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2021.10.15鉄道往復割引乗車券とは? グランクラス料金、寝台料金とは? 「お得な旅行」を知り尽くしたライターが解説

乗車券、特急券をより極めよう! こんなきっぷ、使い方もある

皆さんこんにちは。2015年1月にJR全線完乗した蜂谷です。
旅を重ねるうちに、「お得なきっぷの買い方」の沼にすっかりハマってしまいました。もう知らなかった頃には戻れません。

本シリーズの前回、前々回は乗車券と特急券のルールを踏まえながら「お得道」を追求してきました。今回は乗車券、特急券のさらに深淵なる世界へご招待するとともに、お得と表裏一体の「損しない」にもちょっと言及します。

往復割引乗車券とは? 「片道601キロ以上で1割引」と覚えよう


一筆書きのルートを作ればいいと言われても、毎回そんなひねった旅に出るわけではないし、素直に家と目的地だけを往復するような旅に出たいなぁ……。

なら、遠くまで行く旅はどうですか? 具体的には片道601キロ以上離れているところがおすすめです!

いつものように前のめり気味で始めてしまいました。すみません!
第1回で乗車券の特徴、「遠くまで買えば買うほど割安になる」を伝授しました。つまり、一筆書きの行程によって私たちは割安なきっぷを得られるわけですが、かといって毎回のように曲がりくねった旅に出るのは難しいもの。
ご安心ください。「ただ往復するだけ」で自動的にお得になる場合もある「往復割引乗車券」が存在するのです。


<往復割引乗車券とは>

・行きと帰りが同じ行程
・片道が601キロ以上のとき
・行きと帰りの乗車券をまとめて購入すると
・それぞれ1割引になる

東京駅から713.7キロ離れた新青森駅まで、東北新幹線で往復する場合を考えてみます。
行きと帰りの乗車券をバラバラに購入すると片道が10,340円ですので、往復は2倍の20,680円となります。
ところが往復を「まとめて」購入すると、それぞれから1割=1,034円引かれ、ついでに端数も切り捨てられて片道9,300円。合計は18,600円となり、バラバラに買ったときにくらべて2,080円もお得です。

注意しなくてはいけないのは、行きと帰りを「セットで」購入しなくてはならないこと。別々に購入しても割引されないので気を付けてください。


なるほど、行きと帰りを“同じ”行程にしたら割引されるのか。
単純往復でもせめて少しは鉄分を盛り込もうと片道は鈍行の行程を計画したけど、1割引を適用したいからどっちも新幹線にしようかな……。


実は新幹線も在来線も同じ行程と見なしてもらえるので、往復割引が適用されます!

たとえば東京駅から岡山駅までの旅を計画し、行きは東海道本線と山陽本線の普通列車を乗り継いで鈍行の旅を、帰りは山陽新幹線と東海道新幹線を使って一気に東京駅まで戻るとします。
このとき「乗車券」の視点でみると、並行する在来線と新幹線は乗車券上「同じ路線」とみなされる(※)ことから往復割引乗車券が購入できます。

また、鉄道ファンのなかではよく知られていることですが、往復割引が適用されることで「片道601キロにちょっと満たない目的地」よりも「片道601キロ以上の目的地」のほうが安くなる逆転現象が発生します。
こうした特徴を活用し、「本当の目的地よりもちょっと遠いところまで購入する」ことで、お得ルールを適用させることが可能です。

  • 一部の区間では別線として扱われる場合があります。詳細は窓口等にご確認ください。

エリアを跨いでグランクラスの旅! 運賃計算はちょっと複雑

ここまで紹介してきた特急料金は、普通車指定席や自由席を利用する場合のものです。
もしより贅沢な旅、つまりグリーン車や東北・北海道新幹線、北陸新幹線のグランクラスを利用する場合は、乗車券と特急券に加えてグリーン料金、またはグランクラス料金がかかってきます。


母の誕生日に、金沢旅行をプレゼントしよう! せっかくなら北陸新幹線はグランクラス利用で……。あれ、結構高い?

