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2020.12.07鉄道【乗車体験レポート】飯田線「10周年秘境駅号」で秘境駅を堪能する旅

鉄道ファンに大人気の飯田線秘境駅号

周辺に人の暮らしの気配がなく、立地的にも鉄道以外で訪ねることが難しい「秘境駅」。ノスタルジーやロマンを感じられる愛すべき駅の総称として、多くの人に知られています。そんな秘境駅が飯田線には多く存在することから、2010年4月に団体臨時列車「魅惑の飯田線秘境駅号」として豊橋駅~天竜峡駅間で運転を開始。その後、同年8月から「飯田線秘境駅号」の名称で、春や秋の行楽シーズンを中心に運転を行なってきました。アクセスが難しい秘境駅を一度に訪ねることができるため、鉄道ファンらの間で話題を呼び、たちまち人気列車となりました。2019年5月には、外国人が国際的な視点で“クール”と感じたものを評価する「COOL JAPAN AWARD 2019」を受賞しています。

10周年記念号が運転!

JR東海は11月13~15日と21~22日、同線で「10周年飯田線秘境駅号」を運転しました。飯田線の秘境駅を一度に楽しめる観光列車・急行「飯田線秘境駅号」が運転開始から10周年を迎えたのを記念したもので、当初はこの春の運転予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で運休となっていました。再開を待ちわびたファンとともに13日の駒ケ根駅発 豊橋駅行きの全区間に乗車。約6時間にわたる飯田線の旅を楽しんできました。

秘境駅をめぐる旅のスタート

10周年を記念した秘境駅号には、飯田線の特急「(ワイドビュー)伊那路」にも使用されている373系3両編成が使用されました。上りは13~15日が駒ケ根駅~豊橋駅間、21、22日が飯田駅~豊橋駅間、下りは全日、豊橋駅~飯田駅間で運転されました。

駒ケ根の名物「ソースカツ丼」を食べ終え、駅に向かうとすでに列車が入線していました。先頭部分には紅葉をバックに秘境駅にたたずむ列車をデザインした特製ヘッドマークが掲げられていました。


駒ケ根駅で出発を待つ「10周年飯田線秘境駅号」

このヘッドマークは飯田線の駅員、乗務員、保線などを担当する工務系社員からデザインを募り、職場ごとに選ばれた複数の案から投票で決まったそうです。秘境駅にたたずむ列車、映えます!

11時47分、地元のゆるキャラなどに見送られ、満席となった列車は豊橋駅に向けて走り出しました。豊橋駅到着は17時54分。約6時間の旅のスタートです。


自治体職員とゆるキャラに見守られながら駒ケ根駅を出発

早速放送が入り、車窓に関する案内が流れます。「まずは皆さま、両側左右に見えるアルプスの山々をご覧ください。進行右側が中央アルプスです。そして、左側が南アルプスで日本で2番目に標高の高い北岳もご覧いただけます。」2つのアルプスに挟まれながら走る路線も、日本ではここだけだといいます。そして、「秘境駅をはじめ、アルプスや天竜川、沿線の秋の景色など、今だけここだけあなただけの車窓をどうぞごゆっくりお楽しみ下さい。この先、私どもは車内放送でしゃべり倒していきますので、ずっと、いえ、沢山、いえ、しばしば、いや、ほんの少しだけでも、お耳を傾けて頂ければうれしい限りでございます。」とのこと。この先どんな車内放送が待っているのでしょう。期待に胸が膨らみます。


駅に停車するたびに特製のフォトスポット用ボードが掲げられました

アルプスの山々や田園風景を楽しんでいると最初の停車駅である伊那田島駅(鉄道愛好家の牛山隆信さん作成の秘境駅ランキング200位)に到着しました。駅の開業は1920年11月22日とちょうど100歳を迎えた伊那田島駅。駅名板には「百寿」の装飾が施されていました。駅の周囲には果樹園が広がっており、そんな土地柄、リンゴのプレゼントがありました。ただ、周辺には道路もあるため、秘境感はあまりありなく、今後は果樹園のある駅として人気を集めるかもしれません。


最初の停車駅・伊那田島駅。100周年を記念し駅名板には装飾が!


伊那田島駅の周囲が果樹園ということもありリンゴが配られました

飯田駅で10周年を祝う式典が開催


飯田駅では停車時間を活用して式典が行なわれました。JR東海の制服を身にまとった峰さんは貴重です

12時47分、飯田駅に到着です。ホームでは26分の停車時間を活用して10周年を祝う式典が開かれました。長野県下條村出身で長野県永久観光大使のタレント・峰竜太さん、大坂勝典駅長らが出席したほか、長野県のアルクマ、飯田市のぽぉ、高森町の柿丸くん、JR東海のあゆむくんなどのキャラクターもお祝いに駆け付けました。「高校時代の3年間、飯田線を使わせてもらったが当時は景色の良さに気づかず、東京に出てからその素晴らしさに気づきました。今の時期は特に美しい景色が広がっているので楽しんでほしい。そして秘境駅号をぜひ毎日走らせてほしい」という峰さんのあいさつが印象的でした。

秘境駅エリアに突入

峰さんや大坂駅長、ゆるキャラの見送りを受けて飯田駅を出発。次の停車駅・天竜峡駅で乗務員が交代。


乗務員室の扉にはこんな案内が掲げられていました

発車後、「昨年秋やそれ以前からの秘境駅号リピーターの皆様、お帰りなさいませ。また、初めてご乗車の方も含めて、皆様、ようこそ飯田線にお越し下さいました。」と放送が入るころには、並行する道路もなくなり、秘境ムードが高まってきました。


千代駅 千代駅


金野駅 金野駅

駅名板を触ると長寿に恵まれるとされる千代駅(ランキング23位)、同様に金運に恵まれるとされる金野(7位)田本駅(6位)為栗(してぐり)駅(14位)と次々に秘境駅に停車していきます。途中の温田駅で下りの秘境駅号とすれ違いました。田本駅では、豊橋方にある急な階段を上り、ホーム全景と停車中の列車を撮影しました。為栗駅では、駅前に広がる平岡ダム湖の青々とした湖面、鮮やかに色づいた山々の風景を楽しみました。


為栗駅を一歩出ると絶景に巡り合えました

「次は天龍村の大都会・平岡駅に止まります。」周囲に集落、道路が久々に現れると平岡駅に到着です。平岡駅には、公営の宿泊施設「龍泉閣」が併設されており、日帰り入浴のできる温泉やレストランもあります。大都会にふさわしい駅ビルの様相を呈しています。この日は、秘境駅号の運転に合わせて、この先に停車する中井侍駅のある地区で栽培されている幻の「中井侍茶葉」はじめ、果物、野菜、五平餅、アマゴの塩焼きといった特産品販売が行なわれました。乗客の皆さん、財布のひもも緩みがちのようです。


平岡駅で行なわれた特産品販売

特産品を買い込み、再び列車に戻ります。


伊那小沢駅 伊那小沢駅


中井侍駅から見える茶畑(列車窓から撮影)

伊那小沢駅(75位)、茶栽培の盛んな中井侍駅(11位)と止まり、ランキングベスト3入りを見事果たした小和田駅(3位)を目指します。


秘境駅の代表格・小和田駅

15時30分ごろ小和田駅に停車。小和田駅は、1993年に現在の天皇陛下がご成婚の際、皇后陛下・雅子様の旧姓である小和田(おわだ)と字が同じであったため、「恋愛成就」の駅としても有名になりました。長野、愛知、静岡の3県の県境に位置しており、木造建築の駅舎など駅自体の見どころもさることながら、駅出口横の朽ちたバイク、駅から坂道を1分ほど下った場所にある製茶工場の廃墟、オート三輪・ミゼットの廃車など時代を感じさせるモノがたくさん。ひと時のタイムトリップが楽しめました。


駅名板も時代を感じます


小和田駅を出て少し歩くと廃墟が。中央に見えるのはレジでしょうか

ちなみに小和田駅から1駅飯田寄りの中井侍駅、1駅豊橋寄りの大嵐駅まで電車ではそれぞれ5分ほどですが、歩くと5時間ほどかかるそうです。

小和田駅を出ると秘境駅集中区間は終わります。ここでヘッドマークをイメージしたタオル、伊那田島駅をイメージした飛び出す乗車証明書など記念品が入った袋が配られました。こうした観光列車ならではの特別なサービスはうれしいですね。


