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2022.02.25鉄道JR東海で初めて採用した〇〇も! 「315系」は“乗客思い”なニューフェイス【試乗レポート】

JR東海に「315系」の新しい風が吹く! 22年ぶりの新型車両を徹底解説

来る2022年3月5日にデビューする、JR東海の在来線通勤型車両315系。実に約22年ぶりの新型車両ということで、注目度が高まっています。随所に新技術が投入され、快適性はもちろんのこと、セキュリティ面でも大幅にパワーアップした315系の魅力を、鉄道写真家・村上悠太が紹介していきます!

洗練されたデザインへ。先進的な315系


名古屋駅に到着する最新鋭315系 名古屋駅に到着する最新鋭315系

315系はJR東海の在来線を走る新型車両で、3月5日のデビュー時点では中央本線の名古屋〜中津川間に投入されます。2023年度中には、同区間の特急列車を除くすべての車両が315系に統一される予定です。また、この315系の登場により、1987年のJR東海発足時に国鉄から継承された車両が全て、JR発足後にデビューした車両に置き換えられます。中央本線でデビュー後も東海道本線などで活躍する211系、213系、311系を随時置き換えるため、増備が予定されています。


211系 315系の登場により、国鉄から継承された211系(右)から置き換えが進められていきます

今回登場した315系は8両編成。エクステリアデザインのコンセプトは「先進性×親近感」。直線的な新しい前面形状と、JR東海のコーポレートカラーである親しみ深いオレンジとホワイトのラインが特徴です。車外行先表示器には「カラーユニバーサルデザイン」に対応したLED表示器を装備。号車番号や車椅子スペースなどのピクトグラムも大型のものを採用し、誰でも見やすく、確認しやすいようになっています。ドア上部にもオレンジのラインを入れ、将来的にホームドアなどが導入されても、「315系らしさ」が一目でわかる工夫もされています。


コーポレートカラーのオレンジを基調にしたエクステリアデザイン コーポレートカラーのオレンジを基調にしたエクステリアデザイン

315系の各種表示 315系の各種表示は誰もが一目でわかりやすいものを採用

全てが新しい。315系の内なる魅力は“乗客思い”

車内は明るい白を基調とし、ブルーのシートモケットが鮮やかな空間になっています。シートは腰部の負担を軽減するランバーサポートを採用し、座面幅も211系に比べて1cm拡大。実際に座ってみると、見た目以上にしっかりと腰をサポートしてくれるのがよくわかります。


315系の車内 315系の車内。全車両ロングシートが採用されています


315系の腰部を支えてくれる新シート 腰部を支えてくれる新シート。快適です!

315系の床面のグラデーション 床面のグラデーションは開放感を演出するだけでなく、座っている人が足を投げ出さないよう自然と意識するようなデザインになっています

座席端部の「裾仕切り」には透明ガラスを入れ、開放感が損なわれないように工夫。優先席付近はシート、つり革だけでなく、床面の色も変え、また大きな文字によってわかりやすくなっています。車椅子やベビーカー利用時に便利な「車椅子スペース」も全車両に1箇所設けられており、315系であればどの号車に乗っても車椅子スペースが利用でき、バリアフリー面も大幅に向上しました。あわせて編成に1箇所設置されている車内トイレについても、車椅子対応のバリアフリータイプになっています。


315系の裾仕切り部の透明ガラス 裾仕切り部の透明ガラス


315系の優先席付近 優先席付近はこのようにわかりやすくなっています


315系の各号車にある車椅子スペース 各号車にある車椅子スペース

315系の編成に一つ備わるバリアフリー対応のトイレ 編成に一つ備わるバリアフリー対応のトイレ

乗り心地ももちろん従来車より向上。これまで一つの硬さにしか調節できなかった軸ばねを、上下・左右・前後の方向ごとに設定することで、左右・上下の振動を低減しています。315系の軸ばねは上下方向はやわらかく、その他の方向は硬く設定されています。

そして、シート中央部にも手すりを設置。つり革の設置数も増え、JR東海では初めて乗降口付近に枕木平行方向にもつり革が取り付けられました。そして、このつり革にちょっとご注目! なんと315系のつり革は、3種類の高さがあるんです! それぞれ、床面から1.8m、1.7m、1.6mの高さになっており、つり革のつかみやすさと不意に頭などにぶつからないといった利便性を両立しています。


315系の枕木方向に新設されたつり革 枕木方向に新設されたつり革


315系の高さの異なるつり革 高さの異なるつり革

細かいところでは、既存の211系に比べて車両床面高さを約5cm低くし、さらに乗降口のドアレール部分を若干ホーム側に傾斜させることで、ホームと車両の段差を縮小。車椅子やベビーカーを使用していてもよりスムーズに乗降ができるようになっています。


315系の乗降口 床面高さを下げて乗降口の床面をホーム側に傾斜させることで、211系に比べ約5cm車両とホームの段差を縮小

国内初、AIが車内温度を制御! さらに安心安全の車内防犯強化も

今回の315系では、鉄道利用者からの声も反映されています。「最も多く寄せられている声は?」とJR東海の担当者さんに尋ねてみると、ずばり「車内の空調についてですね」とのことで、315系は211系よりも冷房性能を約3割パワーアップ。さらに、AIによる自動学習・制御最適化性能を国内で初導入。車内に取り付けられたセンサーで感知した情報をもとに、車外のコンピュータと通信。AIが車内温度の傾向などを自動学習し、快適な車内温度になるように制御する機能を採用しました。また、8両編成中1両に「弱冷房車」も設定。意外かもしれませんが、実はJR東海初の弱冷房車なんです!


JR東海で初登場の弱冷房車 JR東海で初登場の弱冷房車

JR東海で初採用した窓 窓は赤外線・紫外線を99%カットするガラスをJR東海で初採用しカーテンレスに。窓上部は開閉可能で換気性と遮音性、車体剛性を両立

そして最近では、ちょっと気になる車内セキュリティですが、315系では1両に5箇所もの車内防犯カメラを設置。加えて緊急時に乗務員と直接通話できる非常通話装置も1両に付き3台設置。万が一の際にこの装置を取り扱うと、瞬時に車内防犯カメラと連動して音声だけでなく、カメラで捉えられた映像と共に乗務員が状況を確認することができるシステムになっています。東海道新幹線などの車両では車端部にあるこの非常通話装置ですが、315系では乗降ドアの横に設置することで、車内のどこにいても通報しやすい設計になっています。


315系の車内の防犯カメラ 車内の防犯カメラ


315系の非常通話装置 非常通話装置


315系の運転室 315系の運転室

走行装置も重要な機器の2重系化、安全性向上台車の採用、長時間の停電が発生した際でも安全な場所まで自力走行や車内空調が使用できる非常走行用蓄電装置を採用するなど、見えないところでも安心が進化。快適で安心な315系のデビューが今から楽しみです!

  • 非常走行用蓄電装置は2022年夏以降随時搭載開始予定

著者紹介

村上悠太

1987年鉄道発祥の地新橋生まれ、JRと同い年の鉄道写真家。
交通新聞社刊「鉄道ダイヤ情報」では「ユータアニキ」としてあらゆる現場で鉄道を支える「鉄道HERO」たちの取材を続ける。元々旅好きから写真を始めたので、乗り物に乗って旅をしながら写真を撮るのが大好き。

Twitter:https://twitter.com/yuta_murakami
Instagram:https://www.instagram.com/yuta_murakami/

  • 写真/村上悠太
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