ついに引退! 新幹線の安全には欠かせないドクターイエローの車内とは?
「幸せの黄色い新幹線」とも呼ばれているドクターイエロー。
2025年1月に1編成が、2027年にもう1編成が引退することが先日発表されました。
今回はそんなドクターイエロー(T4編成)の車内公開にトレたび編集部が潜入し、気になる車内をご紹介!
引退前の今だからこそ知っておきたい、ドクターイエローの秘密に迫りました。
ドクターイエローとは?
新幹線の安全を60年以上見守る“お医者さん”
迫力がスゴい!
新幹線の線路や架線の状態を検測し、新幹線の安全を支える「ドクターイエロー」。
正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」なのですが、黄色い車体に青いラインという特徴的な見た目から、いつしかドクターイエローという愛称が定着しました。
在来線の軌道試験車をもとに設計されたT1編成が登場した1962年に、ドクターイエローの歴史はスタートします。
2001年にはT4編成と呼ばれる923形が登場。東海道新幹線700系をもとにした車両は、現在に至るまで運用されています。
ですが、車両の老朽化もあり2025年1月にT4編成が、2027年にT5編成がそれぞれ引退となることが発表されました。
ドクターイエローの編成とは…?
ワクワクする入口!
ドクターイエローは7両編成。
車両ごとに検測の仕事が分けられ、信号や通信、軌道検測などを行っています。
1号車に4人、4号車に2人の検測員が乗車。運転士や車掌も含めて計8人で運行しています。
現在はのぞみに相当するダイヤの編成が約10日おき、こだまに相当するダイヤの編成が約3カ月おきに走行中。
東京駅と博多駅の往復を、2日かけて検測しています。
運行日も非公開なため、遭遇するのもレアな車両となっており、「見ると幸せになれる」とも言われています。
そんなドクターイエローの車内に潜入してみました!
ドクターイエローの車内に潜入!
電力関係のデータを点検する1号車
1号車の車内は、電力の検測と信号・通信の検測をしています。
電力検測はトロリ線(電気をパンタグラフに送る電線)の点検や、支障物の確認、電圧の測定などを行っています。
検測時の見え方はこんな感じ
信号・通信検測は、ATC信号(列車と列車の間隔などに応じて、列車の速度を自動的に低下させ、衝突を回避させる信号)の測定や、列車無線(列車の乗務員と地上の指令員が連絡するときに利用)の測定を実施。
検測結果が映し出されたモニターで異常がないかを確認しています。
ちなみに、二つの机の間にある黄色い鉛筆削り。いつからあるのかは誰もわからないのだとか。
しかし現役バリバリで使用されており、イベント時には鉛筆削りを撮影するファンも多いみたいです!
1号車にあるドクターイエローのロゴ
現役の鉛筆削り。やはり黄色い…
窓から直接確認! 3・5号車
階段を上った先に見えるのは…?
3号車と5号車には走行中のパンタグラフや支障物の確認ができる観測ドームがあります。
階段を上ってみると、一人分の座席があり、窓からはパンタグラフが確認できます。
実物を見て判断したいときなどに使われることが多いです。
ちなみに、走行中の様子はカメラを通して1号車のモニターでも確認できます。
奥にうっすらと見えるのがパンタグラフ
線路の軌道を確認! 4号車
こちらもモニターで監視する
ドクターイエローは7両ありますが、そのうち6両にはモーターが付いています。しかし、4号車だけはモーターが付いていません!
また、他の号車よりも12cm高いのも特徴。
そんな他の号車とちょっと違う4号車では、線路の軌道を検測しています。
快適な乗り心地を提供するために、線路のゆがみを0.1mm単位で25cmごとに確認。
ちなみに車両の下には、軌道検測用の台車が付けられており、これが12cm浮いている理由でもあるんです!
ちょっと懐かしい? 7号車
なんだか懐かしさを感じる7号車
7号車の写真を見て、どこか懐かしさを感じる人もいるのではないでしょうか。
そう、この座席は700系新幹線と同じ座席なんです!
座席がフカフカな感じや机が一気にバンッと倒れる感じが700系の感覚と同じでした。
7号車にはモニターが用意されており、イベント時にドクターイエローの説明動画などが放映されています。
ドクターイエローを支える人たちの想い
検測員の方々から共通して出た言葉とは?
各号車で検測員の方々が説明してくださいました!
今回の取材では、検測員の方々にもお話を伺いました。
みなさんにドクターイエローの思い出を聞くと、共通して出た言葉が「感謝」でした。
T4編成は20年以上運用され、新幹線の安全を守り続けてきました。
そんな縁の下の力持ちとして支え続けたドクターイエローへの「感謝」、そしてドクターイエローを「見るだけで幸せになる車両」として人気の車両へと押し上げたファンへの「感謝」などさまざまな感謝を検測員の方々は述べていました。
実際にドクターイエローの検測で駅に停車中、多くの人だかりができている姿をカメラや車窓を通して見ることもあったのだとか。
今後も「新幹線の安全を守り続ける」という変わらない信念のもと、ドクターイエローは引退まで走り続けます。
まとめ
先頭車のカメラ。新幹線の安全を見守っています
引退が迫ってきたドクターイエロー。
検測車としてこれほどの人気を得る理由がわかった取材でした。
これまで何百回と走り続けたドクターイエロー。そして多くの検測内容を、ひとつひとつ目を光らせて確認する検測員の方々。
仕事への誇りをもって業務を遂行する彼らなしでは、快適な新幹線の旅を実現できていなかったかもしれません。
そう思うと、私もドクターイエローに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えつつ、新幹線の旅をしたくなりました。
引退までにもドクターイエローに会えるイベントが用意されています。
最後まで読んでくださったみなさんも、直接見てみてはいかがでしょうか。
そして幸せをおすそ分けしてもらい、最後の雄姿を見届けるのも良いかもしれませんね。
走行中のドクターイエローの秘密についてはこちらをチェック
JR東海に取材した記事はこちら!
- ※取材協力/JR東海
- ※取材・編/トレたび編集室
- ※写真協力/交通新聞クリエイト