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2022.06.01鉄道リピーターも大絶賛! 2代目「伊予灘ものがたり」の貸切個室・Fiore Suite(フィオーレスイート)乗車レポート

2代目「伊予灘ものがたり」の魅力に迫る

JR四国が運行する観光列車「伊予灘ものがたり」が2022年4月に車両をリニューアル!
初代から受け継ぐレトロモダンな雰囲気に、ラグジュアリーな要素が加わってますます魅力に磨きがかかっています。

また「伊予灘ものがたり」といえば、アテンダントさんによる心のこもったサービスや地元の人の熱烈な歓迎、地元色豊かな食事も名物です。新たな魅力と変わらぬ魅力、その両方を楽しむ旅へ、いざ出発!

3両編成に生まれ変わった2代目「伊予灘ものがたり」

「伊予灘ものがたり」はどこか懐かしさを覚える景色が広がる愛媛県北西部の瀬戸内海沿いを走る観光列車。
2014年7月のデビュー以来、7年半にわたって走り続けてきた初代「伊予灘ものがたり」はリピーターや沿線で手を振る地元の方々など熱烈なファンが多くいることでも話題でした。そのため2022年4月にリニューアルされた2代目も、レトロモダンをコンセプトにした車内のデザインや、茜色と黄金色の2色の外観デザインなどは初代のイメージを踏襲したものとなっています。


伊予灘を茜色に染めてゆく夕焼け空をイメージした1号車「茜の章」

沿線に降りそそぐ太陽や愛媛の名産である柑橘をイメージした2号車「黄金の章」

1両まるごと貸し切りできるグリーン個室を新設


3号車「陽華の章」のFiore Suite(フィオーレスイート)。四国を走る3つの「ものがたり列車」初となるグリーン個室で2~8名で利用可能

一方、大きく変わった点といえば、2両編成から3両編成となったこと!
今回新しく登場した3号車「陽華(はるか)の章」は、「大切な人と過ごす時間と空間」をコンセプトにしたグリーン個室・Fiore Suiteが設置され、この3号車をまるまる貸し切りで利用することができるのです。
そして、そのコンセプトにふさわしく、車内は1・2号車を凌駕するほどのラグジュアリー空間となっており、3号車限定のサービスも行われているとか。

そう聞けば、乗ってみるしかありません!
予約したFiore Suiteで2代目「伊予灘ものがたり」の魅力を存分に堪能したいと思います。

グリーン個室・Fiore Suiteに乗車!

「伊予灘ものがたり」は、松山駅発・伊予大洲駅行きの「大洲編」、伊予大洲駅発・松山駅行きの「双海編」、松山駅発・八幡浜駅行きの「八幡浜編」、八幡浜駅発・松山駅行きの「道後編」の4便があり、それぞれに異なる景色や食事などの“ものがたり”を楽しむことができます。

細部にまでこだわった贅沢な空間に心ときめく

今回乗車するのは松山駅13時31分発の八幡浜編。
松山〜八幡浜間は約2時間20分かけて運行し、松山〜伊予大洲間よりも20分ほど長く乗車することができます。その分運賃も加算されますが、よりじっくりと旅と車両を楽しみたい方には八幡浜編か道後編をおすすめしたいです!


どこかレトロな雰囲気が漂う松山駅

発車標(電光掲示板)にも「伊予灘ものがたり」のマークが


鮮やかな車体を輝かせ松山駅に入線した「伊予灘ものがたり」

乗車前に検温と手指の消毒が行われる。早くもアテンダントさんの丁寧な応対を実感

いよいよ3号車の車内へ。
八幡浜の老舗店が手染めしたのれんをくぐると、きれいな生花が飾られたカウンターがお出迎え。愛媛の伝統工芸品である砥部焼の花器はまん丸い形をしており、カウンター台の模様と一緒に眺めると「伊予灘ものがたり」のマークのように見えます。


八幡浜の老舗染物店「地細工紺屋 若松」が手染めで仕立てたのれん

アテンダントさんが立つカウンターに設置された砥部焼の花器と季節の花

また、個室へ続く通路前には、黄金色の「伊予灘ものがたり」のマークがあります。
なかなか立派なつくりをしており、じっくり見ると使い込まれたようなヴィンテージ感も……実はこちら、初代車両の先頭にあったエンブレムを移植したもの! 「初代車両も一緒に走り続けていく」という思いを込め、ここに設置されたそうです。

カウンターのあるフロントから通路、個室に至るまでの壁は、ほんのり赤みがかったサクラの木が使われており、そこには無数の桜小紋があしらわれています。
まるで満開の桜の花に包まれているような気分になり、さらに一つひとつの桜小紋を見ていると、花びらの欠けたものをところどころに発見!デザイナーの遊び心に思わず笑みがこぼれました。


