列車旅なら飲まなきゃ損! 日本全国酒蔵めぐり 兵庫編

電車にゆらゆら揺られて出かける旅なら、のんびりとお酒を飲むことができます。目的地までの新幹線車内でちょっと一杯――というのも大人の休日ならではの過ごし方。 近年大人が楽しむ社会科見学として人気を集めているのが、日本酒の酒蔵めぐりです。そのなかでも絶対に訪れてほしいのが今回ご紹介する、江戸時代からその名をとどろかせた酒どころ・兵庫県。 歴史に裏付けされたおいしさを学んで味わうと、あら不思議。今までより味わいが増すから、お酒って面白いものです。

この記事の目次

             灘菊酒造
~姫路の地産地消酒。直営レストランで地元ならではの味を堪能~

国の重要文化財や、ユネスコ世界遺産にも登録される「姫路城」から、ちょっと足を延ばした場所に位置する灘菊酒造は、酒造業をはじめて2020年で110年を迎えます。 他の地域ではあまり耳にしないかもしれませんが、地元・姫路で支持される「灘菊」。 併設レストラン、直売所、展示パネルを通して、酒づくりの歴史を楽しむことができます。1月~3月に行われるプレミアム見学会では製造設備の見学もOK。

●主な銘柄:灘菊、MISA33、きくのしずく、酒造之助
●創業:1910年

「灘菊」ブランドの確立、さらに姫路の新たな地域資産へ

最盛期にはおよそ1万石(1石=一升瓶100本)を製造していましたが、時代とともに変革を求められ、小ロット生産へと方向転換。 本醸造、純米、純米吟醸などの特定名称酒と呼ばれる、よりこだわったつくり方の日本酒を増やしました。 同時に「姫路城近くに観光場所がない」と困惑していた多くの観光客を受け入れられる観光拠点として、レストランを整備。現在では年間約8万人もの人が訪れ賑わいを見せています。

2004年から現在まで杜氏(醸造責任者)を務めるのは、大学で醸造を学んだ、蔵元の三女・川石光佐(みさ)さんです。自らの名前を冠した「MISA 33」や 愛らしいラベルの「灘菊」シリーズを生むなど新しい風を吹き込み、現在の「灘菊」ブランドを確立しました。

お酒と食文化のハーモニー…家族みんなで楽しめる酒蔵

英語対応もしている売店では、全種類試飲が可能! 灘菊のお酒は製造量の約70%が酒蔵直売所、直営レストランへ、20%は姫路市内の酒屋さんに出荷…というから、ほとんどが地元・姫路で消費されます。 だからこそお土産としてぴったり。 それから灘菊酒造の「甘酒」を練り込み、本家にあたる川石本家酒類が造った10年熟成の「手柄山本みりん」をかけた「黒甘ソフトクリーム」は、必食の一品です。

「目立ちすぎることなく、食事に寄り添うお酒をつくりたい。米の旨味とソフトなキレ味を持ち合わせ、じんわり飽きずに飲める酒。だから派手な設計をしません。」と光佐さんは言います。

「お酒と食文化のハーモニー」をモットーに4軒のレストランを展開している灘菊酒造。酒蔵併設のレストランでは「姫路穴子の姿一本炭焼」など姫路の味覚を楽しむことができます。また「自家製 魚の塩麹漬け」「酒蔵鍋」など発酵調味料を利用した料理は、同じ発酵食品である日本酒とよく合います。

灘菊酒造株式会社

住所
兵庫県姫路市手柄1-121
電話番号
079-285-3111(代)
酒蔵見学
製造設備見学はプレミアム見学会で実施
(プレミアム見学会:1~3月の各週土曜日か日曜日のどちらか1日、10名限定で実施)
直営レストラン
酒蔵の膳処「西蔵」(兵庫県姫路市手柄1-121)
元祖 綿菓子牛鍋と手作り豆富「前蔵」 (兵庫県姫路市手柄1-121)
日本酒と串揚「蔵」 (兵庫県姫路市魚町91)
日本酒とおでん「酒饌亭 灘菊かっぱ亭」(兵庫県姫路市東駅前町58)
URL
http://www.nadagiku.co.jp/

            白鶴酒造
~お酒を飲めない人でも惹きこまれる、白鶴の歴史と功績~

日本の国酒である日本酒の製造をけん引する、国内最大手酒造のひとつである、白鶴酒造。真っ赤なパック酒「まる」といえば誰もが知る存在です。 大手ならではの責任とプライドを背負い、人の手によって大切に醸されています。 昭和44年(1969)まで“本店壱号蔵”として使われていた古い酒蔵を活用し、現在は貴重な酒づくりの道具などを集めた資料館として残されています。

