広島の歴史的遺産と豊かな自然、城下町を満喫する旅
芸備線は広島県の広島駅から岡山県の備中神代駅までを結ぶ路線。広島駅から北上すると都会の喧噪が嘘のような山間の風景が望める。深い緑が映え、田畑が連なるのんびりとした風景が車窓に広がる。芸備線沿線には、自然豊かな帝釈峡、城下町の風情が残る東城町、戦国武将・毛利輝元らが築いた広島城など魅力あるスポットがある。観光スポットは点在しているので、2泊3日のプランで楽しもう。
- ※新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。
広島駅から旅はスタート
広島県の玄関口となる広島駅
始発駅の広島駅は、東海道・山陽新幹線や在来線、路面電車、バスなど、公共機関のターミナル駅になる。駅に隣接して商業施設やホテルがあり、広島駅周囲は広島を代表する繁華街のため、広島の旅の始まりや締めくくりに最適。
三次(みよし)駅を目指そう!
芸備線の車窓ポイントは中深川駅~上深川駅間
広島駅を後にした列車は、太田川に沿うようにして中国山地を目指して北上する。下深川駅付近からは太田川と分かれていよいよ中国山地へと入る。紅色の石州瓦の屋根が特徴的な家々が点在し、広々とした田畑が連なる情景が広がる。素朴でのどかな日本の山村風景を車窓から見ることができる。
途中駅 三次駅に到着
広島県の北中心都市である三次市にある三次駅。みどりの窓口やe5489(いいごよやく)の受け取りが可能な券売機などがある。近くにはワインの製造過程の見学やワインの購入ができる広島三次ワイナリーのほか、妖怪物語の『稲生物怪録(いのうもののけろく)』の舞台となった地であることから、湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)といった見どころがある。
広島三次ワイナリー
ワインの製造過程の見学や試飲などのほか、地元産の味覚を満喫する
広島三次ワイナリーでは、自社農園でピノ・ノワールやシラー、プティ・ヴェルトなどのワインの原料になるブドウを栽培。理想の味を追求しながら、安心・安全なワイン造りに取り組んでいる。
ワインの製造過程や地下に木樽が並ぶワイン貯蔵庫の見学などができる。ワインショップでは無料で試飲することができる。
TOMOE館では、こだわりが詰まったワイン「TOMOE」シリーズなどが有料で飲み比べできる。
バーベキューガーデンでは自慢の広島和牛を堪能できる。
広島和牛は余分な脂肪が少なく、かむほどにうまみを感じられる。野菜や米も地元産にこだわり、広島の味をワインとともに楽しめる。リブロースやサーロイン、肩ロース、モモが食べられる広島県産牛バラエティーセット(2750円)がおすすめ。
Cafeヴァインでは地産地消メニューやオリジナルカレーなどが食べられる。ほかにも、ピオーネの果汁をたっぷりと使ったピオーネソフトクリーム(350円)(写真)やシャルドネをイメージした白ぶどうソフトクリームも。1日に2000個を売り上げたほどの人気商品だ。
広島三次ワイナリー
住所 | 広島県三次市東酒屋町10445-3 |
---|---|
問い合わせ先 | 0824-64-0200 |
時間 | Cafeヴァイン 8:00~17:00LO、ワインショップ 9:30~18:00、バーベキューガーデン 11:00~17:30LO |
定休日 | 無休(1~3月は第2水曜)、12月29日~1月1日 |
交通アクセス | JR三次駅から車約6分 |
URL | http://www.miyoshi-winery.co.jp/ |
時間に余裕があれば湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)へ
妖怪物語の舞台となった地で、妖怪たちとふれあうことができる
三次市三次町は、妖怪物語『稲生物怪録』の舞台になった地。この物語は江戸時代以降、絵巻や絵本、漫画などの題材になり、全国に広く伝承している。
