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2020.07.27旅行【栃木・那須温泉郷編】旅行作家・野添ちかこが列車で行く! のんびりご褒美温泉旅

この週末は列車で温泉旅へでかけませんか?

仕事に家事に人間関係に……現代人はみんなちょっとお疲れ。そんな毎日を送る人に“何もしなくていい”週末に列車で行ける温泉旅を提案します。好きなときにお風呂に入って、待っていればおいしいご飯が出てきて、移動に列車を選べば乗っているだけで目的地まで運んでくれます。たまには日常を忘れてのんびり、自分にご褒美をあげよう。きっと明日からも頑張ろう!と思えるはず。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。

個性派の温泉揃いの栃木県・那須温泉郷へ


川になって流れるワイルドな露天風呂あり、映画『テルマエ・ロマエ』で話題になったひなびた温泉宿あり、アツアツの栃木最古の湯あり……。
栃木県・那須温泉郷は首都圏にほど近い立地ながら、個性派の温泉揃いです。
なかでも、皇室の方がご静養に訪れる那須御用邸に温泉を引湯する「大丸温泉(おおまるおんせん)旅館」は、混浴露天風呂が売りで、女性一人旅でも満足できるクオリティの湯宿です。いつもなら、雪の降らない4~12月はオンシーズンなので、予約の取りづらい人気宿ですが、コロナ禍の後だから、普段より予約が取りやすくなっているかもしれません。東京駅から那須塩原駅まで東北新幹線で約1時間10分。そこから大丸温泉のバス停までは約1時間10分。新幹線の駅から路線バス(宿泊者は往復1回無料)で移動できるのでマイカーがなくても安心して旅の計画を立てられます。「曲がりくねった山道を自分で運転するのは気後れする」という人でも、鉄道とバス、タクシーなどを利用して、のんびり湯めぐりが楽しめます。

標高1300メートルの高原の湯

今回訪ねたのは「那須八湯」のうちの1つ、大丸温泉旅館。
日光国立公園の南側にある茶臼岳の中腹、混浴の露天風呂が人気の湯宿です。標高1300メートルの高所にあり、登山ルートを歩いてしか行けない三斗小屋温泉を除いて、那須温泉郷の中では最奥に位置しています。


大丸温泉外観 標高1300メートルの高地にある大丸温泉旅館

宿の創業は1854~60(安政1~7)年と言われていますが、開湯はさらに古く、1691(元禄4)年、329年の歴史があります。

こんな高所にあるというのに、昔から湯治客で賑わっていたようで、車で行くのもきつい険しい山道を、湯治客を駕籠に乗せて、人力で運んできていたそうです。


大丸温泉旅館 駕籠 館内には、湯治客を運んでいた駕籠が展示されています

館内には飲泉所があって、温泉を湯呑みで汲んで、飲むこともできます。
そこまで強い泉質ではないものの、温泉は薬と同じで、1日に摂取していい量が決まっています。大丸温泉の湯は「1日3杯まで」と宿のスタッフに教えてもらいました。

全長100メートル、川になって流れる大露天風呂

3つの混浴露天風呂

この宿の大露天風呂は超ワイルド!
敷地内を流れる川に源泉が流れ込み、川が湯船になっているのです。

「白戸川という川の最上流地点にあたります。川の最初が温泉なんですが、私有地なので川の名前はついていないんです」と大高要之社長。

混浴露天風呂は、3つ。下から、「白樺の湯」「あじさいの湯」「あざみの湯」という名前が付いています。


大丸温泉旅館 白樺の湯 雨の量や雪の量で湯船の深さが変わる混浴露天風呂「白樺の湯」

「混浴風呂」へは男女とも、宿が用意した湯浴み着を着ていきますので、知らない人との混浴もとくに気にならず、温泉を満喫することができます。


大丸温泉旅館 湯浴み着 男女とも用意された湯浴み着を着用して入浴します

「上流に行くほど熱くなっています」。
案内してくれたスタッフはそう言っていましたが、途中で熱い源泉が流れ込んできたり、足元の川底からぷくぷく熱い湯が湧いていたり、自然そのままの温泉だから、温度はところどころ違います。

