トレたび JRグループ協力

2022.03.31鉄道密着!「森の京都QRトレイン 貸切列車で行く福知山ツアー」乗車レポート【連続企画 第2弾】

“森の京都”を堪能するツアー、気になるその特長とは?

京都府の亀岡市、南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市、京都市右京区京北の6市町からなる“森の京都”。
このエリアを走る「森の京都QRトレイン」は運行2年目を迎え、車内の内装もリニューアルされました。
そんな車両を貸し切って運行された、JR西日本と日本旅行、森の京都DMO共同企画による
「森の京都QRトレイン 貸切列車で行く福知山ツアー」に密着。その魅力をレポートします!

大阪駅、京都駅から“森の京都”へ。和知駅では伝統芸能のお出迎え


2022年3月26日、大阪駅11番線に主に嵯峨野線で運行されている「森の京都QRトレイン」の姿がありました。実は、団体臨時列車としての運行はこれが初。滅多にない光景に注目が集まる中、今回のツアー参加者を乗せて8時24分に大阪駅を出発しました。
貸切列車は一旦、京都駅へ。京都からの参加者も合流し、嵯峨野線で目的地・福知山へと向かいます。

乗車した参加者の皆さんは、さっそく新しくなったQRコードデザインの座席シートを確認したり、スマホのカメラを向けたり。ツアーには様々な年代の方が幅広く参加されていましたが、中には北陸や関東からいらっしゃった方も。貸切列車が保津峡駅を過ぎると、いよいよ“森の京都”のエリアです。


窓の外に見えてくる景色に興味津々

この日、車内アナウンスやアテンドを担当してくれたのは、地元京都の平安女学院大学国際観光学部の学生さんたち。このツアーでは、こうした「地域との連携」に数多く出会うことになります。節目の駅を通過するたびに各地域のプロフィールや見どころ、最新トピックスなどがアナウンスされ、観光パンフレットの配布もありました。
ツアー貸切列車は亀岡市~南丹市~京丹波町ののどかな風景の中を、あまり急ぐことなく進みます。胡麻駅以北の山陰本線を「森の京都QRトレイン」が走るのも、これが初めてのことなのだそうです。


平安女学院大学の皆さんがアテンドを担当してくれました

10時56分、和知駅に到着。ホームから京丹波町の郷土芸能『和知太鼓』が鳴り響きます。列車到着前から和知太鼓保存会の皆さんが演奏してくれていたのです。打ち鳴らされる太鼓に横笛や鉦(かね)の音も加わり、まるでお祭りのよう。
「平安時代、酒呑童子退治に行く源頼光が雨宿りした時、村人がもてなした奉納太鼓に始まります」という説明がありましたが、そんな「もてなしの心」も受け継がれているのか、保存会の方々はとてもフレンドリーでした。太鼓に触らせてくれたり、バチを持たせてくれたり、中には飛び入りで保存会の方と即興でセッションした参加者の方もいらっしゃいました。


迫力ある演奏とバチさばきで参加者を魅了した和知太鼓

太鼓に続いて登場したのは『和知人形浄瑠璃』。「森の京都QRトレイン」の車内吊りポスターでも紹介されている京丹波町の無形文化遺産です。大ぶりな人形を一人で操るのが特徴で、人形、語り、三味線の三業一体の芸能です。この日はホーム上ということで人形のみの披露でしたが、目、眉、口が細かく動く頭(かしら)を和知人形浄瑠璃保存会の方々が目の前で見せてくださいました。「17年前からは、中学校の授業でも指導しています」と会長さん。このように地域で大切に守り伝える無形文化財に出会えるのも“森の京都”の魅力です。

車内では京丹波町の道の駅限定で販売されている「なごみカレー」の臨時販売もあり、お土産にと買い求める姿も。最後は太鼓と浄瑠璃の担い手の皆さん総出で、和知駅を発車する貸切列車を盛大にお見送りいただきました。


