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2025.05.20ジパング俱楽部50年に一度!京都「正寿院」の秘仏・十一面観世音が特別開扉|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。

今回紹介するのは、京都にある「正寿院」の秘仏・十一面観世音の特別開扉の話題についてです。

50年に一度だけ開扉される御本尊に会いに行く

京都府綴喜郡宇治田原町(つづきぐんうじたわらちょう)

宇治駅からバスに揺られて行く山あいに位置し、茶畑が点在する宇治田原町に正寿院(しょうじゅいん)はあります。

御本尊の十一面観世音は、50年に一度だけ開扉される秘仏で、2025年4月1日から特別開扉が始まっています(2025年11月30日まで)。

緑の木々がさわやかな初夏、御本尊に会いに出かけてきました。

穏やかな表情の御本尊や猪目窓に癒やされて


秘仏の御本尊が開扉されている本堂 秘仏の御本尊が開扉されている本堂

夏の「風鈴まつり」や、ハートの形をした猪目窓(いのめまど)が「美しい!」と女性たちに大人気の正寿院。1200(正治2)年に建立されたと伝わり、御本尊の十一面観世音(町指定文化財)は、鎌倉時代後期の作といわれています。また、快慶の手による不動明王坐像(重要文化財)でも知られます。

御本尊は本堂の内々陣に安置され、普段は扉が閉じられています。御本尊の指に結ばれた「結いの紐」が内陣の前まで垂らされていて、その紐を両手に挟んで願うことで、御本尊とのご縁が結ばれます。

じつは私は、2019年に一度、正寿院を訪れていて、この「結いの紐」を通して願いごとをしました。御本尊には厄除け、家内安全、身体健康の御利益があると聞き、私は大病を経験したことから、健康で過ごせることを祈りました。

それから6年が経ち、今回初めて御本尊に直に会うことができたのです。ほの暗い内々陣に佇(たたず)み、じつに穏やかな表情をされている御本尊は、どこかほほ笑んでおられるように見えて感動。手を合わせ、通院生活が終わったことを伝えました。

「御本尊の表情は参拝する人によって、見え方が変わります。お姿を見て涙を流される人もいれば、戒められているように感じる人もおられますね」と副住職の久野村大寛(くのむら だいかん)さん。御本尊をよく見ると、片側の足が半歩前に出ています。「今すぐに願いごとを聞きに行く、というお姿です」とのこと。慈悲の心をしみじみと感じました。

「今はなにかと厳しい時代ですが、御本尊はよい時も悪い時も変わらず、同じ眼差しで何百年も私たちを見守ってくださっています。もし、今しんどさを感じているのなら、『いつかは雨が上がる』と信じ、心の糧にしていただければと思います」と久野村副住職は話してくれました。

特別開扉は2025年11月30日で終わり、2026年からは1年ほどかけて仏師による修復が行なわれるそうです。
鎌倉時代以来のお姿を拝めるのは、今が最後の機会です。


鳥のさえずりが聞こえる緑豊かな境内 鳥のさえずりが聞こえる緑豊かな境内

初夏の猪目窓。季節によって景色が変わります 初夏の猪目窓。季節によって景色が変わります

猪目窓は、本堂の近くに立つ客殿で見られます。「則天(そくてん)の間」と名付けられた畳敷きの部屋の一番奥に、ハートの形をした猪目窓が設えられ、窓越しに緑の木々が見えました。

猪目とは日本に伝わる伝統的な文様のひとつで、飾り金具や額縁などの建築装飾に使われてきたそうです。客殿の建て替えの際に、訪れる人の幸せと建物の安全を願って猪目窓が造られました。

客殿の美しい天井画も見どころです。季節の花や舞妓さん、風神など160枚もの天井画が広がり、1枚1枚に個性があって見ていて楽しくなります。日本画家を中心に、約90人の作家によって描かれました。

6月1日から9月30日までは「風鈴まつり」も開催


全国各地の風鈴が風に揺られます 全国各地の風鈴が風に揺られます

正寿院は「風鈴寺」と呼ばれるほど「風鈴まつり」も名高く、6月1日から9月30日まで開催されます。

境内には2000個を超える風鈴が吊され、風に揺られながら涼しげな音色を響かせていて圧巻。石川県の加賀水引風鈴や青森県の花笠風鈴など、各地の風鈴が揃うのも魅力です。


市街地より気温が低く、風鈴により涼が感じられます 市街地より気温が低く、風鈴により涼が感じられます

風鈴には昔から厄除けの意味があり、御本尊の御利益にもある厄除けにあやかって風鈴を吊したことが「風鈴まつり」の始まり。

この期間に訪れれば、50年に一度の御本尊の特別開扉とあわせて楽しむことができます。


正寿院

問い合わせ先 0774-88-3601
開催期間 特別開扉は2025年11月30日まで(8月17日は終日拝観中止)
拝観時間 9時~16時30分(御本尊開扉は~16時)。12~3月の拝観は10時~15時45分
値段 11月30日までは特別拝観料1000円(特別御札・菓子付)(通常時は拝観料600円、風鈴まつりの時期は800円)
交通アクセス 奈良線宇治駅から京都京阪バス宇治奥山田茶屋村線(※)約38分の奥山田正寿院口下車、徒歩約10分
URL https://shoujuin.boo.jp/
  • 土・日曜、祝日のみ運行。冬期運休。2025年の運行は12月7日まで。この系統は特別仕様の「宇治茶バス」で運行されています。茶室風の内装で人気です。

この記事を書いた人

福島恵美

京都在住。地方紙記者を経て、1995年からフリーのライターに。新聞や雑誌などで主にインタビュー記事を執筆。認定心理士。温泉やクラフトビール、猫が大好き。

https://x.com/ef_write

  • 記事中の情報は2025年5月時点のものです。
  • 写真はすべてイメージです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。