「桜の湯」(77.9度・毎分189リットル)、「川の湯」(36.8度・毎分96リットル)など源泉は4本あり、うち1本は那須御用邸にも引き湯されている由緒正しい温泉です。湯量は豊富なのですが、「雨が降ったりすると温度も深さもすぐ変わる」そうで、とくに昨今の大型台風で川の露天風呂は被害を受けることが多く、管理に大変な労力を費やしているそうです。まさに自然の恩恵と畏怖を感じられる露天風呂です。

「白樺の湯」は、木の樋から流れ落ちる源泉はぬるめでしたが、足元の石の間から、ところどころ熱い源泉が噴き出してきます。角がとれ、丸くなった川石が、足裏を心地よく刺激します。


白樺の湯 足元の石 「白樺の湯」の足元にあるのは踏み心地のよい丸石

比較的、深さは浅めですが、直立時には膝上20センチメートルくらいの深さですので、座ればあご下までどっぷりくる深さ。すぐにポカポカと全身が温まってきたので、半身浴できるよう段差を設けたところに陣取りました。

単純温泉でクセはないはずだけど、湯船の側面を見ると岩が茶褐色に変色しているので、鉄分などの温泉成分は実は濃いのかもしれません。実際、温熱効果はかなり高いようで、長湯をしたい絶好のロケーションのはずだけど、長湯している人はほとんどおらず、10〜15分程度の湯浴みを楽しんで、他のお客さんは早々に客室へと引きあげていました。

温泉効果のある湯に入ると、途端に眠気に襲われますが、この日は、早々に布団になだれこんだので、目に見えないお湯のパワーはかなり強めだと思いました。


大丸温泉旅館 あじさいの湯に流れ込む源泉 ドバドバと「あじさいの湯」に流れ込む源泉

3つの混浴露天風呂の真ん中にある「あじさいの湯」は、直立して股下くらいの深さ。ドバドバと豪快に流れる湯が入り込み、温度はかなり熱め。深さも深いので、ちょうどいい岩を見つけて腰掛けると具合がいいようです。

さらに木の階段を上り、一番上に進むと、木々に囲まれた「あざみの湯」があります。最も上流にあるので熱いかと思ったら、ここが一番入りやすい温度でした。足元は、目の荒い砂と小さな石ころで、深さも膝上くらい。へりに腰掛けて半身浴をして、しばし湯浴みを楽しみました。


大丸温泉旅館 あざみの湯 混浴露天風呂の最上流にある「あざみの湯」

女性専用の露天風呂は上流にあります

この宿、女性をかなり大事にしています。
というのも、2つの女性専用露天風呂は、混浴露天風呂よりも上流に設けられているからです。

私が好きなのは、一番上にある「山ゆりの湯」。
谷のような形状の土地に造られているので、目隠しなど一切なく、自然に囲まれて湯浴みができます。

「山ゆりの湯」というくらいだから夏になれば芳しい山ゆりの香りが漂ってくるのかと思いましたが、周囲にそれらしい草木はありません。「本当は山ゆりがあったんだけど、草刈りの人が刈ってしまって、現在は咲いていない」(大高社長)そうです。それでも、湯船の横には可憐な黄色い花や、白い野菊が咲いていて、心和みました。


大丸温泉旅館 女性専用風呂「山ゆりの湯」 女性専用露天風呂「山ゆりの湯」


野菊 湯船の横に咲く白い野菊

浅めの石に腰掛けて、目を閉じると、木々のそよぎ、虫の声、トポトポと流れる湯の音、川の音が聴こえてきます。のんびりと流れていく時間に身をゆだねると、日頃の慌ただしさが嘘のよう。コロナ禍で溜まった疲れを洗い流し、リフレッシュするにはこんなふうに自然と触れ合って心をニュートラルにするのが一番です。

