この週末は列車で温泉旅へでかけませんか?
仕事に家事に人間関係に……現代人はみんなちょっとお疲れ。そんな毎日を送る人に“何もしなくていい”週末に列車で行ける温泉旅を提案します。好きなときにお風呂に入って、待っていればおいしいご飯が出てきて、移動に列車を選べば乗っているだけで目的地まで運んでくれます。たまには日常を忘れてのんびり、自分にご褒美をあげよう。きっと明日からも頑張ろう!と思えるはず。
- ※新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。
パワースポット温泉で運気UP! コロナ疲れを吹き飛ばそう
讃岐国のこんぴらさんとして知られる「金刀比羅宮(ことひらぐう)」は海の守護神、さらには、商売繁盛や健康にご利益のある四国随一のパワースポット。江戸時代から伊勢詣でや熊野詣でと並んで、庶民が一生に一度は訪れたいと願った憧れの場所です。今回ご紹介するのは、コロナの自粛期間を経て、消耗し切った心と体を元気にする、こんぴら参り。新しい宿や食事処などもできて、参道は進化を続けています。アクセスは、高松駅から金刀比羅宮のある琴平駅まで在来線に乗って1時間ちょっと。特急利用なら45分で到着します。私が出かけたのは田植えが終わった頃でしたので稲がすくすくと育ち、車窓から美しい田園風景を眺められました。空いている車両のボックス席に乗り込めば、プライベート空間も保たれて、快適な鉄道旅が楽しめます。パワースポット温泉で、コロナ疲れを吹き飛ばしましょう。
「さぬきのこんぴらさん」こと金刀比羅宮は平安時代には琴平神社として広く信仰されていたものの、創建された年代は詳しくわかっていません。主祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)。大物主神は大国主神(おおくにぬしのかみ)の和魂(にぎみたま=神の霊魂がもつ荒魂・和魂の2つの側面のうち、穏やかな神霊の働き)とされ、五穀豊穣、産業・文化の繁栄、国や人々に平安をもたらす神さま。海上に現れた神さまであることから海の守護神とも言われています。
金刀比羅宮のあるこんぴら温泉郷には温泉旅館がいくつもありますから、昔からある温泉地のように思われますが、実は温泉地としての歴史は浅く、こんぴら温泉郷を名乗り始めたのは1998年4月。まだ22年しか経っていません。以来、参拝客が身も心も清めることのできる温泉として親しまれてきました。
2019年オープンの敷島館へ
2004年に登録有形文化財に指定されるも廃業してしまった「敷島館」の歴史的景観を守りながら、2019年9月に新しい湯宿としてオープンした「ことひら温泉 御宿 敷島館」。
全国に34カ所のリゾートホテル・旅館を展開する共立リゾートの運営する宿で、四国では初の出店となります。金刀比羅宮の表参道に立地する新たな湯宿として注目されています。
琴平の門前町にしっくりとくる外観
一時は更地になってしまっていたそうで、建物はすべて新築で建てられました。
ただし明治時代の木造3階建ての風情ある佇まいを可能な限り再現したそうで、玄関の唐破風(からはふ)や三階屋根の千鳥破風など、町が保管していた古材を用いて、風情ある外観に近づけました。
客室数は全100室です。
共立リゾートの宿は無料サービスが充実していますが、「他の宿と比べても無料サービスをより充実させています。“ちょっとお節介”がテーマです」と宮成伸治支配人。
無料サービスはこんなものがあるそうですよ。
① 湯上がりのアイスキャンディー
共立リゾートの多くの宿は2種類だけれど、敷島館では3〜4種用意。
② 宿の前に無料の足湯
旅人が休憩できる足湯スペースがあります。
③ ウェルカムドリンク
コーヒー以外にも冷たい麦茶や温かいほうじ茶を用意。
④ 客室のお菓子
香川県の伝統的な和菓子、甘い「灸まん」と辛い「揚げぴっぴ」(うどんのお菓子)を用意。“お節介”にハマる人はすごく喜んでくれるんだとか。
⑤ 貸切風呂は4種類
檜や岩風呂、陶器風呂など全部違う形です。
⑥ 遅い夕食時間帯の人に向けて、「おしのぎ」を用意
夏・秋はわらび餅、冬はおでん、春はさくら餅など季節によって内容を変え、できるだけ地元を意識したものを用意。
⑦ 食後のお愉しみ
カフェインレスのドリンクや飴、チョコレートを用意。
⑧ 1階ロビーのコーヒーサービス
