列車旅なら飲まなきゃ損! 日本全国酒蔵めぐり 北海道編

電車にゆらゆら揺られて出かける旅なら、のんびりとお酒を飲むことができます。目的地までの新幹線車内でちょっと一杯――というのも大人の休日ならではの過ごし方。近年大人も楽しめる社会科見学として人気を集めているのが、日本酒の酒蔵めぐりです。今回は酒米開発や酒蔵新設などの新しい動きを見せる、日本酒シーンで今もっとも注目を集めている「北海道」を訪れます。その土地の風土を知って味わうと、あら不思議。今までより美味しさが増すから、お酒って面白いものです。

この記事の目次

日本酒界の次なる台風の目!? 可能性を秘めた大地・北海道

可能性を秘めた大地・北海道

日本の面積の約22パーセントを占める北海道。北海道にある国立公園、国定公園、道立自然公園の面積を合計すると約8680平方キロメートルで、広島県全体の面積約8480平方キロメートルよりも大きく、北海道がどれだけ広大かを実感できるでしょう。四方を太平洋、日本海、オホーツク海に囲まれ、高い山々がそびえ、雪解け水は各地の河川へと流れ込み、海、川、大地からさまざまな恵みを享受し、独自の文化と生態系を生んできました。 かつて北海道は、先住民のアイヌが「アィヌモシリ=人間の大地」と呼び、自然と共存して暮らす場所だったため、酒蔵を含むおおよそ全ての企業は明治政府が開拓使を設置した以降にスタートしました。冬の寒さ、豊富な美しい水、そして開発が進み品質を向上させている北海道の酒米。酒づくりに必要なものが揃いはじめた北海道は今、注目を集めています。

みんなの期待を背負う「上川町」町おこしのための新規酒蔵
~上川大雪酒造 緑丘蔵

上川大雪酒造 緑丘蔵

北海道の中央からやや北東、層雲峡温泉がある「上川町」に、2017年に新設された北海道でもっとも新しい「上川大雪酒造」はあります。量産ではなく「高品質のものを造り、みんなに上川町まで来てもらう」を目的とした酒蔵の周囲には、「これほどまでに北海道らしい景色があるだろうか?!」と目を見張るほど雄大で、心洗われるような美しい自然が広がります。上川町がアイヌ語で「カムイミンタラ=神々が遊ぶ庭」と呼ばれてきたのも頷けます。

●主な銘柄:「上川大雪」「神川」
●創業:2017年

上川大雪酒造 緑丘蔵

▲高断熱ガラスでできた見学窓から見えるもろみタンク(仕込室)。窓は数か所に設置されている。

上川町が立ち上げた町おこしプロジェクトの立役者となったのが、北海道出身の三國清三シェフと、上川大雪酒造の社長・塚原敏夫さんです。同蔵から車で15分ほどの位置にある「大雪森のガーデン」内で、三國シェフが監修する「FRATELLO DI MIKUNI(フラテッロ・ディ・ミクニ)」などのレストランを運営する「三國プランニング」の代表取締役でもある塚原さん。美しい上川町を愛し、町の人たちの情熱に呼応するように「この美しい土地においしい地酒があればどんなに素晴らしいだろうか」と思い描きスタート。新規免許取得ができない酒造業界において、塚原さんの旧知の友人の実家が三重県の休眠状態の酒蔵で、免許を移転する形での実現を目指しました。しかし三重県から北海道への免許移転は前代未聞で、問題が次々と立ちはだかり順調に進みません。そして幾多の困難を乗り越えながら、2017年に同蔵は誕生しました。

上川大雪酒造 緑丘蔵

創設にあたっての相棒は、「目指すのは"飲まさる酒"(ついつい飲んでしまう酒)」と語る杜氏の川端慎治さん。小樽出身で、本州の大学在学中に酒造の道を志し、各地で経験を積んだ後、故郷の北海道へと戻りました。別の酒蔵で杜氏を務めていた2011年には、まだ発展途上と思われていた北海道の酒米「吟風」100%を原料として醸した酒で「全国新酒鑑評会」金賞という偉業を成し遂げた名杜氏です。「北海道に川端杜氏あり」と言われるほど、彼がつくる酒を心待ちにしていた道民も多く、北海道の町おこしのための日本酒をつくるには最適任者でした。

