快速は? グリーン車は? 三セクは? 東京駅発本州一周で知る冬の青春18きっぷの賢い活用法
青春に無限の可能性があるなら、青春18きっぷには無限の行き先がある――。
そんなロマンを信じ、青春18きっぷ全5回使いの一人旅で、日本縦断をするツワモノがいます。
では、本州一周はどうか? 北は青森、西は下関、南は紀州の串本まで、壮大な一筆書きの旅は、スケジュールを考えるだけで、18きっぱーを漂泊の想いに駆りたてます。
聞こえてくる乗客の方言もめまぐるしく変わるほどの長旅へ、さあ出発!
- ※新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。
<青春18きっぷの旅1日目>全線開通の常磐線を経て、1日で東京から青森まで北上!
760km以上の長旅の先に待つ、ぽっかぽか温泉
辺りはまだ暗く、吐く息は白い。そんな早朝4:46に東京駅を発つには、ある理由が。青春18きっぷ全5回分を使って、本州一周が可能かどうかという一人旅に出るからです。今回選んだのは本州反時計回り。太平洋側⇒津軽湾⇒日本海側⇒関門海峡⇒再び太平洋側をなぞり、東京に戻ってくる……つもりですが、果たして。
5:10に上野駅で常磐線に乗り換えても、夜が帳を上げる気配は無し。空が白み出したのは土浦駅で6:37発の常磐線いわき行に乗り換えて少し過ぎたあたりから。石岡駅の前後で、車窓に朝日を拝むことが出来ます。朝日をローカル線で望めるのは、がむしゃら青春18きっぷ旅のひとつの醍醐味。
9:14にいわき駅に着いたら、構内のニューデイズで人気駅弁の「うに貝焼き食べくらべ駅弁」か今年常磐線全線開通記念の「浜べん」各1480円(税込)を朝ごはんにゲット。今年3月に常磐線が開通したので、東北本線回りではなく、常磐線経由でも仙台駅にアクセスできるようになりました。
仙台駅に12:12に到着したら、乗り継ぎ時間を活かして駅ビルでランチを。30分余りしか時間がないので、駅3階にある「すし通り」の立ち食い寿司「仙令鮨」でササッと海の幸を味わうのもおすすめです。
ここからは王道の東北本線を乗り継いで盛岡駅へ。16:11に盛岡駅に着くと、乗り継ぎ時間が2時間近くあるため、徒歩10分の民藝店・喫茶「光原社 可否館」で一服しましょう。光原社はもともと宮沢賢治の『注文の多い料理店』を出版した会社。瀟洒な民藝品に囲まれ、ホットコーヒーを啜りつつ、賢治の童話の世界にひとり想いを馳せてみては。
盛岡駅から先、八戸経由で青森駅を目指すとなると、第三セクターのIGRいわて銀河鉄道の乗車区間が長く、別途運賃3110円はちょっとイタイ。なので、好摩駅まではIGRいわて銀河鉄道、そこからはJR花輪線で、再度JRに乗り換えれば青春18きっぷを最大限活用でき、運賃の出費を最低限に抑えられます。
初日の宿泊地、青森駅に着いたのは22:00過ぎ。湯冷めしにくいと評判の、まちなか温泉青森センターホテルのお風呂で、冷えた体を芯から温めましょう。
青春18きっぷで本州一周一人旅<1日目:東京駅出発~青森駅>今回の行程
- ※地図内の罫線は、実際の線路ではなく下車や乗り継ぎのポイントを繋いでいます。
運賃料金参考
合計11330円:東京駅→青森駅
青春18きっぷ(1回2410円)+盛岡~好摩の第三セクター660円を使えば、8260円もお得!
<青春18きっぷの旅2日目>ご当地の味をつまみ食いし、日本海沿いを福井まで南下。黒字は9000円以上!
長めの三セク路線をお得に通過する方法とは?
2日目の早朝は青森駅5:41発の奥羽本線(弘前行)でスタート。まず弘前駅で6:25発の奥羽本線快速(秋田行)に乗り換え、8:43に秋田駅に到着したら朝食を物色。駅ビルのトピコ2階「秋田お菓子小路」で、かおる堂のりんごパイや、高砂堂の「りんごもち」など、ご当地の甘味を朝ごはん代わりに購入するのもおすすめです。秋田駅9:13発の羽越本線(酒田行)に乗ったら西に日本海を眺めながら南下し、酒田駅に11:08に到着。1時間50分近い乗り継ぎ時間があるので、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」にも掲載された本間美術館で池泉回遊式庭園を愛でるもよし、酒田のシンボルで築100年以上の山居倉庫へ向かい記念撮影をするもよし。ただし、本間美術館は12月22日~1月8日まで休館予定なのでご注意を。
酒田駅から新潟駅までの区間で、車窓のハイライトは国の名勝天然記念物に指定されている笹川流れ。今川駅~桑川駅前後で、びょうぶ岩など約11kmに渡って続く奇岩・岩礁に目を奪われます。
夕方ごろに新潟駅に着いたら、早めの晩ごはん。乗り換え時間が約40分と短いので、駅ビルにある越後長岡小嶋屋 CoCoLo新潟店のへぎそばなどで、地元の味覚を堪能しましょう。
信越本線快速で19:06に直江津駅に着いたら2日目初の三セク鉄道、えちごトキめき鉄道に乗車。ここから金沢駅までは、あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道と、第三セクターの路線が続きます。内陸に向かい、篠ノ井線→中央本線と進むのもいいですが、それだと本州一周感が少し薄い。夏は発行されたトキ鉄18きっぷ(冬の発行は未定)やIR・あいの風1日フリーきっぷを賢く利用すれば、ひとり旅の出費を抑えながら、海沿いを進めます。24:00に福井駅に到着。
青春18きっぷで本州一周一人旅<2日目:青森駅出発~福井駅>今回の行程
- ※地図内の罫線は、実際の線路ではなく下車や乗り継ぎのポイントを繋いでいます。
運賃料金
合計14580円:青森駅→福井駅
青春18きっぷ(1回2410円)+トキ鉄18きっぷを利用1000円(冬も発行されたと想定)+IR・あいの風1日フリーきっぷ2000円を使えば、9170円もお得!
