あなたにとって思い出深い一品はありますか?
毎月、駅で出逢える全国各地のグルメを紹介する連載「駅グルメ」のVol.04です。
今回のグルメは駅弁「竹取物語」。
最新のエピソードは、毎月発行の『JR時刻表』で公開中!
富士山を眺めて味わいたい、彩り華やかな物語(ストーリー)
東海道新幹線随一の絶景・富士山が楽しめる三島駅~静岡駅間。東京から下ると進行方向右手、茶畑の向こうに見え始め、やがて製紙工場と市街地が広がり、富士川の長い橋りょうで3,776mの剣ヶ峰が真ん中にやって来てクライマックスを迎える。その間にある新富士駅で販売されている、富陽軒の名物駅弁が「竹取物語」だ。誕生はその前年、JRが発足した1987(昭和62)年のこと。この年に一度だけ行われた「JR東海駅弁まつり」というコンクールで「JR東海社長賞」に輝いた。選考にあたっては、当時の須田寛社長が、実際に駅弁が作られている現地を訪れ、それぞれの土地の空気と水を感じながら試食されたそうだ。今ではすっかりロングセラーとなり、地元の富士商工会議所によって「富士ブランド」にも認定されている。
「竹取物語」は、地元に伝わるかぐや姫伝説にちなんだかわいらしい掛け紙と竹籠の容器が特徴。オリジナルの箸袋も旅心をくすぐる。ふたを開ければ、金目鯛の塩焼きや帆立、たけのこや椎茸の煮物、駿河湾ゆかりの桜えびが彩りよく盛り付けられていて心が華やぐ。その下に現れる「茹で落花生のおこわ」がご当地らしさの極み。じつは茹で落花生は、静岡県広しといえど、富士山南麓の富士市・富士宮市限定と言ってもいい食文化の一つなのだ。
富士川橋梁を走る東海道新幹線N700系
特急〔ふじかわ〕
〔こだま〕のみが停車する新富士駅限定、かつ平日限定という入手のハードルの高さもまた、時刻表をめくって旅程を組むのが楽しくなる。ちなみに富士に伝わるかぐや姫は、月でなく富士山へと帰っていく。車窓に広がる日本のシンボル・富士山を存分に眺めて味わいたい駅弁だ。この秋、富士山を眺めるなら身延線がおすすめだ。10月に静岡駅と甲府駅を結ぶ特急〔ふじかわ〕が運転開始から30周年を迎える。竪堀駅~入山瀬駅間の潤井川橋梁、西富士宮駅~沼久保駅間の窓いっぱいに広がる富士山は、きっと駅弁を何倍にもおいしくしてくれるだろう。
竹取物語
発売駅:新富士駅 ※販売駅は代表駅のみを記載しています。
ねだん:1,300円(税込)
製造元:富陽軒
次号は駅弁「六甲山縦走弁当」。
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- ※『JR時刻表』2025年10月号掲載時点の内容です。
- ※取材・文・画像=望月崇史
- ※イラスト=佐藤妃七子