日田彦山線BRTについて教えて!
『JR時刻表』編集部がJR各社に鉄道にまつわるさまざまな疑問をQ&A方式で聞いていく連載です。
今回は……
Q. 日田彦山線BRTについて教えて!
日田彦山線BRTの導入が地域交通に与えた影響について、JR九州に聞いてみました!
A. 「ひと、地域、みらいにやさしい」交通機関を目指しています。
未曾有の災害を乗り越え開業した日田彦山線BRT
2017(平成29)年7月の九州北部豪雨により、JR九州管内では16路線が運休し、109件の被害が発生しました。特に日田彦山線は添田~夜明間(約30km)において、線路の流失・土砂の流入・鉄道橋の損傷など、63件にも及ぶ甚大な被害を受けました。この未曾有の災害からの地域交通の復旧はJR九州単独では難しく、地域の皆さまと協議を進めた結果、2020年7月にBRT (※)での復旧が正式決定しました。そして、2023年8月28日に「ひと、地域、みらいにやさしい」をメインコンセプトとした日田彦山線 BRTが地域に根差した新たな交通機関として開業しました。日田彦山線BRTには「BRTひこぼしライン」という愛称があり、「日田“彦”山線の“星”」として未来に向けて駆け抜け、輝き続けるという願いが込められています。
- ※BRT(Bus Rapid Transit)とは、専用走行区間の確保など、走行空間・車両・運行管理等にさまざまな工夫を施すことにより、従来のバスよりも速達性・定時性・輸送力を向上させた次世代のバスシステムです。
地域の思いを形に、JR九州こだわりのデザイン
日田彦山線BRTの顔ともいえるデザイン設計は、JR九州の社員を中心としたメンバーが地域の皆さまとコミュニケーションを図りながら行いました。社員主導の路線ブランディングも日田彦山線BRTの特徴のひとつです。
① ロゴデザイン
「フォレストグリーン」を基調にしたロゴデザイン
沿線地域の緑豊かなカラーを表す「フォレストグリーン」を基調にしたロゴに込めた想いは「ともに輝く」です。「ひこぼし」が添田町・東峰村・日田市を駆け抜け、照らした道が「ひと・モノ・コト」をつなぐ線・ラインとなり、地域に新たな魅力・輝きを創り出すことをイメージしました。
② 車両デザイン
外装デザインは「おりひめの羽衣」をイメージしており、色とりどりにきらめく地域の魅力を全7色で表現しています。1台ごとに色を変えることによって同じ車両でも違ったものに感じられ、乗車時の楽しみのひとつにもなっています。
全7色の外装デザイン
導入車両はすべてノンステップバスを採用し、「電気バス」においては沿線の自然環境を守るだけでなく、災害時の非常用電源としての活用など、地域への貢献を目指しています。
また、USB充電ポートや握りやすい吊り手の採用など、長距離乗車のお客さまへの配慮に加え、日・英2カ国語の車内放送やオリジナルのチャイム音、ワイドタイプの運賃表モニターの採用など、海外からのお客さまや初めてご利用になるお客さまも安心してご乗車いただけるように設備面でも「やさしい」車内環境となっています。
③ 駅デザイン
一部のBRT駅に設置する待合ブースには、駅ごとに木材を活用して地域の特色を表現し、独自性にあふれた温かみのある空間を創り出しています。
彦山駅では山伏が頭につけている「頭襟」を木材で表現
沿線地域の生活に配慮したダイヤ設計で利便性が向上
添田~日田間(約40km)の病院・学校・市役所・商業施設等、生活拠点に近いエリアへ36のBRT駅を設置し、ダイヤは鉄道のおよそ1.5倍となる全32本を設定しました。これによって、鉄路では難しかった生活拠点や目的地へのダイレクトなアクセスを通じた利便性の向上を実現しています。例えば、添田駅ではBRT及び鉄道相互で乗り換えをするお客さまが多いと想定されることから、日田彦山線の列車時刻にあわせたダイヤを設定し、列車と同じホームで乗り換える「対面乗換」を採用することでスムーズな乗り換えを実現しています。
列車と同じホームで乗り換える「対面乗換」
さらに、一部の便は日田市中心部の各高校付近を経由する「高校ルート」経由便とし、通勤・通学時間帯の利便性と日中の速達性を両立させたダイヤも設定しました。これによって、自宅の最寄りから高校までダイレクトに通学が可能となり、お客さまから喜びの声を多くいただきました。
現在、日田彦山線BRTは、開業前の鉄道利用者数を上回っており、多くのお客様にご利用いただいています。また、ウォーキングイベントや沿線に点在する酒蔵を巡るイベントなど、小回りのきくBRTならではの企画を通じて、地域の皆様とともに新たな沿線の魅力を発見する活動も行っています。「BRTひこぼしライン」の愛称のとおり、BRT が日田彦山線の星としてさらに光り輝くよう、「ひと、地域、みらいにやさしい」交通機関を目指します。
- ※『JR時刻表』2025年8月号掲載時点の内容です。
- ※画像=JR九州提供
- ※構成=時刻表編集部