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2022.12.16旅行「南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕」で世界遺産、熊野古道をめぐる旅! JR全線完乗した蜂谷あす美が名古屋発モデルコースを徹底解説

列車もバスもフル活用! 古の風情に浸る東紀州旅

三重県でも南部に位置する東紀州は世界遺産の熊野古道をはじめ、古の人々の信仰や想いに触れられるスポットが数多く存在する地域です。さらに、ほかでは味わえない魅惑的な海産グルメの宝庫でもあります。

今回は、「南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕」を活用して、壮大な歴史と景観をめぐる旅に出かけます。

【南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕】熊野古道伊勢路ウォークに必須のきっぷ!

「南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕」のすごいところは、「きっぷの名前に偽りなし」という点です。

「熊野古道伊勢路」とは伊勢神宮と熊野三山を結ぶ参詣道を指しますが、このきっぷのフリー区間である三瀬谷駅~熊野市駅は、まさに伊勢路のエリアにあたります。また、きっぷには三重交通と熊野市バスの一部の路線バス乗り放題も含まれています。

これら鉄道とバスを利用することで、馬越峠(まごせとうげ)など伊勢路のなかでも人気の峠道にアクセスできるようになっているのです! さらにフリー区間内では普通列車だけでなく、特急列車も利用可能であることから移動効率が良い行程を組めます。

なお、バスについては運行本数が少なめで、乗り遅れは、旅程崩壊の危機につながります。時刻は事前に確認するように気を付けてください!


南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕

発駅(豊橋駅~鳥羽駅)からフリー区間までの特急「南紀」普通車指定席往復、紀勢本線フリー区間(三瀬谷駅~熊野市駅)および三重交通バスの指定区間3日間乗り放題がセットになったきっぷ。フリー区間内では特急列車の自由席も利用可能(指定席は別途特急料金が必要)。

料金:
大人8,380円、こども4,190円(名古屋市内発着の場合)

販売期間・利用期間:
通年
※ただし4月27日~5月6日、8月10日~8月19日、12月28日~翌年1月6日の各期間は利用できません

有効期間:
3日間

うりば:
きっぷの出発駅及び周辺のJR東海の主な駅・主な旅行会社
JR西日本インターネット予約サービス「e5489


「南紀・熊野古道フリーきっぷ」についてはこちら(JR東海)

<1日目>特急とバスを乗り継ぎフリー区間の最も奥へ! 山と海の絶景に触れる


1日目
08:02発

名古屋駅 紀勢本線 特急「南紀1号」 紀伊勝浦駅行

11:13着

熊野市駅 乗り換え

11:25発

熊野市駅前停留所 熊野市バス 熊野古道瀞流荘(せいりゅうそう)線 瀞流荘停留所行

12:00着

千枚田・通り峠入口停留所

  • ポイント① 山間の斜面に広がる棚田「丸山千枚田」と北山道
14:59発

千枚田・通り峠入口停留所 熊野市バス 熊野古道瀞流荘線 木本高校停留所行

15:34着

熊野市駅前停留所 乗り換え

16:17発

熊野市駅前停留所 三重交通 熊野新宮線 大又大久保停留所行 ※別料金

16:22着

鬼ケ城(おにがじょう)東口停留所

  • ポイント② 隆起と風化、波の浸食によってできた洞窟、奇岩がおよそ1kmにわたり連なる「鬼ヶ城」
17:28発

鬼ヶ城東口停留所 三重交通 新宮駅前停留所行 ※別料金

17:33着

熊野市駅前停留所

  • 乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。

ポイント① 山間の斜面に広がる圧巻の光景「丸山千枚田」


上記でもご紹介したように「南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕」のフリー区間は三瀬谷駅から熊野市駅にかけて。そこで最初は、区間の一番端っこ、熊野市周辺から楽しみます。

熊野市駅前停留所から熊野市バスに乗り換え、向かうは「丸山千枚田」です。もちろんバスもフリー区間に含まれていますよ!

山間の斜面に幾重にも水田があり、その数はおよそ1,340枚! 1枚あたりの平均面積が約10坪と大変小さく「1枚足りないと思ったら笠の下にかくれていた」と言われるほどなのだとか。地元の方が保全活動を行い、日本の棚田百選にも選ばれています。

また、バス停から棚田が一望できる展望台までの通り峠は、吉野方面へ北上する北山道(きたやまみち)であり、古道には石畳が残っています。


丸山千枚田

住所 三重県熊野市紀和町丸山
問い合わせ先 0597-97-0640(熊野市ふるさと振興公社)、0597-97-1113(熊野市地域振興課)
交通アクセス 熊野市駅から熊野市バス熊野古道瀞流荘線で35分、「千枚田・通り峠入口」停留所より徒歩30分
URL https://www.maruyamasenmaida.jp/

ポイント② 洞窟、奇岩がおよそ1kmにわたって連なる熊野灘の景勝地「鬼ケ城」


熊野市といえば、熊野古道をはじめ、世界遺産が盛りだくさんのスポットです。順番に訪ねていきましょう!

