トレたび JRグループ協力

2022.02.25鉄道国鉄時代の時刻改正会議は「温泉場」で行われていた?! 荒木文宏さんと伊藤壮吾さんの「ダイヤ改正」いま・むかし

荒木文宏さんの改正体験×伊藤壮吾さんの溢れだす鉄道愛の化学反応! 「ダイヤ改正」を深掘り対談

国鉄時代にダイヤ改正に携わっていた荒木文宏さんと、鉄道好きで“乗り鉄”・“時刻表鉄”で知られる伊藤壮吾さん。
荒木さんが温泉場で行っていたという「温泉会議」の秘話から、伊藤さんが注目するダイヤ改正のポイントと夢のツアーまで、“ダイヤ鉄学”満載の対談をお届けします。
『JR時刻表』×トレたび 連動企画です。

昭和から令和まで。衝撃的、画期的だった「ダイヤ改正」

2週間以上、缶詰め! 国鉄時代に行われていた伝説の「温泉会議」

伊藤 僕は2003年生まれなのですが、国鉄時代のことが書かれた本や時刻表を読むのがすごく好きなんです。国鉄時代は、どんなふうにダイヤを作っていたんですか?

荒木 当時は、大きなダイヤ改正を行う時には「時刻改正会議」を行っていたのですが、温泉場で行うことが多かったので「温泉会議」と呼ぶことがありました。

伊藤 温泉場で会議!?

荒木 本社の運転局列車課が中心になって全国につながる列車ダイヤを作るため、複数の鉄道管理局をまとめる支社の担当者が集まって2週間以上缶詰めになるんです。温泉場の大きな旅館やホテルを借り切って、毎日順番に各支社と調整をします。たとえば東京から九州まで行く列車は途中、いろんな管理局を通りますね。まず東京の管理局で東京発の時間を決めると、次は静岡の管理局とダイヤを調整します。その次は名古屋、その次は大阪、岡山……という具合に調整して九州までダイヤをつないで1本の列車を完成させるのです。このときに本社と複数の管理局をまとめる支社との間で調整を進めます。支社や管理局にはそれぞれの要望がありますから、本社は支社を通じてその気持ちをくみつつうまく調整するのが役目でした。

伊藤 2週間、ものすごい缶詰めですね……!

荒木 夜は12時過ぎまでやりますし、寝ている間も、頭の中でダイヤのスジ(横軸が時間、縦軸が距離のダイヤの線)が渦巻いてますから、だんだんみんな顔つきが変わってきます(笑)。そこで10日目くらいに、「1日休もう!」とみんなで息抜きのために近くの名所などを見に行くんです。仕事で温泉会議なんてけしからん、なんて話もありましたが、温泉じゃないと到底もちません。でも、それも含めて楽しかった思い出ですよね。伊藤さんは、毎年ダイヤ改正のどんなところに注目していらっしゃいますか?

近年で印象に残っているダイヤ改正は、2015年の上野東京ライン開業


上野東京ラインが表紙の『JR時刻表』2015年4月号 上野東京ラインが表紙の『JR時刻表』2015年4月号

伊藤 僕は毎年、ダイヤ改正は各社のリリースが出た日に全部読むんです。まず最初に自分が普段使う路線と、乗ってみたい電車の確認をします。昼行特急では最長の宮崎空港から日豊本線まわりで博多まで行く〔にちりんシーガイア〕の787系、あの個室に乗るのが夢なので、それは必ずチェック。あとは、自分がいつも乗る路線で直通運転をする列車の番号。末尾のアルファベットで会社がわかるので、どの時間にどの会社の車両が来るのかを調べます。でも、僕が気になる細かいところまではリリースには書かれていないので、ダイヤ改正発表後は、時刻表が出るのを楽しみに待ってます。

荒木 なるほど、面白いですね。近年で印象に残っているダイヤ改正はありますか?

伊藤 2015年の上野東京ラインの誕生です。常磐線が品川まで行くことが、衝撃的でした。改正直後に、1面2線で上りも下りも同じホームで見られる新橋駅に見に行ったんですが、長い15両編成の常磐線が何本も入ってくる姿に、なんてカッコいいんだと感動しました。

荒木 上野東京ラインは、利便性以外にも大きなメリットがあったんですよ。それまでは東北本線は上野駅で、東海道本線は東京駅での折り返し運転だったので、簡易清掃や乗務員交代などをする間、ホームにとまっている時間がどうしても長くなります。直通運転だと、乗客が乗り降りする時間だけ停車していればよく、ホームがすぐに空くので列車が増発できるという利点もあるのです。このように中距離電車では、1981年に現在の形になった横須賀線と総武快速線の直通運転にはじまり、2001年からは新宿駅経由ですが湘南新宿ラインで行っています。また、大阪駅を通り抜ける中距離電車の運転は古くから行われています。

新幹線の「高速化」に秘められた開発ドラマ

伊藤 つくづくすごい変革だったんですね。ちなみに今年のダイヤ改正では、僕は東海道新幹線〔のぞみ〕などの速達化にも注目しました。

荒木 新幹線のスピードアップが実現したのは、環境基準を守りながら車両の性能をあげることができたからなんです。日本は厳しい環境基準を持っていて、車両の性能より、環境対策のためにスピードが抑えられているという面があります。

伊藤 環境対策というのは、列車走行時の音、でしょうか?

