あなたにとって思い出深い一品はありますか?
毎月、駅で出逢える全国各地のグルメを紹介する連載「駅グルメ」のVol.16です。
今回のグルメは駅弁「百年の旅物語 かれい川」。
最新のエピソードは、毎月発行の『JR時刻表』で公開中!
炊き込みごはんとガネに心安らぐ、薩摩の母の味!
明治の頃、鹿児島へのメインルートは今の肥薩線だった。駅には長いプラットホームなど往時の面影を感じさせる所も多い。
なかでも嘉例川駅は、開業当時からの木造駅舎が現役である。嘉例川駅がひと際にぎわうのは土曜と休日。集まる人たちのお目当ては、名物駅弁「百年の旅物語 かれい川」だ。10時の販売開始前に行列ができることもある。
駅弁を手掛ける「森の弁当 やまだ屋」の代表・山田まゆみさんは、幼少の頃より母親の手伝いで食材の仕入れを経験、郷土料理を体で覚えてきた。その経験を生かし、惣菜の移動販売を始めた矢先の2004(平成16)年、特急「はやとの風」の運転開始記念イベントに向け、一度きりのつもりで弁当をこしらえた。この弁当が評判を呼ぶ。再販売を求める声が生まれ、さらに観光列車に乗務するアテンダントから好評を得たことで、嘉例川駅と車内での販売に結び付く。やがて、九州駅弁グランプリを3連覇。嘉例川駅でしか買えない“幻の駅弁”として人気を確立した。
黒い掛け紙を外し竹籠のふたを開けると、特産のたけのこと嘉例川駅近くで栽培された「原木 松下椎茸」、霧島市の棚田で採れた米「ひのひかり」を使った炊き込みごはんが優しく香る。存在感が溢れるのは、ホクホクの紅はるかの自然な甘みが引き立つ薩摩の天ぷら・ガネ。「鹿児島らしさを届けたい」と大きめに揚げている。「お客さまが一人でもいる限り、作り続けたい」と話す山田さん。まるで母の味のような安心感がここにある。
年季が入った嘉例川駅のベンチに腰を下ろして弁当をいただけば、明治・大正・昭和・平成・令和と時代を超えて、この駅を訪れた旅人たちに思いをはせることが出来る。
また、車窓を楽しむなら、隼人駅から日豊本線の特急〔きりしま〕に乗り継いで、錦江湾越しの桜島を眺めていただくのもよい。また、特急〔36ぷらす3〕の金曜日コースで予約販売も始まった。「百年の旅物語 かれい川」の物語は、まだこれからも続いていく。
嘉例川駅
特急〔36ぷらす3〕
百年の旅物語 かれい川
発売駅:嘉例川駅 ※販売駅は代表駅のみを記載しています。
ねだん:1,800円(税込)
製造元:森の弁当 やまだ屋
次号は駅弁「富山味づくし」。
- ※『JR時刻表』2026年10月号掲載時点の内容です。
- ※取材・文・画像=望月崇史
- ※イラスト=佐藤妃七子

