トレたび JRグループ協力

2020.07.15鉄道新しい旅を作る『復刻版ニューレールマップ』の奥深き世界

楽しみ方無限大の“線路の地図”

このたび、交通新聞社から『ニューレールマップ』が復刻されました。約30年前に発行されたもので、ちょうど国鉄からJRへ変わる頃。激動の時代の線路の様子が、見事に描かれています。

ぱっと見、いわゆる路線図に見えるのですが、普通に目にする路線図にはない情報が満載。それゆえ、これまでにない楽しみ方ができるのです。ここでは、その一端をご紹介します。一度ハマったら、出られなくなるかも…?!

そもそもレールマップとは?

読んで字のごとく、“線路の地図”です。私たちが道案内するときに使う地図と基本は同じもの。最近では、カーナビの地図などが馴染み深いでしょう。
ただし、鉄道は車には無い大きな違いがあります。レール上“のみ”を走ることです。そのため、必要があって列車を走らせるところには、すべてレールを敷きます。町と町を結ぶだけではなく、追い越し、留置、後進のための線路、あるいは車ほど勾配に強くないですから、坂を上るための線路なども敷設されます。
レールマップには、こうした線路がすべて描かれています。黒い線がひとつの線路、青い四角がホームの形です。鉄道の特性が抽象化された究極の地図、と言ってもいいでしょう。
こうした鉄道の特性とその地域のありようを重ね合わせて、そこに線路が敷かれた理由を探るのが、ニューレールマップの楽しみ方のひとつです。

楽しみ方

初級 今と見比べる

基本的な見方です。まずは身近な駅がいいでしょう。ホームが無かったり、引き込み線が無かったり、新たに待避線ができているかもしれません。よーく観察して、変わっているところを探しましょう。そして、もし変わっているところを見つけたら、その理由を探りましょう。鉄道の世界のみならず、地域史解明の手掛かりに広がるかもしれません。


地上時代の奈良駅 1973.4.16 地上時代の奈良駅 1973.4.16


高架となった奈良駅 2010.5.15 高架となった奈良駅 2010.5.15

たくさんの渡り線や引き込み線が描かれた奈良駅。平成22年にすべての鉄道機能が高架化されているので、ニューレールマップに描かれた奈良駅は、地上時代のものと推定でき、現在と比べてみると、線路の数やホームの形が全く違うことが分かります。


初級:奈良駅 初級:奈良駅

とくに都市部の駅で、こうした違いが見られる場合、「高架化」が理由であることがあります。ところで、なぜ駅の高架化が進められるのでしょうか? その駅がある地域社会とのかかわりをヒントに、仮説を組み立ててみましょう。

中級 旅先で見比べる

旅先で下車した駅で、レールマップを見てみましょう。線路やホームに違いはあるでしょうか? 旅先の駅は、身近ではありませんから、その地域のことを少しでも知っておくことが、大きな手掛かりになります。
さらに、旅先では駅間、つまり、車窓との見比べも楽しみ方に加わります。どこで、どのように線路が分岐していますか? それは、貨物列車しか走らない線路かもしれません。また、反対の見方もできます。レールマップには線路があるのに今は無かった場合、どこかに、線路跡のような空き地はありませんでしたか? 観察力、洞察力を磨くテキストとしても、レールマップはおススメです。


国鉄時代の中央本線初狩駅 1971.5.19 国鉄時代の中央本線初狩駅 1971.5.19

列車が坂を上るために、スイッチバック方式で敷設した箇所が全国にあります。中央本線初狩駅もそのひとつで、レールマップにも、たくさんの引き込み線が描かれています。


中級:中央本線初狩駅 中級:中央本線初狩駅

でも、現在では旅客列車のスイッチバックは行われていません。車窓から、これらの引き込み線がどのように見えるでしょうか? あるいは、少し時間を取って、下車して散策しながら確かめるのもいいでしょう。

上級 架空探訪

最後は上級編です。どこにも行かず、自宅で架空の調査をするのです。ここでは、先ほどの鉄道の特性はもちろん、その路線の歴史、建設理由、沿線地域の産業、経済など、あらゆる知識を集め、その線路の理由を探っていきましょう。基本的な進め方としては、

①    自分の興味がある路線を決める
②    その路線の建設理由を調べる
③    ニューレールマップと照合し、その沿線のスケール(複線や単線、引き込み線の数等)を把握する。そして線路のひとつひとつが何に使われたのか? の仮説を立てる
④    沿線地域との関係を調べ、仮説を検証する

です。最近ではインターネットなどで調べられるものもありますから、意外と簡単に仮説が立てられるかもしれません。
でも、ここまで調べると、やはりその土地に行って、自分の目で確かめたくなってしまうものです。そこで、次は、自分の仮説を証明する旅へ出ましょう。机上の風景と実際の風景は、まったく違います。とくに地形との関係は、実際にその地に立ってみてこそ、実感として分かるものですから、旅の充実感もひときわ印象深いものになります。
このように、ニューレールマップを使うと、旅が何倍にも膨らみます。次の新しい旅のアイテムとして、いかがでしょうか。


幌内線幌内駅 石炭列車お別れ式1987.6.19 幌内線幌内駅 石炭列車お別れ式1987.6.19

歌志内線や上砂川駅など、レールマップには現在の時刻表には無い路線や駅も。なぜ、ここに鉄道が敷かれたのでしょうか? 


上級:幌内線・歌志内線・上砂川駅 上級:幌内線・歌志内線・上砂川駅

じつは、幌内線の生い立ちは、なんと北海道の鉄道創成期にまで遡ります。幾春別、三笠、幌内の地名と、それらを結ぶ線路に秘められた歴史とは? 日本の近代史につながる壮大なテーマです。

新しい旅のお供に!

いかがでしょうか?
ここに紹介した楽しみ方は、ほんの一部にすぎません。見る人それぞれ見方が違うのも特徴のひとつで、中には眺めているだけて一日経ってしまうという方もいらっしゃるほどです。
奥が深い『ニューレールマップ』。皆さんの旅の、新しいお供にいかがでしょうか?


復刻版ニューレールマップ8巻セット

限定3,000セット。全国の書店にて、発売中! 

発売日:2020年6月30日
ISBN:978‐4‐330‐05820‐7
定価:本体5,400円+税
サイズ:B5変型判
小冊子(シリアルナンバー入り)・特製ケース付き


詳細・ご購入はこちら

トレたび公式SNS
  • X
  • Fasebook