博物館では日本屈指の妖怪コレクターである湯本豪一氏から寄贈を受けた約500点のコレクションをテーマに合わせて展示をしている。常設展示室「日本の妖怪」では、妖怪に関する絵画や書籍、玩具などの資料を展示。妖怪が人々の生活に密接に関わってきた様子を紹介する。
「デジタル妖怪大図鑑」は、タッチするだけで妖怪の姿や歴史を学べる。気軽に楽しく利用できるので、妖怪に親しむきっかけと新しい発見ができるだろう。
「デジタル百鬼夜行絵巻」は、博物館所蔵の『百鬼夜行絵巻』(江戸時代)をベースにしたデジタル絵巻。『百鬼夜行絵巻』とは、妖怪たちが列をなして闇の中を歩く様子を描いたもので、古くは室町時代のものもある。江戸時代に数多く制作されている。画面に触れると、妖怪たちが飛び出して生き生きと動き回る。
湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)
住所 | 広島県三次市三次町1691-4 |
---|---|
問い合わせ先 | 0824-69-0111 |
時間 | 9:30~16:30最終入館 |
定休日 | 水曜(休日の場合は翌日)、12月29日~1月3日 |
交通アクセス | JR三次駅から車約5分 |
値段 | 大人600円、高校生・大学生400円、小・中学生200円(チームラボ利用の場合) |
URL | https://miyoshi-mononoke.jp/ |
三次駅から東城駅へ
山深い中国山地を進んでいく。三次駅から東城駅へ行くには備後落合(びんごおちあい)駅で乗り継ぎが必要(写真)。
備後落合駅から東城駅へ。この区間は1日に3往復の路線のため、乗り継ぎには十分注意をしたい。写真は平子駅~備後西城駅間。
東城駅へ到着
国定公園の帝釈峡の入り口となる東城駅は瓦葺きの小さな木造駅で、時間帯によっては無人駅となる。東城駅周辺には商店が点在していて、リーズナブルな民宿や旅館がある。この日は東城駅周辺で宿泊しよう。
翌日の観光は帝釈峡遊歩道(上帝釈)から
石灰岩が浸食されて作られた神秘的な峡谷
広島県庄原市と神石高原町にまたがる国定公園。中国山地のほぼ中央に位置する全長約18キロメートルの峡谷で、国の名勝にも指定されている景勝地だ。石灰岩の大地が深く浸食されたカルスト台地が広がる。今回は渓流沿いに遊歩道が整備された上帝釈を巡る。
帝釈峡一帯は広大な鍾乳洞が無数にあるといわれ、特に白雲洞は奥行きが約200メートルあり、鍾乳石や石柱などが点在する帝釈峡を代表する鍾乳洞だ。ほかにも、見るべきところが多い。
雄橋(おんばし)は全長90メートル、幅18メートル、川底からの高さ40メートルという世界でも類を見ない石灰岩の天然橋。巨大な岩盤が長い年月をかけて浸食されてできたという。この橋を架けたのは神とも鬼ともいわれ、神秘的に感じられる。
鬼の唐門は、鍾乳洞が崩落して入り口だけが天然橋として残っている。天井まで約8メートルの高さがあり、くぐり抜けることができる。門の上には約4メートルの穴があり、鬼の窓と呼ばれている。
帝釈峡遊歩道(上帝釈)
住所 | 広島県庄原市東城町未渡1940-3(上帝釈) |
---|---|
問い合わせ先 | 0847-86-0611(帝釈峡観光協会) |
時間 | 散策自由 |
交通アクセス | JR東城駅から車約20分 |
URL | http://taishakukyo.com/about/ |
東城町散策
タイムスリップしたような城下町の風情が残る
庄原市東城町は、城下町の風情が色濃い。戦国時代にこの地を治めていた久代宮氏が五品嶽(ごほんがだけ)城と大富山城を築き、五品嶽城を東城、大富山城を西城と呼んだことから名が付いた。中国山地から産出した和鉄のたたらを各地に出荷し、江戸時代の最盛期には16軒もの鉄問屋が軒を連ねたという。江戸時代や明治、大正とさまざまな文化財級の建物が軒を連ね、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
三楽荘(旧保澤家住宅)は、1891(明治24)年に上棟された元旅館。明治期の東城の名匠といわれた横山林太郎によって建てられた。入母屋破風に屋根全体を覆う入母屋破風を重ねた八棟造といわれる特徴的な造りだ。東城の代表的な建物といえる。
