約9カ月ぶりに復活した観光列車に乗車してきました
秋の行楽シーズン真っ只中の10月3日と11月7日、JR東海は中央本線名古屋駅~奈良井駅間で観光列車「▲▲中山道(なかせんどう)トレイン2020号▲▲」を運転しました。JR東海が運転を予定していた観光列車はコロナ禍で多くが運休となっていたため、1月の「ぬくもり飛騨路号」以来、約9カ月ぶりに観光列車が“復活”しました。穏やかな秋晴れとなった10月31日、実際に乗車し奈良井駅までの旅を楽しんできました。
「▲▲中山道(なかせんどう)トレイン2020号▲▲」とは
「中山道トレイン」は、江戸時代の五街道のひとつ「中山道」の宿場町をめぐる観光列車で紅葉の木曽路を駆け抜けます。列車名の▲▲はただの記号ではなく、島崎藤村の代表作「夜明け前」の書き出し「木曽路は全て山の中である」にちなみ、木曽の山々の中を走る列車の意味が込められています。車両は、普段は中央本線を走らない、飯田線の「伊那路」、身延線の「ふじかわ」で使われている373系3両編成で、宿場町の街並みや関所のイラスト、紅葉が描かれた特製ヘッドマークが用意されました。
先頭車両の横には「名古屋→秋の木曽路へ」ときっぷをイメージしたフォトスポットも用意されていました。名古屋駅駅員の手作りとのことで、こうした細かい演出も観光列車ならではです。
名古屋駅に「中山道トレイン」が入線すると、早速撮影タイムです。車両の先頭はたちまち撮影会の会場に。皆さん、ヘッドマーク、車両などを写真に収めていました。
名古屋駅を出発
満席となった列車は名古屋駅を出発し、多治見駅、中津川駅、南木曽駅、野尻駅、上松駅、木曽福島駅、藪原駅に停車し、奈良井駅を目指します。まず、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、空調装置、ドアの開閉による換気、化粧室のドアノブなど乗客の手が触れやすい箇所の消毒を行なっていること、例年実施している乗務員による「おもてなし」は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、今回は実施しないことなどが放送されました。残念ですが、列車の運転による感染者を出さない、という強い意志を感じました。
観光列車ならではのおもてなし
名古屋駅から2駅目、鶴舞駅を過ぎたあたりで列車に添乗しているJR東海のスタッフが何やら袋を配りはじめました。もらった袋を見ると、乗車証明書、列車のヘッドマークをデザインしたミニタオル、木曽路エリアの観光パンフレットなどが入っていました。証明書は紙ではなく、中央本線沿線の中山道にかつて福島の関所があったことから通行手形をイメージした木製のもので、乗車の記念にぴったりです。
愛知県内を抜け岐阜県に入ると、車窓からの景色が住宅街から豊かな自然に変わります。こうした変化も観光列車の楽しみです。各駅到着前には、街の成り立ち、周辺の観光案内を伝える放送が入ります。駅によっては手作りの横断幕を掲げて出迎えてくれる駅もあり、“特別”な列車であることを感じさせてくれます。
中津川を過ぎると木曽の山々が迫り「山岳路線」の色が濃くなってきます。倉本駅を通過後、「中山道トレイン2020号にご乗車の皆さま、おはようございます。楢川中学校の●年●組、●●です。今年は残念ながら乗車することはかないませんでしたが、車内放送にておもてなしをさせていただきます。これから奈良井へと続く中山道の観光スポットをご紹介いたしますのでお楽しみいただければ幸いです。」と放送が入りました。例年、中山道トレインに乗車し、おもてなしを行なっていた長野県塩尻市立楢川中学校の生徒の声を録音したものです。コロナ禍ならではの工夫を凝らした演出です。
倉本駅~上松駅間の車窓から、木曽川の景勝地「寝覚めの床」を臨むことができます。寝覚めの床は木曽川の流れが花崗岩を削って作られた場所です。川の幅が一段と狭くなった場所には松に包まれた「浦島堂」が建っています。楢川中学校生徒の放送によれば、浦島太郎が竜宮から帰って余生を過ごしたという伝説の地なのだそうです。この里で「寝覚め」、また、目覚めた場所が床のような岩であったことから「床」、そうしてこの場所を「寝覚めの床」と呼ぶようになったといわれているそうです。景色とともに、その地への理解を深めることができるのも楽しいですね。
奈良井駅に到着
藪原駅を出ると、目的地はすぐそこ。奈良井駅到着直前には、こんな放送がありました。「ご乗車の皆さまにだけ、宿場町を守る番兵による検分がございまする。万全の体制でお降りいただき、ぜひお楽しみくだされ」。何やらただ事ではありません。列車を降り、駅の出口に向かうと、そこには2人の「番兵」が立っているではありませんか。
もちろん、観光列車を出迎える演出で、番兵の正体はJR東海社員と塩尻市職員。「マスクはしておるか。マスクをして通られよ」「止まっては密になる」などと声を掛けながら乗客を出迎えていました。
奈良井宿お尋ね者企画
奈良井は中山道の宿場町として栄えた地で、今も江戸時代の風情を感じられる街並みが残ります。降車後も塩尻市と共同企画のイベントが用意されているのが「中山道トレイン」の特長でもあります。実は、車内で配られた袋の中には「奈良井宿お尋ね者企画」と書かれた紙が入っており、そこに「身丈 伍尺捌寸恰幅よろし」「齢 伍拾前後」「奈良井宿にて無銭飲食を繰り返す」などのヒントが書かれています。
このヒントを参考に奈良井宿を歩いて、「お尋ね者」を探し出します。名古屋市から来たという夫婦がお尋ね者を発見。乗車証明書として配られた通行手形を見せて、記念品の箸をもらっていました。
列車と共に降車後もその街を満喫できる「中山道トレイン」。満足度の高い列車となりました。JR東海では、11月21~22日に飯田線の秘境駅を一度に訪ねることのできる人気の観光列車「10周年飯田線秘境駅号」を運転します(※既に満席)。
普段は走らない路線を走る列車、おもてなしイベントやプレゼントなど、観光列車では乗車した人にしかない特別な体験ができます。
みなさんもぜひ、次の旅行は観光列車で楽しんでみてください!
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