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2025.03.28鉄道めざせ全制覇! 福島県のJR線満喫ガイド

川に山に、風光明媚な路線を巡りつくそう

福島県のJR線は全部で8路線あり、清流・阿武隈川に沿った路線あり、会津磐梯山を望む高原路線ありと、個性豊かで変化に富んだ車窓風景を楽しめます。
首都圏や東北、新潟など各地からアクセスがよいのも魅力です。
デスティネーションキャンペーンも待ち遠しい、見どころいっぱいの福島県のJR線を紹介します。

東北新幹線 那須塩原〜白石蔵王間(東京〜新青森)

福島の名山たちを短時間で眺められる

東京駅と新青森駅を結び、北海道新幹線や山形・秋田新幹線にも直通する東日本の大動脈が東北新幹線です。このうち、那須塩原〜白石蔵王間の約140kmが福島県で、新白河・郡山・福島の3駅があります。

福島県内の駅に停車する列車は〔やまびこ〕と〔なすの〕、そして山形新幹線直通の〔つばさ〕の3種類。〔やまびこ〕〔なすの〕はほとんどの列車が〔はやぶさ〕と同じE5・H5系で、一部の列車に2002年から走り続けるE2系1000番代が残っています。山形新幹線は、最新型のE8系の増備が続いており、東北新幹線内では最高速度300km/h運転が可能です。中でも、東京駅9時24分発〔やまびこ131・つばさ131号〕は、大宮〜福島間ノンストップで、東京〜福島間をわずか1時間18分で結んでいます。

トンネルが多い東北新幹線ですが、車窓左手、E席側には東北地方を代表する名山が次々と現れます。特に郡山駅付近で見える安達太良山と、福島駅の前後で見える吾妻連峰は必見です。


車窓から吾妻連峰を望む(撮影:栗原景)

福島駅では、一部の上り〔やまびこ〕〔つばさ〕が、下り列車の乗り場であるはずの14番線に発着します。これは、山形新幹線山形・新庄方面へは14番線だけが接続しているため。当駅で〔つばさ〕を併結する〔やまびこ〕は、福島駅手前で上り線から下り線側に入ってくる、珍しい光景が見られます。
現在は山形新幹線を上り線にも接続するアプローチ線の建設が2026年度完成を目指して進められており、この光景が見られるのもあとわずかです。


下り線側に向かう上り〔やまびこ〕(撮影:栗原景)

〔やまびこ〕と併結する〔つばさ〕(撮影:栗原景)


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東北本線 豊原〜越河間(東京〜盛岡)

駅弁やご当地グルメを味わうのも楽しい

かつては特急列車が多数走っていた東北本線。現在も貨物列車が多数運行される物流の大動脈ですが、旅客列車は黒磯〜新白河間、新白河〜郡山間、郡山〜仙台間と、地域ごとに普通列車が運行されています。

定期列車はすべて普通列車ですが、使用されている車両はなかなか多彩。電気の方式が変わる黒磯〜新白河間は常磐線などでも活躍しているE531系が、新白河以北では東北地方の主力であるE721系と、どこか懐かしい「国鉄顔」を備えた701系が使われています。このうち、E531系と701系がオールロングシートであるのに対し、最も新しいE721系は4人掛けボックスシートを備えたセミクロスシートで、列車旅らしい情緒を味わえます。


E721系

在来線の旅は乗り換えが多くなりますが、そのぶん途中下車やグルメを楽しめるのも魅力です。新白河駅では、改札前で名物の白河ラーメンを食べられますし、郡山駅などでは全国的に有名な「海苔のりべん」をはじめとする駅弁を購入できます。

東北新幹線が、ほとんど一直線に北を目指すのに対し、明治時代に建設された東北本線は地形に逆らわず蛇行しながら北上します。特に郡山〜福島間は、標高は低いながらも山をいくつも越える区間。金谷川駅を発車して、急勾配で福島盆地へ駆け下りていく区間はちょっとしたハイライトです。

只見線 会津若松〜大白川(会津若松〜小出)

四季折々の絶景を楽しめるローカル線の雄

日本有数の豪雪地帯を走り、全線を走破する列車が1日3往復しかない、JR東日本でも指折りのローカル線が只見線です。
会津若松駅と上越線の小出駅とを結び、このうち会津若松〜大白川間で福島県を走ります。2011年の豪雨災害により一部区間が不通となりましたが、多くの人々の努力と熱意によって、2022年10月に11年ぶりとなる全線復旧を果たしました。