<青春18きっぷの旅3日目>越前を出た列車は、若狭の国を経て、山陰に突入。山海の風景に息を呑む
乗り換え時間をどの駅の観光で「消費」するかがカギ!
2日目の最終到着地、福井駅から北陸本線に乗ったのは早朝5:21。この早起きが、鳥取での観光時間をもたらす布石になります。敦賀駅での乗り換えもあくまで海沿いを目指し、小浜線をチョイス。車窓西側に三方五湖を望み、西へしばらく進んだあと、列車は8:13に東舞鶴駅に到着します。
舞鶴線に乗り換え、9:38に福知山駅に着いたら、駅高架下のビル、ビエラ福知山のATAMAN COFFEEで自家焙煎珈琲とトーストを。山陰本線で向った城崎温泉駅では、20分余りの乗り換え時間を使い、駅北側にある「さとの湯」の足湯で、リラックスタイム。
山陰本線に再び乗車し西へ向かうと、列車は12:40ごろに新余部橋梁に差し掛かります。高さ約42mの橋梁から見渡す日本海は絶景のひとこと! 13:54に鳥取駅に着いたら、贅沢に2時間近く使って鳥取散策を。世界トップクラスの砂像彫刻家が手掛けた巨大砂像を観賞できる鳥取砂丘 砂の美術館や、冬ならではのカニグルメを満喫。鳥取駅14:00発の快速に乗ってもいいですが、山陰本線で到達できるのは東萩駅まで。16:00発に遅らせても益田駅まで行けるので、ここは思い切って観光を楽しみましょう。
鳥取散策を楽しんだら、青春18きっぷで乗れる快速とっとりライナーの出雲市行きに乗車。倉吉駅を出ると夕暮れの大山、御来屋駅を出ると日本海の風景が一人旅を盛り上げます。19:02に出雲市駅に着いたら、駅周辺のそば屋さんで出雲そばを満喫。駅前のローソン出雲駅北店でお酒を買い込み、3泊目の地となる益田駅まで向かいます。23:35に益田駅到着。
青春18きっぷで本州一周一人旅<3日目:福井駅~益田駅>今回の行程
- ※地図内の罫線は、実際の線路ではなく下車や乗り継ぎのポイントを繋いでいます。
運賃料金参考
合計9790円:福井駅→益田駅
青春18きっぷ(1回2410円)を使えば、7380円もお得!
<青春18きっぷの旅4日目>本州の西端にタッチしたら、東へ大きく舵を切る。次の標的は本州南端!
響灘の島影と、瀬戸内の島なみに旅情も最高潮
益田駅を5:56に出発し、最初の乗り継ぎ駅の長門駅に着いたら、再び山陰本線に乗車。美祢線でショートカットという手もありますが、やはり本州一周感を大切に。遠回りでも山陰本線で沿岸を攻めればこそ、伊上駅~阿川駅・長門二見駅~小串駅でコバルトブルーの響灘や、そこに浮かぶ島々の絶景を見渡すことができます。
海沿いの駅、小串駅に9:07に着いたら、乗り換え時間を活用して駅前のお食事処たおへ。食堂メニューは11:00からですが、8:00から営業しているので、名物の巻き寿司などでお腹を満たしましょう(事前予約がベター)。
そこから40分ほど南下したら、遂に本州のほぼ最西端の下関駅に10:36に到達。2日前には青森にいたと思うと感慨深い。駅1階の自由通路には、立ち食いの味一 下関駅店があります。こちらの「ふく天うどん」640円(税込)で、リーズナブルに地元の味覚を謳歌!
昼前の11:14に下関駅を離れ、今度は山陽本線で東へ、東へ。徳山駅~櫛ヶ浜駅辺りでは圧巻の周南コンビナート、柳井港駅~藤生駅辺りは周防大島やトラス橋の大島大橋など変化に富む海景が車窓に次々と現れます。
18:35に岡山駅に到着。ここまで来ると、やっと長めの乗り換え時間を取れるので、夕ごはん探しへ。駅ビル内にある「さんすて岡山」なら、移動時間を気にせず地元の幸を楽しめます。南館2階には駅弁売り場も!