ふふふ、JR間のエリアを跨ぐと運賃計算が複雑になるのですよ。

特急列車や新幹線でグリーン車、グランクラスを利用する場合は、以下の計算式によって運賃が導出されます。

運賃=乗車券+(通常期指定席の特急料金-530円※)+グリーン料金(またはグランクラス料金)

  • 路線によって異なる場合があります。

上記のうち、グリーン料金とグランクラス料金は乗車券や特急券と同じく距離に応じて変わります。
具体的には下表のとおり。



しかし北陸新幹線や東北・北海道新幹線の場合はすんなり上図に当てはめることができません。
たとえば東京駅~金沢駅を北陸新幹線のグランクラス(A)で移動したとします。東京駅~金沢駅は450.5キロなのでグランクラス料金は9,430円になるはずのところ、実際には13,630円かかります。
4,200円の差額の理由は、北陸新幹線の東京駅~上越妙高駅がJR東日本エリア、上越妙高駅~金沢駅がJR西日本エリアと会社を跨いでいることに由来し、次のように計算します。


<エリアを跨ぐ場合の計算方法>

例:東京駅~金沢駅をグランクラス(A)で移動する

① 東京駅~上越妙高駅、上越妙高駅~金沢駅それぞれのグランクラス料金を算出
→ 東京駅~上越妙高駅が281.9キロなので8,390円、上越妙高駅~金沢駅が168.6キロなので7,340円

② それぞれから1,050円を引く
→ 7,340円と6,290円

③ 合計する
→ 13,630円

このように「それぞれのグランクラス料金から1,050円引いて合算」は、新青森駅でJR東日本エリアとJR北海道エリアに分断される東京駅~新函館北斗駅をグランクラスで利用した場合も同様です。
東京駅~金沢駅同様に、東京駅~新青森駅、新青森駅~新函館北斗駅で計算し、それぞれ1,050円を引いて合計金額は16,420円(グランクラス(A))です。ちなみに東京駅~新青森駅でグランクラス(A)を利用したときは10,480円。

せっかくなら全区間をグランクラスで移動したいところですが……しくみを知ると悩ましくなりますね!

憧れの寝台特急「サンライズ」! 寝台券とは?


来月は四国に出かけよう! せっかくなら憧れの寝台列車で旅するか。
あれ、寝台券ってなんだ? しかもいろいろ値段あるし、どれ選べばよいのか……。


サンライズ号の存在に気付かれましたか! 今や貴重な寝台特急列車です。
値段が違うのは、寝台の種類が違うためですよ。


何年か前までは複数の寝台特急列車が国内で毎日運行していましたが、令和の世において毎日運行しているのは「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」のみです。
「サンライズ瀬戸」は東京駅発高松駅行き、「サンライズ出雲」は東京駅発出雲市駅行き。東京駅から岡山駅までは連結で運転しますが、岡山駅で切り離されてそれぞれの目的地へと向かいます。

一般的な特急列車は「乗車券」と「特急券」があれば乗車できますが、サンライズ号は「寝台」と付いていることからもお察しいただけるとおり、別途「寝台券」を購入する必要があります。

寝台列車の運賃=乗車券+(通常期指定席の特急料金-530円)+寝台料金

この計算式のうち寝台料金は「距離」ではなく、寝台の種類によって異なってくる点が特徴で、具体的には下表のように定まっています。
(「特徴」は私の感覚も込みで書いてありますので、参考にしてください)


部屋の大小や室内の設備は料金によって違いが出てくるものの、「シングルデラックス」~「サンライズツイン」に共通するのはすべて個室である点。
二人旅をするときには、2段ベッドの「シングルツイン」や、ベッドが横並びの「サンライズツイン」がおススメです。


あれ、ちょっと待って! 寝台料金の「0円」というのが見えるんだけど……! ナニコレ?

