トレたび JRグループ協力

2024.02.24鉄道友近が語る、想像力を掻き立てられる鉄道の世界

列車旅は雰囲気満点! ドラマの主人公気分に浸りきる

数多くの番組やプライベートでも鉄道に乗車する、芸人・友近さん。友近さんが考える、鉄道の楽しみ方とは……?
『JR時刻表』2024年3月号(2月24日発売)「十人十鉄」の誌面に載せきることができなかったエピソードをフルバージョンとしてお届けします。

『JR時刻表』×トレたび連動企画です。

時刻表は持ち歩きサイズを愛用

車がないので、プライベートでの移動は列車。最近ようやくネットで検索するようにもなりましたけど、それまでは時刻表を持ち歩いて調べてたんです。コンパクトサイズの時刻表がほんっとに好きで、毎月買ってました。紙をめくる音も好きやし、船やバスへのアクセスものってる。
こっちのほうが調べるの、早いです。

車窓や車内の会話から妄想が始まる

地元の愛媛県では海が見える人気の観光地になってる下灘駅も近くて、よく行ってましたね。大人になって帰省する時には新大阪から岡山まで行って、岡山から特急〔しおかぜ〕に乗って松山へっていうのがしょっちゅうでした。

鉄道はまったく詳しくないんですけど、列車で旅をするのはすごい好き。
やっぱり景色を見るのが好きで、基本的に壁に遮られず進行方向側の遠くの景色が見えやすい後方の窓側がお気に入りです。田園風景もいいですし、海が見える方もいいですね。

普段利用してる電車からの風景って「絶景‼」って感じではないじゃないですか。民家やマンションがあって。でも、それを見るのが好き。民家ギリギリのところを走ると、この音が当たり前になって暮らしてるのかな、どこでこの音と折り合いをつけてるのかなって考えたり、駅から近いマンションに電気がともってると今何してんのかなって。
人の暮らしを想像するのが好きですね。目に入ったものから想像を張り巡らすっていうか。


瀬戸内海の眺望が美しく広がる駅として有名な下灘駅(写真提供=友近)

魅力を感じるのは、動く「部屋」

でも基本はやっぱり観光列車に乗りたい。人気のあるところって取れないし、スケジュールを合わせるのが難しいので、やっぱりロケで乗る機会の方が多いですね。


特急〔36ぷらす3〕の美術館のような内装は絵になる(写真提供=友近)

なかでも思い入れが強いのは、JR九州の特急〔36ぷらす3〕。
実際できてすぐ、私のコントのキャラクター・涼風 凜が紹介するYouTubeで撮らせてもらったんですが、それは本当に乗りたいから、企画したんです。
外観は黒でかっこいいし、内装の設計を水戸岡鋭治さんがされていて、ずっと乗ってみたいっていうのがあったんです。
で、乗ってみたら、やっぱり本当に旅館が走ってるような感じ。
靴脱いで畳とか、もうすべてが現実離れしてました。

10代の頃から、列車とか船とか飛行機とか、ちゃんとした部屋なのに動くものが好きで、寝台特急や観光列車の部屋が見たくて、本をめっちゃ買ってました。その頃は、デザインを凝ったらもっと洗練されるけど、この昭和な感じがいいのかなーとか、そんなこと思いながら見てたのに、最近の観光列車はすごい進化してて、ほんとガラッと変わってきてるので、すごいなって思ってます。


メタリックグレーの外装が光る特急〔36ぷらす3〕(安全に配慮して撮影しています)(写真提供=友近)


2021年に特急〔36ぷらす3〕に乗車した際に食べたお料理(写真提供=友近)

列車で食べる駅弁や料理も楽しみ


プライベートで乗車した「えちごトキめきリゾート雪月花」(写真提供=友近)

〔36ぷらす3〕でもそうですけど、ほかの列車でも食事を楽しんでます。
プライベートで乗りに行ったのは、「えちごトキめきリゾート雪月花」。カウンターの、窓向いて座る席を取ったんですけど、展望がすごい。しかも、フランス料理が三段重で出てきて、めちゃめちゃ豪華。

“食”はすごい重要で、景色メインでお食事を食べながら、飲みながらっていうのがすごい好きなんです。
こんな豪華な弁当あるのかって感動したのは特急〔ゆふいんの森〕。めちゃめちゃおいしくて、ワクワクするような食材がたくさん乗ってて、ぎっしりおかずが詰まってて、重たいんですよ、弁当が。木箱を紙でくるんでる感じがまた良くて、今までの列車の弁当の中であれが一番です。

