参詣鉄道に乗って、伝説をたどる
大阪府南部の貝塚市に、奈良時代の創建と伝わる「水間寺(みずまでら)」がある。そして、この古刹に参詣するために大正時代につくられた水間鉄道も。
ディープでおもろい大阪を案内する観光ガイド“たけちゃん”と一緒に、思わず「へ~」「ほ~」と声が出る伝説とグルメ満載の水間門前町を紹介しよう。
スケジュールの一例
- 水間鉄道 貝塚駅発
-
9:50発
水間鉄道 貝塚駅
- ↓電車で15分
-
10:05着
水間鉄道 水間観音駅
- ↓徒歩6分
-
10:15着
水間門前町 喫茶図書室
- ↓徒歩2分
-
11:00着
琥珀珈琲抽出処
- ↓徒歩2分
-
11:40着
水間寺
- ↓徒歩すぐ
-
12:50着
愛染堂
- ↓徒歩すぐ
-
13: 20着
水間門前町 桜のテラス
- ↓徒歩2分
-
14:00着
茶房一会
- ↓徒歩10分
-
15:00 着
金胡麻木うどん
- ↓徒歩すぐ
-
15:46発
水間鉄道 水間観音駅
- ↓電車で16分
-
16:02着
水間鉄道 貝塚駅
水間鉄道 貝塚駅から、いざ出発!
タイムトリップのような電車旅
貝塚駅から電車に乗ると、たけちゃんは「水間鉄道に乗るとのんびりした気分に切り替わりますね」と言った。
創業100年を迎えた水間鉄道は、5.5キロの鉄路を走る全国で3番目に短いローカル鉄道。「水鉄(すいてつ)」の愛称で親しまれ、地元の人たちは誕生日や結婚記念日といった人生の節目に、オリジナルのヘッドマークを掲出する……だけではない。
水間鉄道は、「伝説の車両」をルーツに持つのだ。
水間鉄道の車両は、かつて東急の線路を走っていた。さびにくくて強い国内初のオールステンレス車両。昭和30年代から首都圏を走っていた車両は、「銀色の電車」として名をはせていたという。それが今では水間鉄道に引き継がれ、改造やメンテナンスを繰り返しながら、平成2(1990)年から貝塚市で活躍しているというわけだ。
昭和レトロは車内にもあふれている。「ワンマン」と書かれたどこか懐かしい字体、そして吊り革には東急百貨店や渋谷109の広告。天井には扇風機まである。
ノスタルジックな気分に浸りながら電車に揺られていると、15分の乗車時間は短い。
終着駅で降りると、国登録有形文化財の駅舎が迎えてくれた。
渋谷109の広告が刻まれた吊り革
車体には「東急車輛」の銘板が。昭和38(1963)年の製造だ
天井には昔懐かしい扇風機が
第1回近畿の駅百選にも認定された水間観音駅
水間寺へは、童子が導いてくれる?
駅から水間寺に向かう緩やかな坂道にはいくつかの分岐があるが、地図を見なくても迷わずに歩ける。その訳は……「辻々に厄除け十六童子がいて、水間寺にお参りする人を導いてくれているんですよ」とたけちゃん。はて厄除け十六童子とは?
