気になるあれこれ、ほんとはどうなの?
鉄道は、老若男女誰もが利用する公共交通。ですが、例えば政府関係者や海外からのVIPなど、特別な方々も利用されます。
さすがにこのような方々が御乗車になる場合、駅の券売機できっぷを買って、来た列車にささっと乗り込むことはありません。
なかでも天皇陛下と皇族の方々が御利用になる際には、伝統的になされている対応があります。
巷でまことしやかに語られているのは真実なのでしょうか。
- ※トップの写真は、2009(平成21)年に神奈川県横浜市のこどもの国にて、遊戯列車にご乗車の天皇陛下ご一家
皇居と東京駅は秘密の地下通路で結ばれている?
東京駅から皇居までは目と鼻の先です。その近さもあってか、よく聞くのが「皇居と東京駅は秘密の地下通路で結ばれている」という噂。
結論から言うと、これは都市伝説であり、事実ではありません。
ただし、東京駅には皇室等賓客用の貴賓室があり、一般客が通れない通路が存在します。
天皇家の方々は、皇居から直通ではないものの、貴賓室を利用し、新幹線ホームなどに一般客と顔を合わせずに到達することができます。
東京駅ができたのは1914(大正3)年ですが、その構想は明治時代に作られました。日本の鉄道開業以降、150年にわたる天皇と鉄道の深いつながりが、東京駅のこうしたところにも見られます。
天皇陛下の行くところ、信号はすべて青になる?
天皇陛下が御乗車になった自動車の車列が通る際に、信号機を操作して青にすることがあるというのは比較的知られている話かと思います。鉄道の場合も同様に、青信号にしているのでしょうか。
じつは、これもそんなことはなく、お召列車もほかの列車と同様にダイヤ上で管理されており、いちいち信号を切り替えたりはしません。
ただし、前後を走る列車が遅れた場合、お召列車にも影響が出てきます。そのため、お召列車前後の列車は「定時運転確保列車」として遅れを出さないことが求められ、気が抜けないわけです。
お召列車の運賃は誰が払っている?
明治の鉄道発足以来、天皇陛下や皇太子殿下の鉄道利用の際に、国鉄が運賃・料金を請求することはありませんでした。
国鉄=国のものでしたから、当時は国家の行事に協力するのは当然と考えたのかもしれません。
なお私鉄については、謝礼の意味で、戦前期には酒肴料として戦後は賜金として金銭が支払われていました。
この慣習は長く続きましたが、国鉄は民営化して以降は天皇陛下であっても無料というのを改めています。
現在ではJRから宮内庁に請求され、運賃・料金が支払われるようになっています。
交通新聞社新書『天皇陛下と鉄道』では、明治から令和に至るまで、陛下たちの鉄道旅の話をまとめました。
今まであまり知られていないことも、皇室担当写真記者である著者により書かれています。
日本の鉄道150年周年を迎える2022年、この機会にぜひご一読ください。