トレたび JRグループ協力

2022.12.20鉄道【乗車体験レポート2023】HC85系 特急〔ひだ〕で冬の高山へ!

飛騨路をひた走る、HC85系 特急〔ひだ〕に乗車!

2022年7月1日にデビューしたJR東海最新の特急形車両、「HC85系」。

現在では高山本線を走る特急〔ひだ〕の一部で運転中!
この12月からはさらに運転本数も増え、一部で富山までの乗り入れがスタートしました。
鉄道写真家・村上悠太が詳細をレポートします。

『JR時刻表』×トレたび 連動企画です。

いよいよ出発の時……

今回乗車したのは、2022年12月よりHC85系での運転となった特急〔ひだ〕3号。
一部の編成は富山まで向かう長距離列車です。

さて、このHC85系はJR東海が長い期間をかけて開発した、最新鋭のハイブリッド機構を搭載する革新的な車両!
〔ひだ〕が走る高山本線は気動車(ディーゼル車)が活躍する非電化路線で、これまでも〔ひだ〕には、ハイパワーエンジンを搭載したキハ85系が活躍してきました。

名古屋駅で出発を待つキハ85系は気動車特有のエンジンのアイドリング音がしていましたが……おお! HC85系はエンジン音がしない!!
実はHC85系、停車してドアを開けている際にはアイドリングストップを行うことができるのです!
ホームに静かに佇むその姿は、まるで電車のように静かです。


特急〔ひだ〕が走る飛騨の紅葉、HC85系が導入される予定の特急〔南紀〕沿線の海をモチーフにしたシンボルマーク

定時に名古屋を出発した特急〔ひだ〕3号の車内には、ほどなく案内放送が入ります。
HC85系に乗車したなら、この自動放送前に流れる「チャイム」は聞き逃せませんよ!

国鉄時代の気動車に多く搭載されていたオルゴール、「アルプスの牧場」を現代風にアレンジした華やかなメロディが流れるのでぜひご注目!
この曲を手掛けたのは鉄道の環境音などをクラシックに融合した作品などを多く発表する「スギテツ」のお二人。
素敵なメロディなのですが、始終着駅でしか流れないので、確実に聞くことのできる名古屋発車時の放送を聞き逃さないで!

HC85系 特急〔ひだ〕のシステムを大解剖!

ここでHC85系のスゴさをちょっとご紹介したいと思います。

ハイブリッドシステムを搭載したHC85系はキハ85系が実現した、ハイパワーかつ最高時速120km走行というハイスペックをそのままに、キハ85系では1両に2機搭載していたエンジンを1機に削減。
HC85系ではこのエンジン動力をそのまま車輪に伝えるのではなく、発電機を回すために使用し、そこで生み出した電力を使ってモーターを回して走行しています。
これにより、気動車特有の変速機によるギアチェンジが解消され、乗り心地が向上。
ハイブリッド方式を採用した鉄道車両では国内最高速度を達成しています。

ブレーキ時にも走行エネルギーを使って発電を行い、その電力はバッテリーにチャージ。
加速時のアシストや空調などの電力に使用されています。
高速性能を保ったまま、キハ85系からエンジン数を半減できた点が革新的なポイントなのですが、一方でHC85系の登場によって置き換えが進められるキハ85系も、JR東海にとって会社発足後初の特急用車両として活躍してきたとても大切な存在。
そんな背景もあり、キハ85系のスピリッツを受け継ぐ意味を込めて、HC85系には同じ「85」の形式名が付けられています。

ちなみにHC85系は電車か気動車のどちらなのでしょうか!?
車両の機能や設備を表す車両記号には気動車の「キ」ではなく、電車に用いられる「モ」が付いています。
そういう面では電車、ともいえなくはなさそうです。
鉄道車両を運転するために必要な「動力車操縦者運転免許」は、電車と気動車ではそれぞれ別の資格になるのですが、HC85系を運転するにはいったいどちらの免許が必要なのでしょうか!?


車両記号は電車に用いられる「モハ」が付けられている

その答えも実は「ハイブリッド」なんです!
HC85系は、電車・気動車どちらの免許でも運転することができる車両で、電車の運転士さんはエンジンなど気動車特有のメカニズムや取り扱いを、気動車の運転士さんはモーターといった電車について学ぶという風にそれぞれ必要な追加教習を受けることで運転することが可能になります。

HC85系 特急〔ひだ〕の車内の様子とは?