それは水間寺の縁起に由来している。
1300年前の奈良時代、病気になられた聖武天皇が「西南の地におわす観世音菩薩を都にお連れせよ」と行基に命じられた。勅命に従い水間を訪れた行基。この時、清児(せちご)の地で道に迷っていた行基を観世音菩薩と出会えるように導いたのが、十六童子なのだ。
そんな伝説の童子が水間寺まで誘ってくれるとは、なんともありがたい。
左は厄除け十六童子のひとつ「稲籾(とうちゅう)童子」。稲と籾(もみ)などの穀物を豊かに実らせてくれるという
行基がつくったとされる水路
歩き疲れたら、ちょっと休憩
水間寺に向かう道中には、いい立ち寄りスポットがある。
ひとつめは、水間門前町 喫茶図書室。2階は無料休憩所になっており、陳列されている絵本『スイミー』『はらぺこあおむし』や、柳宗悦の『手仕事の日本』など約50冊の本を自由に読むこともできる。
そして、1階には水間門前町 喫茶図書室×haru食堂+。ここにしかない味が楽しめるカフェで、「クレープが人気なんですよ」とオーナーの神谷さんは教えてくれた。
水間門前町 喫茶図書室×haru食堂+の「チョコバナナクレープ」
水間門前町 喫茶図書室×haru食堂+の「ミックスジュース」
水間門前町 喫茶図書室
住所 | 大阪府貝塚市水間466-2 |
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問い合わせ先 | 072-433-7066(貝塚市魅力づくり推進課) |
時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 月~金曜 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩6分 |
駐車場 | なし |
値段 | 無料 |
URL | https://www.instagram.com/kissa_toshoshitsu/ |
水間門前町 喫茶図書室×haru食堂+
住所 | 大阪府貝塚市水間466-2 |
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問い合わせ先 | 072-468-9039 |
時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 月~金曜 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩6分 |
駐車場 | なし |
値段 | チョコバナナクレープ850円(税込)・ミックスジュース550円(税込) |
URL | https://www.instagram.com/haruplus_mizuma/ |
ふたつめのおすすめスポットは、2025年3月27日にオープンするという琥珀珈琲抽出処。
お店の方は「当店はコーヒーを楽しんでいただくためのお店です。ぜひ、ゆっくりしていってください」と言う。
珈琲の薫りが満ちる落ち着いた店内。日常を忘れ、至福のひとときを過ごすことができる空間になるだろう。
自家焙煎珈琲は、琥珀色のビンテージカップ&ソーサーで
30種類以上のさまざまな国のコーヒーが楽しめる
琥珀珈琲抽出処
住所 | 大阪府貝塚市水間560 |
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時間 | 8:30〜18:00(冬季は~17:00) |
定休日 | 月曜・火曜 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩8分 |
駐車場 | なし |
値段 | 琥珀ブレンド(Hot or Ice)500円(税込)~、ストレートコーヒー(Hot or Ice)500円(税込)~ |
URL | https://kohaku-coffee-roasters.com/ |
いよいよ水間寺へ
厄除け観音として知られる名刹
前述の水間寺の縁起には続きがある。
厄除けご利益を授ける観世音菩薩と出会った行基は、都に観世音菩薩をお連れした。すると天皇はたちまち快癒。よろこんだ天皇はこの仏像を現地にお祀りするようにとの勅令を下し、行基がこの地にお堂を建立したのが水間寺の起源とされている。
「戦国時代には貝塚本願寺(現 願泉寺)に梵鐘を売却したり、豊臣秀吉の根来寺征伐の影響を受けて炎上陥落したりと、水間寺はいろんな天災や戦乱の歴史にも見舞われてきたんですよ」と、たけちゃん。
すると、タイミングがよく本堂からおつとめのご祈祷が聞こえてきた。静かで平和な山に、吸い込まれていくかのようなご祈祷の声。自ずと穏やかな心持ちになった。
本堂では毎日、決まった時間にご祈祷が行われている
行基が竜神より聖観世音像を授かった場所とされる「降臨の瀧」
水間寺
住所 | 大阪府貝塚市水間638 |
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問い合わせ先 | 072-446-1355 |
時間 | 境内自由、堂宇は7:30~16:00 |
定休日 | 無休 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩10分 |
駐車場 | あり |
値段 | 無料 |
URL | https://mizumadera.or.jp/ |
恋人の聖地、愛染堂
