これだけは押さえたい、鉄道写真の基本とマナー
絶景の中を走る列車に出会うと、思わずカメラを向けたくなるもの。鉄道写真の魅力は、列車だけでなく、その土地の風景や旅の思い出まで一緒に残せることにあります。
一方で近年は、撮影時のマナーや安全面が課題になる場面も少なくありません。せっかくの旅や撮影を気持ちよく楽しむためにも、「いい写真」と「安全・マナー」はどちらも大切にしたいものです。
この連載では、全国の魅力あふれる沿線を舞台に、撮影地の見どころや構図づくりのコツをプロの視点で解説。絶景を追いかけ、旅を楽しみながら写真を撮るうちに、より良い一枚につながるテクニックやマナーにも自然と目が向く。そんな撮影の楽しみ方を、鉄道写真家・村上悠太さんが紹介します。
連載第1回は、雄大な風景のもとを走る富良野線(JR北海道)。四季を通して、日本のみならず世界中から観光客が訪れ、思わず「これぞ北海道!」と口にしてしまうような風景が沿線全域に広がっています。さらに2026年9月23日にラストランを迎える、「富良野・美瑛ノロッコ号」にも大注目です。
どうやって向かう? 富良野線
遠方から訪れるなら、新千歳空港経由もおすすめ
さて、見どころの多い富良野線ですが、せっかく撮影するのであれば、富良野や美瑛らしい風景とともに撮影できる場所に向かいたいところ。
富良野線は駅間が長く、撮影スポットまで徒歩移動はなかなか難しいので、今回はJR旭川駅からレンタカーを使って巡ることにしましょう。東京など遠方から向かう場合、富良野線自体は旭川空港が近いものの、航空機の便数が限られているのと、人気観光地がたくさんあるため、連休などのハイシーズンはチケットも高騰しがち。
そんなときは、日本各地からの便も多く、またLCCなどもたくさん就航している新千歳空港から札幌に入り、そこから快速「エアポート」と特急「ライラック」「カムイ」を乗り継いで旭川に向かうのも旅行プランとしておすすめです。こうすることで富良野線撮影の前後に、札幌観光や車窓から見える北海道を楽しむことも可能です。
札幌〜旭川駅間を結ぶ特急「ライラック」。2026年春より全席指定に
美瑛らしい「丘」の風景とノロッコ号を撮る!
旭川駅から美瑛エリアまではレンタカーで約40分程度。夏季などのハイシーズンは国道が混雑するのでもう少しゆとりを見ておきましょう。今回、僕が訪れたのは美瑛〜美馬牛間にある、丘の中に富良野線が見えるスポット。一見、線路がどこにあるかわかりづらいので、余裕を持って現地に向かい、本命の列車の前にほかの列車で線路の位置や構図を確認しておくのが吉!
美瑛らしい丘の風景をゆく「富良野・美瑛ノロッコ号」。構図の中心よりも若干上に列車が来るようにフレーミングするのがコツ
今回、狙ってみたのは2026年9月に引退が迫る「富良野・美瑛ノロッコ号」。この撮影地は西に向いて撮影することから、午前中にきれいに太陽があたる「順光」という状態になります。そのため、メインに狙ったのは順光の時間帯に通過する「富良野・美瑛ノロッコ」1号です。
なお、富良野線の普通列車は現在、H100形を中心とするワンマン運転。さらに2027年6月上旬から9月下旬にかけては、JR北海道の「スタートレイン計画」による新たな観光列車「青い星」の運行も予定されています。ノロッコ号の撮影に間に合わない方も、富良野線に登場する新たな観光列車に注目です!
「列車どこ?」にご用心!
さて、鉄道写真の中でも人気の高い周囲の風景とともに撮影する鉄道風景写真のジャンル。ここでいくつか押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
まず、一番大切なのが列車の存在感です。雄大な風景を目の当たりにすると思わず感動してしまい、広々とフレーミングしがちです。今回も快晴だったこともあり、ノロッコ号の合間にやってくる普通列車を、より広い画角で撮影できる広角レンズを使って撮影してみました。
雲が流れてきたので広々した構図で撮影。でも列車がどこにいるか時間をかけて探さないといけないほど小さくなってしまった
風景はより伸びやかに撮影できましたが、肝心の列車がどこにいるかがわからなくなってしまいました。鉄道写真の表現の中には列車をあえてボカしたり、ブラしたりして個性的な表現をすることもありますが、撮影した本人以外に列車が写っていることが認識できないと、「伝わらない写真」になってしまいます。撮影した本人が思っている以上に鑑賞者は鉄道車両がわかりづらいので、“やり過ぎ”には要注意です!
