“Yamanote Line Museum”とは?
JR東日本が推進する、心豊かな都市生活空間を創造するプロジェクト「東京感動線」。その一環として誕生したのが「Yamanote Line Museum(YLM)」です。
山手線6駅と、中央・総武線3駅、計9駅11箇所の駅構内で作品展示を行う試みを通じ、普段アートに触れる機会が少ない方にも駅という公共空間から新たな感動を届けます。展示作品は数カ月ごとに入れ替わり、絵画作品を中心にさまざまな表現に出会えることが魅力。
駅で偶然見つけたアート作品を気に入ったら、オンラインショップ(JRE MALL 東京感動線ショップ)で購入できる点も大きな特徴です。気に入った作品を日常に持ち帰る体験を提供することで、アートのある暮らしの普及を同時に目指しています。
生活における“駅”
駅は本来、目的地へ向かうための機能的な場所ですが、実は誰にでも開かれた身近なパブリックスペースでもあります。いつも何気なく利用している駅の構内でふと視線を向けてみると、通勤や通学といった移動の合間に、私たちの心を動かす表現と出会えます。
手軽に、無料でアート鑑賞ができるのも魅力のひとつ。生活の動線上にアートがあることで、毎日の景色に奥行きが生まれ、忙しない日常が少しだけ豊かなものに変わるはずです。
駅をミュージアムに変える、新たな試み
街の記憶と色彩が駅で躍動する|上野駅
アーティスト:髙橋 洋平さん
2000年代後半にクラブのライブペインティングでキャリアを開始し、壁画を中心に活動する画家。近年の作品では、散歩の中で出会った光景をモチーフに、壁画制作の中で培った配色・構図・筆触を用いて表現しています。
キュレーション:NOMAL ART COMPANY
壁面に連なる通路には絵画作品を展示。これらは鑑賞するだけでなく、オンラインで購入も可能です。会場にある二次元コードをスマートフォンで読み取れば、「JRE MALL 東京感動線ショップ」へ即座にアクセスでき、詳細確認から決済までその場で行えます。日常で出会った感動を、そのまま自宅へ持ち帰ることができる仕組みです。
駅に4日間で息吹を
上野の象徴といえば、不忍池の蓮や、多くの人々に愛される上野動物園。今回の展示では既成の作品だけではなく、高橋洋平さんが4日間にわたるライブペインティングを実施し、駅のアートウォールを鮮やかに彩りました。 “ぬいぐるみ”タッチで描かれたのはキリンやトラ、ペンギンといった動物園のスターたち。春の陽だまりのような暖かなピンクを背景にポップな色彩が重なり合い、無機質になりがちな駅空間に生命の躍動を吹き込んでいます。
制作中は大勢の人が思わず足を止めて眺めたり、写真を撮ったりする様子が見られました。「かわいい!」と声を上げる子どもの姿も。完成された作品を鑑賞するだけでなく、アートが生まれる瞬間の熱量に触れられるのは、こうした取り組みならではの試みです。
アクセス情報
展示場所:JR上野駅公園口改札内連絡通路
JR上野駅3Fにある公園口の公園改札内、JR各線のホームから階段を登ってすぐ。改札内から公園改札に向かって左側の通路にあり、最も近いのは1,2番線と3,4番線。改札外にあるきっぷうりばやNewDaysの真裏にあたります。
多彩なアートに出会えるカフェ|東京駅 BECK'S COFFEE SHOP 丸の内南口
一杯のコーヒーと絵を
1日に約46万人が行き交う東京駅。その喧騒の中で、新幹線や特急の待ち時間、あるいは仕事の合間に一息つけるのが駅ナカの「BECK’S COFFEE SHOP 丸の内南口店」です。JR東日本クロスステーションが運営するこのカフェは、コーヒーや軽食を味わいながら、赤レンガの象徴的な駅舎を眺められる特別なロケーションが魅力。壁際にある駅の歩みを伝えるパネルも、歴史ある東京駅の矜持を感じさせます。
店内は「WASABI」プロデュースの作品群が彩り、まるで街角にあるギャラリーのよう。カフェの落ち着いた空間に溶け込むアートが、利用者の心を豊かに解きほぐします。忙しない日常のなかでコーヒーを片手にアートを愛でる、そんな贅沢な時間が駅構内という利便性の高い場所で叶うのです。
複数のアーティストが創る癒しの空間
