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2022.07.21鉄道5000系(JR四国) 快速〔マリンライナー〕として瀬戸内海を往復する2階建て電車

最新の走行性能と抜群の眺望をリーズナブルな料金で楽しめる車両

鉄道ファンといえば新幹線、観光列車に特急列車が好き……。それはもちろんその通り。

しかし日々の通勤や通学を支える普通・快速列車にも、たまらない魅力が隠されています。さながら実家のような安心感と最先端の技術を兼ね備える不思議な存在、それが普通・快速列車なのです。

今回は、瀬戸大橋からの眺望を楽しむことに特化した、2階建てグリーン車を連結している「5000系」を紹介します。

JR西日本223系5000番代とペアで走る瀬戸大橋線専用電車

瀬戸内海の絶景を気軽に楽しめる、2階建てグリーン車を連結した快速〔マリンライナー〕用の車両が、JR四国の5000系です。

2003年8月に3両編成6本、18両が製造されて、瀬戸大橋線(岡山〜高松)で使用されています。


〔マリンライナー〕は5両編成を基本としており、このうち高松方の3両がJR四国の5000系、岡山方の2両がJR西日本の223系5000番代。

5000系は高松方から5100形、5200形、5000形で構成されています。

5100形は2階建ての主電動機(モーター)を搭載しない車両で、運転席のすぐ後ろと2階席がグリーン車指定席、1階席が普通車指定席です。

2・3号車(及び223系の4・5号車)は普通車自由席で、2号車は主電動機を搭載しない5200形、3号車は主電動機と運転席を装備する5000形です。

5200形と5000形は基本的な設計は223系5000番代と同じです。

瀬戸内海の眺望をゆったりと眺められる2階建てグリーン車

5000系の特徴は、なんといっても1号車の2階建てグリーン車、5100形です。

JR東日本の横須賀線・総武快速線で活躍しているE217系の2階建てグリーン車、サロE217形をベースに運転台を追加した車両で、2004年には鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞しています。


座席は、運転席のすぐ後ろの展望席(4席)と2階席がグリーン車指定席、1階席と車両後部の車いす対応席が普通車指定席。

座席はどちらも首都圏の中距離普通列車のグリーン席に近い2+2列のリクライニングシートで、実は座席のサイズや座り心地は大差ありません。


グリーン車指定席

普通車指定席

眺望と、背もたれを倒せる角度、背面テーブルの有無、そして前後の座席間隔(グリーン席1000mm、普通席970mm)で差別化されています。

天井までの高さは、2階建て部分は1階・2階とも1880mm、平屋部は2165mm。2021年には、5100形に限り無料Wi-Fiサービスが導入されました。

5000形と5200形が、223系を踏襲した標準的なデザインであるのに対し、5100形は先頭部中央に「鼻筋」ともいうべき稜線を上下方向に設けた独特のスタイルです。

車体側面には車両によって2種類のデザインがあります。

先に完成した3編成(5001〜5003)は、「瀬戸内海の深い紺」をイメージした青系のストライプ。


先に完成した3編成(5001〜5003)

後から完成した3編成(5004〜5006)は、「夕日に輝く茜」をイメージした赤系のストライプが施され、高松方に向かって左側の後方側面には、「桃太郎とイヌ」(5001・5004)、「桃太郎とサル」(5002・5005)、「桃太郎とキジ」(5003・5006)の3種類のマークがついています。

6両すべてデザインが少しずつ異なるのです。


後から完成した3編成(5004〜5006)

4席だけのパノラマ席からは前面展望を存分に楽しめる

グリーン席の大部分は2階にあり、瀬戸大橋から瀬戸内海の眺望を楽しめます。座席は、進行方向左側、高松行きならA席、岡山行きならD席がおすすめです。

右側は反対側の線路があるので、少し見づらくなってしまいます。ちなみに、瀬戸大橋の線路は道路の下にあり、車窓からは絶えず手前に橋の構造物が見える点は注意が必要です。それでも、1階席は非常用通路などでさらに視界が遮られることがあるため、眺望は2階席の方がおすすめです。


瀬戸大橋を渡る快速マリンライナー

グリーン席のうち、最前列の1列4人ぶんだけは平屋の部分にあります。ここは、運転席のすぐ後ろに位置し、前面展望を楽しめるパノラマシート(1A〜1D)。


高松方に向かって左側のA・B席は運転士の真後ろとなるため、床が一段高くなっています。前面展望を存分に楽しむなら1C・1D席、下り列車で側面から瀬戸内海を見晴らす景色も同時に楽しむなら1A席をおすすめします。

なお、5000系〔マリンライナー〕のグリーン車は指定席のため、グリーン券を購入しても青春18きっぷでは乗車できません。

1階席の普通車指定席は、確実に座れて自由席よりもゆったりしている点が魅力。瀬戸内海の水面を見下ろす視点となり、眺望も意外と悪くありません。

普通車自由席は223系と共通仕様

2・3号車は、乗車券だけで乗車できる普通車自由席です。併結する223系5000番代と基本設計が同じで、特に5000系の岡山方先頭車である5000形と、223系の岡山方先頭車であるクモハ223形5000番代は、JRのロゴ以外ほぼ同一仕様の車両です。

座席は、背もたれを前後に動かして向きを変えられる、2+2列の転換クロスシート。客席窓は、眺望を考慮して下降式の1枚窓となっています。


普通車自由席(ワインレッドの新しいモケット)

座席のモケット(布)は、当初は関西地方の223系2000番代と同じものを使用していましたが、現在はワインレッドの新しいモケットへの交換が進んでいます。

5000系の走行機器は、JR西日本223系2000番代とほぼ同じです。最高速度は130km/h、制御システムは小型・高出力・省エネルギーでメンテナンス性に優れたIGBT素子という半導体を使ったVVVFインバータ制御。

台車は、681系などの特急にも使われている軸梁式ボルスタレス台車で、揺れを抑えるヨーダンパとアンチローリング装置も備えて最先端の乗り心地を誇ります。

ちなみに、5000形と5200形は、他線での使用を考慮して耐寒耐雪構造となっていますが、5100形だけは耐寒耐雪構造になっていません。

最新の走行性能と抜群の眺望を、リーズナブルな料金で楽しめる5000系。四国を訪れる際には、一度は乗ってみたい電車です。


著者紹介

栗原 景(くりはら かげり)

1971年、東京生まれ。鉄道と旅、韓国を主なテーマとするジャーナリスト。出版社勤務を経て2001年からフリー。

小学3年生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。

東海道新幹線の車窓を中心に、新幹線の観察と研究を10年以上続けている。

主な著書に「廃線跡巡りのすすめ」、「アニメと鉄道ビジネス」(ともに交通新聞社新書)、「東北新幹線沿線の不思議と謎」(実業之日本社)、「東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!」(東洋経済新報社)ほか。

  • 写真/栗原景、交通新聞クリエイト
  • 掲載されているデータは2022年7月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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