話題の大河ドラマの歴史を、伊豆エリアで感じる
1月9日に放送がはじまった大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。
新宿駅・東京駅から、伊豆急下田駅を結ぶ特急〔サフィール踊り子〕の沿線には、伊豆に配流された源頼朝をはじめ、その妻・北条政子、頼朝に率いられて平氏討伐に参戦した北条義時など、作中の登場人物ゆかりの史跡が点在しています。
全車両グリーン席の豪華特急列車に揺られ、物語の舞台へいざ。
特急〔サフィール踊り子〕とは?
自然や文化、歴史などが「本物の魅力」として存在する伊豆と首都圏を結ぶ、全車両グリーン席の観光特急列車です。車体外観のベースカラーは宝石のサファイヤのような、青く輝く「伊豆の海と空」をイメージしています。
1号車は、グリーン車よりもさらに上質な「プレミアムグリーン」となっていて、ゆったりとしたプライベート空間とくつろぎの空間を実現する1+1列配置の座席で、優雅な時間を過ごせます。
「サフィール踊り子」についてもっとくわしく
特急〔サフィール踊り子〕沿線のゆかりの地へ
石橋山古戦場(神奈川県小田原市)
1180(治承4)年、後白河法皇の皇子である以仁(もちひと)王から平氏追討の令旨を受け、源頼朝が伊豆で挙兵。今回の大河ドラマの主人公・北条義時も参戦し、石橋山に陣を張ります。
対戦したのは、平氏方で相模国の武将である大庭景親(おおばかげちか)の軍勢3000余騎と、後方から迫る伊東祐親(すけちか)の300騎。そこへ頼朝方は300 余騎で挑み、大苦戦となりました。
惨敗するも一命をとりとめた頼朝は、真鶴から安房(千葉県)へ逃亡。その後、相模国の三浦半島を本拠としていた三浦氏一族らと合流し、再び反平氏の狼煙(のろし)を上げるのです。
現在、石橋山古戦場跡にはその場所を示す石碑が。また、石碑のすぐ北側にはこの戦いで、若くして討ち死にを遂げた頼朝方の佐奈田与一を祀る佐奈田霊社が鎮座。与一は敵将の俣野景久(またのかげひさ)と組み討ちをする中、味方からの問いかけに対し「たん」が絡み声が出ず、その間に敵に討たれてしまったという故事から、咳・声・喉に霊験があるとされます。石碑や霊社は〔サフィール踊り子〕の車窓からは見えませんが、下り列車であれば早川駅通過後にすぐ脇を通るので、激戦に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
石橋山古戦場
住所 | 神奈川県小田原市石橋 |
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問い合わせ先 | 0465-20-4192(小田原市観光協会) |
時間 | 散策自由 |
交通アクセス | 東海道本線 小田原駅からバス10分の「石橋」下車、徒歩約10分 |
URL | https://www.city.odawara.kanagawa.jp/kanko/corridor/historic_battlefield/p10043.html |
しとどの窟(いわや)(神奈川県足柄下郡湯河原町)
頼朝が、石橋山合戦に敗れて安房へ逃げる前に、身を隠したとされるのがしとどの窟。相模国の豪族・中村氏の一族である土肥実平(どひ〈どい〉さねひら)が、頼朝や家来たちを土肥椙山(すぎやま)(現在の湯河原)にある洞窟へ導き、隠れたといわれています。洞窟の名の由来は、頼朝たちが隠れていないか追手が内部を確かめようとした際、「しとど」と呼ばれる鳥が飛び出してきたため「ここには誰もいない」と思い、帰っていったという伝説から。洞窟内には「土肥椙山観音像群」と呼ばれる20以上の石仏が祀られ、神秘的な雰囲気です。
しとどの窟(いわや)
住所 | 神奈川県足柄下郡湯河原町鍛冶屋 |
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問い合わせ先 | 0465-63-2111(湯河原町観光課) |
時間 | 散策自由 |
交通アクセス | 東海道本線 湯河原駅からタクシー約30分のち徒歩約15分 ※しとどの窟までのバスは現在運行していません。 |
URL | https://www.yugawara.or.jp/sightseeing/668/ |
伊豆山神社(静岡県熱海市)
かつては伊豆大権現とも呼ばれ、修験道の霊場でもあった伊豆山神社。1159(平治元)年の平治の乱で伊豆国に配流された頼朝は、伊豆大権現の別当・密厳院(みつごんいん)の僧、阿闍梨覚淵(あじゃりかくえん)に師事するようになりました。頼朝の崇敬は厚く、鎌倉幕府の樹立後も伊豆山権現と箱根権現をめぐる二所詣を4回も行ったと『吾妻鏡』に記されています。
また、頼朝が恋仲となった北条政子と逢瀬を楽しんだのもこの地。伊豆山神社前バス停からおよそ170段の石段を上ると本殿があり、その隣には頼朝と政子が座って愛を語らったとされる腰掛石も! 実際に座ることもできるので、夫婦やカップルで訪ねたときは腰を掛けて頼朝・政子気分を味わってみては?
