トレたび JRグループ協力

2026.03.02鉄道室蘭本線(JR北海道)北海道の鉄道の歴史と今を体感できる路線

有名な駅弁を食べながら乗りたい室蘭本線(JR北海道)

日本全国津々浦々をつなぐ鉄道路線。
そんな日本の鉄道路線は、150年以上の歴史を持ちます。

日常の一部でもある鉄道路線は地域と密接に関わり、さまざまな歴史とともに走ってきました。
通勤・通学で使用するなじみのある路線にも、思いがけない歴史があるかもしれません。
旅の目的地へ連れて行ってくれる路線には、見逃せない車窓が待っています。
さあ、鉄道路線の歴史の風を感じてみませんか?

今回は函館と札幌を結び、明治期からの長い歴史を持つ路線・室蘭本線をご紹介します。

室蘭本線の歴史

函館と札幌を結ぶメインルート

北海道と本州を、あるいは函館と札幌を結ぶ大動脈であると同時に、北海道らしい車窓風景と歴史を体感できる路線。長万部駅と岩見沢駅および室蘭駅と東室蘭駅を結ぶ室蘭本線は、そんなマルチな性格を備えた路線です。全長は室蘭支線を含めて218.0km。同じ路線でも、区間によって大きく異なる雰囲気を味わえます。

函館〜札幌間には、倶知安駅や小樽駅を経由する「山線」(函館本線)と、登別駅や苫小牧駅を経由する「海線」(室蘭本線・千歳線)のふたつのルートがあります。距離が短いのは山線ですが、直通列車のほぼすべてが経由するのは海線です。内浦湾と太平洋の海岸に沿ったルートのため急勾配が少なく、より速く、より多くの物資を輸送できるからです。現在の室蘭本線には、特急列車のほか貨物列車も1日20往復前後が運転されています。将来、北海道新幹線が札幌まで開業しても、物流ルートとしての立場はほとんど変わらないものと思われます。


室蘭駅3代目駅舎。現在は観光案内所として保存(1988年8月撮影)

そんな室蘭本線は、最初から函館〜札幌間を結ぶ鉄道として建設されたわけではありません。そのルーツは1892(明治25)年に室蘭駅(初代:現在の輪西駅付近)〜岩見沢駅間が開業した北海道炭礦鉄道にさかのぼります。幌内など岩見沢周辺の石狩炭田で産出した石炭を、室蘭港に輸送する鉄道として建設されました。日露戦争後の1906(明治39)年に同鉄道は国有化され、1909(明治42)年に室蘭本線と名づけられました。
大正時代に入ると、室蘭本線を函館本線に接続するべく、長万部駅〜輪西駅(東輪西駅を経て現在は東室蘭駅)間を結ぶ「長輪線」の建設が始まります。1923(大正12)年の長万部〜静狩間開業を皮切りに両側から建設が進められ、1928(昭和3)年9月10日に長万部駅〜東輪西駅間が全通。函館駅〜稚内駅間を直通する急行列車が新設されます。1931(昭和6)年には長輪線が室蘭本線に編入され、現在の形となりました。


長万部駅(2018年栗原景撮影)

戦時中の1943(昭和18)年に北海道鉄道札幌線が国有化されて千歳線となり、海線のルートが完成。しかし戦後もしばらくの間、函館駅〜札幌駅間のメインルートは山線でした。
状況が変わるのは、1961(昭和36)年10月のダイヤ改正です。函館駅〜札幌駅〜旭川駅間に北海道初の特急列車〔おおぞら〕が登場し、室蘭本線経由で運転されたのです。このダイヤ改正から、道南〜道央間の優等列車は海線がメインルートとなり、山線は次第に海線の輸送力を補完する位置づけとなっていきました。1965(昭和40)年には、今も室蘭本線を走る特急〔北斗〕が登場。室蘭本線は道内屈指の特急・急行街道となります。
1980(昭和55)年、室蘭駅〜沼ノ端駅間の電化が完成した一方、沼ノ端〜岩見沢間は炭鉱の閉山により石炭輸送がなくなり、普通列車による地域輸送が主体となりました。

室蘭本線の車両

気動車と電車特急が行き交う


長万部駅付近を走る特急〔北斗〕(2018年栗原景撮影)

