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2025.06.10ジパング俱楽部金沢・長町武家屋敷跡に新たな観光スポット「千田家庭園」が登場!|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。

今回紹介するのは、2025年4月に一般公開が始まった「千田家庭園」についてです。

満を持して一般公開が始まった千田家庭園


江戸時代の古地図のままの町割が続く長町武家屋敷跡 江戸時代の古地図のままの町割が続く長町武家屋敷跡

長町武家屋敷跡は江戸時代、加賀藩の中級藩士の屋敷が軒を連ねていた場所で、城下町・金沢を代表する観光エリア。

土塀が続く町割は今も江戸時代の古地図のままで、角を曲がれば、「お侍さんが現れるのではないか」と思わせるほどです。土塀の前を流れる川は、金沢城を築城する際に物資運搬にも使われた歴史ある大野庄用水です。

長町武家屋敷跡界隈では、一般公開されて人気となっている「武家屋敷跡 野村家」に加えて、2025年4月からはその隣にある「千田家庭園」の一般公開も始まりました。


長町武家屋敷跡を流れる大野庄用水 長町武家屋敷跡を流れる大野庄用水

まちなかにありながら、豊かな自然とふれあえる


2025年4月から一般公開された千田家庭園 2025年4月から一般公開された千田家庭園

千田家庭園は、加賀藩の藩士だった千田登文(のりふみ)が1894(明治27)年に作庭した池泉回遊式庭園で、大野庄用水から引き込まれた水が、築山のまわりをめぐって、また大野庄用水へと戻っていきます。これがこの庭園の特徴で、大野庄用水から取水する日本庭園の中では最古であり、作庭された当時の姿をよく残しています。

「江戸時代、大野庄用水の水を景観目的で自分の家に引き込むことは禁じられていましたので、明治時代になってこのような構造のお庭をつくることができるようになりました」と、この庭園のオーナーの石野延廣(のぶひろ)さんが教えてくれました。

用水の水をそのまま引き込んでいるため、池に生息する生きものは多く、夏にはアユが泳ぎ、夜はホタルも舞うなど、豊かな自然環境が保たれています。そして、四季折々にいろいろな花も咲き、彩りを添えてくれます。


勢いよく水が流れ込む取水口 勢いよく水が流れ込む取水口

雪見灯籠と2年前に復活した滝 雪見灯籠と2年前に復活した滝

音でも楽しめる庭園


手水鉢(ちょうずばち)の水をかけるとカンカンと軽やかな音を響かせる水琴窟(すいきんくつ) 手水鉢(ちょうずばち)の水をかけるとカンカンと軽やかな音を響かせる水琴窟(すいきんくつ)

非公開だったこの庭園は、2013年に金沢市指定文化財となったことで、「いずれは一般公開を」と準備が進められ、2023年には庭園の修復が終わりました。

「水車が壊れてずっと水が流れていなかった滝が100年ぶりに復活したことで、ようやく公開の準備が整いました。また、音が出なくなっていた江戸時代につくられた水琴窟もよみがえらせることができました。さらに、一般公開にあわせ、金沢美術工芸大学鍔(つば)教授の監修でつくった坪庭にはししおどしも設えました。ししおどし、水琴窟、そして滝と、ここでは眺めるだけでなく、音も楽しんでいただけます」と、延廣さんの妻で登文のひ孫の恵子さん。


1918(大正7)年に撮られた庭園の写真。右端に水車が写り、この頃は滝も流れていました 1918(大正7)年に撮られた庭園の写真。右端に水車が写り、この頃は滝も流れていました

千田家四代目の恵子さん 千田家四代目の恵子さん

明治維新で功績を残した曽祖父を紹介する資料館

公開にあたって、ご夫婦がこだわったもうひとつが、千田登文の名前を後世に残すことでした。

明治になってから陸軍に入り、西南戦争では山縣有朋(やまがたありとも)の護衛をし、隠されていた西郷隆盛の首を発見したのが登文。
併設された資料館では、登文のあゆみやゆかりの品などを展示していて、激動の時代に起こった出来事や、駆け抜けた偉人たちのことを、登文という人を通してうかがい知ることができ、とても興味深いです。

金沢の武家屋敷の特徴や千田家庭園の見どころなども解説していますので、庭園を見る前にここで予習を。


千田登文や千田家庭園のことを紹介する資料館 千田登文や千田家庭園のことを紹介する資料館


千田家庭園の土塀は江戸時代の状態で残るこの界隈で数少ないもので、とても貴重 千田家庭園の土塀は江戸時代の状態で残るこの界隈で数少ないもので、とても貴重

庭園文化を大切にする金沢の新たな観光名所に


順路に従い、庭園を後にする時に振り返って見る景色。この眺めは延廣さんのお気に入り 順路に従い、庭園を後にする時に振り返って見る景色。この眺めは延廣さんのお気に入り

十三代藩主・前田斉泰(なりやす)に仕えていた登文は、この庭をつくる際、斉泰が現在の形に整えた兼六園の影響を強く受けたそうです。

徽軫灯籠(ことじとうろう)に似せた雪見灯籠、虹橋と同じ金沢で産する赤戸室石の石橋、七福神山、滝など、規模は違いますが、兼六園を凝縮したような魅力を感じます。庭園にはガイドが常駐していますので、そんな説明を聞いたり、質問にもていねいに答えてくださったりと、そのやりとりもまた楽しみです。

庭園には滝の音が響きわたり、時折、野鳥のさえずりも聞こえてきて、ここが繁華街から歩いて数分のところにあることを忘れ、安らぎを感じます。

まだまだ金沢観光の穴場と呼べるこの庭園。金沢にお出かけの際は、立ち寄ってみてはいかがでしょうか?


灯籠や石橋など、作庭の際には兼六園(写真)の影響を強く受けたそう 灯籠や石橋など、作庭の際には兼六園(写真)の影響を強く受けたそう


ガイドの説明を聞く来園者 ガイドの説明を聞く来園者

千田家庭園は「武家屋敷跡 野村家」の隣にあります 千田家庭園は「武家屋敷跡 野村家」の隣にあります


千田家庭園

問い合わせ先 080-8735-9695
時間 9時30分~16時40分(閉園は~17時)
定休日 月・木曜、イベント開催日
交通アクセス 北陸新幹線金沢駅から香林坊方面行きほか北陸鉄道バス約10分の香林坊下車、徒歩約5分
値段 700円
URL https://www.sendake-garden.com

この記事を書いた人

若井憲

神奈川県出身。旅行好きが高じて旅行雑誌を発行する出版社に就職。さらに、観光地に住めば毎日旅行気分に浸れると思って、四半世紀前に家族を連れて金沢に移住。写真を撮って文章を書くフォトライターとして、北陸地方を中心に取材活動を続ける。

https://mameneko.com/editor_works/

  • 記事中の情報は2025年6月時点のものです。
  • 写真はすべてイメージです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。