上川大雪酒造 緑丘蔵

「上川大雪」は北海道産米(吟風、彗星、きたしずく)を使った純米酒のみ。醸造技術を磨くだけでなく、「原料以上のものは造れない」をモットーに農家との信頼を固く結び、「自分が作った最高の北海道米で上川大雪を造って欲しい」と農家に言わしめ、酒米品質向上にも寄与しています。農業離れが進む中、「いい米を作れば川端さんが高く評価してくれておいしいお酒になる」と農家の意識変化をもたらし、北海道の農業にも新風を吹き込むほどのこだわりようです。

上川大雪酒造 緑丘蔵

(左から)「純米大吟醸雫取り」は余計な圧力をかけずに大切に雫を集めたより特別なお酒(ギフトショップ限定)。「上川大雪 純米大吟醸 35パーセント南幌彗星」「純米吟醸」「特別純米」どれも酒販店販売用にはない"大雪山の山並み"が描かれており直販限定の証です。「上川大雪ギフトショップ」では試飲・購入はもちろん、おしゃれな手ぬぐいや酒器などのグッズを購入することができます。

酒蔵のあとは車で15分ほどのところにある「大雪 森のガーデン」へ。花々が咲き誇り、蝶が舞い、鳥が鳴く、思わず深呼吸したくなる天国のような「森のガーデン」。冬に丘から見下ろす白銀の世界も圧巻です。「緑丘ガーデンショップ」で購入できる地元限定販売酒「神川」は、純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒の3種類。また「緑丘茶房」では酒粕を使ったホットドッグや上川産の牛乳を使ったジェラートを楽しむことができます。

上川大雪酒造 緑丘蔵

住所
北海道上川郡上川町旭町25番地1
ギフトショップ電話番号
01658-7-7380
ギフトショップ営業時間
10:00~16:00(夏季)10:00~15:00(冬季)
ギフトショップ定休日
火曜・水曜(祝日は営業)、不定休あり
見学について
蔵内部の見学はできないが、屋外の見学窓から自由見学可能。冬期間、積雪の多い時期は外部からの見学も出来ない場合があるので注意(酒づくりは10月~7月を予定)。
URL
http://kamikawa-taisetsu.co.jp/

大雪 森のガーデン 緑丘ガーデンショップ

住所
北海道上川郡上川町字菊水841番地8(大雪高原旭ヶ丘)
電話番号
01658-2-4655
営業時間
9:30~17:30(LO17:00)
定休日
不定休(大雪 森のガーデンに準ずる)
※公共交通機関はありません。上川駅から「森のガーデン」までは無料バスが運行しています(6月~9月)。
URL
http://www.daisetsu-asahigaoka.jp/

「日本初」を学び、ジンギスカンと共に舌鼓~サッポロビール園・サッポロビール博物館

サッポロビール園・サッポロビール博物館

札幌にいくなら、絶対に訪れて欲しいのが「サッポロビール博物館」です。自由見学は無料ですが、有料のプレミアムツアーの申し込みが断然オススメです! ツアー限定「6Kシアター」で観るサッポロビール創設にまつわる話は、思わず涙してしまうほど(中川清兵衛版と村橋久成版の2種類のうちどちらかが観れます)。その後館内を解説付きで案内してもらい、ツアー参加後にはおまちかねの試飲です。ツアー参加者のみ飲めるという「復刻札幌製麦酒」と、「サッポロ生ビール黒ラベル」のしっかり2杯。「復刻札幌製麦酒」はコクがあって、明治天皇が視察時おかわりしたのも納得の旨さです。

サッポロビール園・サッポロビール博物館

当初東京に建設予定だった麦酒醸造所。しかし長期低温発酵が必要なことを理由に、村橋久成氏が寒冷地である札幌建設案を直談判して計画変更になった経緯があります。そして1876(明治9)年開拓使事業の一環「開拓使麦酒醸造所」をルーツとしたサッポロビールはシンプルな星マークが目印です。開拓使たちが北海道へ向かう航海のとき目印にした北極星を表わしており、「五稜星」と呼ばれています。当時、北海道という広大な大地に希望を持ち、諦めず挑戦し続けた先人たちの熱意に思いを馳せ、ビールはさらにありがたく美味しく感じます。