初代のエンブレムを見ることができるのは3号車のみ

本物の桜の木のシートを貼った壁。桜小紋の中に潜む遊び心が楽しい

そして、車両のおよそ半分を使って設置されたグリーン個室・Fiore Suiteに入ると、圧巻のラグジュアリー感に息を呑みました。

2人掛けのソファーシート4席が、海向きの車窓を取り囲むように並んでいます。シートはゆったりとした座り心地で、すぐにリラックスモードに入ることができます。
目の前の車窓にあるブラインドはリモコンで上げ下げできるようになっており、景色を楽しみたい時や大切な人と静かに語り合いたい時など、シーンに合わせて自由に動かすことができます。
とりわけ特徴的なのはテーブル! 表面が鏡のようになっており、車窓からの景色や照明の煌めきが映り込んで幻想的な美しさを演出してくれます。


照明も印象的なFiore Suiteのテーブル。車窓のブラインドはリモコンで乗客自ら調整できる


発車の時刻。ホームでたくさんの人が手を振って送り出してくれた

つくり手の気持ちが伝わる、地元ならではの味覚を

出発した松山駅から、1番の見どころである下灘駅までは約1時間かかります。その間は地元色豊かなグルメ三昧といきましょう!
ウエルカムドリンクは、愛媛県らしくみかんのジュースがサービスされます。これが驚きのおいしさ! 濃厚なみかんの味わいとコクのある甘さが広がり、一口一口が幸せで満たされます。


ウエルカムドリンクはとびきりおいしいみかんジュース。アテンダントさんの笑顔もフレッシュに輝く!

ほどなくして食事タイムに。「伊予灘ものがたり」では大洲編・双海編・八幡浜編・道後編ごとに異なる地元シェフが腕をふるい、厳選した旬の地元食材をふんだんに使った料理が提供されます。
八幡浜編では、松山市の老舗のフランス料理店「レストラン門田」のフレンチミニコースが登場。冷製料理と温製料理が時間差で提供されますが、そこには瀬戸内海の魚介や地元ブランド肉、季節の野菜を使った料理が目にも鮮やかに盛られています。程よい量のポーションは、車内販売のおつまみやケーキを楽しみたい人にも嬉しいポイントです。


松山の老舗店がつくったフレンチミニコース。まずは冷製料理から提供される


時間差で提供される温製料理。慌てずとも温かい状態で味わえるのが嬉しい

進行するほどに自然豊かな景色が多くなる車窓。その美しさもごちそうだ

車内販売では、お酒のチェックもお忘れなく。
6つの酒蔵のお酒から3種を選べる「地酒飲み比べセット」をはじめ、地ビールや松山市で名を馳せる「サントリーバー露口」のマスター監修の昭和のハイボールなど、こちらも地元色豊かなラインナップとなっています。

中でも、3号車へ乗車した際にぜひ楽しんでもらいたいのが「ラ・フィオーレ」と名付けられたカクテル。食用の桜の花を閉じ込めた氷が浮かぶ優雅な一杯で、3号車限定のスペシャルドリンクとして、アテンダントさんが考案したものだそう。オーダーした際のアテンダントさんの嬉しそうな表情にも癒されます。


3号車限定のカクテル「ラ・フィオーレ」(右)は、桜とパッションフルーツの二層のシロップが華やかな甘さを広げる。6種のお酒の中から3種を選べる「地酒飲み比べセット」(左)も人気


「ラ・フィオーレ」は氷が溶けると桜の花が浮かんで、さらに良き雰囲気に

お酒を飲んで体がほてったら、靴を脱いでリラックス。フットレストがある足元にも桜小紋があしらわれている

さらに、食後には淹れたてのコーヒーのサービスもありますが、こちらはコーヒーカップもポイントの一つ。砥部焼女性作家グループ「とべりて」がつくった色も模様も多彩な砥部焼のコーヒーカップの中から、自分好みのものを選ぶことができるのです。


食後のコーヒーのカップは「とべりて」の作品からセレクト。優しい風合いや繊細な模様が楽しめ、砥部焼のイメージが広がる

淹れたてのコーヒーは香り豊か。自分で選んだコーヒーカップで飲むとおいしさもひとしおだ

素晴らしい景色と地元の人の心温まる歓迎に感動!

上質な空間やサービスにすっかり心酔してしまいましたが「伊予灘ものがたり」の魅力はそれだけでは終わりません。
3号車の「陽華の章」のネーミングは、地元の人々からの歓迎をはじめとしたあたたかみを表す「陽」と沿線に咲く花々を表す「華」が由来となっているそうです。心ときめく華やかさとともに、心あたたまる出会いも堪能しましょう!