今回、僕が乗車したのは普通車。
普通車のシートは「明るいワクワク感」をテーマにした沿線の紅葉やお祭り、花火をイメージした赤を基調にしたきれいなグラデーション。
全席にコンセントを搭載し、荷棚も拡大。
さらに大きなキャリーバックなどは客室入口の荷物スペースに置くことができます。


鮮やかなシートモケットが印象的で明るい普通車の車内

ゆったりとした座り心地を実現した快適なリクライニング機構


各席にはコンセントも完備

客室入口には荷物スペースを備えている

デッキ部分もJR東海では初となる木目調のインテリアデザインを採用。
ぬくもりあふれる車内空間が広がります。

また、バリアフリー面でも最新規格で対応。
ハンドル型車椅子がそのまま入ることのできる、オストメイト対応の多機能トイレや、車椅子のまま旅を楽しむことができる窓に隣接した車椅子スペースも完備。
赤ちゃんの授乳時などに助かる多目的室もあり、環境だけでなく、あらゆる人にやさしい車両になっています。


温水洗浄機能付き暖房便座を採用したHC85系の車内トイレ 多機能トイレには着替えに便利なフィッティングボードもあり、名古屋と大きく寒さが異なる飛騨旅にはうれしい

車椅子スペースは1編成に3箇所備える コンセントも設置

このほかデッキ部分には沿線の伝統工芸品などを展示している「ナノミュージアム」が設置されています。
こちらに展示されている品々は各編成で異なっているので、ぜひチェックしてみてください。


デッキ部の「ナノミュージアム」 こうした展示はJR東海の車両としては新しい試みのひとつ

いよいよ高山本線へ!

名古屋~岐阜間では自慢の高速走行性能を生かして快走!
岐阜からは進行方向を変えていよいよ高山本線に入っていきます。
道中、自動放送により沿線車窓の見どころを絶妙なタイミングで案内してくれる新しいサービスも実施。
キハ85系は大きな窓が特徴でしたが、HC85系でもその長所はしっかり受け継ぎ、高山本線の美しい車窓を存分に楽しむことができます。

美濃太田を過ぎると今度は沿線高校の岐阜県立岐阜高等学校ESS部(英語研究部)による、英語を交えた沿線紹介放送が流れることも。
高山は海外からのお客さまにも人気の観光地。
単なる英語放送ではなく、こうした地域と連携した工夫は素敵な取り組みですね!

さあ車窓はいよいよ山風景に。
細かなカーブが続きますが、最新鋭のHC85系の乗り心地は快適そのもの。
進行方向右手に景勝地「飛水峡(ひすいきょう)」が見えると、時には急流のいでたちを、また違う時には静かに流れる飛騨川と共に、高山本線は進んでいきます。


鵜沼駅の手前で遠方に見える犬山城 見えるちょっと前に案内放送が入るので見逃す心配はない


高山本線を代表する車窓風景のひとつ「飛水峡」

高山本線は途中何度も飛騨川にかかる鉄橋を渡るため、左右どちらの席に座っても車窓が楽しめます。

飛驒金山を通過すると進行方向左側に、下原ダムが広がります。
水面がすぐそこまで迫るこの区間は、「水鏡」の名所。
条件に恵まれれば、車窓からも素敵な水鏡を見ることが可能です。


下原ダム沿いは無風であれば、このような水鏡に!


客室内のフルカラー液晶ディスプレイには、次駅や観光案内のほか、ハイブリッドシステムの稼働状況も表示される

名湯、下呂温泉の最寄りである下呂駅を過ぎると高山まであと少し。
高山本線最長の「宮トンネル」で宮峠を越えて、特急〔ひだ〕3号は定時に高山駅に到着しました。
前寄りに連結していた編成は、ここからさらに富山を目指します。


高山駅ではさらに先を目指す富山行きと切り離し


2016年に橋上駅にリニューアルした高山駅は内装に飛騨産ヒノキがふんだんに使用されている


高山に行ったら僕が必ず購入するのが金亀館の駅弁「飛騨牛しぐれ寿司」!  飛騨牛ローストビーフと酢飯のコンビが最高の駅弁は駅売店で購入可能

これから飛騨路は雪景色となり、いよいよ温泉のぬくもりがたまらない季節に!

高山駅からバスに乗り継げば、奥飛騨温泉郷へのアクセスも可能です。
高山で観光を楽しんだのち、再び〔ひだ〕に乗り込み下呂温泉で宿泊なんてプランもおすすめ!

この冬、新型車両HC85系 特急〔ひだ〕がこの時期ならではの魅力を持つ飛騨と共に、みなさんを待っています。


HC85系特急「ひだ」についてもっとくわしく

HC85系「ひだ」―2022年7月デビュー! JR東海初のハイブリッド方式。これまでの「85系」との違いは?(THE列車)


著者紹介

村上 悠太

1987年鉄道発祥の地新橋生まれ、JRと同い年の鉄道写真家。
「鉄道ダイヤ情報」(交通新聞社発行)では「ユータアニキ」としてあらゆる現場で鉄道を支える「鉄道HERO」たちの取材を続ける。元々旅好きから写真を始めたので、乗り物に乗って旅をしながら写真を撮るのが大好き。

Twitter:https://twitter.com/yuta_murakami
Instagram:https://www.instagram.com/yuta_murakami/

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見やすい2色刷り/JR6社共同編集/JR6社の主要ニュースを掲載

●本記事はJR時刻表2023年1月号との共同企画です。


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  • 取材・撮影・文=村上悠太
  • 掲載されているデータは2022年12月1日現在のものです。
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