JR北海道に聞いてみました!
『JR時刻表』編集部がJR各社に鉄道にまつわるさまざまな疑問をQ&A方式で聞いていく連載です。
今回は……
Q. 北海道新幹線の青函トンネル高速走行について教えて!
北海道新幹線が青函トンネル内での260km/h 走行を実現させた経緯について、JR北海道に聞いてみました!
A. さらなる高速化の実現に向けて、現在も取り組みを続けています
高速走行実現までの軌跡
青函トンネルは、世界最長の全長約53.85km、世界最深の深さ240mを誇る交通機関用の海底トンネルです。1988(昭和63)年3月より海峡線として開業し、在来線として旅客列車、貨物列車の運転を始めました。
海峡線を走る貨物列車と青函トンネル
青函隧道(せいかんずいどう)と書かれた扁額
新幹線の軌間(レールの幅)は1435mmなのに対して、在来線の軌間は1067mmと異なります。そのため、2016(平成28)年3月の北海道新幹線開業の際に、新青森~新函館北斗間の約149kmのうち青函トンネルを含む約82kmの区間に、新幹線の軌間にあわせて専用レールを1本敷設し、三線軌条という特殊な線路構造で在来線との共用走行となりました。
三線軌条の構造図
新幹線は「200km/h以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と法律(全国新幹線鉄道整備法)で定められていますが、在来線の貨物列車とのすれ違い時の安全確保の観点から、青函トンネル内の最高速度は160km/h、その他の共用走行を行う区間の最高速度は140km/hでした。共用走行区間の新幹線の速度向上に向けては、2012(平成24)年から国で検討が始まり、当面の方針として、「時間帯区分(新幹線と貨物列車が走行する時間帯を区分する)方式での実現を目指すこと」が決定されました。これを受けて、まずは、設備が複雑な三線軌条の分岐箇所や、降雪等の影響のない青函トンネル内における速度向上に取り組みました。具体的には、架線の張力調整やレール削正を実施したほか、青函トンネル内を高速で走行する際は在来線の貨物列車と時間帯を区分する必要があることから、高速走行区間へ貨物列車が誤って進入しないためのシステムを開発しました。また、トンネル内は年間を通じて約20℃の一定した気温を保っているため、外気との温度差により車両に付着した着氷雪(氷塊)が落下し、地上設備を損傷させる可能性がありました。このリスクを解消するため、地上設備の保護対策を検討し、冬季の高速走行試験も実施しました。
時間帯区分方式の説明図
その結果、2019年より青函トンネル内の最高速度を160 km/hに引き上げ、さらに、2020年12月には時間帯区分方式により、特定時期(ゴールデンウイーク、お盆、年末年始)の一部時間帯で最高速度を210km/hに、2024年4月からは260km/hに引き上げ、東京~新函館北斗間は、最速3時間52分となりました。対象列車内の電光掲示板では、青函トンネルを走行する際に、高速走行を説明する特別バージョンの案内テロップを見ることもできます。ぜひ、特定時期の北海道新幹線に乗って、いつもより早く通り過ぎる青函トンネルを楽しんでみてはいかがでしょうか。
極寒多雪な地域においても通年で安全・安定した大量高速輸送を実現し、道内・道外の交流人口を拡大して北海道を活性化すること。そして、訪れた方に「また北海道に行きたい!」と思っていただけるように沿線自治体や関係者と協力し、魅力的なまちづくりを実現することが北海道新幹線の果たす役割だと認識しています。
- ※『JR時刻表』2025年7月号掲載時点の内容です。
- ※画像=JR北海道、交通新聞クリエイト提供
- ※構成=時刻表編集部