吉野川に沿って徳島県を横断
「剣山」は徳島駅〜阿波池田駅を走り、徳島県の東西を結ぶ徳島線の特急列車。その列車名は県内最高峰で四国内でも2番目の標高を誇る「剣山」に由来します。1996年の運転開始から車両は国鉄型のキハ185系が一貫して使用されています。
現在は徳島駅発(下り)が1日4本、阿波池田駅発(上り)が3本運転されており、阿波池田駅では土讃線の特急「南風」や「しまんと」と接続しています。
「剣山」はどんな列車?
国鉄型の特急用気動車が活躍
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
キハ185系は、JR発足を約半年後に控えた1986年11月に登場した四国向けの国鉄型特急用気動車です。当時の特急用車両は主に鋼鉄で作られていましたが、キハ185系は特急用車両として初めてステンレス車体が採用されました。これにより、軽量化による省エネを実現しただけでなく、保守性も向上しました。
需要に合わせて最短2両編成で運用できるのが特長で、「剣山」は2両~4両編成で運転されています。
複数のカラーバリエーション
キハ185系のカラーリングは複数のバリエーションが存在し、JR四国のコーポレートカラーである水色の太帯と藍色の細帯があしらわれた「剣山色」や、水色帯の「四国色」、緑色帯の「復刻国鉄色」の車両などが使用されます。
シンプルで無駄のない客室
客室は徳島寄りの1号車の半分が指定席、1号車のもう半分とその他の号車が自由席です。いずれもリクライニングシートが2席+2席で配置されており、指定席には青色の、自由席には白色のヘッドレストリネンが掛けられています。
ちなみに運転台は半室構造で、車掌台側は開放的な作り。先頭側デッキと客室の仕切りに窓が設けられているため、最前列の右側座席では座ったまま前面展望を楽しむことができます。
「ゆうゆうアンパンマンカー」
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
下り「剣山1号・3号」と上り「剣山4号・6号」は土休日や夏・冬休みなどに、2号車として「ゆうゆうアンパンマンカー」が連結されます。
客室の半分は子どもたちが靴を脱いで遊べる「プレイルーム」、もう半分は壁や天井、座席にまでアンパンマンの仲間たちが描かれた「アンパンマンシート」(全席指定席)となっています。
車内にはアンパンマンの作者であるやなせたかしさんの直筆サインも。ぜひ乗って探してみてください。
「剣山」はこう楽しむ!
車窓から雄大な吉野川の流れを楽しむ
徳島線は四国を代表する一級河川・吉野川に沿うように走り、「よしの川ブルーライン」の愛称が付けられています。
線路は常に吉野川の南側を走るので、車窓から川の流れを眺めるなら、徳島駅発の列車では進行方向右側、阿波池田駅発では左側の窓側席に座るのがおすすめです。
藍商たちの商家が残る「うだつの町並み」(穴吹駅)
穴吹駅から車で約10分、徳島県美馬市脇町は、江戸中期~昭和初期の「うだつの町並み」が残ることで知られています。吉野川の流域は古くから阿波藍の生産が盛んで、水運に恵まれた脇町は藍の集散地として栄えました。立ち並ぶ歴史的な家々は藍で財を成した豪商たちが築いたもの。その町並みは約430mにわたり、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
ちなみに「うだつ」とは、火事が起きたときに隣家への延焼を防ぐために作られた防火壁のこと。設置には多額の費用がかかったといい、そこから「うだつが上がらない」という慣用句が生まれています。
列車情報
運転日 | 毎日運転 |
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運転区間 | 高徳線、徳島線、土讃線 徳島駅〜阿波池田駅間 |
運転時刻 |
【1号】徳島駅9:00発→阿波池田駅10:45着 【7号】徳島駅20:17発→阿波池田駅21:35着 【2号】阿波池田駅6:46発→徳島駅8:03着 【6号】阿波池田駅14:30発→徳島駅15:51着 |
備考 | ※始発・最終列車の時刻を掲載。 |
著者紹介
- ※文/佐藤正晃
- ※写真/JR四国・交通新聞クリエイト・徳島県・(一財)徳島県観光協会
- ※掲載されているデータは2025年3月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください