車内でも車窓でも「アート」が楽しめる! 観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」の魅力を徹底紹介
7月1日からの「岡山デスティネーションキャンペーン」の開催で注目を集めている、晴れの国・岡山。温暖な気候に恵まれ、風光明媚な景色が揃っているこのエリアの旅を、より楽しませてくれるのが観光列車「La Malle de Bois」です。
岡山駅を拠点に4方面へと向かう「La Malle de Bois」は、それぞれ見どころが満載。特徴ある車内の様子とあわせて、その魅力をご紹介します。
『JR時刻表』×トレたび 連動企画です。
「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」とは?
2016(平成28)年にデビューした「La Malle de Bois」は、せとうちエリアの魅力をたっぷりと楽しめるよう、さまざまな工夫が凝らされています。フランス語で「木製の旅行かばん」を意味する列車名の通り、外観は窓をかばんに見立てたデザイン。客室の床はフローリングデッキで、白とこげ茶色の内装がシックな雰囲気を醸し出しています。
座席は片側が窓を向いたカウンタースタイルで、瀬戸内の自然豊かな海や山を視界いっぱいに楽しむことが可能。一角にはサイクルスペースがあり、一部列車では自転車をそのまま積み込むことができます。旅をイメージした現代アート作家の作品も展示されるなど、たくさんの魅力が詰まった列車です。
<目次>「La Malle de Bois」4列車にフォーカス!
順番に紹介します。
瀬戸内の絶景を堪能! 〔ラ・マル しまなみ〕
岡山駅から山陽本線で尾道駅へと向かう列車が〔ラ・マル しまなみ〕です。そのハイライトは、東尾道~尾道間で尾道水道に沿って走る場面。向島(むかいしま)との間をゆっくりと進む船が見られるとともに、海と山に挟まれたこの場所で暮らす人々の、生活の息吹を感じることができます。途中には山中を走る区間もあり、目まぐるしく変わる車窓は見ていて飽きることがありません。
さらに、期間限定で尾道~三原間の延長運転も実施。瀬戸内海をより近くで眺められるほか、観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」と乗り継いで、岡山~広島を横断する旅も楽しめます。
〔ラ・マル しまなみ〕で三原から岡山へ!
太陽の光がさんさんと降り注ぐ三原駅に、白い車体が映える〔ラ・マル しまなみ〕がやってきました。列車の先頭に飾られたヘッドマークは、瀬戸内海に浮かぶ島と波をイメージしたオリジナルのデザイン。車体に描かれたかばんの絵柄が、旅の雰囲気を盛り上げてくれます。
車内に足を踏み入れると、フローリングデッキと座席の色使いが高級感あふれる印象。明るい雰囲気に、テンションが上がります。窓に向かって配置された座席は、その上に本棚などもあって、列車の中というよりもオシャレなカフェのようです。
三原駅を出発し、隣の糸崎駅を過ぎると旅はいきなり前半のハイライト。国道を挟んだすぐ向こうに、穏やかな瀬戸内の海が広がります。向島や因島といった島々が眺められるほか、尾道駅の先では観光スポットとしても人気の、坂道や階段のある路地がチラリチラリと見え、車内からも散策気分が味わえます。
列車は明るい日差しの中を軽やかに走行。市街地の中心部にある福山駅では、ホームから福山城の石垣が見えます。その先は山間の区間で、木々の緑が青い空に映え、ぼーっと眺めていると心も穏やかに。時折見える集落が、“日本の原風景”といった雰囲気を醸し出しています。
カウンターで飲み物やグッズを購入し、車内にある旅をイメージしたアート作品を楽しむうちに、早くも倉敷市街へ。後半のハイライトである高梁(たかはし)川、そして桃太郎伝説のある笹ヶ瀬川を渡ると、まもなく終点の岡山駅です。期間限定の延長運転で、いつもよりちょっぴり長い、約1時間50分のミニトリップは、まさに“あっという間”に感じることでしょう。
列車のゴール側にあたる岡山・倉敷では、風光明媚な岡山後楽園や情緒ある町並みが続く倉敷美観地区などを訪れるのがおすすめ。一方、スタート側である尾道は、千光寺公園から眺める瀬戸内の風景や、路地のあちこちで出あえる猫たちが有名です。町を散策し、余韻に浸りながら〔ラ・マル しまなみ〕に乗車するのもアリでしょう。
〔ラ・マル しまなみ〕
運転区間:岡山~尾道間
※期間限定で尾道~三原間の延長運転あり
芸術祭とともにアートを楽しもう! 〔ラ・マル せとうち〕
2016年のデビュー当初から運転されている〔ラ・マル せとうち〕は、かつて四国への玄関口だった宇野に向かう列車。港町に向かう列車らしく、ヘッドマークは船のいかりがモチーフです。
茶屋町駅で瀬戸大橋線と分かれると、3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の作品『JR宇野みなと線アートプロジェクト』のひとつでもある八浜駅を経由して、こちらもアート作品となった終点の宇野駅へ。白と黒のラインで装飾された駅舎が、日常の中に非日常を味わわせてくれます。2022年は芸術祭の開催年で、宇野港周辺や対岸の直島など瀬戸内海の島々で数多くの作品が展示中。現代アートにどっぷりと浸る旅はいかがでしょうか。
〔ラ・マル せとうち〕
運転区間:岡山~宇野間
香川方面へひと足のばして 〔ラ・マル ことひら〕
「La Malle de Bois」が使われる4列車のうち、唯一瀬戸大橋を渡るのが〔ラ・マル ことひら〕です。窓向きの座席に座り、橋の上から眺める瀬戸内海は、まさに絶景! おむすび形をした飯野山やあちこちにあるため池など、香川ならではの景色も見られます。乗車時間も約2時間あるので、車内のアート作品や列車の雰囲気を存分に楽しむことができます。
琴平駅に着いたら、石段を上って金刀比羅宮にお参りするもよし、さらに南へと進んで大歩危(おおぼけ)や祖谷(いや)渓を訪れるもよし。旅の楽しみは尽きません。
〔ラ・マル ことひら〕
運転区間:岡山~琴平間
焼き物・刀剣など文化を感じるエリアへ 〔ラ・マル 備前長船〕
赤穂線を走る〔ラ・マル 備前長船〕。沿線は古くから備前焼の産地として栄えており、焼き物の町として知られる伊部には窯元やギャラリーが軒を連ねています。赤レンガの煙突が立ち並ぶ、情緒豊かな町並みも特徴です。
また、鎌倉時代から日本刀の産地として栄えた長船にある「備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館」は、全国でも珍しい刀剣専門の博物館。さまざまな刀剣が鑑賞できるほか、研師(とぎし)や鞘師などの作業を見学することもできます(曜日限定)。日本の歴史に触れる旅が楽しめることでしょう。
〔ラ・マル 備前長船〕
運転区間:岡山~日生間
★「La Malle de Bois」各列車の運転日・時刻・料金や、車内販売・食事などについて詳しくは、「La Malle de Bois 公式ページ」をご覧ください。
著者紹介
ラ・マル・ド・ボァを予約するならこちらもチェック!
〔ラ・マル しまなみ〕の気になる車窓は、『JR時刻表』7月号巻頭特集「“車窓美”をあじわう」で!
JR時刻表2022年7月号
- ※取材・文・撮影(〔ラ・マル しまなみ〕)=伊原 薫
- ※写真(上記以外)=JR西日本提供