●主な銘柄:上撰 白鶴、まる
●創業:1743年

リアルな蝋(ろう)人形に注目! かつての酒蔵を彷彿とさせる白鶴酒造資料館

戦前には27の酒蔵がありましたが、現在では3蔵で酒づくりされています。「旭蔵工場」は機械プラス手づくりの良い所取り。 「本店三号蔵」は年間通して酒づくりを続ける四季醸造蔵、そして「本店二号蔵」は手づくりの吟醸蔵と役割分担しています。

広報室・植田さんによると「当時の従業員がモデルになっているので、丁稚奉公や季節労働の蔵人たちも多数含まれています。 現在の従業員のなかにも、“自分もモデルになったんや”というかたがいますよ。」とのこと!! 言われて一体ずつ目を凝らしよーく見ると、背格好、顔つき、ひげの濃さが違うことがわかります。忠実に作られた、一体200万円する蝋人形もこの資料館のひとつの目玉です。

誰もが手に取りやすい大衆酒から、通(ツウ)がうなる純米大吟醸までも網羅する、灘で一番の生産量を誇る白鶴酒造。 門外不出の400種の自社酵母を持ち、山田錦の弟分をつくるという前代未聞の取り組みにより「白鶴錦」という酒米を開発し栽培しています。 また多くの東大進学者を輩出することで知られる灘高等学校の設立、白鶴美術館や神戸市立御影公会堂の建設賛助など、国や地域の未来を想い、 酒造業界のみならず文化・教育面においても多大な影響を与え続けてきたことが白鶴酒造資料館内のパネルを通して体感できます。

直営店だけで出会えるお酒も! 透明感ある味わいを楽しむ

直営店では、ココでしか買うことのできないお酒(「弓弦羽 純米吟醸」「弓弦羽 純米」「蔵酒」「御影郷」「本醸造辛口」)や、普段あまり見かけることのできないお酒(「天空」)、 オリジナルグッズを購入することができます。お酒を飲めないかたやお子様には、おだやかな甘さとシャリシャリとした食感が楽しい大人気「酒蔵甘酒ソフトクリーム」があります。

現場の職人たちの技術や勘に、品質保証部の持つ科学的な分析データをプラスし、常に高品質の安定したお酒を出荷しており、直営店ではそのなかの一部商品を試飲することもできます。

驚くほどきれいな味わいは、瀬戸内海の海の幸など繊細な食材にも寄り添ってくれます。激流にもまれ身が引き締まった新鮮な明石海峡の鯛のお刺身と、白鶴の美しい吟醸香がするお酒は相性バッチリです。

白鶴酒造株式会社<白鶴酒造資料館>

住所
兵庫県神戸市東灘区住吉南町4-5-5
電話番号
078-822-8907
(FAX)078-822-4891
施設見学
白鶴酒造資料館 開館時間 : 9:30~16:30 ※製造設備は見学不可
休館日 : お盆(2019年8月13日~8月17日)
年末年始(2019年12月28日~2020年1月4日)
(設備のメンテナンス等のため臨時休館する場合有)
入館料 : 無料(団体見学案内は要事前申込)

菊正宗酒造
~製樽文化を次世代へと継承する、日本が誇る酒蔵~

灘五郷と呼ばれるエリア(現在の兵庫県神戸市の一部)は、江戸時代最大の銘醸地でした。①高度な酒造技術。②湧き出る良質な水(宮水)。 ③六甲山系の急流を利用した水車精米。④良質な原料米生産地が近い。⑤海が近く船積みの便が良い。⑥運搬用に使用した杉樽の香りが酒に移り、良い熟成を生んだ。
……など多くの理由が重なり最盛期では、江戸で飲まれる酒の多くが灘のものだった、と言われるほど。 菊正宗酒造は、灘五郷のなかの御影郷に位置し、現在でもその頃の辛口で良質な樽酒を守り続けています。

●主な銘柄:生酛上撰本醸造、嘉宝蔵 雅、キクマサピン、しぼりたてギンパック、百黙
●創業:1659年

「午前3時の酒づくり」が再現された臨場感あふれる菊正宗酒造記念館

“酒の神様を祀り結界を張る”という意味を持つしめ縄をくぐるとそこは薄暗く、かつて酒づくりを開始していた午前3時の様子が再現されています。

当時は、まだ日が昇らないなか起きてすぐに、凍てつくような冷水に手足を入れ洗米をおこなっていました。 当時の作業写真、道具ごとの名称図、英語の作業説明展示があるので、酒づくりについてなにもわからない人でもまるで蔵人になったような気持ちで見て回ることができます。

