トレたび JRグループ協力

2018.03.01鉄道飯田線秘境駅号―走っているのはどこ? ひと駅ずつ、その魅力をかみしめて解説(THE列車)

飯田線の秘境7駅で下車見学ができる観光列車

愛知・静岡・長野の3県を走る飯田線沿線には、大自然のなかに人里離れた通称「秘境駅」が点在します。その秘境駅7駅で下車見学を楽しめるのが観光列車、臨時急行「飯田線秘境駅号」です。車両は「ワイドビュー」の373系3両編成を使用。2+2席配置のリクライニングシートと、車端部にグループ・家族旅行に最適な4人用ボックス席があります。

豊橋駅を出発した列車は、最初に特急列車の待避で新城駅に停車。湯谷温泉(ゆやおんせん)駅を通過し、川底が1枚の板を敷いたように見えることから「板敷川」とも呼ばれる宇連川(うれがわ)の美しい流れを車窓に進みます。東栄(とうえい)駅を発車した列車は愛知県から静岡県に入り、天竜川に近づいていきます。城西(しろにし)駅~向市場(むかいちば)駅間では、対岸に渡らない橋として有名な「第六水窪川橋梁」を通過。駅前に天竜川が流れる大嵐(おおぞれ)駅に停車します。

次の小和田駅から千代駅までの間にある7駅が秘境駅です。それぞれで下車見学ができ、6~20分の停車時間が設定されています。ふだんは途中下車すると、次の列車まで2時間以上待つことになりますが、この列車では秘境7駅(小和田駅~千代駅間)を約3時間で楽しむことができます。

鉄道コンシェルジュ ミスターKのとっておき情報

皇太子妃雅子様の旧姓と同じ小和田(こわだ)駅


小和田駅

皇太子妃雅子様の旧姓「小和田(おわだ)」と、駅名「小和田(こわだ)」の漢字が同じだったことから、1993年のご成婚時にはたくさんの人が訪れました。しかし周辺は製茶工場跡や廃車のミゼットなどがあるだけ。まさに“人里離れた”雰囲気が漂っています。駅舎は静岡県ですが、天竜川の対岸は愛知県、上流は長野県で3県の境界に位置しています。

長野県の南端にある中井侍駅と伊那小沢駅


飯田線秘境駅号1

長野県の最南端に位置する中井侍(なかいさむらい)駅。切り立った斜面にあり、ホームの下には『中井侍銘茶』の茶畑が広がります。2017年夏から秘境駅に仲間入りした伊那小沢(いなこざわ)駅はトンネルとトンネルの間に位置し、ここで上下列車がすれ違えるように線路が2本ひいてあります。また駅と天竜川の間には、長野県内で最も早く咲くといわれるカンザクラの並木があり3月にはきれいな花を咲かせます。

平岡ダムの完成で秘境となった為栗(してぐり)駅


飯田線秘境駅号2

平岡ダムの工事によって水位が上昇し、周辺の人家が少なくなったことにより秘境駅となりました。駅からの道は、信濃の橋百選に選定されている天竜橋に続いていて、天竜川を渡ることができます。橋の上からは木々に囲まれた川と為栗駅を望むことができます。また平岡駅~為栗駅間では碧の水をたたえた平岡ダム湖や、羽衣崎橋と山々が織りなす美しい景観を車窓に眺めることができます。

トンネルに挟まれた断崖絶壁の田本(たもと)駅


飯田線秘境駅号3

トンネルに挟まれた断崖絶壁の地に駅舎とホームがあります。ホームから続く急な階段を登るとトンネルの上から駅を一望することができます。また、飯田駅寄りには小さなトンネルが連続していて、トンネル越しにトンネルがある、ちょっと不思議な景色を見ることもできます。ホームの片側はコンクリートの巨大な壁になっていて、上には大きな岩がいまにも落ちてきそうな迫力で鎮座しています。

金運が上がる駅名板の金野(きんの)駅と千代(ちよ)駅


金野駅

駅名板の「金」の文字に触れると、金運が上がるといわれている金野駅。秘境駅としてはめずらしく車で駅前まで入ることができます。次の千代駅は、かつて天竜川で採取した砂利の積み込みが行なわれていて、いまもその跡が残され当時の雰囲気を感じることができます。なお飯田線は天竜川を2回渡りますが、千代駅~天竜峡駅間にはそのうちのひとつ、天竜川橋梁が架かっています。

「飯田線秘境駅号」に乗れるJR東海ツアーズの旅行商品


飯田線秘境駅号4

「飯田線秘境駅号」の旅を楽しめるJR東海ツアーズの日帰り旅行商品が、名古屋駅・豊橋駅発着で発売されています。途中のビューポイントでは列車がゆっくりと走行するので車窓もたのしむことができ、天竜峡の散策では目の前に渓谷美が広がります。車内ではお弁当をはじめとするオリジナルサービスもあり、飯田線の秘境駅を堪能することができます。


列車情報

運転日 春・夏・秋の観光シーズンを中心に運転
運転区間 飯田線 豊橋駅~飯田駅間
運転時刻 【下り】 豊橋駅9:50発 → 飯田駅15:30着
【上り】 飯田駅13:05発 → 豊橋駅17:54着

著者紹介

ミスターK(結解喜幸)

1953年、東京都出身。出版社勤務を経て旅行写真作家に。鉄道や時刻表のたのしさを知り尽くした鉄道の達人。現在は地酒とつまみを追い求める「飲み鉄」にはまっている。

  • 文/ミスターK(結解喜幸)
  • 写真/畑 輝久男
  • 掲載されているデータは2018年3月現在のものです。
  • 運転日・運転区間等は変更となる場合があります。
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