サッポロビール園・サッポロビール博物館

歴史を知ったあとは、隣の建物に移動します。赤レンガは1890(明治23)年に開拓使事業の一環で「製糖工場」として建設され、その後サッポロビールが買い取り、約60年「製麦工場」として使用されたのち、1966(昭和41)年「サッポロビール園」として生まれ変わりました。

サッポロビール園・サッポロビール博物館

いくつかあるホールの中でオススメは、1912(大正元)年に製造された巨大な「ビールの仕込み釜=ケッセル」を見上げながら楽しめる「ケッセルホール」です。1966(昭和41)年、いち早く取り入れられた食べ飲み放題は、もちろん現在も健在。提供されるのは生後1年未満の臭みやクセのない「ラム肉」だけ。北海道の形をした鉄鍋で焼いていただきます。大人気のため、季節や平日週末問わず予約は必須です!

サッポロビール園・サッポロビール博物館

住所
北海道札幌市東区北7条東9丁目2-10
電話番号
0120-150-550(サッポロビール園総合予約センター)
営業時間
11:30~22:00(L.O.21:30)
定休日
年末年始、臨時休館日 ※毎週月曜日(祝日の場合は翌日)は、自由見学のみ可
施設見学参加費
プレミアムツアー(有料):大人500円(税込・テイスティング2杯含む)、中学生~20歳未満300円(税込)、小学生以下無料
自由見学(無料):テイスティング、おつまみは有料
URL
https://www.sapporo-bier-garten.jp/

テレビ塔のあとに酒蔵見学!? 札幌の中心にある
~千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

すすきの駅からも歩いていける札幌のど真ん中に、1872(明治5)年に創業した、柴田酒造店を前身とした「日本清酒」はあります。 札幌南部・定山渓よりさらに奥にある緑豊かな山々が水源の豊平川の伏流水を、創業以来変わらず使用しています。「札幌の水は美しい」と聞いてイメージが浮かばないかもしれませんが、札幌は水道水もおいしく、また豊平川に沿ってビール会社や醸造会社の工場が建ち並んでいることがなにより良質な水が豊富な土地であることを証明しているでしょう。「千歳鶴」に使用するのはほぼ北海道産米。札幌っこが「我らの酒」と愛する地酒です。

●主な銘柄:「千歳鶴」「柴田」「雪原の舞」
●創業:1872(明治5)年

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

「千歳鶴」の味わいを守るのは、腕利きの女性杜氏・市澤智子さん。醸造学科を卒業し、地元釧路の地ビール会社と酒蔵で杜氏を経験したあと、2016年同社杜氏に就任しました。以来数々の受賞を重ね、山田錦使用が定石とされる「全国新酒鑑評会」において、北海道産酒米「きたしずく」を使用して金賞を受賞しました。市澤杜氏を筆頭に実際に醸造する現場「丹頂蔵」を、10人以上集まれば見学することができます。(要事前予約)

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

売店も包括する「千歳鶴酒ミュージアム」には、至るところに貴重な資料が点在しています。女優を起用した歴代の宣伝ポスターからは日本酒の華々しい時代を、かつての杜氏が小さな字でびっしりと書き込んだ仕込みの記録簿からは彼の几帳面さや変わらず綺麗な酒を目指してきた歴史を、時代を経て実感することができます。

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

売店レジ横にある試飲コーナーで試飲してから、気に入った酒を購入できます。

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

仕込み水で淹れたコーヒーや、「千歳鶴」の酒粕と北海道産牛乳を使用したソフトクリーム(ノンアルコール)も。鼻腔から抜ける芳醇な日本酒の香りと、甘ったるくない爽やかな甘みは、スイーツが苦手なかたでも食べることができそうです。

千歳鶴酒ミュージアム(日本清酒)