もう1つの女性専用露天風呂は「山ゆりの湯」より下にある「石楠花の湯」。屋根付きの露天風呂で、ここは股上くらいの深さがあってかなり深めです。湯船の縁は平らな石なので頭を乗せたり腰掛けたりすることができます。


大丸温泉旅館 石楠花の湯 2つ目の女性専用露天風呂「石楠花の湯」

川の露天風呂だけじゃない。内風呂の楽しみ方

川の露天風呂だけがクローズアップされがちですが、内風呂もなかなかよい湯船でした。”浮遊浴にぴったり”いや、”浮遊浴できるように設計した”風呂なのではと思ったくらい、非常に深い浴槽です。


大丸温泉旅館 女性用大浴場 深さと温度が浮遊浴にぴったりの内風呂

普通に座って入るには明らかに適さない深さで、110センチメートルくらいあるでしょうか。湯はドバドバとあふれています。湯船の縁はゴツゴツした岩ではなくて平面にスライスされた頭を乗せやすい大きくて平らな岩。ここを枕のようにして頭を乗せ、体を浮かせれば足も尻も湯船にはつかずに浮遊浴ができます。
40度前後のそう熱くない温度だから、体を脱力させて、ぼーっとするのにぴったり。ザアザアと湯が流れる音を聴き、疲れた体を休めるにはもってこいの内風呂です。

美味しいものを少しずつ。料理のセンスも秀逸

とちぎ和牛の温泉しゃぶしゃぶ

実はこの日は旅館に泊まるのは3泊目。「もはや、会席料理は食べられないかもしれない……」と思っていたけれど、こちらの夕食を食べ始めたら箸がとまらず、食べ進みました(笑)。

甘辛い北関東の料理とは一線を画し、美味しいものを少しずつ、適度な量で出してくれます。料理内容はよく考えられていて、口コミ評価が高いのも納得です。


大丸温泉旅館夕食 旬菜の器 旬菜は左下から右回りで河豚皮ポン酢、キャベツの胡麻クリームがけ、新緑豆富、蛍烏賊の木の芽味噌掛け

せっかくなのでと栃木の地酒「忠愛」を四合瓶で注文。やや辛口で会席料理に合う地酒でした。

メインの「大丸温泉しゃぶしゃぶ」は、透明な温泉水と乳白の豆乳ごまだれの2色のつゆでとちぎ黒毛和牛を食べられます。仕切りのある土鍋のなかに、2色のつゆが入れてあり、そこに白菜やにんじん、豆苗やしめじを投入し、最後に肉をくぐらせます。

那須町の指定生産者5名が手がける最高級の黒毛和牛だそうで、感動的なおいしさでした。
「この牛肉はA5ランクの最高級品です」。
そう言われても、最近は年齢とともに、牛肉をたくさん食べたい欲求は年々薄くなってきて、脂ののったA5ランクの肉など、胸焼けして途中で食べたくなくなることも多いのですが、この肉はいくらでもいただけます。


大丸温泉旅館夕食 大丸温泉しゃぶしゃぶ 2色のつゆでいただく大丸温泉しゃぶしゃぶ

料理を運んでくれる仲居さんに聞くと、「取引している肉の専門店『鶏春』が一頭買いをしているので、その日その日でサシが多い肉だったり、赤身が多かったりもします」とのこと。もっと食べたい!という人は追加で注文もできるそうです。

豆乳ごまだれはやさしい味わい。温泉水の方はポン酢でいただくのでインパクトがあります。味を変えて食べられるから二度おいしい。いやはや、この鍋を食べに通いたいくらいの味でした!