匂いやノスタルジックな情景にも引かれる

夏のJR北海道の〔富良野・美瑛ノロッコ〕号も良かったですね、ラベンダー畑がきれいで。トロッコもすごく好きで、京都の嵯峨野観光鉄道のトロッコにも乗りました。
景色見ながら、風を感じながら、トロッコ列車乗れるのはすごく楽しい。
トロッコじゃないけれど、津軽鉄道のストーブ列車もいい。スルメをストーブの上で焼けるし、ストーブの匂いとかも好きだし、やっぱり昭和が好きなんでしょうね、昔の風情が。

北海道には「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで知られる愛国駅・幸福駅があるんですが、そのプレートが祖父母宅にあったんです。
小さい頃は、「愛国・幸福ってなんやろう?」と思ってましたけど、ロケで出かけた時、わぁ、おじいちゃん、おばあちゃん家にあったやつや、これやったんやって、すごい懐かしい、ノスタルジックな気持ちになりました。
祖父は国鉄の職員で列車に乗ってたんで、たぶん行ってたんですね。蒸気機関車とかのパネルもいっぱい家にありましたし。

そうそう、蒸気機関車といえば、〔SLやまぐち号〕とかにも乗ったことがあって、SL系も好きですね。やっぱり石炭の、あの匂いが好きなんです。昔住んでた家の近所にあった石炭工場の匂いと一緒やな、とか。
あと私、船も大好きで、同じディーゼルの匂いがするディーゼルの列車も好き。そう言ったら、匂いでそそられる列車も多いですね。


2013年撮影の、山口線 津和野~船平間を走る〔SLやまぐち号〕(写真=交通新聞クリエイト)

鉄道の旅はみんなで行くのも一人で行くのも楽しい

私はロケを、仕事というよりプライベートやと思ってまして、なんならロケの方が楽しい。仲のいいみんなで行けるし、素の自分でカメラを気にせずしゃべってる。帽子もマスクもなくてオープンで、その場を楽しんでやるっていう感じです。
とにかく楽しみたい、全てを。そう思ってロケをするのが、私のポイントです。

プライベートの列車旅に一人で行ったら、誰ともしゃべらずにボーっとしてます。その雰囲気を味わいに行くのが、ひとり列車旅の醍醐味ですから。

ひとり列車旅ではドラマの主人公になる

ひとり旅では、ポール・モーリアの『エーゲ海の真珠』とかの曲を聞きながら海岸線を走って、一人ブツブツちっちゃい声で即興芝居をよくします。
それこそ日本海側なんかで曲を聞くと、すっごいドラマの主人公になれるんです。訳アリな女性に興味があって、息子を親戚のおじさんに預けて、息子はお母さんがいなくなるって知らず、“ちょっと出かけてくるね”くらいで出て行って、どっかの水産加工工場で働くために向かっていく素性のしれない女の設定とか。
感情が入りすぎて泣いたこともあります。変な時間の過ごし方でしょ。

NHKのある番組のテーマ曲の『夜明けのまなざし』っていう曲もめちゃくちゃ気分出てきます。この曲からいろんなストーリーが沸いてきて、あれは魔法の曲ですね。
即興芝居は喫茶店とかではできないですね。やっぱり列車に乗って、ガタンガタンと揺れる列車の振動と流れる車窓で、護送されてる、移送されてるっていう気分になれるんです。

列車を舞台にした事件ファイルものの本とかもよく買ってるんで、緑色に映る暗視カメラの映像とかとか、ドラマのワンシーンを想像するんです。雰囲気出ますよ。

今まで見逃していた場所にも行きたい

旅に出るモチベーションは、やっぱり環境を変えたいと思うから。あとは、日本にはこんなに素晴らしい場所がいっぱいあるんだって。まあこれは、仕事しながら知りましたけど。
今からの人生、あと50年は生きられないかな……? そのうちに、日本全国を満喫することができるかなって考えたら、もうじっとしてられないと思って、毎月どっか行きたいってなりました。
夕方現地に到着して、次の日の朝、戻って仕事。これしか時間が取れなくても、旅行が好きなんで行きますね。

移住の番組もやってるんですけど、本当に将来、移住するなら、こういうとこもいいかな、ここで生活するとこんな感じかなって、移住先を探す旅でもあったりします。
47都道府県は基本、全部もう行きましたけど、ゆっくり滞在したことがないんで、もうちょっとそれをやりたいんです。

