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2021.12.01鉄道驚き! 大阪の地下鉄に見る創意工夫

1番2番ではない、大阪のオンリーワンが大事

日本で最初に開通した鉄道は新橋駅~横浜駅間。次いで大阪駅~神戸駅間が開通。
日本で最初に開通した地下鉄は浅草駅~上野駅間。次いで梅田駅~心斎橋駅間が開通。
このように、大阪というと東京に次ぐ2番手というイメージがついてしまいがち。
ですが、たとえば大阪市民の足として活躍する地下鉄でその中身を調べてみると、
さまざまな驚きの創意工夫がずらり見て取れます。
交通新聞社新書『そうだったのか! Osakametro』から、その面白さをちょっとだけご紹介しましょう。

  • トップの写真は、御堂筋線で使われている 30000系電車

先見の明、ここに究まれり


1982(昭和57)年頃の御堂筋線梅田駅。乗客であふれているが、これも当初計画があったからこそ

大阪で最初に地下鉄が開通したのは1933(昭和8)年、御堂筋線(当時の名称は「1号線」)梅田駅~心斎橋駅間です。
この時、電車は1両編成。なのに梅田、淀屋橋、心斎橋の3駅のホームの長さはなんと10両分の180メートル!
さらに天井までの高さは6メートルもあるアーチ状の構造で、まるで地下ではないような開放的な大空間でした。
これは将来の発展を見越した設計がされていたためで事実、現在もほとんど構造は変わっていません。
推し進めたのは、当時の大阪市長だった關一(せき はじめ)。
彼は地下鉄のみならず、頭上の道路とセットで整備しており、工事前はわずか6メートルだったという道幅をなんと44メートルに。
拡張された御堂筋の街並みは現在もそのまま見ることができますが、地下鉄の開発とあわせた整備だったことは意外と知られていません。

日本で最初に開通した地下鉄、東京の銀座線浅草駅~上野駅間は、建設費をできるだけ抑えるためにトンネルや駅なども最小限のスケールで建設されていますが、面白いことに、こちらも現在まで構造はほとんど開業当時のままです。
お互いに乗り比べると、違いがよく分かって日本の地下鉄の歩みを体感することができるでしょう。

日本で最初に大阪で登場した、リニアモーター式の鉄道


大阪鶴見緑地線の開通式の様子

リニアモーター式の鉄道というと、現在、建設が進められているリニア中央新幹線を連想するかもしれませんが、リニアモーター式の鉄道は、すでに実用化されています。
日本で最初のリニアモーター式地下鉄は、1990年開業の大阪の鶴見緑地線(翌年開業の都営大江戸線もリニアモーター式地下鉄)。
その構造を簡単にいうと、モーターの磁石に相当するものが板状になって線路と車両に設置されています。
これによって集電設備が不要となり、トンネルの断面を半分程度にできるだけでなく、急勾配に強いため、深い地下へも走行できることなど、メリットも大きいものでした。
最近の大都市はビル化が進み、地下鉄も地下の構造物を避けて通る必要があり、現代らしい事情にもマッチしているといえるでしょう。
ところで、こうした「日本初」、リニアモーター式だけではありません。
電車のモーター回転数の制御やトルクを変化させるために電圧を制御するVVVFインバータ制御の車両(営業用)、駅のエレベーター、車内の点字プレートなども、大阪の地下鉄が最初です。
そうした「先見の明」は、地下鉄誕生時から受け継がれているのです。

随所に見える“大阪センス”?

地元の人にとっては当たり前だけど、旅行者にとっては???と感じるものは、どこの町でもあるものです。
大阪の地下鉄でいえば、例えば車両。
内装のデザインは各線ごとにテーマがあります。
御堂筋線は「御堂筋とイチョウ」、谷町線は「歴史薫る」などなど。その描き方が独特で、花火柄が扉をはみ出して描かれているなど、なかなかの斬新さです。
「路線ごとのデザインなら、ほかの地下鉄でもあるよ」という人もいるでしょう。
いえいえ、ここからが大阪らしさの真骨頂です。
まずは駅の意匠。四つ橋線四ツ橋駅の壁にあるナスカの地上絵、もとい、文字。
そう、これ立派に文字で、読めます(答えは本書でご確認ください)。


また、本町駅のこの蛍光灯(下写真)をよ~く見てください。配列が「HOMMACHI」。
このあたりは地元の浪速っ子でも気づかないかもしれないほど“高度”です。


そして駅の呼び名。例えば「てんろく(天六)で下車」と案内されても、そんな駅名はどこにも見当たりません。
正解は「天神橋筋六丁目」のこと。大阪では地名を略することが多く、電車の行き先表示は「天」と「六」の字が大きく表示されています。
このほか、「たにろく」「たにきゅう」とはどこの駅? この答えも、本書のどこかに書かれています。
余談ですが、大阪市中央区の日本橋一丁目の交差点は、通称「日本一」とか。
大阪の、ユーモアや人を楽しませるセンスには脱帽です。
交通新聞社新書『そうだったのか!osakaMetro』では、大阪の足として活躍する地下鉄を多角的に解説。
その知れざる歴史から大阪ならではの”洒落”まで、こんなにいろいろ詰まっていた電車だったのかと思ってしまうエピソードが満載です。


交通新聞社新書『そうだったのか! Osaka Metro』

著書:伊原 薫
1977年大阪府生まれ。2013年より鉄道ライター・カメラマンとして本格的に活動を開始。鉄道・旅行雑誌や書籍、Webニュースなどで執筆するほか、テレビ番組への出演や監修など幅広く活躍する。鉄道に関する知識を活かして「日本の交通政策を磨いていくこと」を志し、2012年、京都大学大学院認定の都市交通政策技術者になった。執筆活動のかたわら、コミュニティバスの計画・運営に関するアドバイス、地方鉄道や都市の再生に向けた提言など精力的な活動も行っている。

発売日:2021年6月15日
定価:990円(本体900円+税)


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