20:40に姫路駅に着いて神戸線新快速に乗り換えたら、21:58に大阪駅に到着し、京都方面に向かいたくなりますが……ここは、こだわりの海沿いチョイス。紀州路快速で青春18きっぷの旅最後の宿泊地、和歌山へ南下し、わらじを脱ぎます。23:56和歌山駅に到着。
青春18きっぷで本州一周一人旅<4日目:益田駅~和歌山駅>今回の行程
- ※地図内の罫線は、実際の線路ではなく下車や乗り継ぎのポイントを繋いでいます。
運賃料金参考
合計11000円:益田駅→和歌山駅
青春18きっぷ(1回2410円)を使えば、8590円もお得!
<青春18きっぷの旅5日目>紀伊半島の南端から東京へのロングライドで、この旅最大の黒字爆誕!
ラストは青春18きっぷ×グリーン券という裏技も選択肢に!
最終日の前半戦、紀勢本線(きのくに線)は乗り換え時間が短いので、朝ごはんと飲み物をコンビニで買いこんでから和歌山駅6:05発の紀伊田辺行に乗車します。醤油の里・湯浅を過ぎ、切目駅を過ぎると、ここから海沿いを走る区間が長くなります。一昨日見た日本海とは違う、紺碧の海。透明度の高い黒潮が近くを流れているから、快晴時は圧倒的に青い海原を眼下に望むことができます。
7:49に紀伊田辺駅に着き、紀勢本線(きのくに線)を乗り継ぐと、さらに海が近くに。和深駅から見晴らす太平洋の水平線が素晴らしく、途中下車したい衝動に駆られるがここは我慢。さらに3駅過ぎると、ついに本州のJR最南端駅、串本駅に到達します。
新宮駅まで北上したら、約11分の乗り換え時間を利用し、急いで徐福寿司駅前店へ。熊野灘で獲れる身の引き締まったサンマと柚子酢の香りが食欲誘う、さんま寿司を購入します。
多気駅で14:35発の快速みえに乗ると、東海地方に突入したことを実感。名古屋駅から1時間近く新快速に揺られると、朝ドラ「エール」のヒロイン音ちゃんのモデル、古関金子の出身地として話題となった豊橋駅に17:11に到着。ヤマサちくわ 豊橋駅カルミア店&三味へ行き、朝ドラの舞台決定記念で発売された「豊橋はやっぱりちくわセット」3402円(税込)をお土産に購入してみては?
東海道本線で向かった浜松駅では、夕ごはんに駅弁・浜松三ヶ日牛&遠州しらす弁当1050円(税込)を購入。仕切りの一方には甘い脂ときめ細かい肉質の三ヶ日牛が、三ヶ日みかんピューレで炊いたご飯の上に鎮座、もう一方には遠州灘産しらすが敷き詰められ、遠州の味覚がぎっしり!
沼津駅からは20:38発の東海道本線(宇都宮行)に乗ると、乗り換えなしで東京駅に帰還! ただ、熱海駅であえて下車してグリーン券(平日利用、車外での事前購入で1000円)を購入し、グリーン車両付きの上り列車に乗り換えれば、4泊5日の旅のエンディングがいっそう盛り上がるはず!
青春18きっぷで本州一周一人旅<5日目:和歌山駅~東京駅>今回の行程
- ※地図内の罫線は、実際の線路ではなく下車や乗り継ぎのポイントを繋いでいます。
運賃料金参考
合計11520円:和歌山駅→東京駅
青春18きっぷ(1回2410円)を使えば、9110円もお得!
JRのおトクなきっぷ「青春18きっぷ」
全国のJR線普通・快速列車の普通車自由席が一日乗り放題のきっぷ。「青春18」と名付けられていますが、年齢制限はなし! 1券5回(日)分セットで、ねだんは12050円。同一行程であれば、最大5人まで同時に利用できます。
◆2020年~2021年「青春18きっぷ」発売期間・利用期間
◎春
発売期間:2020年2月20日(木)~2020年3月31日(火)
利用期間:2020年3月1日(日)~2020年4月10日(金)
◎夏
発売期間:2020年7月1日(水)~2020年8月31日(月)
利用期間:2020年7月20日(月)~2020年9月10日(木)
◎冬
発売期間:2020年12月1日(火)~2020年12月31日(木)
利用期間:2020年12月10日(木)~2021年1月10日(日)
著者紹介
- ※写真:まちなか温泉青森センターホテル、鳥取砂丘 砂の美術館、小郡駅弁当(ふく天うどん)、自笑亭(浜松三ヶ日牛&遠州しらす弁当)
- ※掲載されているデータは2020年10月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
- ※乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。
- ※列車の発着時刻についてはJR時刻表 2020年10月号に基づいています。
- ※写真はイメージです。モデルプランの行程中に撮影したものではありません。