室蘭本線には、函館駅〜札幌駅間の特急〔北斗〕11往復と、室蘭・東室蘭駅〜札幌駅間の特急〔すずらん〕6往復が運転されています。
〔北斗〕に使用されている特急型気動車が、キハ261系1000番代です。宗谷本線に投入された0番代の増備車として2006年に登場した車両で、出力460PS/2100rpmという強力なエンジンを1両に2台搭載しています。当初は帯広・釧路方面の〔とかち〕〔おおぞら〕に投入されましたが、北海道新幹線が開業した2016年3月改正から当時の速達便である〔スーパー北斗〕に投入。2022年から〔北斗〕全列車が261系1000番代となりました。座席は登場時からグレードアップされており、座席幅が広くなり可動式枕を備えた背もたれも大型化されてグリーン車に迫る居住性を備えます。グリーン車は一層ゆったりした3列シートで、製造時期によって本革シートの車両と平織布シートの車両があります。本革シート車は壁側に、平織布シート車はすべての座席のひじ掛けにコンセントを備えています。


今ではレアな存在となった785系で走る特急〔すずらん〕(2008年8月撮影)

〔すずらん〕には、785系及び789系1000番代電車が使用されています。785系は1990年登場と、30年以上にわたって活躍している車両。789系1000番代は2007年に登場した車両です。どちらも5両編成、普通車のみの編成で、全車指定席となっています。ねらい目は4号車のuシート。4号車のみ座席のグレードが高くなっており、大型のヘッドレストを備え、座席背面にコンセントが装備されています。共通運用のため、どちらの車両がどの列車に充当されるかを事前に知ることはできませんが、785系は引退が進んでおり、今では2本を残すのみ。より新しい789系と、レア化した785系、どちらも魅力があります。


キハ150形(2015年6月撮影)

長万部〜東室蘭間の普通列車は、原則としてH100形。函館本線や石北本線、宗谷本線など、多くの路線で使用され、現在では北海道の標準型気動車と言える存在になった車両です。JR東日本のGV-E400系をベースとした電気式気動車で、電車に迫る軽快な走りを楽しめます。また糸井・苫小牧駅〜岩見沢駅間では1993年登場のキハ150形が使用されています。客席は、どちらも客室中央は1+2列のボックスシート、ドア付近はロングシートのセミクロスシートとなっており、ボックスシートに座れば車窓風景を快適に楽しめます。
電化区間である室蘭駅〜苫小牧駅間は、737系電車が使用されています。こちらはオールロングシートですが、1人分のスペースが460mmとゆったりしており、車いすや大型荷物用のフリースペースも備えています。このほか、事実上千歳線の列車ではありますが、苫小牧駅〜沼ノ端駅間は721系・731系・733系・735系といった通勤型電車も走っています。

室蘭本線の見どころ

内浦湾の車窓風景を楽しめる 長万部駅〜東室蘭駅間


長万部駅名物「かにめし」(2022年栗原景撮影)

温泉と駅弁「かにめし」で有名な長万部駅から、室蘭本線の旅に出発します。座席は、進行方向左側なら海を、右側なら山の景色を楽しめるので、どちらでも好きな方を選んでください。特急なら、原則としてA席が山側、D席が海側。ただし〔北斗〕の札幌方先頭車と、〔すずらん〕の室蘭方先頭車は逆となります。


「日本一の秘境駅」として名高い小幌駅(2018年栗原景撮影)

長万部駅を発車するとすぐに函館本線(山線)と別れ、右に内浦湾(噴火湾)をちらりと眺めながら原野を北東へ進みます。左手に見えるのは、建設中の北海道新幹線の高架線。最初の駅、静狩駅を過ぎると海岸まで山地が迫る険しい地形となり、トンネルが連続する区間に入ります。静狩駅から3つのトンネルを抜けたところが、「日本一の秘境駅」として名高い小幌駅。前後をトンネルに挟まれたわずか100mほどの空間で、北側を急斜面、南側を原野と海岸に阻まれ、外界からほとんど隔絶された場所にあります。元は保線作業の基地があった信号場で、ここで生活する漁師がいたことから乗客の取り扱いを始めたと言われています。一時は廃止も検討されましたが、地元自治体が維持費を負担することで存続しました。
礼文駅の先から内浦湾の海岸に出ますが、洞爺湖温泉の玄関・洞爺駅まではトンネルが続きます。洞爺駅で前方に見えてくるのは有珠山。長和駅付近では左手に、現在も火山活動が続く昭和新山がちらりと見えます。
かつて国鉄胆振線が分岐していた伊達紋別駅からは、また右手に内浦湾が迫ります。海岸に位置する北舟岡駅の前後は最も内浦湾に近づく区間で、空気の澄んだ日なら、海の向こうに北海道駒ヶ岳も見えるでしょう。夕陽が美しいのもこのあたりです。
海岸沿いの区間は黄金駅で終わり、室蘭岳(鷲別岳)の尾根をトンネルで抜けると右手に製鉄所が近づき、室蘭駅からの支線が合流して東室蘭駅に到着。ここからは電化区間となります。

