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2022.08.18鉄道E131系(JR東日本) 郊外・地方のさまざまなニーズに応える万能選手

柔軟な編成を可能としつつ、車内サービスも充実した期待の車両

鉄道ファンといえば新幹線、観光列車に特急列車が好き……。それはもちろんその通り。

しかし日々の通勤や通学を支える普通・快速列車にも、たまらない魅力が隠されています。さながら実家のような安心感と最先端の技術を兼ね備える不思議な存在、それが普通・快速列車なのです。

今回は、路線に合わせて柔軟に編成を組み替えることができ、郊外や地方に最新のサービスを提供するE131系を紹介します。

E131系の基礎知識

2両から柔軟に編成を組み替えられる1M電車

E131系は、2021年3月に登場した、JR東日本の新型直流電化用通勤電車です。最高速度は110km/h。大都市郊外や地方都市向けの標準形車両として設計され、205系や209系といった国鉄世代の通勤電車を置き換えることになりました。

このE131系はまず房総・鹿島エリアの内房線・外房線・鹿島線に投入されたのち、同年11月からは相模線、2022年3月からは栃木エリアの宇都宮線・日光線でも運行を開始し、首都圏の周辺エリアの通勤・通学輸送を支える存在となっています。


E131系の特徴は、その柔軟性にあります。

これまで使用されてきた205系や209系は、機器類を2両に分散配置する「ユニット方式」を採用してきました。これは、複雑化する機器類を無理なく搭載でき重量バランスもよいといったメリットがありましたが、最短でも4両編成を組む必要がありました。

一方でE131系は、主電動機(モーター)や主制御装置など、走行に必要な機器類を1両にすべて搭載した「1M方式」を採用することで、最低2両からの運用を可能にしたのです。

近年は機器類の小型化・集積化が進んだおかげで、1両に無理なく高度な機器類を搭載できるようになり、編成を柔軟に組み替えられる1M方式が見直されています。E131系は、この1M方式を採用することで、乗客の数に合わせて自由に編成両数を増減できるようになっているのです。

故障の予兆を把握できる状態監視機能搭載車も

標準化も意識されており、勾配の多い区間で必要なブレーキ抵抗器や、寒冷地で使用する霜切パンタグラフなど、地域ごとに必要な機器を増設できるように設計されています。

また、郊外・地方路線向け車両の乗降扉は片側3扉が主流でしたが、都心などホームドアが整備された駅にも乗り入れられるよう、E235系などと同じ片側4扉が採用されました。


車いすスペース

液晶画面

もちろん、バリアフリー設備や情報提供システムも充実しています。各車両に車いすスペースを設けたほか、扉上部には次の停車駅やドアの開く方向などを表示する17インチ液晶画面を配置。

ワンマン運転や、乗客がボタンで扉を開閉する半自動ドアにも対応しており、都心から郊外まであらゆる直流電化区間に対応できる、万能電車に仕上がりました。また、一部の車両には車両搭載機器や線路設備の状態監視機能を搭載して、故障・トラブルの予兆を把握できるようになっています。

E131系 0番代

観光客向けにクロスシートも装備


内房線・外房線・鹿島線に投入された車両です。主電動機・運転台付きのクモハE131形と運転台付きのクハE131形の2両編成を基本とし、最大3編成6両で運行することができます。

車体前面部はシンプルなブラックフェイスに波しぶきをイメージした水玉模様をデザイン。側面には房総の海を表す明るい青と、菜の花を表現した黄色のラインが配置されています。


客室はE235系1000番代に準じた設計でロングシートが主体ですが、房総エリアは観光客の利用も多いことから、向かい合わせの4人掛けクロスシートも左右に1組ずつ設けられています。

また、1人当たりの座席幅は209系の450mmから460mmに拡大されたほか、車いすに対応したトイレも備え、通勤・通学にとっても、観光客にとっても居住性の高い車両に仕上がりました。

【おもな運行線区】
内房線(木更津駅〜安房鴨川駅間)、外房線(上総一ノ宮駅〜安房鴨川駅間)、鹿島線

E131系 500番代

205系を受け継ぎ4両固定編成で登場


相模線では、1991年の電化以来一貫して205系500番代が使用されてきましたが、2022年3月にE131系への置き換えを完了しました。500番代は205系時代と同様に全列車4両編成で運行されるため、運転台のない中間車2両を加えて「クハE130+モハE130+サハE131+クモハE131」という編成になっています。

外観については、深く遠くまで広がる湘南の海をイメージした濃淡2種類の青を使用し、前面部には湘南のダイナミックな波しぶきを水玉模様で表現しています。客室はオールロングシートで、トイレは装備していません。

【おもな運行線区】
相模線・横浜線(八王子駅〜橋本駅〜茅ケ崎駅間)

E131系 600番代

中間電動車は片方の台車だけ主電動機を積む


栃木エリア向けの車両で、乗客数の実態に合わせて3両編成を基本とし、最大2編成6両で運行することができます。0番代は2両、500番代は4両、600番代は3両と、編成を柔軟に構成できる、E131系の強みを存分に発揮していると言えるでしょう。

なお、600番代は「クハE130+モハE131+クモハE131」という編成ですが、E131系は電動車と付随車(動力を持たない車両)の比率を1:1とする仕様であるため、中間電動車のモハE131形600番代は片方の台車にのみ主電動機が搭載されています。

車内はオールロングシートで車いす対応トイレを装備。外観は栃木県の宇都宮市で復元された火焔(かえん)太鼓の山車(だし)をイメージして、黄色と茶色の2色が採用されています。

【おもな運行線区】
宇都宮線(小山駅〜黒磯駅間)、日光線


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。

小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。

東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。

主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「東北新幹線沿線の不思議と謎」(実業之日本社)、「東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!」(東洋経済新報社)ほか。

  • 写真/交通新聞クリエイト、PIXTA
  • 掲載されているデータは2022年8月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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