和知人形浄瑠璃の車内吊りと“本物”が共演するサービス

綾部駅と福知山駅では高校生による歓迎イベントが


由良川に沿って“森の京都”の山野を縫うように進み、貸切列車は綾部市へ。
11時40分、綾部駅に停車すると、ホームでは地元・綾部高等学校スポーツ総合専攻の新3年生たちによる「綾高(あやこう)太鼓」のお出迎えが始まりました。こちらは、江戸時代の綾部藩以来という伝統芸能『綾部太鼓』などを手本にアレンジし、体育の授業の中で習い継いだもの。真っ直ぐでごまかしのない力強さ、樽や竹筒まで叩き鳴らす素朴さ、何より高校生たちの若さあふれる渾身のパフォーマンスに、ツアー参加者からも惜しみない拍手が沸き起こります。演奏後には緊張の解けた笑顔でポーズを決めてくれるノリのいい高校生たちの姿に、こちらも思わず笑顔になりました。
貸切列車が綾部駅を発車する間際にも太鼓を叩いて見送ってくれた高校生たちに、参加者たちが車窓から手を振っていた姿も印象的でした。


ホームで繰り広げられた高校生たちによる綾高太鼓の演奏

貸切列車は12時13分、いよいよツアーの目的地・福知山駅に到着。改札に向かうと、福知山の甲冑隊の皆さん、ご当地キャラの光秀くんと一緒に、福知山市の大橋市長にもお出迎えいただきました。

駅構内からは高らかなジャズの音色が響きます。演奏は京都府立工業高等学校の吹奏楽部「マンボウ・ジャズ・バンド」の皆さんです。1曲目は何の曲だろう?と思いましたが、何と『福知山音頭』のジャズアレンジ!  続いてスタンダードナンバーの「ザッツ・ア・プレンディ」をプレーし始めると、通りかかった一般の方々も次々に足を止め、どんどんと観衆が増えていきます。オープンスペースでの演奏は昨年12月以来とのことでしたが、高校生たちの堂々たる熱演は30分以上続きました。特に鉄道の町・福知山らしい1曲「銀河鉄道999」の演奏には拍手喝采。あまりの盛り上がりにアンコールまで飛び出すなど、ツアー参加者・一般市民も一緒に楽しんだ歓迎イベントとなりました。


福知山の駅改札を出ると、お出迎えの皆さんが

高校生たちのジャズの演奏に大勢のギャラリーが集まりました

ここでツアー参加者たちは事前に申し込んでいた「3つのコース」または「自由行動(フリープラン)」に別れ、それぞれのグループごとに福知山の町へと出かけていきました。

現地ガイドと歩く福知山市内まちあるきコース


こちらは、地元ボランティアガイドの案内で市内の名所をめぐり歩くという王道のコースです。
参加者一行がまず向かったのは、町のシンボル・福知山城。戦国時代に明智光秀が築いたお城です。ガイドさんいわく「光秀公は町の礎(いしずえ)を築いた偉人」。天守は1986(昭和61)年に再建されたものですが、光秀さんのお城をよみがえらせたい、と市民が瓦一枚一枚を寄付をしたそうです。「瓦には寄付者の名前が書かれています。私の名前もどこかにあるはず」とガイドさん。皆さんが驚いたのが、墓標や石仏などを転用石として使った石垣です。光秀は石仏等を供出した寺院への心遣いを書面で残したとされ、明治の廃城後、それらのお寺に城門が移築されたのだとか。

城内の桜の開花までは惜しくもあと少しというところでしたが、日本有数の深さ50メートルを誇る大きな井戸「豊磐(とよいわい)の井」など、想像以上に見どころの多いお城でした。


ガイドさんから「石垣は約440年前の築城当時からのもの」という説明が

一行はガイドさんから光秀の業績などを聞きながら、まちあるきを続けます。途中、スイーツの町・福知山を代表する洋菓子店・足立音衛門本店で小休憩。お土産を買われる方もいらっしゃいました。建物は大正時代築で、由良川の治水事業を行った旧松村家の主屋でもあります。

明覚寺で福知山城から移築された山門を見たあと、新町商店街の長いアーケードや、C58蒸気機関車を保管するポッポランド2号館の前を通って、最後に御霊(ごりょう)神社へ。全国で唯一明智光秀を祀るというお社です。
「御祭神は元々別にいらっしゃいますが、自筆の文書を祀ることで間接的に光秀公を祀ったんです」とガイドさん。かつては秘して敬っていた歴史もあるのだとか。境内には光秀が年貢を免除したことを示す石碑もあり、「善政家・光秀」の面影が浮かびます。参加者の一人は「明智光秀が謀反人となった後も地元では隠れキリシタンのように祀られていたという話は新鮮で、話を聞けてよかった」と感心しきりでした。