(左から)「千歳鶴 純米大吟醸」「千歳鶴 純米吟醸」は「きたしずく」を使用、「千歳鶴 特別純米」は「吟風」を使用しており、どれも北海道の酒米100%使用のお酒。香りも味わいもおだやかです。特製ふろしきに包まれています。創業者の名前を冠した「與次右衛門 純米大吟醸原酒」「與次右衛門 大吟醸原酒」「與次右衛門 純米吟醸原酒」はどれも温度帯を選ばない万能で豊かな味わい。6本とも「千歳鶴酒ミュージアム」限定酒です。地元の人も自宅用、手土産用として購入に立ち寄るこちら。旅の思い出に気に入った一本を手に取ってみてください。

日本清酒・千歳鶴酒ミュージアム

住所
北海道札幌市中央区南3条東5丁目1
電話番号
011-221-7570
時間
10:00~18:00
定休日
年末年始
URL
https://www.nipponseishu.co.jp/museum/

「丹頂蔵」見学

時間
10:00~17:00平日のみ、冬季酒づくり期間外(要問合せ)
見学人数
10人以上(要相談)
所要時間
約40分
申込方法
10:00~17:00 電話による事前申し込み(011-221-7570)
URL
https://www.nipponseishu.co.jp/factory/

肉で北海道を旅するハンバーグ専門店~ North Continent まちのなか店

ハンバーグ~ North Continent まちのなか店

広大な面積を持つ北海道は、言わずと知れた農業王国。実はお肉の生産量や品質もトップクラスなのです。「お肉の個性で北海道を旅する"ハンバーグ専門店"」をコンセプトにしているお店です。

ハンバーグ~ North Continent まちのなか店

十勝ハーブ牛、十勝ブラウンスイス牛、えぞ鹿、かみふらのポーク…などの中から肉を1種類、そして8種類からソースを選んで、トッピングを追加して自分だけのプレートを完成させます。580円プラスすると、ハンバーグをダブルできる(合計300g超え!)のでたくさん食べたい方にはオススメです。お肉は新鮮で、処理も適切なので臭みはありません。じゅわーっと肉汁溢れ出るハーブ牛と、熱々の北海道産米は相性抜群です。

North Continent まちのなか店

住所
北海道札幌市中央区南2条西1丁目6 マリアールビル地下一階
電話番号
011-218-8809
営業時間
平日11:30~15:00(L.O.14:30)、17:30~22:00(L.O.21:30) 土日祝 11:30~22:00
定休日
年末年始、不定休
予算
1500~2000円(税込)
URL
http://www.north-continent.co.jp/

北海道の酒蔵は長年、道外の米に頼ってきました。しかし近年になって開発が進むと今回の2つの酒蔵のように「北海道産酒米使用」をうたう蔵が増え、道外の酒蔵でさえ積極的に使用するところが増えています。北海道産酒米、そして北海道の日本酒の品質は向上を続けています。 北海道は、海鮮物だけでなく、お酒もお肉もおいしいところ。毎日に疲れたら、時間がゆっくりと流れる、大自然の北海道に行ったらいいべさ!

この列車で行こう!

北海道・東北新幹線H5系はやぶさ・はやて

【北海道・東北新幹線H5系「はやぶさ・はやて」】
運行区間:東京駅~新青森駅~新函館北斗駅間

青森県青森市と北海道札幌市を結ぶ整備新幹線として計画されたのが、青函トンネルを通過して本州と北海道を結ぶ北海道新幹線です。

詳細はこちら

特急オホーツク

【特急オホーツク】
運行区間:函館本線・宗谷本線・石北本線 札幌駅~網走駅間

流氷が押し寄せるオホーツク海の玄関口のひとつとなる網走駅と道央エリアの札幌駅を結ぶのが、ハイデッカーグリーン車を連結したキハ183系の特急「オホーツク」です。日本の鉄道で唯一、ロシア語に由来する列車名です。

詳細はこちら

特急スーパー北斗

【特急スーパー北斗】
運行区間:函館本線・室蘭本線・千歳線 函館駅~札幌駅間

函館駅と札幌駅を函館本線・室蘭本線・千歳線経由で結ぶ特急列車が、キハ281系およびキハ261系特急形気動車で運転されている特急「スーパー北斗」です。

詳細はこちら

著者

関友美

きき酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと記事を執筆、セミナーでの講演や酒蔵での酒造りなど、日本酒のあるさまざまな場所に出没しながら、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさを伝えている。

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