JR東海に聞いてみました!
『JR時刻表』編集部がJR各社に鉄道にまつわるさまざまな疑問をQ&A方式で聞いていく連載です。
今回は……
Q. 保守用車両について教えて!
列車のメンテナンスを行う保守用車両について、JR東海に聞いてみました!
A. JR東海では「ドクターイエロー」や「ドクター東海」などの保守用車両が、電気・軌道設備の状態を診断するお医者さんのような役割を果たしています
新幹線の保守用車両「ドクターイエロー」
安全で快適な新幹線の運行を支える保守用車両・ドクターイエローは、正式名称を「電気軌道総合試験車」といい、東海道新幹線が開業した1964(昭和39)年に誕生しました。
JR東海では、安全・安定輸送を高いレベルで維持するために、専用の電気軌道総合試験車を用いて、軌道やトロリ線などの状態をタイムリーに把握し、適切に維持管理を行っています。
電気軌道総合試験車は、電気設備や軌道設備の状態等を診断するお医者さんのような役割を持ち、黄色い車体であることから「ドクターイエロー」という愛称で呼ばれるようになりました。いつごろからなのかは明確ではありませんが、T2(二代目ドクターイエロー)が運行開始した1974(昭和49)年くらいから、このような愛称で呼ばれるようになったと言われています。
線路等の設備を保守するための車両であるため、他の保守用車両と同様に視認性の観点から車体の色に黄色が使用されています。700系をベースとした車両(JR東海所有:T4編成)を使用し、最高時速270キロで走行しながら10日に1回程度、東京~博多間で試験を行っています。
「新幹線のお医者さん」として親しまれているドクターイエロー
ドクターイエローは7両編成で、車両ごとに役割や特徴があります。例えば、1号車には電気検測室があり、3・5号車に設置されている「観測ドーム」(架線やパンタグラフの様子を観測)のカメラで捉えたリアルタイムの映像がモニターで確認できるほか、架線の電流の数値や列車の速度を制御する保安装置「自動列車制御装置(ATC)」の電気信号等のデータを集めています。
また、ドクターイエローの前面には前方監視カメラを設置しています。
3・5号車に設置されている観測ドーム
ドクターイエロー車内の様子(4号車)
2号車には高圧室があり、電気測定機器が置かれています。車両の上にはパンタグラフ(集電用・測定用の2つ)があり、これらを用いて架線の状態をチェック。また、トロリ線摩耗測定装置があり、レーザーを使ってトロリ線のすり減り具合を検査しています。
3号車には、架線やパンタグラフの様子を調べるための観測ドームを設置。観測ドームには座席が用意され、検測員は座って検測することができます。架線や2号車のパンタグラフの動きを高性能カメラで撮影し、その映像を1号車の係員が監視しています。また、データ整理室もあります。
4号車は、主に軌道狂いを測定する車両です。軌道検測室があり、走行中に測定した軌道狂いをモニターでリアルタイムに確認することができます。また、車輪付近には検測用測定枠が設置されており、高低変換器や光式レーザー検出器といった測定機器が搭載されています。
5号車には、3号車と同じく観測ドームがあり、架線や6号車のパンタグラフの状況を観測。
6号車には、ミーティングルームやデータ変換を行う高圧室のほか、災害や事故発生時に救援の資材を積むことができるスペースも。また、2号車と同じくパンタグラフが2つあります。
7号車は700系新幹線の営業列車と基本的に同様のつくりになっていて、添乗室として使用されています。50名分の座席が設置してあり視察の際に活用されています。1号車同様に、車両前面には前方監視カメラが設置され、車内前方に設置している大型ディスプレイでは、前方監視カメラで撮影されているリアルタイム映像を見ることができます。
在来線の保守用車両「ドクター東海」
在来線では、同様の役割を1996(平成8)年に誕生した「ドクター東海」(正式名称は「軌道・電気総合試験車」)が担っています。快速〔みえ〕と同形式のキハ75系をベースとした車両(3両編成)を使用し、最高時速120キロで走行しながら1カ月に2回程度、在来線全線で試験を行っています。
在来線ではドクター東海が活躍中
身近に感じられるイベントも!
2023年3月には、JR東海の会社発足後初めて、走行するドクターイエロー(T4編成)にご乗車いただけるイベントを開催しました。
また、見学会については「浜松工場 新幹線なるほど発見デー」や「鉄道開業150年キャンペーン特別企画 東海道新幹線 浜松工場へGO」でドクターイエローの車内を公開しています。参加されたお客さまからは「念願のドクターイエローの車内が見られて楽しかった!」などの感想をいただいています。
イベントは実物の車両を見ることができる貴重な機会
- ※『JR時刻表』2023年8月号掲載時点の内容です。
- ※写真=JR東海提供
- ※構成=時刻表編集部