日本のモノづくり文化のひとつ“製樽”を目前に。「樽酒マイスターファクトリー」

菊正宗酒造が2017年11月にオープンした工房がこちら。時代とともに木樽や木桶を製造する業者が激減、 職人も減少するなかで技術を存続させようと3人の樽職人を自社に受け入れ、その後女性ひとりも見習いとして仲間入り。4人体制で製作しています。 灘の製樽技術は2019年2月に、「国の選択無形民俗文化財」に選ばれました。

製樽、原料の吉野杉、歴史、貯蔵の様子、など樽酒のすべてを見ることができます。「竹割り」「たが巻き」「樽組み」などくぎや接着剤を一切使わない江戸時代から変わらぬ樽づくりです。

時代を遡ると、もともと日本では家も容器も多くは木で出来ていました。だから決して香りをつける目的ではなかったのですが、最近になって木の香りには人をリラックスさせる効果があるとわかっています。 また漢方で鎮静効果や健康促進に使われる杉の成分が液中に移っているのではないかとも。 そのせいでしょうか、枡で飲む「菊正宗」はホッと心落ち着くものがあります。

深くてパワフルな味わい、菊正宗の魅力

▲開発者のおひとりである化粧品事業課・田中久美さん(右)

菊正宗酒造では、日本酒の良さを活かした化粧品も展開中です。お米と米麹由来のアミノ酸が角質層のうるおいを守ってくれる…なんてことがわかるずっと前、かつて舞妓さんや仲居さんはお座敷で余った日本酒を水で薄めて塗りこみ肌の保湿をしていたそう。 それが開発の原点という『日本酒の化粧水シリーズ』。男性にも人気の化粧水をはじめ全商品、記念館売店で購入可能です。

菊正宗酒造では“きもとづくり”という昔ながらの製法を採用。自然界の乳酸菌の力を借りて発酵するため、丈夫で力強く味わい深いお酒が完成します。 だからパワフルな吉野杉の風合いにも調和し、時間をかけて熟成してもバランスが崩れることのない芳醇な味わいになるのです。

せっかく神戸に行ったのなら神戸牛と「菊正宗 純米樽酒」のペアリングがオススメです。ステーキも良いですが、特にすき焼き! あまからい割り下にサッとくぐらせた、きめ細やかで、口の中でほどける脂身を持つ神戸牛を頬張り、菊正宗を飲めばお互いの旨味成分が相乗作用し、大満足の食卓に!

菊正宗酒造株式会社
<菊正宗酒造記念館>

住所
兵庫県神戸市東灘区魚崎西町1-9-1
電話番号
078-854-1029
(FAX)078-854-1028
施設見学
開館時間/9:30~16:30
休館日/年末年始
入館料/無料

<樽酒マイスターファクトリー>

施設見学
見学時間/10:30、14:00、15:00 1日3回、各回先着20人のみ
開催日/記念館休館日を除く毎日開催
※樽酒マイスターファクトリーの見学は菊正宗酒造記念館からのご案内になります
※事情により見学会を行わない場合有
・樽酒マイスターファクトリーサイト
http://www.kikumasamune.co.jp/tarusake-mf/
・予約サイト
https://www4.revn.jp/kikumasamune_reserve/

日本酒の街・兵庫の旅。ぜひ次のお休みに計画してみてくださいね!

この列車で行こう

【東海道新幹線 N700A】
運行区間:東京駅~博多駅

東海道・山陽新幹線の車両・N700A。台車の空気バネを利用した新開発の車体傾斜システムを搭載し、N700系以降の技術開発成果を採用したN700系1000番台(通称N700A・「A」はAdvancedの略)。安全安定輸送の実現と、乗車中の快適さにこだわった設備が魅力だ。

詳細はこちら

【500系こだま】
運行区間:新大阪駅~博多駅

山陽新幹線区間を走行する「500系こだま」。鋭角なスタイルの先頭車両は、編成全体の円筒形デザインと合わせて、レールファンの人気の的となっている。キャラクターとのコラボレーションも話題を呼んだ。

詳細はこちら

【サンライズ出雲】
運行区間:東京駅~出雲市駅

プライベート空間の個室寝台という時代のニーズに合わせて登場したのが、朝を連想させる赤とベージュの塗色にゴールドのラインを配した285系電車の「サンライズエクスプレス」。現在唯一定期で運行している寝台列車だ。温もりのある高品位な空間で、快適な睡眠とプライベート空間のやすらぎを実現している。

詳細はこちら

あわせて読みたい

著者

関友美

きき酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと記事を執筆、セミナーでの講演や酒蔵での酒づくりなど、日本酒のあるさまざまな場所に出没しながら、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさを伝えている。

オフィシャルHP
Instagram

このページのトップへ