メインの後の揚げ物は稚鮎と山菜類。
頭から尻尾まで丸ごと、サクサクのアツアツを塩でいただきます。


大丸温泉旅館夕食 稚鮎と山菜の天ぷら 稚鮎と山菜の天ぷら

ご飯につくお新香類もすべて手作り。最後までおいしくいただきました。
料金別で料理を変えている宿もありますが、大丸温泉旅館はすべて同じ。
間接照明のほのかな灯りの中、心地よく、楽しく、夕食時間が過ぎていきました。

客室はリニューアルが進んでいます

座り心地、使い心地にこだわった家具

この日泊まったのは10畳の和室に広縁がついた502の客室。
客室にはすでに布団が敷いてありました。
新型コロナの感染拡大以後の安全対策として、スタッフが客室に入るのをなるべく避けるためだといいます。そのほか、館内ではマスク着用、客室のテーブルや脱衣所などに消毒用アルコールが用意されているなど、これまでと違うサービスを取り入れていました。


大丸温泉客室 10畳和室に広縁がついた客室

一番安い料金体系で予約したので、客室にあまり期待はしていなかったのですが、とても洒落た雰囲気の和める空間でした。畳も綺麗だし、照明の傘もおしゃれ。
広縁のテーブル、椅子は古民家宿に合う雰囲気で、広縁にはテレワークもできそうな机が造りつけられています。

客室のしつらえやインテリアのセンスがいいのは、社長さんがパレスホテルや仙仁温泉岩の湯(長野県)などおもてなしに定評のある宿泊施設で修業されてきたこともあるのでしょうか。


大丸温泉旅館 客室ワークスペース 化粧鏡のあるワークスペース。ここで仕事をしたらはかどりそう

501〜505の客室は、女性用の大浴場が近く、移動が楽。女性の利用であればここをお薦めします。

一人旅にも優しい宿です

20室ある客室のうち、本館は3室、別館が17室(温泉風呂付き)あります。
変わり種は「特別室(足湯ルーム付き)」(403)で、高原の緑を見渡せる足湯ルームにはBC工房の素敵なチェアが置かれていて、高原の景色を眺めながら本を読んだり、お酒を飲んだり、ゆっくりと過ごすことができます。もとは2つあった客室を1つに改装した、ベッドルームのある特別室です。


大丸温泉旅館 足湯付きルームのベッドルーム 「特別室(足湯ルーム付き)」の寝室はツインベッドルームです

さらに、最近増えている一人旅需要にも対応して、1室のみですがおひとり様専用ルームがあります。10畳の客室にN-sleepの寝心地のよいベッドが置かれていて、テレワークにもぴったり。1室2名利用時の料金と比べてもプラス2000円程度で一人宿泊ができるので、一人旅の心強い味方です。

乃木将軍もお気に入り

大丸温泉旅館にはロビーの脇に、日露戦争の英雄として名高い「乃木希典(まれすけ)将軍ゆかりの展示品コーナー」があります。

乃木将軍がドイツ留学から帰ってきた40歳の時に5、6日大丸温泉旅館に滞在して以降、晩年まで毎年のように訪れていたそうです。

もちろんお湯が気に入っていたからというのもあるでしょうけれど、大正時代に当主だった大高市左衛門が15歳の時に書生として乃木家に世話になっていたご縁があったとか。


大丸温泉旅館 記念品コーナー 乃木希典将軍が滞在時に使っていたものを展示


大丸温泉旅館

住所 栃木県那須郡那須町大字湯本269
問い合わせ先 0287‐76‐3050
時間 チェックイン 14:00/チェックアウト 10:00
定休日 不定休
交通アクセス JR那須塩原駅よりバスで約1時間10分、大丸温泉下車、徒歩約5分
値段 1泊2食16000円(税別)〜、トップシーズンは19000円(税別)〜 日帰り入浴1000円(11:30〜14:30受付)
URL http://www.omaru.co.jp

ひなびた温泉好きなら、北温泉へ

せっかく那須温泉郷に出かけたら、立ち寄り湯をしたいところ。ひなびた温泉が好きな人におすすめなのが「北温泉旅館」。大丸温泉から路線バスもありますが、バス停から少々歩くので、タクシー利用もいいでしょう。北温泉の駐車場までタクシーなら5分程度、そこから10分ほど山道を歩いて辿りつきます。

