どこへ行くかは、旅をしながら決める
最近、ハプニングそのものを楽しむ旅番組が話題です。鉄道やバスに乗って、見ず知らずの駅や停留所で降り、そこで出会える初めての物や風物に感動する…。
そんな、“目的がない”旅、途中下車の旅を実践する術をまとめているのが『旅は途中下車から』(交通新聞社新書)です。
途中下車で、ぜひ自分だけの発見を!
- ※トップの写真は、鼠ヶ関駅(山形県・羽越本線)で折り返す普通列車
途中下車は、日本独自の制度
鉄道に乗るときは、乗車券を購入しますよね。そこには〇〇駅→〇〇駅と、乗ることができる区間が指定されています。
ところが、日本ではその途中駅でいったん改札口を出ることができます。
例えば、東京→博多の乗車券を買うと、途中の大阪で下車することができ、しかも東京→大阪・大阪→博多と分けて買うより、安くなります。
これが途中下車制度です。世界的にも珍しく、ほぼ日本独自の制度と言われています。
そんな途中下車ができるきっぷについては一定のルールがあり、本書では分かりやすく解説。
途中下車ができない大都市近郊区間内の発着でも途中下車が可能となる乗車券の買い方なども紹介しています。
旅先は、「わからない」「知らない」ほうが楽しめることも
通常は、目的地があり、その最寄り駅まで鉄道に乗っていくのが旅。
しかし途中下車の旅は、その目的地がありません。理由はなんでもOK。とにかく、「降りてみる」。降りてみてから、楽しむものを探すのです。
見知らぬ町の表情は? その町には、どんな名物がありますか?
駅前にはなにもない、これもまた魅力。情報があふれる現代、「無」は贅沢のひとつでもあります。
「ある程度」なら予備知識が活きる
かといって、まったく知らない駅で降りるのは、かなりの上級者の楽しみ方です。
そこで、ある程度予備知識を仕入れておくこともいいでしょう。
本書では、「温泉」「グルメ」という、旅の2大アイテムの中から、駅そのものや駅周辺にある、途中下車向きのスポットをまとめています。
とくに最近は「駅ナカ」という言葉があるように、駅にある施設が充実。
これを楽しむ旅は、途中下車旅初心者にはおすすめです。
グルメでは、昔から有名な「木次線亀嵩駅の蕎麦」や「釧網本線北浜駅の喫茶店」など、温泉では北上線「ほっとゆだ」駅や、西武秩父線の西武秩父駅など、たくさんあります。
なにより途中下車での利用なので、列車を降り、1本遅らせるだけで楽しめますので、そのあとのスケジュールも組み立てやすくなります。
途中下車で、旅を自己流に醸成していく技
旅は趣味でもあります。そこで、途中下車に趣味の要素を加えたら?
まさに、これは自分だけが楽しめる旅となりますね。
本書では、全国の郵便局を訪ねて100円貯金をしてゆく「旅行貯金」を例として挙げています。
このほか、地図が好きな方には駅周辺の「地形」、各駅に設置されている「駅スタンプ」の収集、カメラをもってぶらり歩き、面白いと思った風景を撮り歩く「タウンウォッチング」ほか…。
読者の皆さんならではの趣味を重ねてみてはいかがでしょうか?
ほかにもいろいろ途中下車の技
そしてさらに本書では、意外な楽しみ方も紹介しています。
例えば「定期券」。指定された区間では下車できますから、日常の通勤を簡単に旅に変える技となります。
そのほか、フリーきっぷや18きっぷなどをもとにした、こだわりの途中下車旅の例を挙げています。
途中下車とは、旅を自分ならではのものにする、有効な方法のひとつです。
ぜひ活用してみましょう。