伊豆山神社
住所 | 静岡県熱海市伊豆山708-1 |
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問い合わせ先 | 0557-80-3164(伊豆山神社) |
時間 | 参拝自由(社務所9:00~16:30) |
交通アクセス | 東海道本線・伊東線 熱海駅からバス約7分の「伊豆山神社前」下車 |
URL | https://izusanjinjya.jp/ |
最誓寺(さいせいじ)(静岡県伊東市)
『曽我物語』では、頼朝が伊豆に流された後、伊豆の豪族で頼朝の監視役だった伊東祐親の三女・八重姫と恋仲になったと記されています。二人は子どもを授かり千鶴丸と名付けますが、当然、祐親の怒りを買うことに。千鶴丸を伊東の松川(伊東大川)に沈め、殺してしまったとも伝えられています。
その菩提を弔うため、八重姫の発願で建てられたとされるのが、真言宗の西成寺。1596(慶長元)年には曹洞宗に改宗され、現在の最誓寺という寺号になりました。
本堂にはご本尊の阿弥陀如来像のほか、八重姫が奉納したと伝わる千鶴丸地蔵菩薩像を安置。境内には、伊東市指定史跡の伊東氏の墓もあります。
最誓寺(さいせいじ)
住所 | 静岡県伊東市音無町2-3 |
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問い合わせ先 | 0557-37-6105(伊東市観光案内所) |
時間 | 参拝自由 |
交通アクセス | 伊東線 伊東駅から徒歩15分 |
URL | https://itospa.com/spot/detail_54070.html |
音無神社(静岡県伊東市)
「音無の森」と呼ばれる鎮守の森に囲まれた音無神社。『曽我物語』によると、若い頃の頼朝と八重姫が逢瀬を重ねた場所といわれています。松川を挟んで対岸にあるひぐらしの森は、頼朝が八重姫に会うため日暮れを待った場所とも!
境内には頼朝と八重姫を祀るとされる小さな玉楠神社や、樹齢約1000年といわれるタブの木があります。もしかすると、流刑中の頼朝と八重姫もこの木を眺めていたのかもしれません。
また、音無神社の御祭神・豊玉姫命は安産と縁結びの神様として有名。地元では、出産前に底の抜けた柄杓を奉納する風習が残っています。
音無神社
住所 | 静岡県伊東市音無町1-13 |
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問い合わせ先 | 0557-37-6105(伊東市観光案内所) |
時間 | 参拝自由 |
交通アクセス | 伊東線 伊東駅から徒歩約14分 |
URL | http://hellonavi.jp/detail/page/detail/1303 |
伝・伊東祐親の墓所(静岡県伊東市)
1180(治承4)年8月に頼朝が挙兵すると、平氏への恩に報いるために平氏方に付いた伊東祐親。石橋山合戦を経ての同年10月、富士川の戦いで源氏側に捕えられ、娘婿である相模国の三浦義澄(みうらよしずみ)へ預けられてしまいました。その2年後、頼朝に許されるも、平氏への忠義を貫き、潔く義澄の屋敷で自害したとされています。
伊東家の菩提寺・東林寺を見下ろす東側の高台には、祐親の墓所と伝わる五輪塔が。14世紀前半に造られたと考えられる空風輪・火輪・水輪、13世紀に造られたと考えられる地輪で構成され、高さは140.5cmにもなります。
伝・伊東祐親の墓所
住所 | 静岡県伊東市大原1-11 |
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問い合わせ先 | 0557-32-1964(伊東市教育委員会生涯学習課) |
時間 | 参拝自由 |
交通アクセス | 伊東線 伊東駅からバス約10分の「大原町」下車、徒歩約5分 |
URL | https://www.city.ito.shizuoka.jp/gyosei/bunka_sports/bunka/bunkazai/1/5396.html |
修善寺温泉 筥湯(はこゆ)・指月殿(しげつでん)(静岡県伊豆市)
父・頼朝を継ぎ、鎌倉幕府の二代将軍となった源頼家。しかし、頼家の後ろ盾である比企氏は、頼家の弟・実朝を担ぐ北条氏一派の攻撃で滅亡。1203(建仁3)年、頼家は修禅寺に幽閉されました。翌年、義時の父・北条時政が首謀し、修禅寺境内の中湯に入浴中の頼家を暗殺したとされています。
2000(平成12)年には、頼家暗殺の伝説の残る中湯が筥湯として復活。ヒノキ造りの湯舟に、アルカリ性単純泉がこんこんと注がれています。
頼家の死後、母・北条政子がその冥福を祈って寄進したのが指月殿。伊豆最古の木造建築物といわれる建物の中には、丈六釈迦如来座像を安置。本来、持ち物はないはずの釈迦像ですが、こちらの釈迦像は右手にハスの花を持っているのが特徴です。
建物の横には頼家の墓があり、例年7月開催の頼家まつりでは墓前供養が行われます。
筥湯
住所 | 静岡県伊豆市修善寺924-1 |
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問い合わせ先 | 0558-72-5282(筥湯) |
時間 | 12:00~21:00(最終受付20:30) |
定休日 | 無休 |
交通アクセス | 伊東線 伊東駅からバス約55分の「修善寺駅」下車、修善寺温泉行きのバスに乗り換え約8分の「修善寺温泉」下車、徒歩約2分 |
値段 | 350円(小学生未満無料、旅館組合加盟旅館宿泊者 150円) |
URL | http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=2383 |
指月殿
住所 | 静岡県伊豆市修善寺934 |
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問い合わせ先 | 0558-72-2501(伊豆市観光協会修善寺支部) |
時間 | 参拝自由 |
交通アクセス | 伊東線 伊東駅からバス約55分の「修善寺駅」下車、修善寺温泉行きのバスに乗り換え約8分の「修善寺温泉」下車、徒歩約6分 |
URL | http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=2299 |
北条義時へつながる物語を追う
北条義時が歴史の舞台へ登場するよりも少し前の話を紹介した、こちらの記事。
『JR時刻表』2月号では、義時誕生の地である伊豆、義時がライバルとの激しい権力闘争を勝ち抜き二代目執権へと上り詰めた鎌倉を紹介。
義時の足跡をたどります。
JR時刻表2022年2月号
- ※文/鈴木 健太
- ※写真提供/小田原市観光協会、湯河原町観光課、伊豆山神社、伊東観光協会、伊東市、伊豆市
- ※掲載されているデータは2022年1月現在のものです。