荒木 そうです。パンタグラフの風切り音(空力音)、車体と空気の摩擦音、車輪から出る駆動系音、それから高架橋などを走る際に出る構造物音、列車が高速でトンネルに進入したときに出る微気圧波による音。現在これらが解決すべき環境目標なんです。これが全部クリアできて、初めてスピードアップができる。たとえば東北新幹線の〔はやぶさ〕の設計速度は営業速度よりかなり高いのです。現在は、320km/hで走っていますが、もともと300km/hでした。パンタグラフを2つから1つに減らせば、空力音が半分になるよね、ということで徹底的な技術開発をし、1つでも離線しない安全なパンタグラフを作り、速度アップすることができました。近い将来には、あらゆる環境対策を行って、〔はやぶさ〕は360km/h運転を実現できるかもしれません。


荒木文宏さん 荒木 文宏さん

伊藤壮吾さん 伊藤 壮吾さん

急ぐ旅は新幹線、旅を楽しむなら在来線とツアー列車に期待!

伊藤 さらに高速化する新幹線! これからも楽しみです。

荒木 急いで行く旅は新幹線、のんびり旅を楽しむなら在来線で。そんな時代に合わせたダイヤ改正になっていくといいなあと私は思います。

伊藤 僕も、JR東日本のウェブサイトの「のってたのしい列車」のように、乗ることが目的の列車がたくさん登場するとうれしいです。国鉄時代のお座敷列車や、団体専用列車などでよく使われる「ジョイフルトレイン」は憧れです。個人的には、鉄道の車庫や工場に行くツアー列車を企画してほしいなぁ。たとえば朝、東京を出発し、三島にある通称「三島のジャンプ台」(三島車両所の着発線)を経由し、浜松のJR東海 浜松工場を見学、大阪まで行く鉄道旅。“妄想鉄”なので、脳内でダイヤを引いているんですが、いかがでしょうか?

荒木 おお、楽しそうですね(笑)。


荒木 文宏(あらき ふみひろ)
1941年生まれ。鉄道博物館副館長。1966年日本国有鉄道入社。以来、運転局、民営化後の運輸車両部、三鷹電車区長、大船工場長などを歴任。2007年より公益財団法人 東日本鉄道文化財団に所属し、鉄道技術史研究などに携わる。著書に『なぜ日本の列車は秒刻みで動くのか』(交通新聞社新書)がある。

伊藤 壮吾(いとう そうご)
2003年生まれ。2015年に結成された9人組ダンスボーカルユニット「SUPER★DRAGON」のメンバー。幼いころから鉄道好きという一面を持ち、2019年にはテレビ朝日『タモリ倶楽部』に出演。公式YouTubeチャンネル「伊藤壮吾の鉄道チャンネル」も好評配信中。

まだまだある改正秘話は『JR時刻表』2022年3月号で!

ダイヤ改正で最も重要な準備とは? 今年のダイヤ改正で注目するところは?
荒木 文宏さん×伊藤 壮吾さんの対談は、『JR時刻表』2022年3月号もぜひご覧ください!


JR時刻表2022年3月号

3月号は「3月12日(土)JRグループダイヤ改正号」です。
※改正線区は3月12日からの内容です。
巻頭カラーページでは「3月12日(土)JRグループダイヤ改正トピックス」のほか、特集「深掘り! ダイヤ改正」にて、荒木文宏さんと伊藤壮吾さんの対談や昭和から現在へとつながるダイヤ改正の歴史を振り返ります。「十人十鉄~だから、鉄道が好き」「モノ鉄コレクション」も好評連載中です。

【JR時刻表とは】
JR線の全線全駅を掲載。主要駅の構内図、私鉄、国内線航空ダイヤも収録。駅の旅行センター・みどりの窓口でも使われている時刻表です。
見やすい2色刷り/JR6社共同編集/JR6社の主要ニュースを掲載

●本記事はJR時刻表2022年3月号との共同企画です。


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  • 取材・構成=さくらいよしえ 撮影=交通新聞クリエイト ヘアメイク(伊藤 壮吾)=大矢祐奈
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