払いもどし手数料や乗車変更のルールを知って、「損をしない」鉄道旅に出かけよう
皆さんこんにちは。
「待ちに待った旅行がいよいよ始まる!」そんなタイミングで出かけられなくなったり、前夜興奮しすぎて眠れず寝坊をしたり、列車に乗り遅れたり……旅の出発前も、道中もトラブルはつきものです。
そんなときに悩ましいのが「きっぷ」の扱いですが、ルールを知っていれば非常事態でも冷静に対処できます!
本シリーズ最終回となる今回は、突然のトラブルにも慌てない、そして損をしなくて済むように、嬉しいきっぷのルールをご紹介します。
キャンセルするなら2日前のルール ~キャンセル料は前日値上がり~
急な仕事で出かけられなくなってしまった。せっかくきっぷを頑張って抑えたのに。めそめそ(きっぷを恨めしそうに眺める)
|
||
悲しみに浸るより先に、きっぷの払いもどしに行きましょう。前日になると指定席券の払いもどし手数料は爆上がりしますよ!
|
せっかく張り切って乗車券や特急券などを揃えたのに、急に舞い込んだ仕事のせいで出かけられなくなった経験はありませんか?
こんなとき、最初にすべきは「きっぷの払いもどし」です。
使用前のきっぷであれば、払いもどしをすることで手数料を引いた額がもどってきますが、この「手数料」が曲者で、乗車日前日になると、突如値上がりするのです!
乗車券、回数券、定期券、自由席特急券
→有効期間内なら、払いもどす日にかかわらず、220円
指定席特急券、指定席グリーン券、寝台券
→ 出発日の2日前まで:340円
→ 出発日前日~出発前:きっぷ代の30%(最低340円)
たとえば東京~新青森で、乗車券(10,340円)と新幹線の指定席特急券(7,330円:通常期)を払いもどすとします。
手数料の計算
2日前までの払いもどし手数料
乗車券分220円+特急券分340円=合計560円
前日~出発前の払いもどし手数料
乗車券分220円
特急券分は、7,330円×30%=2,199円。10円未満は切り捨てるので、2,190円
乗車券分220円+特急券分2,190円=合計2,410円
上記のように、2日前の払いもどしと、前日~出発前の払いもどしでは、手数料が1,850円も違ってきます。同じように手数料を取られるにしても、のんびり直前まで寝かせておいて30%取られるくらいなら、早めに手続きをして傷口を最小限に抑えましょう。
ちなみにこのルールを知っておくと、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」のような人気列車のきっぷのキャンセル発生に遭遇しやすくなります。
「サンライズ出雲・瀬戸」で一番リーズナブルな寝台はBソロの6,600円です。2日前までに寝台券をキャンセルすれば手数料340円を差し引いた6,260円が返ってきますが、前日~出発前では手数料が30%(1,980円)もかかり、もどってくるのは4,620円になってしまいます。
そんなわけで「雲行きが怪しくなってきたけど、もしかしたら出かけられるかもしれないから……」とギリギリまで粘っている人も、2日前には手数料のことを考えて払いもどしがちです。
発売日にはきっぷを確保できなかったけれど「どうしても乗りたい! 何がなんでも乗りたい」と強く思ったときは、出発2日前に再びきっぷ売り場を訪ねてみることをおすすめします。もしかしたらキャンセルのおこぼれに預かれるかもしれません。
乗車時刻を変更したいときの「乗車変更」~1回までなら無料~
帰省先から帰ろうとしたタイミングで地元の友人にばったり遭遇。列車の時刻までお茶をしていたら昔話に花が咲きすぎてしまい、このままだと全然話し足りない! 旅先で観光の時間を十二分に確保していたけれど、ずいぶん早い時間に駅までもどってきてしまった!
あらかじめ指定席特急券を確保した列車よりも「もう少しあとに乗りたい」とか「もっと早い時間で帰りたい」と思った経験はありませんか?
このような場面で活きてくるのが「乗車変更」です。乗車変更とは、指定された列車の「乗車日」や「時間」などを無料で変更できるもので、「1回」だけ利用できます。
2回目以降は「いったん払いもどして買いなおす」という手続きを経るため、所定の手数料がかかります。
また、「乗車変更」は「自由席特急券」を「指定席特急券」に変更するときも有効で、たとえば年末年始やお盆のシーズンなどに、指定席が売り切れているため、やむなく自由席特急券を確保していたところ、当日になって指定席に「空席」が出ていたようなラッキーな場面で活用できます。
なお「自由席特急券」から「指定席特急券」に乗車変更するにあたっては、その差額(通常期は530円)を支払う必要があります(列車や利用区間によって差額が異なることもあります)。
また「指定席特急券」から「自由席特急券」への乗車変更は原則できません。
寝坊して乗れなかった! 手元のきっぷはどうなる?
~自由席なら乗車可能~
前述のように(そんなレアな場面はあるかわからないですが)話し込んでしまい、列車の発車時刻がとうに過ぎていたとか、あとは「寝坊した! もう間に合わない!」とか、乗り遅れはまれに起こります(体験談)。
残念ながら、発車済みの列車の指定席特急券は「乗車変更」も払いもどしもできないのですが、同じ日の特急列車、新幹線であれば、自由席に限って乗車が叶います。
なお「指定席特急券」は「自由席特急券」より値段が少し高めに設定されているものの、乗り遅れて自由席を利用したからといって差額の返金はありません。勉強代と捉えましょう。
また東北新幹線「はやぶさ」、北陸新幹線「かがやき」のように、全車両指定席の列車は自由席がないため、乗り遅れた場合の「指定席特急券」は「立って乗る特急券」を意味する「立席特急券」に性質を変えます。
空いている席があったら座っても構いませんが、その座席の指定席特急券を所有している人が現れたら譲らなくてはならず、混雑する時期の場合は、ずーっと立ちっぱなしの可能性もありますので、乗り遅れないことが一番です!