2016年よりアート・絵画の通販サイトを運営するWASABIは、「暮らしに、アーティストとの出会いを。」をテーマにプラットフォームを運営しています。約200名の登録アーティストと交流し、ここではカフェ空間に馴染む作品などを提案しています。
WASABI
アクセス情報
JR東京駅1Fにある丸の内南口の改札内。最も近いのは1,2番線で、JR各線のホームから階段を降り、南通路または中央通路を丸の内側に歩いたところです。
駅の窓口が心躍るキャンバスに|四ツ谷駅
アーティスト:おくはら ゆきえさん
柔らかな質感と温かみのある色彩が印象的な手描き作品を発信し、双極症と付き合いながら活動中。日々の暮らしの中で見つけた小さな幸せを集め、駅を行き交う人々へ安らぎを届けています。
キュレーション:リフレクトアート株式会社
入り口もリフレクトアートのアーティストによって装飾されています
日常に寄り添うアート
四ツ谷駅の指定席券売機付近では、グリーンを基調とした華やかな装飾が目に飛び込んできます。足を踏み入れると中にも作品展示があり、一点ものの絵画だけでなく、日常使いできるグッズのラインナップも魅力です。2,000円台から手に取れるリングノートやカードケースも、印刷ではなく、全てアーティストが手描き制作した一点もので、日々の生活にアートを気軽に取り入れさせてくれるアイテム。小ぶりなサイズの原画は日本の住空間にも馴染みやすく、自分へのご褒美にもぴったりです。
ほのぼのと親しみやすいタッチで描かれた作品は、窓口に訪れる人を温かく迎え入れ、目の前の通路を慌ただしく移動する人々にも安らぎと小さな幸福感を与えてくれます。
アクセス情報
JR四ツ谷駅の四ツ谷口・麹町口方面の改札外。1,2番線・3,4番線のホームから階段を登り、改札を出てすぐの指定席券売機付近。誰でも気軽に立ち寄って、作品の展示風景やグッズのディスプレイを見ることができます。
ウグイス色が目印の小さな画廊|田町駅
アーティスト:オカユウリさん
1998年生まれ、愛知県出身のイラストレーター・作家。高校時代から作品を発表し、横浜美術大学 絵画コースへの進学を機に関東圏で活動を始めました。「内緒の気持ちに色をさす」と表現する、儚さや可愛らしさ、複雑さ、曖昧さを感じさせる色づかいが魅力です。ライブペイントやMV・ジャケットアートなど幅広く活動しています。
アーティスト:よこおさとみさん
京都府出身、神奈川県在住のイラストレーター。京都精華大学芸術学部デザイン学科を卒業し、和菓子店の企画室でデザインやディスプレイ製作の仕事を経て、イラスト制作・販売を行っています。「気持ちがくつろぐイラストレーション」をテーマにした、懐かしくあたたかなタッチで身近な動物や人を描いた作品が印象的です。
キュレーション:株式会社foriio
クリエイターサポート:KAYTE(株式会社トーハン)※2026年2月~4月展示
オフィス街で癒しの時間を
田町駅の壁面と床面には大きくうねる線の装飾が大胆に施され、ひときわ目立つ空間に溶け込むように作品が展示されています。オフィス街にふわりと咲く癒しのイラストが慌ただしい日常にやさしい彩りを添えてくれます。
アクセス情報
JR田町駅の南改札内。改札を通ってまっすぐ進むとホームへ降りる階段があり、そのすぐ近くの3,4番線側の壁面が展示空間になっています。緩やかな斜面になっている地面と壁面に、大きくうねる線の装飾が目印です。
まとめ
目的地へ向かうための通過点としてだけでなく、1日を通して街の中でもさまざまな人々が最も集まるパブリックスペースである駅は、「Yamanote Line Museum」によって日常の中でアートを身近に感じられる場へと進化しています。いつも使う駅や、初めて使う駅で、開かれたアート鑑賞を通じて駅の魅力を再発見できるはず。好きな作家や見たい作品を目当てに駅を訪れてみる、アート散歩も楽しめます。そして、何となくアートは敷居が高いと感じていた方も「絵の見るのは楽しい」と思えたり、一枚の絵画との出会いが感性を刺激して「この絵を自宅に飾ってみたい!」と作品に興味が湧いたりと、駅で始まる気軽なアート体験から世界が広がるかもしれません。
著者紹介
- ※撮影/さつま瑠璃
- ※文/さつま瑠璃
- ※2026年4月時点での情報です。