最初に訪問するのは海岸線に位置する「鬼ケ城」です。平安時代初期、征夷大将軍の坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)がここを根城として「鬼」と恐れられた海賊「多娥丸(たがまる)」を退治した伝説が残されています。

「鬼ケ城」は隆起と風化、それに波の浸食によって生じた大小無数の海食洞が、熊野灘に面しておよそ1Kmにわたって続き、国の天然記念物および名勝にも指定されています。岩には「千畳敷(せんじょうじき)」や「犬戻り」といった名前が付いており、遊歩道から見学できます。


鬼ケ城

住所 三重県熊野市木本町
問い合わせ先 0597-89-1502(熊野市ふるさと振興公社 鬼ケ城センター)
交通アクセス 熊野市駅から三重交通熊野新宮線で約5分、「鬼ヶ城東口」停留所より徒歩3分
URL http://onigajyo.jp/

<2日目>熊野市の世界遺産観光を満喫し、尾鷲(おわせ)の海産グルメをとくと味わう


2日目

熊野市駅から徒歩で「獅子巖」に移動

  • ポイント③ 地盤の隆起と荒波が生み出した芸術「獅子岩」に圧倒される

徒歩で「花の窟(はなのいわや)」に移動

  • ポイント④ 国産み・神産み神話の舞台「花の窟」で神話、伝説に触れる
09:33発

熊野市駅 紀勢本線 特急「南紀4号」 名古屋駅行

10:01着

尾鷲駅

  • ポイント⑤ 地元の水産会社直営「おわせお魚いちば おとと」で海鮮丼をいただく!
12:00発

尾鷲駅 紀勢本線 新宮駅行

12:05着

大曽根浦(おおそねうら)駅

  • ポイント⑥ 熊野古道や東紀州エリアについて学べる「三重県立熊野古道センター」へ
16:50発

大曽根浦駅 紀勢本線 亀山駅行

16:54着

尾鷲駅

  • 乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。

ポイント③ 海に向かって吠える世界遺産「獅子巖」


1日目の「鬼ケ城」に続いて訪れる世界遺産は、地盤の隆起と海蝕現象によって生まれた高さ約25m、周囲約210mの奇岩「獅子巖」です。

七里御浜(しちりみはま)沿いにそそり立つ姿は獅子の形をしており、まるで海に向かって吠えているかのよう。「熊野の鬼ケ城 附 獅子巖」として鬼ケ城とともに国の天然記念物、名勝に指定されています。

ちなみに南側に位置する神仙洞(しんせんどう)の吽(うん)の岩(雌岩)に対して阿(あ)の岩(雄岩)と呼ばれ、井戸川上流に位置する大馬神社の狛犬として敬愛されていることから、大馬神社には狛犬が設置されていません。


獅子巖

住所 三重県熊野市井戸町
問い合わせ先 0597-89-0100(熊野市観光協会)
交通アクセス 熊野市駅から徒歩10分
URL https://www.kumano-kankou.info/tourism/interest/

ポイント④ 『日本書紀』にも記された日本最古の神社「花の窟」


熊野市で最後に訪れる世界遺産「花の窟」は、奈良時代に記された日本最初の歴史書『日本書紀』の神代第一で「国産みの舞台」として登場する日本最古の神社です。

神々の母である伊弉冊尊(イザナミノミコト)が火神・軻遇突智尊(カグツチノミコト)を産み、灼かれて亡くなった後に葬られた御陵とされています。

社殿はなく、熊野灘に面した高さおよそ45mの巨岩がご神体のため、参拝者は直接触れることができるなど、太古の自然崇拝の遺風が感じられます。


花の窟

住所 三重県熊野市有馬町
問い合わせ先 0597-89-0100(熊野市観光協会)
交通アクセス 熊野市駅から徒歩15分
URL https://www.kumano-kankou.info/tourism/interest/