2012年に公開された映画『テルマエ・ロマエ』では上戸彩演じる真美の実家として登場し、一躍脚光を浴びました。

壁に掲げられた天狗のお面が異彩を放つこちらの湯殿は「天狗の湯」。約1200年前に天狗が発見したと言われています。

「日帰り入浴の場合、女性は『天狗の湯』には入れません。宿泊すれば17時30分〜朝10時までは混浴ですが入浴できます」とフロントの女性。
女性優位の大丸温泉旅館とは真逆で、こちらは男性優位。
立ち寄り湯では残念ながら、私は天狗の湯に入れませんでしたので、同行者が撮影した写真を掲載します。


北温泉旅館 天狗の湯 日中は男性専用の「天狗の湯」

代わりに、私は女湯の「芽(目)の湯」へ。木とコンクリートが茶褐色に色づいた風情あるひなびた浴室で、掲示されている「入浴指南」によれば、肌にもいいし、冷えにもいいし、飲んだら胃腸にもいいし、タオルに浸して湿布にすると目にいいと書いてあります。

pH6.4、52.4度の単純温泉ですが、鉄分が含まれているせいか、キシキシとした感触で、湯は透明だけれど茶褐色の消しゴムのカスのような湯の花が舞い、お湯の表情もまたいいのです。

窓は2面に開けていて、風にそよぐ木々の緑を眺めながら、ノスタルジーに浸る時間を過ごせます。湯量豊富で床にはドボドボと湯が流れ込み、ただひたすらボーッとして過ごすと心も洗われていくかのよう。


北温泉旅館 「芽(目)の湯」 女湯の「芽(目)の湯」

客室や風呂へと向かう階段の上に、館内から参道へと繋がっている「湯前神社」が祀られています。また、女湯へ行く途中にも観世音菩薩様の像がありました。

入浴心得には「心中に神仏を有し、浴槽に入る可きこと」とあり、お湯と対峙するときの心構えからして一般的な温泉旅館とは違っています。神様、仏様のご加護をいただいて初めて温泉も効果を発揮するのかもしれません。

館内には、プールの大露天風呂や「河原の湯」(露天風呂)などもあって、こちらも今どきの温泉旅館とは全く違う雰囲気。

客室は40室。昭和、明治、江戸安政の頃の建物が残っていて、自炊宿泊料金は3泊までは1泊4900円。1泊2食付きでも7900円〜(消費税・入湯税込)とリーズナブルに泊まることができます。


北温泉旅館

住所 栃木県那須郡那須町湯本151
問い合わせ先 0287‐76‐2008
時間 立ち寄り入浴8:30〜16:30
定休日 なし(火曜日の宿泊は受けていない)
交通アクセス JR黒磯駅よりバスで約50分、北湯入口下車、徒歩で約30分
値段 立ち寄り入浴700円
URL http://www.kitaonsen.com/mokuj.htm

1300年の古湯、鹿の湯

バスを「那須湯本温泉」で途中下車し、やってきたのは那須温泉の元湯「鹿の湯」。
近くにある観光名所「殺生石」は付近一帯に硫化水素ガスなどの火山性のガスが噴出していたことから、草木が生えず、ゴロゴロとした岩が転がる殺伐とした溶岩地帯。湯の花採取跡なども残っています。

そんなエリアにある元湯「鹿の湯」の歴史は古く、約1300年前、舒明天皇の御世に、狩野三郎行広という人が山狩りで射損じた鹿を追って、温泉を見つけたのが始まり。栃木県最古の湯と言われています。

今も多くの人を惹きつけるのはその佇まいとお湯の良さゆえ。
建物はひなびた木造建築で、明治・大正の頃の趣を今に伝えています。

「鹿の湯」の入り方は独特です。
まるで、修行をしているような気分になるのは私だけでしょうか。
まず、超高温の湯なので湯中り(ゆあたり)しないように「かぶり湯」をします。頭にタオルをかけてひしゃくで200回くらい、熱い湯を頭にかけるのですが、こうすることで頭の血管を広げ、高温の湯に入っても大丈夫なように準備をするわけです。


鹿の湯 かぶり湯で体を温泉に慣らしてからいざ入浴!