東城町は醸造の里としても知られ、3つの醸造所がある。天保年間(1830~1844)創業の北村醸造場の代表銘柄「菊文明」は、キリッとした辛口が高評だ。
東城町散策
住所 | 広島県庄原市東城町 |
---|---|
問い合わせ先 | 0824-75-0173(庄原観光推進機構) |
交通アクセス | JR東城駅から徒歩約5分 |
東城駅から広島駅へ
芸備線を折り返して、広島の中心街へ
上帝釈と東城町の散策を楽しんだら、東城駅から広島駅へと戻ろう。直通で広島駅には行けないので、備後落合駅、三次駅で乗り換えが必要。
広島駅周辺で宿泊を
広島駅周辺には、高級ホテルからビジネスホテル、ゲストハウスまで、さまざまな宿泊施設が点在する。翌日は、広島駅周辺で観光を楽しもう。
広島城
毛利輝元や福島正則によって築城された西日本有数規模の城郭
豊臣秀吉の五大老の一人、毛利輝元によって1589(天正17)年に築城された。関ヶ原の合戦後に入城した福島正則が広島城の整備をさらに進めて城下町を拡充させた。その後、浅野長晟(ながあきら)が入城し、以後12代250年にわたり浅野氏が統治した。現在は、本丸と、二の丸、内堀が残るのみ。かつての天守閣は1931(昭和6)年に国宝に指定されたが原爆により倒壊。現在の天守閣は1958(昭和33)年に再建され、歴史博物館になっている。
天守閣の最上階からは原爆ドームやグリーンアリーナ、晴れていれば宮島も望める。
内堀にかかる御門橋を渡り、城内へ。表御門は1994年に復元し、内部を公開している。
広島藩主だった福島正則が改易される一因となった石垣が残る。
石垣には刻印というさまざまなマークが刻まれていて、歴史ロマンに触れられる。
広島城
住所 | 広島県広島市中区基町21-1 |
---|---|
問い合わせ先 | 082-221-7512 |
時間 | 園内自由(天守閣は9:00~18:00、12月~2月は~17:00。二の丸は9:00~17:30、10月~3月は~16:30。入館は各30分前) |
交通アクセス | JR広島駅から徒歩約25分 |
値段 | 天守閣は大人370円、高校生180円。二の丸は無料 |
URL | http://www.rijo-castle.jp/RIJO_HP/contents/01_home/01_top/01_index.html |
原爆ドーム・平和記念公園
原爆の悲惨さを今に伝える平和を望む記念碑
原爆ドームと呼ばれる広島の平和記念碑は、原爆と戦争の悲惨さを今に伝えている。かつては広島県内の物産品の展示や販売をする施設として建てられた。現在骨組みだけが残るドームは、長軸約11メートル、短軸約8メートル、高さ4メートルで、銅板に覆われていた。1996年に、核兵器の惨禍を伝える建築物として世界文化遺産に登録された。
原爆ドームがある平和記念公園は、広島市の中心部にあり、世界の恒久平和を願って爆心地に近い地に建設された。ほかにも園内には、1964(昭和39)年8月1日点火されて以来ずっと燃え続ける平和の灯(写真)や原爆投下時の広島の様子を展示した広島平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)などがある。
原爆の子の像は、1958(昭和33)年に建立された。2歳のときに被爆し、10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの同級生たちが、「原爆で亡くなったすべての子どもたちのために慰霊碑をつくろう」と呼びかけて完成した。3本足の台座とその上に少女のブロンズ像が立つ高さ9メートルの像で、台座の左右には明るい未来と希望を象徴する少年少女の像がある
原爆ドーム・平和記念公園
住所 | 広島県広島市中区中島町1-10(原爆ドーム)、広島県広島市中区中島町1・大手町1-10(平和記念公園) |
---|---|
問い合わせ先 | 082-504-2390(広島市緑政課) |
