2024.12.24ジパング俱楽部現役を引退した蒸気機関車「SL人吉」が人吉に里帰り|現地発!おすすめ旅ネタ情報
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このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。
今回紹介するのは、人吉駅前で展示が開始された蒸気機関車「SL人吉(ひとよし)」についてです。
蒸気機関車の里帰りを歓迎するイベントが開催!
かつて熊本駅~人吉駅間を走行していたD&S列車「SL人吉」。しかし、車体の老朽化などにより、多くの鉄道ファンに惜しまれながら2024年3月に現役を引退しました。
同年11月、SL人吉を牽引していた蒸気機関車の展示が人吉駅前で開始。お披露目を兼ねて開催されたイベント「SL人吉・鉄道フェス2024」に行ってきました!
大正時代に製造された満102歳の“ハチロク”
2024年11月から人吉駅前で展示されている蒸気機関車「SL人吉」
観光列車「SL人吉」の車両を牽引していた蒸気機関車は、1922(大正11)年に製造された「8620」形「58654号機」。国内で営業運転していた蒸気機関車の中ではもっとも古い形式で、“ハチロク”の愛称で親しまれていました。
ピカピカに黒光りするボディはまだまだ現役のよう
人吉駅。肥薩線は運休中ですが、くま川鉄道の人吉温泉駅として営業中
2009(平成21)年にSL人吉として熊本駅~人吉駅間で運行を開始。黒煙を吐きながら風光明媚(めいび)な球磨川(くまがわ)沿いを走る姿が人気を集めていました。
しかし、令和2年7月豪雨で球磨川が氾濫し、肥薩線の線路が被災。明治期に架橋され、経済産業省の「近代化産業遺産」でもある球磨川第一橋梁(きょうりょう)や球磨川第二橋梁が流出するなど甚大な被害を受けました。
現在も八代駅~吉松駅間の86.8キロで運休を余儀なくされています。被災後、2021年5月から鹿児島本線の熊本駅~鳥栖(とす)駅間で再び走り出しましたが、蒸気機関車の老朽化や修理の難しさから2024年3月に現役を引退。「地域の宝にしたい」と熱望した人吉市にJR九州が無償で譲渡しました。
整備が終了した同年11月、人吉駅前に姿を現した蒸気機関車は、漆黒のボディがピカピカに磨かれて黒光りしています。
ステージイベントや飲食店の出店で会場は大にぎわい
会場には地元の飲食店が多数出店。来場者は郷土の味を楽しんでいました
人吉駅前で展示が始まった蒸気機関車を歓迎するため、2024年11月30日・12月1日、人吉駅前で「SL人吉・鉄道フェス2024」が開催されました。
開会式で人吉市長・松岡隼人(まつおかはやと)氏が「“ハチロク”の里帰りは悲願だったので、帰って来てくれてうれしい。ピカピカに磨いて大切に、大切に保存しています。“ハチロク”に携わる方やファンのみなさんの集いも企画していきたいです」と挨拶。今後は格納庫を整備し、空気圧で動かす動態展示を検討しているそうです。
蒸気機関車の汽笛が力強く鳴り響き、イベントの開始を告げました。
人吉高校吹奏楽部による演奏
人吉駅のホームを活用した駅ステージでも催しが繰り広げられました
島原鉄道のブースでは鉄道部品の販売も
飲食店ブースには、アユやヤマメの塩焼き、ジビエ料理など、地元の味を提供する出店やキッチンカーが多数登場。2カ所の特設ステージでは地元の郷土芸能などが披露されました。
とくに駅長姿に扮した熊本県PRキャラクター・くまモンのショーでは会場が熱気に包まれました。
JR九州やくま川鉄道など鉄道会社のブースも登場し、鉄道関連グッズの販売なども行なわれました。
貴重な近代化産業遺産を間近で見学!
重厚感のある石造りの機関車庫。普段は柵越しに眺めることができます
イベントでは定員制の「機関車庫、転車台見学ツアー」も実施。貴重な機関車庫と転車台(ターンテーブル)を間近で見ることができる絶好の機会とあって、多くの鉄道ファンが参加しました。
人吉駅構内にある機関車庫は、1911(明治44)年に建設された全国で唯一現役の石造鉄道車庫。「近代化産業遺産」に認定されています。地元の溶結凝灰岩で建造されており、入口の3連アーチのデザインが特徴です。
間近で見上げると重厚な佇(たたず)まいに圧倒されます。
幅約16メートル、奥行き約51メートル。軌道が3線あります
蒸気機関車を方向転換される転車台
近くには蒸気機関車を回転させて向きを変える円盤状の転車台も。人吉駅に到着したSL人吉は機関車庫に一度入った後、転車台で方向転換してホームに向かっていたそうです。
人吉駅に隣接する鉄道博物館にも立ち寄ってみて
人吉駅に隣接。2階の展望デッキからは機関車庫や展示されている蒸気機関車を見わたせます
蒸気機関車の見学に訪れたら立ち寄りたいのが、人吉駅に隣接する「人吉鉄道ミュージアム MOZOCA(もぞか) ステーション868」。近代化産業遺産である肥薩線の歴史や魅力を伝える鉄道博物館です。「もぞか」とは人吉球磨地方の方言で「かわいい、小さい」という意味があります。
工業デザイナー・水戸岡 鋭治(みとおか えいじ)氏がデザインした館内には肥薩線のジオラマやミニシアター、レールバイクなどがあり、幅広い年代が楽しめます。なかでも、館内から人吉駅まで敷設された全長約140メートルのレールを走り抜けるミニトレイン(片道200円)は注目です。
SL人吉 常設展示
問い合わせ先 | 0966-22-2111(人吉市交通政策課) |
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時間 | 見学自由 |
交通アクセス | 九州新幹線新八代駅から宮崎駅行きJR九州バスほか(「B&Sみやざき」高速バス)約40分の人吉IC下車後、人吉周遊バス「じゅぐりっと号」に乗り換え約17分の人吉駅前下車すぐ |
人吉鉄道ミュージアム MOZOCA ステーション868
問い合わせ先 | 0966-23-2000 |
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時間 | 9~17時 |
定休日 | 水曜(祝日の場合は翌平日) |
交通アクセス | 九州新幹線新八代駅から宮崎駅行きJR九州バスほか(「B&Sみやざき」高速バス)約40分の人吉IC下車後、人吉周遊バス「じゅぐりっと号」に乗り換え約17分の人吉駅前、徒歩約1分 |
値段 | 無料 |
URL | https://www.city.hitoyoshi.lg.jp/museum/ |
この記事を書いた人
写真/玉村恵理子
- ※記事中の情報は2024年12月時点のものです。
- ※写真はすべてイメージです。
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