境内の南側に向かうと愛染堂が見えてきた。「ここには恋愛成就の伝説があるんですよ」と、たけちゃんは「恋人の聖地」と書かれた銘板を指しながら言った。
それは700年前の恋物語。南北朝時代に伏見天皇が水間寺に参拝されたとき、そのおもてなし役を水間の豪農・楠右衛門の娘、お夏が命じられた。その縁で、お夏はお供で同行した山名清十郎という凜々しい若武士に出会う。やがて想い合うようになったふたり。しかし身分の差からふたりは別れることとなる。
しかしお夏は清十郎のことが忘れられない。毎日のようにここ愛染堂に祀られる愛染明王と、境内に植えられた玉椿に再会を祈った。
やがて南北朝合戦が起こり、清十郎も出陣。敗戦した清十郎の身を案じたお夏は戦場をさまよい、ついに清十郎を見つけることができた。これぞまさしく愛染明王の大功徳の現れか。
その後ふたりは結ばれ、仲睦まじくここ水間の地で暮らしたという。
現代は、そんな伝説の愛染堂で購入することができる絵馬や縁結びのお守りが、若い人々を中心に人気なのだとか。
愛染堂
住所 | 大阪府貝塚市水間638 |
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問い合わせ先 | 072-446-1355 |
時間 | 境内自由 |
定休日 | 無休 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩10分 |
駐車場 | あり |
値段 | 無料 |
URL | https://mizumadera.or.jp/ |
Wi-Fiフリーの休憩スポット
旅行中は、暑いので涼しいところでひと休みしたい、寒いのでとにもかくにも暖かい場所に行きたい、フリーWi-Fiを使いたい、そう思う人は多いだろう。
そんな時に気軽に利用できるのが水間寺境内にある、水間門前町 桜のテラス。桜の季節には、2階の無料休憩所から一面の桜が望めることから命名された。
また、1階では泉州名産の水なすを使った「水茄子カレー」などを購入することもできる。
水間門前町 桜のテラス
住所 | 大阪府貝塚市水間624 |
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問い合わせ先 | 072-433-7066(貝塚市魅力づくり推進課) |
時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩10分 |
駐車場 | あり |
値段 | 無料 |
URL | https://www.instagram.com/kissa_toshoshitsu/ |
帰路は名物グルメをいただきながら
泉州名物のやさしい甘味
茶房一会は、地元の人たちが集うアットホームなお店。入店するやいなや、お店の人が優しい笑顔で迎えてくれた。
メニューを見ると「泉州名物」の文字。これは気になる……。くるみ餅にあんころ餅、あべ川、いそべ餅の文字が躍るが、「くるみ餅・抹茶セット」を注文した。
「くるみ餅といっても、胡桃の餡を使っているわけではないんですよ」と、たけちゃん。
くるみ餅とは、戦国時代から伝わる泉州特有の和菓子だそうで、あんで餅をくるんでいるため「くるみ餅」と名付けられたとか。餡にはいくつか種類があるが、ここ茶房一会では大豆の餡。甘すぎない餡と餅の素朴なおいしさが、この店らしい。
茶房一会
住所 | 大阪府貝塚市水間615 |
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問い合わせ先 | 072-447-0125 |
時間 | 8:30~16:00(L.O.15:30) |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅から徒歩10分 |
駐車場 | あり |
値段 | くるみ餅・抹茶セット900円(税込) |
駅うどんで開運招福!
水間鉄道 水間観音駅に戻り、金胡麻木(きんごまき)うどんをいただく。すでにお腹の具合はいい感じだか、これは食さねばならない。なんといってもゴマソムリエ・深堀勝謙さんの協力で開発された開運招福のうどんなのだから。
護摩木のように見える幅広い板状の麺には、杵つき金ごまが練り込まれている。ここに温かい出汁か、冷たいつゆをかけていただく。さらに杵つき金ごまもトッピングするので、期待どおり金胡麻の豊かな香りが食欲をそそる。
コシのあるモチモチ麺をいただき、水間門前町の小旅行は終了。旅の締めにおいしいうどんをいただき、運と道が開ける気がした。
金胡麻木うどん
住所 | 大阪府貝塚市水間260 |
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問い合わせ先 | 072-422-4567(水間鉄道総務部)※平日のみ |
時間 | 11:00~17:00 |
定休日 | 月~木曜(祝日・18日の場合は営業) |
交通アクセス | 水間鉄道水間観音駅構内 |
駐車場 | なし |
値段 | 金胡麻木うどん(温・冷ともに)800円(税込) |
ガイド紹介:たけちゃん (おくむら たけすけ)
- ※提供/貝塚市観光協会
- ※撮影/関根デッカオ
- ※写真提供/水間門前町 喫茶図書室×haru食堂+、琥珀珈琲抽出処、水間鉄道
- ※掲載されているデータは2025年2月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。