母恋駅には貴重な駅弁販売も 室蘭駅〜苫小牧間


車窓から見える樽前山(2012年栗原景撮影)

東室蘭駅〜室蘭駅間は7.0kmの支線です。終着駅ひとつ手前の母恋駅は木造駅舎の小さな駅ですが、駅弁の「母恋めし」が有名。ホッキ貝の炊き込みごはんを使ったおにぎりや、薫製卵が入った素朴なお弁当です。
室蘭駅は、1997年に現在の場所に移転した4代目の駅で、青森へのフェリー乗り場が徒歩圏内。500mほど歩いた所には、1912(明治45)年建築の3代目駅舎が保存され、観光案内所として活用されています。
さて、東室蘭駅からは太平洋に沿って東へ進みますが、海岸から少し離れた所を走る区間が多く、海はそれほど見えません。登別温泉の玄関である登別駅、アイヌ民族文化の伝承施設がある白老駅を過ぎると、左手に見えてくる立派な山は、樽前山。錦岡駅付近から苫小牧市の市街地に入り、右手に巨大な製紙工場が現れると苫小牧駅に到着です。

石炭輸送の名残を残す 苫小牧駅〜岩見沢駅間

千歳・札幌方面への列車は次の沼ノ端駅から千歳線に入り、岩見沢駅へ向かう室蘭本線はここから再び非電化区間。長万部方面からの直通列車はほとんどなく、普通列車だけが行き交うローカル線となります。
沼ノ端駅を発車すると、すぐに右に分岐する線路は千歳線の下り線。室蘭本線は千歳線の上り線とともに、広大な原野を北東へ一直線に進みます。2kmほど走ったところでようやく千歳線が左へ分岐。先ほど別れた上り線と立体交差します。人工建造物はほとんどなく、北海道らしい風景を楽しめる区間です。
線路にも注目しましょう。苫小牧駅〜岩見沢駅間は1日7〜8往復しか列車がありませんが、苫小牧駅〜三川駅間と由仁駅〜栗山駅間は今も複線区間で、石炭を満載した貨物列車がひっきりなしに行き交った時代の名残を留(とど)めています。石勝線の乗り換え駅である追分駅を過ぎ、列車は石狩平野と夕張山地の境界付近を北上します。
最後の停車駅・志文駅の先で列車は左にカーブしますが、ここから岩見沢駅までは1994年に線路が付け替えられた区間。岩見沢市の都市開発のため、休止状態だった貨物線を復活させたものです。旧線よりも1.7kmも遠回りして函館本線に合流し、かつての操車場跡を過ぎると、終着・岩見沢駅に到着します。
特急・貨物列車街道であると同時に、石炭輸送華やかなりし時代の面影を留(とど)め、また非常に珍しい秘境駅も擁する室蘭本線は、北海道の鉄道の歴史と今を体感できる路線です。特急で通過するだけでなく、普通列車でゆっくり訪れてみることをおすすめします。


室蘭本線(JR北海道)データ

起点   : 長万部駅
終点   : 岩見沢駅
駅数   : 47
路線距離 : 218.0km(長万部〜岩見沢 211.0km、室蘭〜東室蘭 7.0km)
開業   : 1892(明治25)年(室蘭〜岩見沢間)
全通   : 1928(昭和3)年9月10日
使用車両 : キハ261系1000番代、785系、789系1000番代、737系、H100形、キハ150形
       ※苫小牧〜沼ノ端間のみの車両は省略


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。
小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。
東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。

主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「鉄道へぇ~事典」(交通新聞社)、「国鉄時代の貨物列車を知ろう」(実業之日本社)ほか。

  • 写真/栗原景,交通新聞クリエイト
  • 掲載されているデータは2026年2月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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