ポイント⑤ 尾鷲の海産グルメでお腹を満たせる「おわせお魚いちば おとと」


熊野市を後にして、次なる目的地は尾鷲市です。尾鷲は、天然の良港と称される港がいくつもあり、漁業で栄えてきた町です。となれば、海産グルメは必ず味わいたいところ。

尾鷲駅から徒歩10分の「おわせお魚いちば おとと」は地元の水産会社、尾鷲物産直営の地場産品直売所です。店内には尾鷲港で水揚げされた魚介類や尾鷲湾で育った養殖魚など旬の魚が並びます。また、自社の近海マグロはえ縄船「良栄丸」の水揚げ時にはマグロの卸売りも行われます。

そして鉄道旅行者がお腹を満たすのに最適なのが、店内奥に位置する「おわせ魚食堂」です。

地元の魚がおいしく気軽に味わえるセルフスタイルの食堂で、「良栄丸」でとれたマグロがどっさりのった「まぐろどん」から、お刺身や煮魚、焼き魚など、さまざまな料理が楽しめます。地物の野菜を使用した料理もあり、それらを組み合わせることで超豪華なランチの完成です!


旬の食材が並ぶ鮮魚売り場

「おわせ魚食堂」で味わえる海鮮料理


おわせお魚いちば おとと

住所 三重県尾鷲市古戸野町2-10
問い合わせ先 0597-23-2100
時間 10:00~18:00(おわせ魚食堂は11:00~14:00頃)
定休日 年中無休
交通アクセス 尾鷲駅から徒歩10分
値段 まぐろどん970円(税込)、地魚どんDX(デラックス)1,230円(税込)など
URL http://e-ototo.jp/

ポイント⑥ 熊野古道の理解を深める「三重県立熊野古道センター」


今回の旅3日目には、熊野古道伊勢路ウォークが控えています。そこで、熊野古道について事前学習すべく訪れておきたいのがビジターセンター「三重県立熊野古道センター」です。

2007年に開館した同センターは、展示棟、交流棟、そして研究収蔵棟の3棟などからなっており、このうち展示棟では熊野古道と周辺地域の歴史や自然、文化が展示や映像で学べます。

また、研究収蔵棟の図書資料室には、熊野古道や東紀州地域の研究、学習のための資料が揃っており、より理解を深めたい人におすすめです。


熊野古道とその周辺の歴史、自然、文化を紹介する展示棟


三重県立熊野古道センター

住所 三重県尾鷲市向井12-4
問い合わせ先 0597-25-2666
時間 9:00~17:00(図書資料室は10:00~15:00)
定休日 12月31日、1月1日(その他メンテナンス等により休館の場合あり)
交通アクセス 大曽根浦駅から徒歩18分
値段 無料
URL https://kumanokodocenter.com/

<3日目>旅の一番の目的「熊野古道伊勢路」を歩く! 最後は郷土料理「マンボウ」で大団円


3日目
08:24発

尾鷲駅口停留所 三重交通 尾鷲長島線 紀伊長島駅前停留所行

08:37着

鷲毛(わしげ)停留所

  • ポイント⑦ 熊野古道伊勢路「馬越峠」を歩く
13:32発

尾鷲駅 紀勢本線 特急「南紀6号」 名古屋駅行

13:53着

紀伊長島駅

  • ポイント⑧ マンボウフライに、マンボウ串焼きに! 「道の駅 紀伊長島マンボウ」だけのグルメに舌鼓
18:40発

紀伊長島駅 特急「南紀8号」 名古屋駅行

20:49着

名古屋駅

  • 乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。

ポイント⑦ 美しい石畳が続く熊野古道伊勢路「馬越峠」


いよいよお待ちかね、きっぷの名前にもなっている「熊野古道伊勢路」ウォーキングを楽しみます。

熊野古道とは、熊野信仰の聖地である熊野三山(熊野那智大社、熊野本宮大社、熊野速玉大社)への参詣道を指し、伊勢路、紀伊路、小辺路、中辺路、大辺路、大峯奥駈道などがあります。

このうち伊勢路は伊勢神宮と熊野三山を結ぶ参詣道をいいます。江戸時代の頃から、お伊勢参りの後に伊勢路を通って熊野詣が行われました。


今回は伊勢路のなかでも人気の「馬越峠」を歩きます。江戸時代に作られたとされる、自然石が敷き詰められた美しい石畳が特徴で、峠の頂上からは尾鷲市街が一望できます。尾鷲ヒノキの美しさに包まれながら、古道の風情を味わいましょう。

なお、スタート地点のバス停からゴールの尾鷲駅までの所要時間はおよそ2時間40分。ハイキングに適した格好で行きましょう!