今、気になっているのは山口県。
今まで、ぶっちゃけた話、そこまで引かれてなかったんです(山口の方、ごめんなさい)。愛媛から近かったし、修学旅行でも行ったし。でも、改めて調べてみると、これも山口にあったんやとか、すてきなスポットがたくさん。
急に山の中に現れるテーマパークのようなお店「いろり山賊」があったり、「女将劇場」という、70歳くらいのおかみさんが100種類の芸を披露するエンターテインメント劇場が毎晩開いてたり。おかみさん、しゃべりまくってて、もう腹かかえて笑いました。そのバイタリティーとかパワー、めちゃめちゃすごい。
海鮮も全部おいしいんです。

あと佐賀。
あんまりプライベートで行かないとこでしたけど、〔36ぷらす3〕で行ったら、やっぱり食べ物おいしくて、いい旅館もできてるし、これ、来てみないと、わかんないなって。
そう思うと、全国やっぱり飛んでいきたいです。

今、コントのキャラの「水谷千重子47都道府県ありがとうコンサート」をやらせていただいてるんですけど、主要都市じゃないちょっと田舎に行ってみたくて、意図的にそういう場所に会場を押さえているんです。

今、気になる観光列車あれこれ

全国の観光列車のクオリティーがあんなに高くて、しかも増えてるっていう事に驚きます。
今、気になってるのはあいの風とやま鉄道の「一万三千尺物語」。お寿司をカウンターで握ってくれ、それが出てくる。私、白エビ食べたい。で、富山の景色を見ながらっていうのに、すごく引かれます。
あと、JR九州の列車。やっぱデザインとか好きなんで、だからもっと行きたいし、乗りたい。

JR四国の〔伊予灘ものがたり〕は、リニューアルしてからも乗りましたが、愛媛に住んでる親ともいずれ一緒に乗りたいね、みたいな話はしてるんです。


リニューアル前に乗車した〔伊予灘ものがたり〕。下灘駅で撮影(安全に配慮して撮影しています)(写真提供=友近)


車窓に瀬戸の海が広がる〔伊予灘ものがたり〕(リニューアル前)(写真提供=友近)

地元でも旅行に来た気分になる〔伊予灘ものがたり〕(リニューアル前)(写真提供=友近)


〔伊予灘ものがたり〕リニューアル前の記念に撮影(写真提供=友近)

クルーズトレインも乗りたいですね。
「ななつ星in九州」とか、「TRAIN SUITE 四季島」とか。
まだ乗ってないので、どんなものなのかなっていうのを見てみたい。なんかもう、「部屋」が動いてる、みたいなのがあれば、めっちゃうれしいです。


友近(ともちか)

1973年愛媛県出身。2000年デビュー。2003年にNHK新人演芸大賞・演芸部門で大賞、NHK上方漫才コンテストで優秀賞、2004年にABCお笑い新人グランプリで優秀新人賞を受賞。お笑い芸人として活動する一方、女優として舞台・テレビドラマ・映画などに多数出演。2019年『嘘八百』で第28回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。NHK連続テレビ小説『あさが来た』『ブギウギ』など話題作に出演。歌手「水谷千重子」や中高年プロアルバイター「西尾一男」としても活躍中。2023年春夏明治座・博多座で水谷千重子座長公演を開催。


著者紹介

林さゆり

東京都在住。首都圏を軸に、各地をさまよう街歩きライター。郷土が誇る味、温泉、文化に目がない。

『JR時刻表』2024年3月号 リレーエッセイ「十人十鉄」もあわせてチェック!


JR時刻表2024年3月号

3月16日(土)JRグループダイヤ改正号!

今月号は3月16日に実施されるJRグループのダイヤ改正にあわせ、ダイヤ改正後の全時刻を掲載しているほか、巻頭カラーページ「JRグループダイヤ改正トピックス」では、改正の主なトピックスを紹介しています。
また、巻頭特集は「新幹線が北陸を結ぶ 北陸新幹線 金沢~敦賀間開業!」をお届けします。敦賀まで延伸する北陸新幹線のダイヤや新規開業駅などの魅力について、開発に携わる方々に取材しました。
好評連載中のリレーエッセイ「十人十鉄~だから、鉄道が好き」には、芸人の友近さんが登場します。


【JR時刻表とは】
JR線の全線全駅を掲載。主要駅の構内図、私鉄、国内線航空ダイヤも収録。駅の旅行センター・みどりの窓口でも使われている時刻表です。
見やすい2色刷り/JR6社共同編集/JR6社の主要ニュースを掲載

●本記事はJR時刻表2024年3月号との共同企画です。


JR時刻表2024年3月号をもっと見る

  • 取材・文=林さゆり
  • 掲載されているデータは2024年2月1日現在のものです。
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