普段は、キハE120形やキハ110形といった気動車が1〜2両で運行されていますが、旅行シーズンにはオープンエアの観光列車「びゅうコースター風っこ」による快速〔風っこ只見線満喫号〕や、レトロラッピング車両による快速〔只見線レトロ満喫号〕も運転されています。


第八只見川橋りょう(撮影:栗原景)

四季折々の車窓風景を楽しめるのも只見線の魅力。多くの区間を只見川に沿って走り、8カ所ある「只見川橋りょう」は、車窓を撮ってもよし、外から列車を撮ってもよしのビュースポットです。列車は少ないですが、沿線には秘湯と言われる温泉地も多数あるので、1泊2日で乗車するのもおすすめです。只見線の楽しみ方については、こちらの記事も参照してください。


只見線の失敗しない楽しみ方は「えきねっとマガジン」で!

「えきねっとマガジン」は、日常と非日常をつなぐ旅と暮らしの情報サイトです。本記事は、「えきねっとマガジン」と「トレたび」のコラボ企画。「えきねっとマガジン」では、只見線にスポットを当て、ローカル線の楽しみ方をご案内しています。

只見線は、福島県の会津若松駅と、新潟県の小出駅とを結ぶ、全長135.2kmのローカル線。阿賀野川水系の只見川に沿って走り、四季折々の魅力的な風景が楽しめます。
そんな只見線に乗りに行くなら、事前準備や見どころをしっかり押さえておきたいもの。この記事を読んで、失敗なく只見線を満喫しましょう!


常磐線 大津港〜坂元間(日暮里〜岩沼)

ロングラン特急が復活した大動脈

「浜通り」と呼ばれる、福島県沿岸部を通る常磐線は、急勾配が少ないことから、古くから多くの優等列車が行き交う大動脈でした。2011年の東日本大震災では大きな被害を受けましたが、一部区間でルート変更のうえで2020年3月14日に全線が復旧。再び幹線としての姿を取り戻しています。

常磐線の魅力は、多彩な車窓風景と、国鉄時代から続くロングラン特急の存在です。品川〜仙台間を直通する特急〔ひたち〕は1日3本。373.9kmを4時間40分前後をかけて走る、JR東日本の在来線最長ランナーです。福島県内では温泉地の湯本駅をはじめ、磐越東線が分岐するいわき駅、相馬野馬追などの伝統行事で知られる相馬駅など、11駅に停車します。


双葉駅を走る特急〔ひたち〕

車窓風景も魅力で、久ノ浜駅付近では雄大な太平洋を眺められるほか、海岸に近づいたり、内陸の丘陵地に入ったりと、めまぐるしく風景が変わります。また、いわき駅以北では、1960年代に廃止された旧線のトンネルが多数残り、いくつかは車窓から見られます。常磐線を電化した際、明治時代の小さなトンネルでは架線を設置できず、新たにトンネルを掘り直したもので、明治時代のトンネルの意匠をよく残しています。


左に旧トンネルが見える(撮影:栗原景)

磐越東線 いわき〜郡山間(同)

渓谷の先に神秘的な鍾乳洞が待つ

福島県の「浜通り」(太平洋沿岸)と「中通り」(東北本線沿い)を結ぶ路線として大正時代に建設されたローカル線です。
特急列車はなく、1990年代から走り続けるキハ110形気動車がのんびり走っています。いわき駅を発車した列車は、夏井川に沿って阿武隈高地へ分け入っていきます。小川郷駅から夏井川渓谷と呼ばれる景勝地に入り、20‰(1000m水平に進むごとに20mの高低差)という急勾配で峠越えへ。小さな盆地に出た小野新町駅は、女の子が大好きな人形のテーマパークがあります。沿線には鍾乳洞も多数あり、神俣駅からタクシーで10分の「あぶくま洞」では、地下水が作り上げた芸術品のような鍾乳石を鑑賞できます。近隣には、本格的な探検気分を味わえる「入水鍾乳洞」もあります。


あぶくま洞

田村市の中心である船引駅付近からは、郡山駅に向かって左手に、まるで昔話にでも出てきそうな美しい形をした片曽根山が見えます。ここから列車は下り勾配となり、三春駒で知られる城下町の三春駅を通って終着・郡山へ。小野新町〜郡山間は1〜2時間に1本列車があるので、時間が許せば途中下車と散策を楽しみたい路線です。

磐越西線 郡山〜豊実間(郡山〜新津)