御霊神社。福知山市民に慕われ続ける“光秀公”を祀ります

福知山産の京地どりの親子丼と名物のからあげ/福知山市内まちあるきコース(昼食付き)


地元名物の昼食を堪能できるとあって、人気を集めたのがこちらのランチコース。
一行は福知山駅到着後すぐに出発。ガイドさんの案内で御霊神社や寺町界隈をめぐり、城下町の古い面影が残る下柳町へ。築110年以上という町家を改装した「柳町」さんが、お目当てのお食事処です。

町家のお庭がみえるダイニングでいただいたのは、人気メニューの「京地どりの親子丼」と名物の「からあげ」。親子丼に使われる卵は福知山市の大江町産で、ひと口目から味の濃さにびっくり。トロトロの卵をまとった鶏肉は、福知山市で手間暇かけて飼育された岡本ファームの「京地どり」。しっかりとした歯ごたえで、噛めば噛むほど旨味が染み出します。
げんこつほどある大きさのからあげは、衣はパリッと香ばしくて、中はやわらかジューシー。脂分のしつこさもなく、名物メニューになるのも納得です。参加者の方も「すごくおいしかったです」と満足そうに店員さんと食後の挨拶をかわしていました。


濃厚な卵とブランド地鶏が自慢の親子丼。地産食材が満載!

食材豊富な“森の京都”の中でも、福知山でしか味わえない絶品ランチを堪能した一行は、引き続きまちあるきに向かいました。

明覚寺に立ち寄ったあと、明治~大正期に由良川の築堤事業に携わった実業家の建築群「旧松村家住宅」、明智光秀が由良川の流れを変えるために築いた堤防「明智藪」を見学。治水といえば、一行が食事前に訪れた御霊神社には堤防をご神体とする堤防神社があり、下柳町には治水記念館もありました。
「福知山は治水と向き合ってきた町なんです」と語るガイドさんが、福知山城へ渡る歩道橋で紹介してくれたのが、お城の麓から駅前へと続く目抜き通りの話。「ずいぶん曲がりくねっていますが、この道が元の由良川なんです」。光秀が流路を変えたことで、現在の福知山の町の原点が作られたそうです。一行は福知山城内でもガイドさんから興味深いお話を聞き、約2時間半の食事とまちあるきを堪能しました。


一行が渡る橋の下の「お城通り」が、光秀以前の由良川の痕跡

山城屋茶舗でマイお茶缶作りコース


こちらのコースは“森の京都”ならではのクラフトワークを楽しむ体験型プランです。参加者たちが向かったのは、市内中心部に1912(大正元)年からお店を構える老舗日本茶専門店・山城屋茶舗。ここで「マイお茶缶作り」を体験します。
「手順は、“切る”と“貼る”のふたつだけです」と山城屋茶舗の豊島永子さん。小さめサイズの茶缶に14種類の中から好きな柄の和紙を選んで貼っていくのですが、ほとんどの方が選んだのは「森の京都QRトレイン」と同じ柄の“森の京友禅和紙”でした。QRトレインと同じ柄でありながら色が変わっているのがポイントで、「福知山のシンボルである桔梗の色が映えます」と豊島さん。同じ柄でも随分とイメージが変わって面白いものですね、と参加者同士おしゃべりしながら、作業に入りました。

切って貼るだけといっても、和紙の切り取り方はセンスの見せどころ。好きな絵柄を蓋に入れるか? それとも胴の部分にするか?「なるほど! 着物の絵柄の取り方と同じですね」と理解した参加者も。各々「桔梗は絶対に入れたいから…」などとイメージを膨らませながら、切り取り位置を決め、型紙と和紙をダブルクリップで留めてはさみを入れていきます。


和紙の柄がイメージ通りに貼れるか、試行錯誤するのも楽しい時間

難関だったのが、丸みを帯びてカーブしている蓋の上部に和紙を貼る作業。ズレないように和紙を指で押さえ、空気が入らないよう慎重に、慎重に…。一同真剣な面持ちです。本体に貼る頃には参加者もすっかり慣れた手付きでスイスイと貼っていきます。完成まではおおむね1時間ほど。最後に豊島さんに手直ししていただいたりもしながら、皆さんお手製の「マイ茶缶」が完成しました。参加者の一人は「QRトレインの柄がきれいだと思っていたので、この柄で作れて満足です」とのご感想。