時間 | 園内自由 |
交通アクセス | JR広島駅から広島電鉄「宮島口」行き、または「江波」行き約15分、原爆ドーム前下車すぐ |
URL | https://www.hiroshima-kankou.com/world-heritage/world-heritage/dome |
縮景園(しゅっけいえん)
広島市中心部にある四季折々の風情が楽しめる大名庭園
広島市の中心部に位置する大名庭園。広島浅野藩初代藩主浅野長晟が別邸の庭園として1620(元和6)年に築成したもので、茶人としても知られる家老の上田宗箇(そうこ)が作庭した。中国の景勝地・西湖を模して造られたと伝えられ、園の中央に掘られた池には大小の島が浮かび、橋や渓谷、茶室などを回遊しながら楽しむことができる。梅や桜、あじさい、紅葉など、四季折々の風情を楽しむことができる。
長さ27.4メートル、幅2.1メートルの跨虹橋(ここうきょう)は江戸時代に造られた石製のアーチ橋。7代藩主の浅野重晟(しげあきら)が2度作り直させたと伝わっている。
縮景園に隣接する広島県立美術館からも庭園の風景が楽しめる。「広島ゆかりの美術作品」や「日本とアジアの工芸作品」のほか、サルバドール・ダリなど「1920~30年代の美術作品」をテーマに作品を収蔵。
縮景園
住所 | 広島県広島市中区上幟町2-11 |
---|---|
問い合わせ先 | 082-221-3620 |
時間 | 9:00~18:00(10月~3月は~17:00)※最終入園時間は閉園30分前 |
定休日 | 12月29~31日 |
交通アクセス | JR広島駅から徒歩約10分 |
値段 | 大人260円、高校生・大学生150円、小・中学生100円 |
URL | https://shukkeien.jp/ |
お好み村
広島名物のお好み焼きが大集合。はしごをして食べ比べてみたい
戦後、広島市中心部に集まった50軒のお好み焼きの屋台があったため「お好み村」と呼ばれるようになったという。現在は4階建てのビルとなり、24店舗のお好み焼き店が並んでいる。地元の人はもちろんのこと、修学旅行生や観光客など、日本全国からお好み焼きを求める人で賑わい続けている。昔ながらの変わらぬ味と親しみやすい雰囲気の店ばかり。
全店で肉と玉子、そばが入るお好み焼きはだいたい850円。使っているソースも全店共通。焼き方やトッピングが店舗によって異なるが、基本的には同じなので、好みの店舗を探してみるのもいいだろう(詳細はURL参照)。
2階にある八昌(はっしょう)は、広島流のお好み焼きの基本を維持している名店。肉は国産、新鮮な卵を使うなど、こだわりを見せる。肉や玉子、そばまたはうどん入りのお好み焼き(850円)。それにプラスして生イカと生エビが入るデラックス(1400円)。
お好み村
住所 | 広島県広島市中区新天地5-13 |
---|---|
問い合わせ先 | 080-241-2210 |
時間 | 店舗により異なる |
定休日 | 店舗により異なる |
交通アクセス | JR広島駅から徒歩約20分 |
URL | http://www.okonomimura.jp/index.html |
旅のまとめ
ローカル路線の芸備線は、1日の運行本数が少ないため、のんびりと2泊3日のプランがおすすめ。1日目は最高級ワインを味わい、2日目は自然を満喫できる帝釈峡と城下町の風情を堪能しよう。広島駅に戻った3日目は、大名ゆかりの城郭や庭園、世界文化遺産の原爆ドームなどを巡るのがおすすめ。ご当地グルメのお好み焼きを食べることも忘れずに。
地図
- ※写真協力:株式会社広島三次ワイナリー、三次もののけミュージアム、帝釈峡観光協会、庄原観光推進機構、広島市文化財団、広島観光コンベンションビューロー、広島県立美術館・縮景園、お好み村組合
- ※文:速志 淳(株式会社アド・グリーン)
- ※掲載されているデータは2020年9月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。