- ※「はやぶさ」や「かがやき」など例外を除き、全席指定席の特急列車、新幹線に乗り遅れた場合は、後続の全車指定席の特急列車、新幹線に乗車できません。あらためて特急券を買い求めましょう。
「新」のつく駅、つかない駅が「同じ駅」と見なされる? ~選択乗車の極意~
本シリーズ第3回では、「乗車券」の視点でみると、並行する在来線と新幹線は乗車券上「同じ路線」と見なされるとご説明しました(一部区間を除く)。
これは2つの路線があるとき、乗車券に書かれた経路にかかわらず「どちらを選んでもよい」とする「選択乗車」のルールが適用されるためです。
そのため、大阪から東京まで東海道本線の普通列車でのんびり移動する行程を組んでいるようなときに「もう疲れた~」と、途中駅から東海道新幹線に乗り換えることが可能です(特急券は別途必要です)。
名古屋駅のように在来線と新幹線の駅が同じなら、普通列車から新幹線に乗り換えたとしても「特急列車に乗り換えるような感覚」に近くわかりやすいものの、必ずしも在来線と新幹線が同一の場所に位置しているとは限りません。
① 選択乗車が可能な駅 ~在来線・新幹線~
たとえば、静岡県富士市では東海道本線は「富士駅」、東海道新幹線は「新富士駅」といった具合に、駅の位置自体が離れていれば、そもそも駅名すら違います。
しかし、ありがたいことに「選択乗車」は経路だけでなく「駅」も含まれていることから「富士駅」「新富士駅」が同じ駅のような感覚で利用できます。
静岡以西~三島以東の乗車券を使っているとき、きっぷに書かれた経路が「東海道本線」か「東海道新幹線」であるかにかかわらず、どちらを選んでもよく、また途中の「富士駅」「新富士駅」でも途中下車可能なのです。
なんなら「富士駅」で途中下車、「新富士駅」まで何らかの手段で移動して東海道新幹線に乗車しても差し支えありません。もっとも、やる人はいないと思いますが!
② 選択乗車が可能な路線 ~在来線同士~
選択乗車は「在来線」と「新幹線」だけでなく、「在来線同士」でも設定があります。
「山陽本線 相生~東岡山」と「赤穂線」の例でいうと、山陽本線の乗車券を持っていながら「ちょっと味変しよう」と思いつきで赤穂線に乗り換えることができます。
あらかじめ乗車券を発券してしまうと「その行程でしか旅できない!」と思いがちですが、選択乗車のルールをうまく活用すれば、新幹線に乗れたり、ちょっと違う路線に入り込んでみたり、遊べる余地が残されています。
せっかく新幹線に乗ったのにめちゃくちゃ遅れてる! ~2時間の壁ルール~
ここまでは、「自分に責任がある場合」に使えるきっぷのルールを紹介してきました。
最後に、鉄道側の理由で乗れなくなった場合、つまり運転が取りやめ、はたまた大幅遅延している場合の扱いを紹介します。
まず、運転が取りやめになった場合は「旅のどの時点」にいるかで扱いが変わります。
きっぷ代が全額返ってくる
旅の途中で先々の列車が運転取りやめとなった場合
乗車しない区間の乗車券代、運転取りやめとなった列車の特急券代が返ってくる
乗車中の列車が途中で運転取りやめとなった場合
運転取りやめとなった列車の特急券代が全額返ってくるうえ、後続の特急列車に乗車できる
※上記の場合はすべて鉄道側の理由ですので、手数料はかかりません。
では、運転取りやめではなく、列車の遅れのときはというと……覚えておきたいのは「2時間の壁」です。
特急列車、新幹線が到着時刻よりも2時間以上遅れた場合は、なんと特急料金の全額が返ってくるのです。
なお、遅延時間が2時間に満たないときは、仮にそれが1時間58分遅延などであっても返金の対象にはなりません。
この手の話でしばしば話題になるのは、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」です。出雲市・高松~東京と長距離を運行していることから、他の列車にくらべると遅延しやすい傾向があるためです。
同列車の上りは、終点東京駅の到着時刻が午前7時8分。つまり東京駅に到着する時刻が9時8分以降だった場合、特急料金が全額もどってきます。
ちなみに寝台列車利用にあたって必要になる「寝台券」は、午前6時までに列車が運転を取りやめたときに全額返ってきます。
なお、こうした大幅遅延の際は、窓口が混雑しがちです。証明を受けた日から「1年以内」であれば対応してもらえますので、空いているタイミングを狙って清算しにいきましょう!
まとめ
今回は、旅が始まる前、それに道中のいろんなトラブルに対応するためのきっぷのルールを解説しました。
私自身は起床事故(寝坊)が発生すると、頭が一瞬真っ白になったあと「この遅延をどう回復させようか」と猛烈に燃え出すタイプです。「腕の見せ所だ」とすら思っています。
皆さんは、きっぷのルールと勘所を抑えて、ぜひ冷静に対応してください!
著者紹介
- ※掲載されているデータは2022年2月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。