日本三大急流・富士川に名を得し特急列車
静岡駅〜甲府駅間を東海道本線・身延線経由で結ぶ特急「ふじかわ」。それまで運転されていた急行「富士川」を格上げする形で、1995年に運転を開始しました。格上げと同時に、列車名はひらがな表記の「ふじかわ」に。列車名は身延線沿いを流れる一級河川の富士川に由来します。
静岡駅では東海道新幹線に、甲府駅では中央線特急「あずさ」「かいじ」に接続するため、静岡県東部や首都圏から身延線沿線へのアクセス列車としても機能しています。
特急「ふじかわ」はどんな列車?
普通から特急まで幅広い運用をこなす373系
車両は「ふじかわ」の運転開始に合わせて1995年にデビューした373系です。普通列車から特急列車まで幅広い運用に対応する汎用性の高い車両として開発され、スムーズな乗降のためにデッキ部と客室を仕切る扉を省略し、乗降ドアに両開き扉を採用。一方で車内保温対策のため、乗降ドアに押しボタン式の半自動機能を備えています。
必要に応じて6両編成や9両編成に増結することが可能で、「ふじかわ」のほか、飯田線の急行「飯田線秘境駅号」や静岡地区の「ホームライナー」などとしても使用されています。ただし、身延線には6両編成に対応していない駅があるため、「ふじかわ」は常に3両編成で運転されます。
車内
3両編成の「ふじかわ」は、1号車が指定席、2・3号車が自由席。客室内の基本的な設備は各車両共通です。インアームテーブル付きのリクライニングシートが「2+2」配列で設置され、足元には跳ね上げ式のフットレストが備わっています。
身延線内では1号車が甲府寄り、3号車が静岡寄りですが、富士駅で方向転換し、東海道線区間では1号車が静岡寄りになります。
グループ旅行に最適なセミコンパートメント席
2号車と3号車のデッキには4人掛けのセミコンパートメント席が。ボックスの間には大型のテーブルがあり、食べ物や飲み物を広げてゆったりと旅を楽しむことができます。「ふじかわ」の場合、2・3号車は自由席ですが、この区画は一席ずつ指定席として発売されているので、グループ旅行に最適です。
「ふじかわ」はこう楽しむ!
おすすめ沿線スポット 下部温泉
沿線のおすすめスポットの一つが、身延町の下部(しもべ)温泉です。武田信玄の父・武田信虎をはじめ、武田家の公認湯として長い歴史があり、川中島の戦いでは負傷した兵たちが湯治で傷を癒したと伝えられています。下部温泉駅から温泉街の中心までは1kmほどの距離がありますが、駅前にもホテルや日帰り入浴施設があり、武田家ゆかりの温泉を気軽に楽しむことができます。
「ふじかわ早特きっぷ」でお得に乗車
「ふじかわ」で身延線の旅を楽しむなら、乗車日の1日前までに購入することでお得に自由席を利用できる「ふじかわ早特きっぷ」がおすすめです。例えば静岡駅〜甲府駅間は、正規運賃+自由席特急料金では片道4,170円となるところ、同きっぷでは3,470円に。静岡駅〜清水駅間など、短距離区間でも設定があります。
- ※毎年4月27日~5月6日、8月10日~8月19日、12月28日~翌年1月6日の特定期間は利用できません。
「幻のヘッドマーク」
優等列車のシンボルでもあるヘッドマーク。LED表示装置の普及などによって全国的に数が少なくなっていますが、373系は車両前面に従来の幕式ヘッドマーク表示器を備えています。「ふじかわ」では通常、川の流れをイメージしたような水色のマークを掲げていますが、実はもう一つ、関係者やファンから「幻のヘッドマーク」と呼ばれるヘッドマークが存在します。それは、JR東海のコーポレートカラーのオレンジ色の背景に、沿線のシンボルでもある富士山を描いたもの。
一部のイベント列車などで掲出されるレアな存在で、見ることができればラッキーです。
列車情報
運転日 | 毎日 |
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運転区間 | 静岡駅〜甲府駅(東海道線、身延線経由) |
運転時刻 |
【1号】静岡駅8:17発→甲府駅10:31着 【13号】静岡駅19:45発→甲府駅22:06着 【2号】甲府駅6:20発→静岡駅8:42着 【14号】甲府駅18:36発→静岡駅21:00着 ※1日7往復 |
著者紹介
- ※文/佐藤正晃
- ※写真/JR東海、(株)交通新聞クリエイト
- ※掲載されているデータは2025年8月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください