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2021.12.14鉄道秋田新幹線「こまち」のおすすめの座席は?車内はどうなっているの?などの疑問を鉄道ジャーナリストが解決します

秋田新幹線の疑問に鉄道ジャーナリストがお答えします

「新幹線に乗ろうと思って時刻を調べたはいいけれど、どの列車のどの席を選べばいいか分からない」と迷ってしまうことはありませんか?


全国の新幹線を、車窓を中心に10年以上観察・研究してきた鉄道ジャーナリストの栗原景さんが、知っていると便利なことや、誰かに話したくなる新幹線ならではの車窓の楽しみ方などをご紹介します。

この記事を読むと分かること

  • 使用されている車両、特徴、コンセントの位置
  • 秋田新幹線の停車駅
  • 座席選びのポイント
  • 車窓の楽しみ方
  • おトクに乗車する方法、予約について
  • 車内販売の有無、最高速度などの基本情報

秋田新幹線ってどんな路線?

秋田新幹線は盛岡駅から田沢湖駅、角館駅、大曲駅を経て秋田に至る路線で、東京駅〜盛岡駅間は東北新幹線に乗り入れています。

山形新幹線と同様、在来線の線路幅を新幹線と同じ1435mmに拡げて、新幹線車両が直通できるようにした「新在直通特急」、通称「ミニ新幹線」で、盛岡駅〜秋田駅間の最高速度は130km/hに抑えられています。2014(平成26)年までに全車両がE6系に置き換えられ、東北新幹線区間で320km/hが行なわれるようになりました。

最新の空力性能を誇るハイテク車両が、岩手・秋田県境の美しい渓谷を走る。そんなユニークな旅を楽しめる新幹線です。

秋田新幹線の車両

秋田新幹線は、全列車がE6系7両編成を使用しています。東京〜盛岡間では一部の列車を除き、10両編成の「はやぶさ」と併結されるため、号車番号は11〜17号車となっています。

E6系


秋田駅に停車中の秋田新幹線E6系 秋田駅に停車中の秋田新幹線E6系。新幹線用ホームもシンプルだ

新幹線と在来線双方で性能を発揮するミニ新幹線の到達点

400系、E3系に続くミニ新幹線第三世代車両として、2013(平成25)年にデビューした車両です。在来線に乗り入れることから、フル規格新幹線の車両よりも一回り小さな車体となっていますが、東北新幹線宇都宮駅〜盛岡駅間では320km/h運転が可能です。

先頭形状は、320km/h運転を実現するため東北・北海道新幹線E5系とよく似たロングノーズを備えており、「アローライン」と呼ばれるノーズの長さはE5系よりも2m短い13m。


E6系 こまち 外観

運転台の左右下に前照灯を配置し、イルカのような愛きょうのある顔つきをしています。また、乗り心地を向上するため左右の振動を低減するフルアクティブサスペンションを全車両に搭載し、遠心力を打ち消して高速で曲線を通過できる車体傾斜装置も備えるなど、最新の技術が投入されています。

ミニ新幹線ならではの技術は、台車にあります。台車には2対の車軸が搭載されていますが、この車軸の間隔(軸距〈じくきょ〉)が長いと、高速走行時の安定性が向上する反面、カーブでの揺れが大きくなります。逆に軸距を短くすると、在来線のような急カーブを安定して通過できるものの高速走行時の振動が増してしまいます。

そこでE6系では、320km/h運転を行なうために軸距をフル規格新幹線と同じ2500mmとしたうえで、横揺れを抑えるアンチヨーダンパの動きを2段階の切替式とすることで在来線走行時の走行性能を高めているのです。

車体デザインは、フェラーリもデザインした工業デザイナーの奥山清行氏が担当しました。車体上部に秋田の祭りである竿灯の提灯やなまはげの面などをイメージした「茜色」を、側面にはE5系と同じ「飛雲ホワイト」を基調に「アローシルバー」のラインを配して秋田の雄大な雪景色と伝統工芸である銀線細工を表現しています。


E6系 こまち 外観

インテリアは「ゆとり」「やさしさ」「あなたの」をキーワードに、普通車は稲穂が豊かに実る秋田の大地を、グリーン車は秋田の伝統工芸品である楢岡焼きの釉薬「海鼠釉(なまこぐすり)」や「川連漆器(かわつらしっき)」の色合いを表現したもの。どちらも鮮やかさと落ち着きを兼ね備えた色づかいで、旅のワクワク感を演出してくれます。

座席間隔は、グリーン車についてはフル規格新幹線と同じ1160mmを確保。


E6系 車内 グリーン車 グリーン車は全席のひじ掛け部にコンセントを装備

4列シートの普通車は980mmとE5系よりも60mm狭いですが、窮屈さは全く感じません。大型の可動式枕と、頭を包み込むようなヘッドレストを備え、「グリーン車に最も近い普通座席」といえるでしょう。


E6系 車内 普通車 豊かに実る稲穂を表した普通車。ヘッドレストが特に大きく快適だ

E6系 こまち 車内 レッグレストがないこととシートピッチが若干狭い以外はほとんどグリーン車並みだ

「こまち」はどんな列車?

秋田新幹線の列車は、すべてE6系の「こまち」。停車駅のバリエーションも少なく、シンプルです。

こまち

途中で進行方向が変わる唯一の新幹線列車


E6系 こまち 外観

秋田県湯沢市小野出身と伝わる平安時代の歌人、小野小町に由来する愛称をもつ列車です。

概ね1時間に1本程度運行されており、盛岡駅〜秋田駅間を1時間30分前後、最速1時間23分で結んでいます。在来線時代の特急「たざわ」の所要時間が1時間40分程度でしたから、それほどスピードアップはしていないことがわかりますね。

田沢湖線内は単線で曲線が多く、また大曲駅では線路配置の関係から進行方向が変わるため、スピードアップに限界があるのです。

停車駅のパターンは実にシンプルです。東北新幹線内は、「はやぶさ」と併結して原則として全列車が上野駅・大宮駅・仙台駅・盛岡駅のみに停車。早朝の下りと深夜の上りに1本ずつ設定されている仙台駅〜秋田駅間の「こまち95・96号」だけは例外で、仙台駅〜盛岡駅間の各駅に停車します。

秋田新幹線内では、田沢湖駅・角館駅・大曲駅の3駅停車が基本ですが、1日4本のみ雫石駅に停車するほか、下り最終の「こまち45号」と上り始発の「こまち6号」は、大曲駅のみに停車します。なお、号数は併結する「はやぶさ」と揃えているため、「こまち1号」の次は「こまち5号」であるなど、数字が連続しません。

「こまち」の大きな特徴が、大曲駅で進行方向が変わること。このため、上り列車は、秋田駅発車時点では座席の向きが進行方向とは反対にセットされています。

列車は7両編成で、11号車がグリーン車であるほかは、全車普通車指定席で自由席はありません。ただし、盛岡駅〜秋田駅間では座席を指定しない特定特急券が通常期の指定席特急券より530円安い値段で販売され、空いている席に座ることができます。

【使用車両】
E6系

【こまちの停車駅】
東京駅・上野駅・大宮駅・仙台駅・古川駅(一部列車)・くりこま高原駅(一部列車)・一ノ関駅(一部列車)・水沢江刺駅(一部列車)・北上駅(一部列車)・新花巻駅(一部列車)・盛岡駅・雫石駅(一部列車)・田沢湖駅(一部列車)・角館駅(一部列車)・大曲駅・秋田駅

【座席の種類】
普通車(自由席、指定席)/グリーン車(指定席のみ)

【コンセントの有無】
A・D席、最前列・最後列/全席

【車内販売】
東京駅~盛岡駅(秋田新幹線の車内販売は東北新幹線内のみで、ソフトドリンク類、菓子類などに限られます。)

停車駅一覧

  こまち  
東北新幹線 東京  
上野  
大宮  
小山 -  
宇都宮 -  
那須塩原 -  
新白河 -  
郡山 -  
福島 -  
白石蔵王 -  
仙台  
古川※  
くりこま高原※  
一ノ関※  
水沢江刺※  
北上※  
新花巻※  
盛岡  
秋田
新幹線
田沢湖線 雫石  
田沢湖  
角館  
大曲  
奥羽本線 秋田  
所要時間(最速) 3時間37分  
○:停車 ▲:一部停車 -:通過  
※古川駅〜新花巻駅間各駅は早朝・深夜に運行の仙台〜秋田便(こまち95・96号)のみ停車

座席の選び方

岩木山がよく見えるA席側がおすすめ

秋田新幹線の座席選びは難題です。東北新幹線内では、盛岡に向かって左側、D席側に美しい山並みを見ることができるので断然D席側がおすすめ。

一方、秋田新幹線の盛岡駅〜大曲駅間では、南向きとなるD席側は日中日差しが入りやすく、車窓風景は岩木山や秋田駒ヶ岳が見えるA席側が良いのです。大曲からは進行方向が変わりますが、秋田らしい田園風景がよく見えるのもどちらかといえばA席側。秋田新幹線を楽しむなら、A席側がおすすめです。

秋田新幹線の見どころ

バラエティ豊かな山の景色を楽しめる

秋田新幹線は、奥羽山脈を越えて日本海側の秋田へ向かう路線。120kmほどと距離は短いですが、急勾配区間が連続し、高原あり、渓谷あり、盆地に広がる田園地帯ありと、内陸部のさまざまな景色を楽しめます。

盛岡駅での分割・併合

E5系とE6系の合体シーンの「やわやわ」って?


盛岡駅での併合シーンは秋田新幹線のハイライトのひとつ。山形新幹線よりギャラリーが多いので、黄色い線から出ないよう注意しよう

山形新幹線と同様、秋田新幹線「こまち」も、東京駅〜盛岡駅間ではE5/H5系「はやぶさ」と併結して運行し、盛岡駅で分割・併合を行ないます。特に上り列車は、先に到着した「はやぶさ」の後ろに、E6系「こまち」がゆっくりと近づき、先頭部から自動的に連結器が出てきて連結します。

連結の手順は山形新幹線とほぼ同じですが、最新型車両であるE5系とE6系の併結だけあって、かっこよさは格別。

車両だけでなく、誘導・監視を行なう駅員さんのキビキビとした動きにも注目です。

「あと10m」「5m」と、運転士に無線で逐一残りの距離を知らせるのですが、最後、いよいよ連結という段階になると「やわやわ、やわやわ」という言葉が聞こえます。

これは鉄道の業界用語で「十分減速してゆっくり進め」という意味。鉄道だけでなく工事現場などでも使われ、北陸地方の方言にも見られます。

さて、秋田新幹線に乗るならぜひ見学したい併合シーンですが、山形新幹線と同様、上り「こまち」に乗っていると、連結後に扉が開くので見ることができません。また、下りは連結器のロックを解除して「こまち」が先に発車するだけなので、面白みに欠けます。

できれば盛岡駅で途中下車して、後続列車の連結シーンを見学したいもの。「こまち」同士、または「こまち」と「はやぶさ」を盛岡駅の改札口を出ずに乗り継ぐ場合は、特急料金を通算できます。

岩手山と志波三山

盛岡駅からも見える対称的な姿の山々


盛岡駅発車直後から雄大な岩木山がA席側に見える。この日は少し雲を被ってしまった (盛岡駅〜大釜駅間)

岩手山は、盛岡駅を発車してすぐA席側に見える秀麗な火山です。

標高2038mと岩手県の最高峰で、西側へ大松倉山、三ツ石山と連なっていますが、奥羽山脈からやや離れ、富士山にも似た美しい姿から独立峰のように見えます。

東北新幹線からも見えますが、東北新幹線は盛岡駅を発車するとすぐトンネルに入ってしまうのに対し、秋田新幹線はしばらく北上盆地を走り、水田と丘陵地の向こうにそびえる美しい姿をしばらく楽しむことができます。

一方D席側には、盛岡駅停車中から市街地の向こうにでこぼことした山のかたまりが見えます。こちらは、箱ヶ森(はこがもり)、赤林山(あかばやしやま)、南昌山(なんしょうざん)、東根山(あずまねさん)といった標高約800〜900mの連山で、このあたりを志波三山(しわさんざん)とも呼びます。

秋田新幹線から最も高く見えるのは標高865mの箱ヶ森ですが、坂上田村麻呂の時代から霊山として敬われ、宮沢賢治が愛した山として知られるのが南昌山です。新幹線の左右に、岩手山と志波三山という対称的な姿の霊峰を同時に見ることができます。

ふたつの高倉山

同じ名前の山が左右にほぼ同時に見える


やや右の最も高い山が標高1408mの高倉山。左端の雪を被った山が秋田駒ヶ岳だ(小岩井駅〜雫石駅間)

雫石駅付近まで来ると、岩手山が丘陵地の陰に隠れ、代わってA席側前方になだらかな稜線を伴った山々が見えてきます。左端の、10月の時点ですでに雪を被っている山は岩手・秋田県境の秋田駒ヶ岳。高山植物の宝庫として知られ、登山道も比較的緩やかなことから、山の魅力を存分に楽しめる山として知られています。

その右手には、やや標高の高い山が見えます。最も高く見える、少し尖った山が標高1408mの高倉山。右隣の小高倉山とともに山腹が雫石スキー場になっています。

D席側に目を向けてみましょう。てっぺんをスパッと切ったような、独特の形をした山が見えます。


てっぺんを切り取ったような姿をした、D席側の高倉山(中央) (小岩井駅〜雫石駅間)

実はこちらも「高倉山」。標高777mで、先ほど見えた志波三山の横に位置しています。どちらの高倉山も雫石町にあるというのもユニークです。

「高倉山」は、高い断崖や深い谷がある険しい山を表す名前で、全国には比較的有名なところだけでも40カ所以上の「高倉山」があります。それでも、新幹線からほぼ同時に、同じ町内にあるふたつの「高倉山」を見られるスポットはここだけです。

D席側の高倉山の近くには、お椀をひっくり返したような形をした、昔話にでも出てきそうな男助山(おすけやま)も見えます。さまざまな形をした山の車窓を楽しめるのが、秋田新幹線の魅力です。

仙岩峠(せんがんとうげ)

奥羽山脈の分水嶺を越える


仙岩峠越えは人工建造物のほとんど見えない渓谷美が魅力。これは生保内川(おぼないがわ) (赤渕駅〜田沢湖駅間)

岩手県と秋田県の県境にある仙岩峠。秋田新幹線(田沢湖線)は、ここを3915mの仙岩トンネルで通過します。

田沢湖線は単線で、仙岩トンネルを含む赤渕駅〜田沢湖駅間は18.1kmにわたって駅がないため、トンネルの前後に大地沢信号場と志度内信号場というふたつの信号場、つまりすれ違いのための施設があります。

仙岩トンネルの前後は、22パーミル(1000m進むごとに22mの高低差)という在来線としては急な勾配が連続し、盛岡側は雫石川、秋田側は生保内川の源流に沿って走ります。人家はほとんど見えず、新幹線の車両が通過する区間としては、全国屈指の秘境区間です。

人里離れた大自然の車窓を楽しめますが、一方でここは秋田新幹線最大の難所でもあります。平行する道路のない谷底でトンネルや橋梁も老朽化が進んでいるため、スピードアップを阻んでいるのはもちろん、安定的な運行や保守の面でもネックとなっています。
 
そこで、JR東日本は仙岩トンネルを含む赤渕駅〜田沢湖駅間について、新たに長大トンネルを建設してルートを変更する方針を表明し、2021(令和3)年7月26日に秋田県と事業推進の覚書を交わしました。

新しいトンネルの建設には11年かかるといわれており、ルート変更が実現するとしても当分先の話ですが、近い将来、秋田新幹線は大きく姿を変えるかもしれません。

生保内水力発電所

80年以上にわたり電気を生み出す水力発電所


ダムを伴わずに多くの電気を生み出してきた生保内発電所

田沢湖駅を発車してすぐA席側に、歴史を感じるデザインの建物が見えます。1936(昭和11)年に建設され、1940(昭和15)年から稼動を開始した、東北電力の生保内発電所です。

田沢湖水系の豊富な水資源を利用し、湖畔にある取水口から取り入れた水を、調整池を経て3本の導水管に引き込み、3基の水力発電機を動かす仕組みで、最大出力は3万1500kW。

建設から80年以上が経過したにもかかわらず、現在も秋田県の水力発電所として最大の出力を誇っています。

三線軌条区間

青函トンネルと同じ、標準軌と狭軌が共存する区間


神宮寺駅〜峰吉川駅間は在来線側にも秋田新幹線のレールが敷かれている(神宮寺駅)

秋田新幹線のうち、田沢湖線は線路幅を1435mmの標準軌に作りかえましたが、奥羽本線の大曲駅〜秋田駅間については、元々複線だった線路の片方を1435mmに改め、在来線の狭軌(1067mm)と標準軌(1435mm)が1組ずつ並走している、「単線並列」と呼ばれる方式を採用しています。

在来線の普通列車は、従来の1067mm幅の車両をそのまま使い、秋田新幹線と普通列車が別々の線路を走っているのです。

ただし、途中の神宮寺駅〜峰吉川駅間の約12.4kmは、在来線側の線路が3本敷かれ、狭軌と標準軌、両方の車両が走行できる三線軌条区間になっています。これは、「こまち」同士がすれ違いをするため。

単線の田沢湖線内では、すれ違いのためにどちらかの列車が駅や信号場に停車しなくてはなりませんが、神宮寺駅〜峰吉川駅間では走行しながらのすれ違いが可能になっています。単線区間が多く、大曲駅で進行方向が変わるなど、運行上のネックが多い秋田新幹線ならではの工夫です。

おトクなきっぷ

秋田新幹線には、残念なことにインターネット予約の「えきねっとトクだ値」以外、おトクなきっぷがほとんどありません。しかし、工夫次第で、きっぷのルールに則って安く上げる方法はあります。東京都区内〜秋田駅間の片道運賃は1万10円、往復では2万20円です。これをどこまで安くできるでしょうか。

往復割引

国鉄時代からお馴染みの基本技

まず、基本は往復割引です。JRの運賃は、片道の営業キロが600kmを超える場合、往復で購入すれば行き帰りとも運賃が1割引(10円未満切り捨て)となります。

東京都区内〜秋田駅間の往復割引乗車券は、片道あたり1万10円の1割引で9009円。10円未満は切り捨てとなるので9000円×2(往復)で1万8000円。行き帰りを別々に購入するよりも2020円安くなりました。

乗車券の有効期間も、片道きっぷの2倍となるので、片道きっぷの5日間に対し10日間となります。


週末パス

週末パスに乗車券を追加する裏ワザ

新幹線紹介シリーズではお馴染みの「週末パス」。土・休日の連続する2日間に使用できる乗り放題のきっぷですが、フリー乗車区間は東北新幹線くりこま高原駅まで。

しかし、あらかじめフリー区間からはみ出すくりこま高原駅〜秋田駅間の往復乗車券を用意しておけば、東京駅〜秋田駅間に通しで乗車できます。「週末パス」は8880円。

くりこま高原駅〜秋田駅間は254.0kmで運賃は片道4510円、往復で9020円です(片道600km以下なので往復割引はありません)。

合計は1万7900円。東京駅〜秋田駅間の往復割引運賃よりも100円だけ安くなりました。

きっぷの購入が少々面倒なうえに、たった100円しか安くならないのではメリットが少ないように見えますが、小学生のお子さんは、俄然おトクになります。

東京都区内〜秋田間の往復割引・こども運賃は1万8000円の半額で9000円。

一方、「週末パス」はこども用の値段が2600円と破格で、くりこま高原駅〜秋田駅間の往復こども運賃(2250円×2)を加えても7100円と、往復乗車券よりも1900円安くなりました。

もっとも、これではせっかくの「週末パス」がもったいない気もします。

せっかくフリー区間があるのですから、行きは秋田新幹線「こまち」、帰りは羽越本線の特急「いなほ」と上越新幹線「とき」を乗り継いではいかがでしょう。

この場合、フリー区間からはみ出す区間はくりこま高原駅〜秋田駅〜酒田駅となります。経路が重複しないので、秋田できっぷを買い直す必要はありません。くりこま高原駅〜秋田駅〜酒田間駅351.2km6050円の乗車券を用意して、秋田駅では途中下車をすればOKです。

「週末パス」との合計額は1万4930円。秋田まで片道きっぷで単純往復するよりも5090円も安くなりました。やはり「週末パス」はおトクです。

ちなみに、片道を上越新幹線経由とすると、特急料金も安くなります。

東京駅〜秋田駅間「こまち」の普通車特急券は通常期で8110円、往復で1万6220円です。

一方、秋田から特急「いなほ」に乗車し、新潟駅から上越新幹線に乗り換えて東京駅まで行くと、「いなほ」の特急料金は2510円、新潟駅で乗り換える上越新幹線の特急券と同時に購入すれば、乗継割引が適用されて半額の1250円となります。

上越新幹線新潟駅〜東京駅間の特急料金は5040円で、合計6290円。行きの「こまち」の特急料金と合わせて1万4400円と、「こまち」で往復するよりも1820円安くなりました。乗車券との合計は2万9330円。片道乗車券で単純に往復した場合の総額3万6240円よりも6910円安上がりとなりました。

フリーエリア:羽越本線酒田、奥羽本線湯沢、東北新幹線くりこま高原、東北本線小牛田の各駅より南のJR東日本全線/山形鉄道/阿武隈急行/福島交通/会津鉄道/北越急行/えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン/上田電鉄/しなの鉄道/長野電鉄/アルピコ交通/ひたちなか海浜鉄道/鹿島臨海鉄道/富士急行/伊豆急行

有効期間
連続する土・休日の2日間

販売期間(2021年度)
2022年3月25日まで(利用開始日の前日までに購入)

利用期間(2021年度)
2022年3月27日まで
※12月28日〜1月6日、4月27日〜5月6日は利用できません。販売・利用期間は毎年度更新されます

販売場所
フリーエリア内のおもな駅やびゅうプラザ、エリア周辺の旅行会社

販売価格
おとな8880円、こども2600円


連続乗車券を活用

1枚のきっぷの経路を長くすると割安に

週末パスは便利ですが、前日までに購入する必要があることと、平日は利用できない点が弱点です。しかし、とっておきの手があります。片道を上越新幹線経由として、東京都区内〜盛岡駅〜秋田駅〜新潟駅〜大宮駅と、大宮駅〜東京駅の乗車券を組み合わせた連続乗車券を利用するのです。

JRの乗車券は、原則として同じ駅を二度通らなければ片道乗車券として購入できます。

東京都区内から、盛岡駅・秋田駅・新潟駅をぐるっと経由して戻ってくると、大宮駅で経路がぶつかるので、ここでいったん片道乗車券は打ち切り。そこに、最後の大宮駅〜東京駅間の片道乗車券を加えます。

このように、経路が連続する同時に販売された2枚のきっぷを連続乗車券といいます。

JRの運賃は、1枚のきっぷの距離が長くなるほど、1kmあたりの運賃単価が割安になります。

東京駅〜盛岡駅〜秋田駅〜新潟駅〜大宮駅間は1135.3kmで運賃は1万3750円。最後の大宮駅〜東京駅間は30.3kmで570円。合計1万4320円。

週末パスを利用するよりも610円安くなり、曜日を問わず思い立ったらいつでも旅立つことができます。特急券との合計額は2万8150円です。

駅の窓口で、経路を紙に書いて係員に見せるとスムーズに購入できます。


えきねっとトクだ値・お先にトクだ値

乗車当日も利用でき、抜群に安い

ここまで、裏ワザのようなテクニックを紹介しましたが、シンプルに安く秋田新幹線を利用するなら、やはりインターネット予約のえきねっとがいちばんです。

東京駅〜秋田駅間は乗車当日に購入しても1万5220円で、紙のきっぷよりも2700円も安く購入でき、往復では3万440円となります。ただし、東京駅までは別途乗車券が必要で、座席数も限られています。

13日前までに予約する「お先にトクだ値」なら、約35%引きで1万1630円。往復では2万3260円と、週末パスやら連続乗車券やらを駆使するよりも圧倒的に安くなってしまいます。

予定が早くから決まっているなら、インターネット予約のえきねっと。自分で自由に旅を創る楽しみを味わうなら、週末パスや連続乗車券を活用するのがおすすめです。



【秋田新幹線】基本データ

営業区間:盛岡駅〜秋田駅
営業キロ:127.3km
※参考:東京〜秋田間の営業キロは662.6km、実キロは623.8km
※東北新幹線は、在来線の線路増設として建設されたため、運賃計算の元となる営業キロと実際の距離(実キロ)が異なります。秋田新幹線の営業キロは実際の距離と同一です。

使用車両:E6系

最高速度:130km/h(東北新幹線内は320km/h)

最速列車の表定速度(停車時間を含めた平均速度):こまち45号    172.5km/h

座席の種類:普通車指定席、グリーン車

車内サービス:秋田新幹線の車内販売は東北新幹線内のみで、ソフトドリンク類、菓子類などに限られます。

  車内販売
東京駅〜盛岡駅 盛岡駅〜秋田駅
こまち ×

トイレ:12・13・14・16号車

  車いす対応トイレ 女性専用トイレ 車いすスペース 多目的室
E6系 12号車 なし 11・12号車 12号車
※多目的室は身体の不自由な人や気分の悪くなった人、授乳が必要な人などが車掌に申し出ると利用できます。

 


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「東北新幹線沿線の不思議と謎」(実業之日本社)、「東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!」(東洋経済新報社)ほか。

  • 写真/栗原景、交通新聞クリエイト
  • 掲載されているデータは2021年12月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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