体験終了後は、お店のご主人が淹れてくださった「赤鬼ほうじ茶」で一服しながら、しばし歓談タイム。ご主人は先ほど福知山駅で甲冑隊として出迎えてくださったそうです。最後にお店特製の玉露がプレゼントされましたが、「お茶ガラは捨てないで、だし醤油とおかかをかけてご飯にのせたらおいしいですよ」とプロならではのアドバイスも。参加者はお土産に、ほうじ茶ラテ用に焙煎したという「お茶屋さんがつくったミルクに合わせるほうじ茶」などオリジナル商品を買い求めていました。


完成した「マイ茶缶」と、もてなしの赤鬼ほうじ茶。奥はプレゼントの玉露

福知山・綾部市民限定の試乗会も実施!


ツアー参加者が福知山市内の散策や体験ツアーを楽しんでいる間、今回貸切列車となった「森の京都QRトレイン」も大活躍していました。
福知山駅に到着した車両は「森の京都QRトレイン試乗会」に早変わり。事前に申し込みをされた地元の福知山市民、綾部市民の招待客を乗せて福知山駅~綾部駅間を往復します。「森の京都QRトレイン」の運行区間は京都駅~胡麻駅(※現在は京都駅~園部駅)のため、区間外にあたる福知山市や綾部市を走るのは貴重な機会。参加者にご感想をうかがうと「写真で見ていた外観よりも落ち着きのある色合いで、エレガント」「珍しい車両に乗せてもらい、子どもが喜んでいました」などの声が。乗車後には記念に「1周年記念乗車券 福知山⇔綾部」と印字された硬券がプレゼントされました。硬券を手にした小さな男の子が「これってきっぷなの?」と不思議がるほほえましい一幕もありました。

“森の京都”を堪能する1日を過ごしました


3つのコースのほかに、思い思いに自由時間を過ごすフリープランの方もいらっしゃいました。福知山市動物園を楽しんだお子様連れ、いちご狩りに出かけたグループ、さらには京都丹後鉄道に乗って宮津方面まで足を伸ばした方も。それぞれのプランを終えた参加者は15時45分までには福知山駅に戻ってきて、ツアー特典のクーポン券を使って、お土産などを購入されていました。

一行は復路の「森の京都QRトレイン」に乗車し、16時2分に福知山駅を出発。このツアーでは参加特典として「森の京都QRトレイン記念乗車証」と「森の京都オリジナルマスク」が配られましたが、さらにツアーのアンケートに回答いただいた方には「森の京都QRトレインオリジナルハンカチタオル」を追加でプレゼント。こちらは非売品で手に入れられる機会も限られるというレアグッズです。他にも、往路の京丹波町で「和知オリジナルマスク」、綾部駅では「繊維の町・綾部特産のミニタオル」など地元観光協会からのプレゼントがありました。


大好評だったアンケート特典の森の京都QRトレインオリジナルハンカチタオル

貸切車両が亀岡市に差し掛かる頃には、すっかり日も暮れました。盛りだくさんだったツアーもあと少し。今回のツアーについて参加者から寄せられた声を少しご紹介します。


~ツアー参加者の声(一部)~

「おもてなしのイベントがとても楽しかった。学生さんありがとうございます」

「福知山で降車したのは初めてでした。こういう機会がないと訪れなかったかもしれないので良かったです」

「1周年おめでとうございます。こんなツアーを心待ちにしてました!」

「また企画してください。今度は舞鶴行きを希望」

「QRトレインのファンクラブをぜひ作ってください」

一行を乗せた「森の京都QRトレイン」は、18時39分に京都駅に帰着。貸切列車で“森の京都”を堪能したツアーは、これにて解散となりました。

ツアーに帯同して感じたのは、“森の京都”の皆さんの歓迎のあたたかさや、地域が守り続ける伝統・文化・歴史への誇り。それらを外観デザインや内装で体現しているのが「森の京都QRトレイン」だということ。装い新たにリニューアルした運行2年目もぜひご注目ください。


  • 提供:京都府
  • 文・写真:湯浅雅晴
  • QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
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