「PLフィルター」でクリアな描写を
また、風景的な写真ではレンズに取り付けるアクセサリーのひとつである、「PLフィルター」もおすすめ。このフィルターは空気中の光の乱反射を整えてくれる効果があり、青空や山、木々の緑などをクリアに描写してくれます。ただ、全体的に彩度(色の鮮やかさ)が上がるので、鮮やかになりすぎないように気をつけたいところです。
周囲の環境や駐車位置に思いやりを
さて、今回はレンタカーを使用した移動となりました。そうなると必然的に気をつけたいのが車の駐車位置です。撮影地の多くは幹線道路ではなく、一見、車の往来がなく「ちょっとなら路上に駐車しても大丈夫だろう」と思いがちです。しかし、周囲は畑が多く、乗用車より大きな農業用車が来ることも多いほか、坂道やカーブなども多く、予想以上に見通しが効かないことも。
安全に車を停めておける場所から自身が撮影したいスポットまでしばし歩かないといけないケースも多いのですが、せっかく北海道に来たのですから、こうした時間も楽しみましょう!
また、先述のとおり、周囲は農地ということもあり、無断で入るのはマナーの観点のみではなく、絶対に避けなければならないことの一つ。それは靴の裏などに予期せぬ病害虫が付着している場合、農家さんが丹精込めて育てた農作物が一気にだめになってしまうことにもつながるからです。
美瑛エリアではこうした看板があるので見かけたらその場でSTOP!
さらに、美瑛エリアには鉄道と風景を一緒に楽しめる人気のビュースポットも点在していますが、撮影に夢中になるあまりルールを見落とさないよう注意が必要です。例えば、撮影スポットとして知られる踏切であっても、列車が接近していないからといって踏切内に立ち止まることはできません。踏切は開いている状態でも滞留してはいけない場所。安全のためにも、撮影は踏切の外から余裕を持って行いましょう。
ビュースポットとして有名な踏切
踏切内での滞留はNG。安全のためにも外から余裕を持って撮影したい
撮影+αでとっておきの旅を!
撮影を楽しんだあとはせっかくなので富良野線に乗車してみるのはいかがでしょう? 美瑛町はパーク・アンド・ライドを推奨しており、美瑛駅の近くに無料の公営駐車場が整備されています。2026年9月23日までの土休日には、引退迫る「富良野・美瑛ノロッコ号」も運行中! ノロッコ号は全席指定ですが、「えきねっと」を利用すれば指定席をチケットレスで乗車可能です(乗車券は別途必要)。
富良野・美瑛ノロッコ号
ノロッコ号の魅力はやっぱり乗ってこそ!北海道の風に吹かれよう!
旅の途中で味わいたい、立ち寄りグルメ
絶景を眺めながら味わうソフトクリームは格別
撮影地の周囲は北海道を代表する観光地ということで見どころたくさん! なかでも「新栄の丘」は絶景スポットのひとつで、トイレも完備。オンシーズンには売店もオープンし美瑛特産の牛乳を使ったソフトクリームは必食の一品。
「蝦夷わっぱ ミックス」と北海道限定ブランドの緑茶
また、旭川駅には旭川駅立売商会の北海道らしい駅弁が発売中。中でも僕のいちおしは旭川駅名物「蝦夷わっぱ ミックス」! 酢飯の上に、かに・いくら・サーモンなどが彩り豊かに並んだ名物駅弁で、旭川駅に行く楽しみのひとつです。
なお、旭川駅売店では駅弁の取置きも可能。申し込みは前日の12時まで可能で、電話番号0120-323-190(月〜金 9時〜12時)で申し込みできます(日祝、大型連休時を除く)。
- ※ 5個以上のお取り置きの場合はお受け取りの1週間前まで
- ※ お弁当の種類、数量によりお受けできない場合がございます。
- ※ お引き渡し可能時間 9時~17時30分
いい写真は、思いやりから生まれる
あたり一帯がどこでも撮影地になりそうな富良野線。人気の観光地ということもあり、カメラを持った方だけでなく、あらゆる人のマナーが問われている場所でもあります。良い写真と良い旅の思い出は、心のゆとりと思いやりからきっと生まれるはず。
みなさんもぜひ良い旅を!
著者紹介
富良野線の車両と歴史、見どころをもっとくわしく!
- ※取材・撮影・文=村上悠太
- ※掲載されているデータは2026年8月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。