十分に体を慣らしてからお湯に入るわけですが、鹿の湯の源泉はpH値は2.5という刺激のある酸性の単純硫黄泉。とにかく刺激が強い泉質ですので、砂時計を片手に、3分の短熱浴が推奨されています。

湯船は41・42・43・44・46・48度(女湯は46度まで)と少しずつ温度が違っているので、最初はぬるめの浴槽に入り、まずは3分間。
「腰まで1分、胸まで1分、首まで1分」が1クールで、慣れてきたら熱めの浴槽へと移動し、3〜4クール繰り返します。


鹿の湯 男湯 6段階の温度別の浴槽がある男湯

濃厚な乳白のにごり湯は、冷えた体にはビリビリと染み渡る心地よさ。
新陳代謝が活発になって、帰りの列車の中ではぐっすり夢の中へ誘われ、翌朝はスッキリ、目覚められることでしょう。


鹿の湯

住所 栃木県那須郡那須町湯本181
問い合わせ先 0287‐76‐3098
時間 8:00〜18:00(最終受付17:30)
定休日 なし
交通アクセス JR黒磯駅よりバスで約35分、那須湯本温泉下車、徒歩で約2分
値段 500円
URL http://www.shikanoyu.jp

この旅の行程

(行き)JR東北新幹線なすの257号 東京駅11:08発→那須塩原駅12:21着(所要時間:1時間13分)

バス那須塩原駅12:45発→大丸温泉13:55着(所要時間:1時間10分)

(帰り)バス大丸温泉9:32発→北温泉入口9:34着(所要時間:2分)

バス北温泉入口12:22発→那須湯本温泉12:40着(所要時間:18分)

バス那須湯本温泉13:40発→那須塩原駅14:30着(所要時間:50分)

JR東北新幹線やまびこ14号 那須塩原駅15:02発→東京駅16:16着(所要時間:1時間14分)

知っているとちょっと楽しい「鉄道豆マメ知識」

新幹線の車体の側面についているマークをご存じですか? これはシンボルマークといって、新幹線の車両には必ずついています。このマーク、ひとつひとつに意味があるデザインになっているんですよ。今回は東京駅~那須塩原駅間を走る、E2系とE5系の、2つの車両のシンボルマークをご紹介します。

まず、E2系から。


E2系 シンボルマーク

E2系のシンボルマークは、全体は、青森県特産のりんごがモチーフになっていて、下の方には車両の形が切り抜かれるようにデザインされています。明るくて優しい印象です。

次にE5系。


E5系 シンボルマーク

E5系はE2系とはうってかわってシャープなデザイン。
鳥類の「ハヤブサ」をモチーフとし、E5系のもつ先進性、スピード感を表現しています。

細かいところにまでひとつにひとつに意味があるんですね。
もちろんほかの列車のシンボルマークも、それぞれ意味があります。

新幹線に随所に隠された、走るエリアならではの特徴を探すのもおもしろいですよ。移動も楽しい時間になりますように。


著者紹介

野添ちかこ

温泉と宿のライター/旅行作家

観光の専門紙記者を経て、2006年フリーに。新聞、雑誌、WEB、テレビ、ラジオなど各種媒体で温泉と宿の情報を紹介。現在、NIKKEIプラス1(日本経済新聞土曜日版)第3週に「湯の心旅」連載中。著書に『千葉の湯めぐり』(幹書房)。3つ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉利用指導者(厚生労働省認定)、国立公園満喫プロジェクト有識者会議委員(環境省)、岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、宿のミカタプロジェクトチーフ・アドバイザー。

写真/野添ちかこ、(車両写真)交通新聞クリエイト
掲載されているデータは2020年7月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。

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