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2021.08.04鉄道広島市民も知らない?「広電と広島」

日本一の路面電車の面白さ

広電とは、広島電鉄の呼び名で、JR広島駅を起点に広島市の中心部に敷かれた路面電車です。
車両数や路線の長さ、1日の平均乗客数は日本一! 広島市民や観光客の重要な足として利用されています。
鉄道ファンには多様な車両が現役で走っていることから「動く路面電車博物館」ともいわれています。
地元・広島市民も知らない(?)エピソードにあふれた広電、そして広島の町、その一部を交通新聞社新書『広電と広島』から紹介します。

  • トップの写真はJR広島駅前を発車する5100形。広島駅ビルは建て替え工事中で、2025年春に広島電鉄の駅と一体化した新駅ビルが完成予定

路線図に見る、三角デルタ


路線図から、電車が多くの川を渡っていることがわかる 路線図から、電車が多くの川を渡っていることがわかる

そもそも、広島という町がどんな場所にあるか、ご存じの方も少ないかもしれません。広島市の中心部となる市街地は、太田川が瀬戸内海に注ぐ三角デルタ上の町。
面白いのは、路面電車の市内線がこのデルタ上にピッタリ重なっていること。これを物語るのが路線図です。
京橋川、元安川、本川、天満川、太田川放水路がすべて東西に流れ、南側で広がるように瀬戸内海に注ぎ、北側は一本につながるよう、描かれていて、まさに三角形ですね。
これらの川は河口のため、潮の干満があります。しかも、瀬戸内海は潮の干満が大きいことでも知られます。
電車の車窓から「さっきとは水位が変わっている」と、気づくこともあるでしょう。こうした広島らしい自然の動きも見ることができる路面電車です。

次に来る電車は「当たり」?


ひとつとして同じ車両がない、広電の荒手車庫 ひとつとして同じ車両がない、広電の荒手車庫

上の写真は広電の車庫で撮影されたものですが、これを見てもらえば、車両の多彩さは一目瞭然。同じ種類の車両がひとつもありません。
一般的に、整備のしやすさやコスト削減の観点から、鉄道車両は各社で統一化されていく傾向にある中、このバリエーションの豊富さは壮観。
戦前生まれ、外国生まれ、他の町で走っていた車両、連接型など、外見や経緯などを比べてみても、同じものはないのではないか? と感じるほどで、鉄道ファンの注目を集める理由も分かります。
電停で電車を待っているとき「次はどんな車両が来るかな?」と、思いめぐらせるのは、広電乗車時のちょっとしたワクワク感。
「当たり」と思う車両は人それぞれですが、「電車を待つ時間は、まるで宝くじの当選発表を待つようだ」という人もいて、言い得て妙ですね。

世界遺産を結び、JR線と並行する宮島線


広島市内~宮島間は、JR山陽本線と並走

三角デルタを覆うように走る市内線から、西側に伸びる1本の路線が宮島線です。
市内線と違って駅間距離が長く、道路との併用軌道がほとんどなく、最高速度も違う線で、小さな各駅の個性的な佇まいとともに市内線とはまるで別の路線の面持ちです。
それでも電車は直通しているため、市内の原爆ドームと宮島の嚴島神社というふたつの世界遺産を結びます。
また、JR山陽本線とほぼ平行しているのも特徴で、共用の踏切も存在します。実際に乗ると、車窓南側は終始のどかな瀬戸内海が広がりますが、北側は山陽本線が平行していて、列車が通るたびに鉄道ファンは北側に…なんて、なかなか“忙しい”車窓です。
宮島観光の往復では、この両線を乗り比べるのもおススメです。
ちなみに、JR線が何等かの理由で不通になった場合、広電が乗客を受け入れる制度があり、両社連携の良さも光ります。


交通新聞社新書『広電と広島』

大正・昭和・平成…時代を超えて百年以上も走り続ける広島電鉄の路面電車。その裏側には、全国各地で役目を終えた路面電車が第二の活躍の場所として走っているなど、他にも広島市民さえも知らない数多くのエピソードがある。本書では、広島の街の発展を見つめ、住む人・訪れた人と日々交わっている広島電鉄の路面電車を探っていく。

著書:路面電車を考える会
1993(平成5)年に「車社会に行きづまった都市の再生を図るため、無公害の路面電車の活用を考え、交通体系全般の見直しを図る活動をしたい」との理念のもと広島で発足。

発売日:2018年8月20日
定価:880円(本体800円+税)


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