列車でした。
2022年7月からの「岡山デスティネーションキャンペーン」に向け、プレキャンペーン開催中の岡山。「La Malle de Bois」のますますの活躍も期待されますね!
著者紹介
- ※写真/村上悠太