列車が進行するほどに、どんどんと自然豊かな景色が増えていきます。
出発から1時間ほどすると、1番の見どころである下灘駅に到着。海を背景に佇むノスタルジックな景観が広がり、多くの観光客が訪れる人気のポイントとなっている駅です。
ここでは数分間停車するので下車して景観を楽しんだり記念撮影ができます。アテンダントさんが快くシャッター係となってくれるのも嬉しいところです。


瀬戸内海を背景にした下灘駅。素朴な雰囲気と真っ青な景色が一つになり、フォトジェニックな光景が広がる


記念撮影を手伝ってくれるアテンダントさん

下灘駅のかたわらには歓迎するメッセージカードも

「伊予灘ものがたり」は海だけでなく、雄大に流れる肱川(ひじかわ)や木々の緑なども車窓を彩り、退屈を感じる暇がありません。そして、さらに旅の雰囲気を楽しくしてくれるのが、沿線で手を振ってくれる地元の人々の存在です。

駅から、お店や学校から、民家の庭やベランダから、並行して走る自動車の中や田畑の真ん中から……ありとあらゆる場所から本当にたくさんの人が手を振ってくれるのです。
しかも、それぞれに手製の横断幕や旗を掲げており、歓迎の仕方にも個性を感じます。地元の人々のあたたかさとともに、「伊予灘ものがたり」が深く愛されていることを実感しました。


「よい旅を」のメッセージが心に響く

たぬき駅長が賑やかに迎えてくれる五郎駅


なんとガソリンスタンドからも! 店員さんと給油のお客さんも一緒になって手を振ってくれる

民家の2階ベランダからワンちゃんと一緒に手を振るご夫妻


肱川沿いに立つ大洲城。本丸をよく見るとのぼり旗を振る人々の姿が!

アテンダントさんの案内でさらに旅が充実


お話を伺ったアテンダントの山本美香さん(※撮影時のみマスクを外していただきました)

知れば知るほど「伊予灘ものがたり」が好きになる

これまでご紹介した魅力の他にも、2代目「伊予灘ものがたり」にはたくさんのおもてなしや心遣いがあふれています。今回3号車を担当してくださったアテンダントの山本美香さんに伺いました。

「2代目車両は初代の良さを引き継いでおり、1 、2号車は『ただいま』と言いたくなるような、どこか懐かしさのある車両となっています。テーブルや椅子も同じように見えて幅にゆとりを持たせたほか、車内の無料Wi-Fiサービスや走行映像が流れるモニターなども設置し、時代に合わせたサービスでより快適な車内空間になりました。そして、2代目の新たな魅力として3号車に貸切個室を新設したことで、ワンランク上の空間をお客様にお楽しみいただけるようにもなりました。
もちろん、車両は変わっても地域の方による心温まるおもてなしは変わらず、むしろパワーアップしています。
また、季節感と愛媛らしさにこだわった車内ディスプレイや、車内販売メニューなどは私たちアテンダントが考えてセレクトしています。すべてに“ものがたり”があり、その“ものがたり”をお客様に伝えていくことが、アテンダントの役目だと考えています。
旅を終えられた後もお客様の心の中で“ものがたり”が続いていくように……それが私たちの願いです」


1号車・2号車の照明はみかんを模した形

洗面鉢も砥部焼というこだわり


3号車限定のボードを持って記念撮影のサービスも

撮影した写真は終点到着前にプレゼントされる。3号車限定のしおりに挟んで持ち帰ろう

正直に言いますと乗車する前は「2時間半の旅は長いかも……」と思っていましたが、旅を終えた今は「もっともっと乗っていたい!」と、すっかり「伊予灘ものがたり」のとりことなりました。リピーターが多いというのも納得ですし、そのリピーターが絶賛する3号車「陽華の章」のFiore Suiteは、一度は乗車する価値のある空間だと思います。ぜひ大切な人と一緒にこの感動を味わってみてください。


列車情報

運転日 土曜・日曜・祝日を中心に運転。詳細は伊予灘ものがたり公式HPに掲載
運転区間 予讃線 松山駅~伊予大洲駅・八幡浜駅間
運転時刻 【大洲編】松山駅8:26発→伊予大洲駅10:28着
【双海編】伊予大洲駅10:57発→松山駅13:01着
【八幡浜編】松山駅13:31発→伊予大洲駅15:12着→八幡浜駅15:50着
【道後編】八幡浜駅16:14発→伊予大洲駅16:33発→松山駅18:17着

「伊予灘ものがたり」についてもっとくわしく

伊予灘ものがたり―新車両でリニューアル! 愛媛県にこだわった食事、伝統工芸、絶景が楽しめる観光列車(THE列車)

  • 提供/四国旅客鉄道株式会社
  • 取材・文/高橋さよ
  • 写真/井戸宙烈、四国旅客鉄道株式会社
  • 掲載されているデータは2022年4月現在の情報です。
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