馬越峠

住所 三重県尾鷲市~北牟婁郡紀北町
問い合わせ先 0597-23-8261(協同組合尾鷲観光物産協会)
交通アクセス 尾鷲駅から三重交通尾鷲長島線で約13分、「鷲毛」停留所から徒歩10分
URL https://owasekankou.com/sightseeing/magose/

ポイント⑧ マンボウ料理が味わえる「道の駅 紀伊長島マンボウ」


2泊3日の旅も終盤に近付いてきました。名古屋に戻る特急「南紀」に乗る前に、最後のグルメスポットとして立ち寄りたいのが紀伊長島駅から徒歩15分にある道の駅「紀伊長島マンボウ」です。

少し不思議な名前ですが、道の駅が所在する紀北町は昔からマンボウが郷土料理として親しまれてきた地域にあたり、なんと実際にマンボウ料理がいただけるのです。食堂では、マンボウのフライが、また土日、祝日にのみ営業するマンボウ屋台では、マンボウの串焼きのほか、鮫の串焼き、うつぼの唐揚げが楽しめます。

また、屋外にはマンボウのモニュメントがあるので、旅の思い出に記念撮影もどうぞ!


マンボウフライ定食

マンボウの串焼き


道の駅 紀伊長島マンボウ

住所 三重県北牟婁郡紀北町東長島2410-73
問い合わせ先 0597-47-5444
時間 物販/平日8:15~18:00、土日祝 8:00~18:00、食堂/ 9:00~15:00、マンボウ屋台/ 9:00~16:00(土日祝のみ営業)※月により営業時間が異なります
定休日 年中無休
交通アクセス 紀伊長島駅から徒歩15分
値段 海鮮盛合丼:950円、マンボウフライ定食:980円、お刺身定食:1,200円(いずれも税込)など
URL https://42manbou.com/

運賃料金参考(JR利用)

合計16,250円

乗車券 小計9,500円
名古屋~熊野市(3,930円)、熊野市駅前~千枚田・通り峠入口(500円)、千枚田・通り峠入口~熊野市駅前(500円)、熊野市~尾鷲(590円)、尾鷲~大曽根浦(190円)、大曽根浦~尾鷲(190円)、尾鷲駅口~鷲毛(350円)、尾鷲~紀伊長島(420円)、紀伊長島~名古屋(2,830円)

特急券 小計6,750円
名古屋~熊野市(3,050円)、熊野市~尾鷲(660円)、尾鷲~紀伊長島(330円)、紀伊長島~名古屋(2,710円)

南紀・熊野古道フリーきっぷ〔伊勢路コース〕なら、7,870円もおトク!

  • 運賃・料金は1人分です。
  • 時期によって運賃・料金は異なります。
  • 列車の通常料金はきっぷの運賃です。交通系ICカードを使用した場合は運賃が異なります。
  • 今回のモデルルートで利用する路線の一例です。他の路線等を利用した場合や、乗り方によっては料金が異なります。

紀勢本線ならではの鉄道旅行体験、列車旅の面白さとは?

今回の旅は往復で特急南紀を利用します。この列車の面白いところは、河原田駅~津駅でJR以外の区間、第三セクターの伊勢鉄道を通っている点です。

地図で確認してもらいたいのですが、これによりかなりのショートカットが図られています。伊勢鉄道走破にかかる時間は13分とあっという間ですが、ぜひ、車窓にご注目を。沿線の駅のデザインやすれ違う車両にはJRとはまた違った味わいがあります!

また、紀勢本線にも注目ポイントが。大曽根浦駅~大泊駅間は、長いトンネルと海の絶景が繰り返され、明暗の転換が激しい区間になります。これは沿線が典型的なリアス式海岸であるためです。トンネルは入り江の集落を直線的につないでいきます。

そうした背景も踏まえて車窓を見ると、より楽しさが深まるはず!


著者紹介

蜂谷あす美

旅の文筆家。福井県福井市出身。慶應義塾大学卒業後、出版社勤務を経て、現在に至る。「旅は再訪のための下見」をモットーに、2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅を中心としたエッセイや紀行文などを数多く執筆しているほか、ご当地牛乳にほれ込み牛乳の連載も経験あり。最近はラジオをはじめ、トークでも活躍。著書『女性のための鉄道旅行入門』『もっとお得にきっぷを買うアドバイス50』(ともに天夢人)

オフィシャルHP
Twitter

  • 写真協力:熊野市観光協会、おわせお魚いちば おとと、三重県立熊野古道センター、協同組合尾鷲観光物産協会、道の駅 紀伊長島マンボウ
  • 文:蜂谷あす美
  • 掲載されているデータは2022年12月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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