ヘッドマークをイメージしたタオル


乗車証明書

向市場駅を過ぎ、第6水窪川橋梁に差し掛かる辺りで列車が徐行を始めます。この橋梁は通称「渡らずの鉄橋」とも呼ばれ、飯田線の見どころ、撮影スポットのひとつでもあります。鉄橋は通常対岸へ渡るために架けられますが、この鉄橋は、橋の入口から右側にカーブしながら対岸に向かうと見せかけ、そのまま対岸には渡らず、川の中ほどで急に左にカーブして元の岸に戻るという全国的に見ても珍しい作りとなっています。線路建設でトンネルを掘っていた際、地殻変動などでトンネルが崩れた場所を大きく迂回するために、このような形で造られたのだそうです。

約6時間の旅も佳境へ

乗車から約4時間30分、列車は最後の停車駅である浦川駅を発車。


上り最後の停車駅・浦川駅

終点の豊橋駅に向けラストスパートです。柿平駅を通過する手前でこんな放送が入りました。「田島(たじまの)柿平(かきひら)という詠み手が詠んだ、秘境駅愛と哀愁が込められた短歌を紹介します。『千代(ちよ)金野(きんのー)―、田本(たもと)為栗(してぐりぃ)、伊那小沢(いなこざわー)―、中井侍(なかいさむらいー)、小和田相月(こわだあいづきー)―。』」この短歌、飯田駅から豊橋駅へ向かう秘境駅の順番通りに、ちょうど五七五七七の5句31音に収まっています。さらに、詠み手の名前も「伊那田島」と「柿平」にちなんでいます。お見事です! 車内からは大きな拍手が起こりました。

豊川稲荷の最寄り駅である豊川駅を過ぎ、いよいよ豊橋駅が近づいてきました。「本日は豊橋行きにご乗車いただきましたので、次回は是非、飯田行きの秘境駅号をご体験下さい。さらなる魅力を用意してお客様をお待ちしております。この放送をもちまして、本日の全ての観光案内を終了させて頂きます。長らくのご乗車お疲れさまでした。『現実の世界への入り口の駅』終点の豊橋に到着致します。」


豊橋駅に到着した秘境駅号。6時間お疲れ様でした

17時54分、後ろ髪を引かれる思いで現実世界・豊橋駅のホームに降り立ちました。駒ケ根駅~豊橋駅間、営業キロにして165.6キロを約6時間かけて走破しました。豊橋駅に停車中の373系も心なしか疲れているような気がしました。ちなみに現在は行くことが難しいですが、名古屋から航空機の国際線で6時間であればおそらくタイの首都・バンコク辺りまで到達できるでしょう。

秘境駅号、次回の運転スケジュールについては決まっていないとのことですが、ぜひ一度は乗りたい列車です。
例年は春・秋に運転されますので、今後の運転計画に期待しましょう!


飯田線秘境駅号の公式サイトはこちら

飯田線をもっと楽しむなら


絶景鉄道! 列車と紅葉、鉄道写真家・村上悠太が写す秋の絶景

飯田線は山の中や川面ぎりぎりを走るため、絶景ポイントがたくさんあり、写真撮影にもぴったりの路線です。
フリーランスの鉄道写真家として、鉄道誌、旅行誌、カメラ誌を中心に活躍してる村上 悠太さんが、
撮影のポイントを実際の絶景写真とともに紹介しています。

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JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ

土曜・休日限定でJR東海の在来線全線と、在来線駅に隣接する16の私鉄の普通・快速列車普通車自由席が2日間乗り降り自由のきっぷです。別に特急券等をお買い求めになれば、フリー区間内の在来線特急・急行列車(寝台列車は不可)は回数の制限なく、東海道新幹線は熱海~米原間の〔ひかり〕〔こだま〕を4回までご利用になれます(〔のぞみ〕はご利用になれません)。

きっぷの詳細はこちらから

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