あなたにとって思い出深い一品はありますか?
毎月、駅で出逢える全国各地のグルメを紹介する連載「駅グルメ」のVol.07です。
今回のグルメは駅弁「松江の味 お弁当 勾玉」。
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宍道湖の風と味覚で感じる城下町・松江の誇り高い文化
岡山からカーブが続く伯備線を、振り子式車両の車体を傾けながら中国山地を越えていく特急〔やくも〕。新型の273系は、普通車にも可動枕があり、背もたれのフィット感が心地いい。さすが、2025年の鉄道友の会・ブルーリボン賞を受賞した車両だけある。列車は山陰本線に入ると、足取りも軽やかに中海・宍道湖畔を駆け抜けていく。
特急〔やくも〕
特急〔スーパーおき〕山陰本線・三保三隅~折居間
テレビドラマで注目される松江の玄関口・松江駅でお待ちかねの駅弁といえば、一文字家が誇る幕の内弁当「松江の味 おべんとう 勾玉」である。
掛け紙には「お弁当」の文字はあるが「勾玉」はイラストのみというユニークさが目を引く。ふたを開けると顔を出すのが、島根県飯南町産コシヒカリのご飯。一文字家のご飯は、職人さんがその日の気候条件に合わせた炊き方にこだわっている。ご飯を炊く前に、職人さんがまず水をひと口含んで、その日の水の具合を体で感じた上で水温、気温を記録して温度管理を徹底するという。この一期一会のご飯に、松江の郷土料理「しじみのしぐれ煮」がのって箸がどんどん進む。勾玉は三種の神器の一つであるが、幕の内弁当三種の神器の一つとされるかまぼこは、松江らしい「あご野焼き」だ。白魚、えびと宍道湖七珍ゆかりのおかずや味噌にとことんこだわった島根牛の味噌煮が加わって、デザートのフルーツまでまったく飽きさせない。
時に穏やか、時に激しい宍道湖の風と共に城下町・松江の誇り高い文化を味覚で感じたい。勾玉をいただくなら特急〔やくも〕はもちろん、特急〔スーパーまつかぜ〕〔スーパーおき〕で車窓の日本海を眺めていただくのもいい。一番ぜいたくなのは、勾玉型の温泉施設「玉造温泉ゆ~ゆ」でひと風呂浴びて、宍道湖の夕日を眺め、松江駅から東京行きの寝台特急〔サンライズ出雲〕に乗り込むこと。 ミニラウンジでぼんやり移りゆく夜景を眺めながらいただくもよし、出雲の地酒と「勾玉」を傍らにゆったりと味わえば、旅の余韻に浸ることができる最高のシチュエーションだ。
寝台特急〔サンライズ出雲〕
宍道湖の夕日
松江の味 おべんとう 勾玉
発売駅:松江駅 ※販売駅は代表駅のみを記載しています。
ねだん:1,380円(税込)
製造元:一文字屋
次号は駅弁「駅弁屋の幕の内弁当」。
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- ※『JR時刻表』2026年1月号掲載時点の内容です。
- ※取材・文・画像=望月崇史
- ※イラスト=佐藤妃七子

