「くろちゃん」と一緒に旅ができるD&S列車
2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」の影響で豊肥本線肥後大津駅~阿蘇駅間が不通となり、熊本駅~宮地駅間を結ぶ特急「あそぼーい!」は長期運休となってしまいました。2020年8月8日の始発列車から全線が開通となり、「あそぼーい!」は運転区間を熊本駅~別府駅に延長し、復活しました。熊本駅から阿蘇外輪山の中を抜け、日本有数の温泉地として知られる別府までの旅が楽しめます。
使用される車両は、列車の両端に前面展望が楽しめる展望席(パノラマシート)を設置した4両編成のキハ183系1000番台で、3号車のファミリー車両には親子シートや遊び場、カフェなどの楽しい仕掛けがあり、子供連れの旅にも最適な列車となっています。
熊本駅を発車した列車は市街地を抜け、坂道を登りながら立野駅に到着します。この駅でスイッチバックして急坂を登り、途中に設置された折り返し地点で元の向きに戻ります。ここで外輪山を越えた列車は、雄大な二重カルデラの中を走ります。穏やかな阿蘇のカルデラ風景と活火山の阿蘇山を車窓に映しながら走り、阿蘇神社の最寄り駅となる宮地駅に停車します。この先で坂の上トンネルを抜けて大分県に入ると、「荒城の月」の作曲者として知られる滝廉太郎の記念館がある豊後竹田駅、そして日豊本線・久大本線と合流する大分駅に到着します。ここから日豊本線に入って別府湾沿いに北西へと向かい、別府温泉の玄関口となる終着の別府駅に到着します。
鉄道コンシェルジュ ミスターKのとっておき情報
キハ183系1000番台
4両編成の列車の両端の運転席を2階部分に設置し、1階部分に展望室を設置したJR九州に1編成のみ在籍するキハ183系1000番台です。車体は黒と白のツートンカラーで、外観にはキャラクター犬「くろちゃん」のイラストが描かれています。
パノラマシート(1・4号車)
4両編成の1・4号車の先頭部分は展望室となっており、2席+1席配置のパノラマシートが3列配置されています。別府行きでは1号車、熊本行きでは4号車が先頭になりますので、各列車では進行方向の前面展望が楽しめます。また、逆向きとなるパノラマシートには流れゆく後方の風景が映し出されますが、かつて国鉄時代に特急列車の最後部を飾った展望車の雰囲気が楽しめるものです。
白いくろちゃんシート(3号車)
熊本方の中間3号車には、親子で座るのに最適な「白いくろちゃんシート」が9席設置されています。窓側席が常に子供用の座席になるように工夫された転換クロスシートの親子席で、おとな1名と幼児1名が並んで座ることができます。大人席と子供席では枕の高さや座面の大きさ、背中のクッションの厚みが異なるなど、子供が快適に過ごすための工夫が施されています。
くろカフェ&こども向け遊具(3号車)
ファミリー車両となる中間3号車には、「くろちゃん弁当」や「あか牛メンチカツサンド」、「こどもぷりん・大人ぷりん」、各種飲料、オリジナルグッズなどを販売する「くろカフェ」が設置されています。また、客室乗務員と一緒に子どもたちが遊べる木のボールプールや、子どもたちが寝転がれる和室、絵本や「くろちゃん」のオリジナル絵本を集めた絵本コーナーなど、子どもたちが遊んで楽しめる空間があります。
- ※新型コロナウイルスの感染予防のため「こども向け遊具」が使用中止となっています(2021年2月4日現在)。
普通車指定席(1~4号車)
4両編成の全車両が普通車指定席。カラフルなシートモケットを採用した、目に楽しいデザインとなっています。2号車には4人用ボックスシートが4室設置されており、3・4人で利用する際に使用可能です。また、1号車にカウンターベンチ、2号車にフリースペース、4号車にソファーとカウンターベンチが配置され、誰でも自由に利用することができます。
車窓を彩る雄大な阿蘇外輪山
立野駅の三段スイッチバックを利用して阿蘇外輪山を越える情景が、豊肥本線の熊本方のハイライトです。スイッチバックした立野駅から途中の折り返し地点を通過し、赤水駅から阿蘇の二重カルデラの中を走ります。右手車窓には、活火山の阿蘇山が時には噴煙を上げて出迎えてくれます。シックな雰囲気の阿蘇駅舎には「くろ駅長室」があり、自由に出入りして記念写真を撮ることができます。
列車情報
運転日 | 土曜・日曜・祝日を中心に運転 |
---|---|
運転区間 | 豊肥本線(阿蘇高原線)・日豊本線 熊本駅~別府駅間 |
運転時刻 |
【下り】熊本駅9:11発→別府駅12:37着 【上り】別府駅15:06発→熊本駅18:30着 |
著者紹介
- ※文/ミスターK(結解喜幸)
- ※写真/交通新聞クリエイト
- ※掲載されているデータは2021年2月現在の情報です。
- ※運転日・運転区間等は変更となる場合があります。