目ざとい! そうなんです。サンライズ号には、寝台料金不要の座席があるんです。

「サンライズ」には寝台券が必要!と言ったばかりなのですが、実は「寝台券」を買わなくても、乗車券と指定席特急券だけで利用できる座席もあります。
それが列車内に1両だけ設けられた「ノビノビ座席」。「ノビノビ座席」はカーペットの敷かれたシートのことで、頭部に仕切りはあるものの、個室にはなっていません。
言わば横になれる座席といった扱いで、毛布の貸与があり、フェリーの「雑魚寝」のカーペット室によく似ています。
個室、寝台ではないため、旅慣れている人向きかもしれません。

払いもどしは2日前! 「損」しないための鉄則


ショボーン(´・ω・`) せっかくサンライズで出かける計画を立てたけど、仕事が入って難しそうになってきた。
でも諦めたくない! ギリギリまで様子見たい!


諦めない勇気は重要です! 応援します! でもキャンセルするなら、2日前までにしたほうがいいですよ。

ツアー商品のパンフレットでキャンセル料金の表を見たことがありますか? 出発日が近付くほどキャンセル料金が高まっていき、最終的には「100%」と記されていますよね。
鉄道の場合も同様です。諸般の事情で旅行に行けなくなってしまったときは、悲しみに浸るよりも先に「きっぷの払いもどし」を行いましょう。
旅行商品ほど細かくはないものの、きっぷによっては出発日が近付くと払いもどし手数料が爆上がりするものがあります。


<払いもどし手数料>

① 乗車券、回数券、定期券、自由席特急券
払いもどす日にかかわらず220円
※使用開始前で有効期間内に限る

② 指定席特急券、指定グリーン券、寝台券
出発日の2日前まで:340円
出発日前日から出発時刻まで:きっぷ代の30%(最低340円)

たとえば、東京駅~新青森駅で新幹線の指定席特急券と乗車券を払いもどすとします。通常期であれば乗車券は10,340円、指定席特急券は7,330円です。

2日前までの払いもどし:手数料は乗車券分220円、特急券分340円の合計560円

前日から出発前の払いもどし:乗車券分の手数料は220円で同じ。特急券分は、7,330円×30%=2,199円。10円未満は切り捨てられて2,190円が手数料となり、合計2,410円

2日前に払いもどせば、前日や出発前にくらべて1,850円「損しない」と言えます。
ちなみにこの知見は払いもどすときだけでなく、人気列車のきっぷを入手するうえでも役立ちます。


わー、諦めたサンライズ号、別の日に乗ろうと思ったら満席だった!

出発日2日前に、もう一度窓口を覗いてみるのをお勧めします!

払いもどし手数料が前日になると爆上がりするのは、鉄道ファンの間ではよく知られています。すると何が起こるかと言うと、スケジュール的に乗車が厳しくなった列車のきっぷは、出発日2日前に払いもどされがちということ。
人気列車でも、このタイミングで突然空席が出たりします

まとめ…ルールを熟知してお得に乗車しよう!

今回は、特急券や乗車券の中級者向けお得ルールに加えて、寝台券もご紹介しました、ちなみに、往復割引乗車券で「片道601キロにちょっと満たない目的地」と書きましたが、このくらいの距離でよく知られているのは東京駅~新神戸駅589.5キロです。
こうした区間をお得に移動したいときはどうしたらいいか……、本文を読んでくださった方ならおわかりと思います!


著者紹介

蜂谷あす美

旅の文筆家。福井県福井市出身。慶應義塾大学卒業後、出版社勤務を経て、現在に至る。「旅は再訪のための下見」をモットーに、2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅を中心としたエッセイや紀行文などを数多く執筆しているほか、ご当地牛乳にほれ込み牛乳の連載も経験あり。最近はラジオをはじめ、トークでも活躍。著書『女性のための鉄道旅行入門』『もっとお得にきっぷを買うアドバイス50』(ともに天夢人)

オフィシャルHP
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  • 掲載されているデータは2021年10月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
  • 運賃のルールには区間によって特例がある場合があります。ご旅行の際にはホームページや時刻表等をご確認ください。
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