森と川、峠に高原と多彩な表情をもつ

明治末期から大正初期にかけて、福島と新潟を会津経由で結ぶ鉄道として建設された路線です。郡山〜会津若松間は、会津磐梯山のすそ野を通って会津盆地へ向かう高原路線です。ちょっとぜいたくな旅を楽しむなら、特急並みのリクライニングシートを530円で利用できる快速〔あいづ〕の指定席を利用するとよいでしょう。


快速〔あいづ〕

郡山駅を発車して、安子ケ島駅を過ぎると本格的な上り勾配が始まります。右手に迫る山地は名峰・安達太良山。中山宿駅は、かつてスイッチバックだった駅で、旧駅のホームが保存されています。猪苗代駅で会津磐梯山と対面すると、ここからが高原列車の本番。急勾配を避けるため、右に左にカーブを描いて距離を稼いで会津盆地へ降りていき、磐梯山の見える方角がめまぐるしく変わります。磐梯山が後方へ去ると、会津若松駅。配線の関係で、喜多方・新津方面へは進行方向が変わります。

会津若松〜新津間は阿賀川に沿って深い森の中を走り、「森と水とロマンの鉄道」の愛称で呼ばれています。毎年春から秋にかけての週末にはC57形蒸気機関車が牽引する〔SLばんえつ物語〕が運行されているのもこの区間。ラーメンが有名な喜多方駅から分岐していた国鉄日中線は廃止されましたが、廃線跡はしだれ桜がいっぱいに咲く遊歩道になっています。


日中線しだれ桜並木(撮影:栗原景)

水郡線 下野宮〜安積永盛間(水戸〜安積永盛)

久慈川の源流を走るローカル線

水戸や郡山の通勤路線であると同時に、茨城県北部の奥久慈温泉郷へのアクセス路線として親しまれている路線です。福島・茨城県境の八溝山に源流を発し、福島県から茨城県へ流れて太平洋に注ぐ久慈川に沿って走ることから、「奥久慈清流ライン」の愛称で親しまれています。

2019年10月には台風の影響により一部区間が長期にわたって不通となりましたが、2021年3月27日に全線復旧を果たしました。列車はすべて普通列車で、セミクロスシートのキハE130系による運転が行われています。全部で39両ある車両のうち、キハE130-7だけは、全線復旧1周年を記念して、黄色1色にラッピングされた「Suigun Line イエローハッピートレイン」。もし乗れたら、幸運が訪れるとも言われています。


Suigun Line イエローハッピートレイン(撮影:栗原景)

日本らしいのどかな里山風景を楽しめる水郡線の見どころは、福島県側に入って最初の駅、矢祭山駅です。桜やツツジ、紅葉の名所として知られる矢祭山公園の玄関で、駅からすぐの場所に、久慈川の渓流にかかる「あゆのつり橋」があります(2025年3月31日まで改修中)。橋を渡った先には、「ふくしまの水三十選」に選ばれた「夢想滝」があり、手軽な散策を楽しめます。


奥羽本線 福島〜板谷間(福島〜青森)

板谷峠越えのアプローチに注目したい

山形新幹線の列車が乗り入れる奥羽本線は、普通列車も運行されています。全国のJRでも数少ない、標準軌の普通列車が走っている区間です。


庭坂駅を出たE3系つばさ

山形線の愛称もある奥羽本線の見どころは、庭坂〜板谷〜大沢間の板谷峠越え。板谷駅の手前で山形県に入ってしまいますが、庭坂駅を発車して、列車が福島盆地から奥羽山脈の斜面に取りつくところも見応えがあります。住宅街と水田が広がる盆地の端まで来ると線路は大きくS字カーブを描き、崖の斜面と平行になって山登りを始めるのです。「これから峠を越えるぞ」という意気込みが伝わる区間です。山形新幹線で軽やかに通過するのも楽しいですが、普通列車で各駅に停車しながら登っていくのも、鉄道らしい趣があります。

思い立ったが吉日! 魅力いっぱいの福島の鉄道旅へ

それぞれの路線に、それぞれの魅力があるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
自然たっぷり、見どころいっぱいの福島県の鉄道路線。気になった路線に乗りに行ってみませんか。


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。
小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。
東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。

主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「鉄道へぇ~事典」(交通新聞社)、「国鉄時代の貨物列車を知ろう」(実業之日本社)ほか。

  • 写真/栗原 景、交通新聞クリエイト、福島県観光物産交流協会
  • 掲載されているデータは2025年3月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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