あなたにとって思い出深い一品はありますか?
毎月、駅で出逢える全国各地のグルメを紹介する連載「駅グルメ」のVol.05です。
今回のグルメは駅弁「六甲山縦走弁当」。
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六甲の風を感じて足取り軽く、駆け抜けるおいしさ
新大阪駅を出た山陽新幹線の下り列車が、最初にくぐる六甲トンネル。全長16キロ余り、山陽新幹線のなかでも屈指の難工事だったという。長い暗闇の先から光が差し込んでくると列車は新神戸駅に到着する。六甲の山並みに抱かれたホームに降り立てば、早くも森林浴気分である。
コンコースの売店で淡路屋の「六甲山縦走弁当」を手にした。最初は日本山岳会の方から山歩きに嬉しいおかずなどのアドバイスを受けて「ハイキング弁当」の名で売り出したものの、あまり目立たなかった。そこで弁当の構成はそのままに「六甲山縦走弁当」と改名すると、約4倍の売れゆきとなり、ヒットにつながったそうだ。
十穀米と麦飯の紅白のおにぎりと幕の内の三種の神器とされる焼鮭・かまぼこ・玉子焼きが入ったコンパクトなお弁当。すきやき風味の牛肉煮やたこ煮が加わり、山海の幸を一緒に楽しめる。何よりご当地らしさを感じさせてくれるのは「いかなごの釘煮」だ。兵庫には春先、我が家で炊いた釘煮を近所に配ったり、遠方の知人に贈ったりする習慣があるという。昨今はいかなごの不漁のため食文化の継承が危惧されているが、その土地の暮らしを思い浮かべて、ご飯と一緒に甘辛な釘煮を噛みしめると味わい深い。実用的でしっかり旅情を感じられる。これぞ「駅弁」だ。
新神戸駅
山陽本線 新快速225系
さあ、「六甲山縦走弁当」をどこでいただこうか。
新神戸駅の1階から駅舎の下をくぐって北側へ出ると遊歩道が整備されていて、布引の滝までプチハイキング気分が楽しめる。野鳥の声を聴きながら歩いて滝を往復してから新幹線に乗りこめば心地よい運動になる。ちょうど腹に駅弁一つ分のスペースは空けられそうだ。車窓を眺めて駅弁をいただくなら、時刻表をチェックして、三ノ宮駅から東海道本線・山陽本線の特急列車や指定席・Aシートのある新快速をつかまえよう。六甲の山並みはもちろん、『源氏物語』ゆかりの須磨の海、明石海峡大橋など、駅弁をより一層おいしくしてくれる車窓がいっぱいだ。
六甲山縦走弁当
発売駅:新神戸駅 ※販売駅は代表駅のみを記載しています。
ねだん:880円(税込)
製造元:淡路屋
次号は駅弁「松山名物 醤油めし」。
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- ※『JR時刻表』2025年11月号掲載時点の内容です。
- ※取材・文・画像=望月崇史
- ※イラスト=佐藤妃七子