高知のお菓子「ミレービスケット」をお供に。
⑨ 夜食の夜鳴きそば
お好みでスダチ果汁をトッピングできるオリジナルの夜鳴きそば。
⑩ 枕処
7種類の枕を貸し出しています。
⑪ 湯上がり処のドリンク
氷で冷やした乳酸菌飲料を用意しています。
⑫ 売店の営業時間が長い
土産物は24時間いつでも購入できます。
⑬ ご当地化粧品を用意
オリーブオイルをベースにしたクレンジング、化粧水、乳液です。
などなど。
ざっと挙げただけでもこんなにあります。「こんなのあったらいいよね」というスタッフの提案から、さまざまなサービスが生まれたそうです。
一人旅から家族連れまで客室タイプもさまざま
客室は2棟に分かれていて、ナチュラルな木目を基調とした本館と、深いブラウンの和モダンな敷島館があり、いずれも使い勝手のよい客室です。
今回宿泊した「本館ダブル」の客室は、夫婦や一人旅での利用に最適。風呂はないけれど、シャワー付きでリーズナブルに宿泊できます。
客室は利用する人数によって、ベッドの数が異なる「和ツイン」「和トリプル」「和フォース」から選べます。「和フォース」はベッドルームが2つに分かれているため2家族での利用も可能です。
客室に露天風呂があるのは全14室で、檜の露天風呂付き「和フォース」が10室、陶器の露天風呂付き「和洋室」が4室です。
男女別大浴場には寝湯や打たせ湯も
男女別大浴場は檜や岩など自然素材を使ったもの。
寝湯や打たせ湯、露天風呂など湯船が複数あって和めます。
プライベート空間を保ちたい人は貸切風呂へ。浴槽は大きめで、窓の外には竹が見えて落ち着く空間でした。
温泉はpH7.8の単純弱放射能冷鉱泉。
無色透明、さっぱり、つるりとする肌触りです。
温度が低いため、加温・循環されています。
ご当地らしさをちりばめた夕食
近くに日本最古の芝居小屋がある場所にちなんで、前菜の敷き紙には歌舞伎の隈取りが描かれていました。
茶碗蒸しの中にうどんが入っているのはうどん県ならでは。
焼き物はサーロインローストや鮑肝ソース焼きなど。台のものはメバルの煮付け。「肉も魚もちょっとずつ食べたい!」というよくばりな人にぴったりのメニューでした。
料理長がお客様に感謝の意を表した「心ばかり」のメニューは5品。
焼き物は「骨付き鶏」、揚げ物は「鮎魚女揚げ出汁」、煮物は「三豊茄子オランダ煮」、和は「無花果胡麻ヨーグルト掛け」、酢の物は「平貝と蛸の酢の物」の中からお腹と相談して選べます。選べるメニューはワクワク度が高まります。
※季節により内容は異なります
食後のお楽しみ、
共立グループの定番サービスといえば、夜食で食べる夜鳴きそばです。
麺は太すぎず、細すぎずの縮れ麺。醤油ベースの汁にメンマとチャーシューがのっています。夜23時近くに食べるラーメンはアラフィフのわたしにはこたえるはずですが、さっぱりとした味なので、案外、ペロリと食べられちゃいます。これぞ、旅の醍醐味です。
敷島館
住所 | 香川県仲多度郡琴平町川西713-1 |
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問い合わせ先 | 0877‐58‐8005 |
時間 | チェックイン 15:00/チェックアウト 11:00 |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | JR琴平駅より徒歩で約8分 |
値段 | 1泊2食14,000円(税別、1室2名利用時)〜 |
URL | https://www.hotespa.net/hotels/shikishimakan/ |
いざ、こんぴら参りへ出かけましょう
翌朝はチェックアウト後、宿に荷物を預けて、こんぴら参りへと出かけました。敷島館は表参道にある宿なので移動も楽です。こんぴら参りといえば、石段を額に汗して上り下りする参拝シーンを想像しますが、確かにコロナ自粛で鈍った筋肉にはこたえる道のりです。
こんぴらさんの参道の石段は、御本宮までが785段。
それだけで心が折れそうになりますが、石段の両脇には土産物屋さんやうどん屋さんなどが軒を連ねているので、帰りに何を買って帰ろうか、何を食べようか、妄想するのも楽しくて、案外辛くはありません。
宿で貸し出してくれる杖を借りた方がもっとスムーズに歩けたかもしれないなどと思いつつ、まだ体力が残っているところで、瓦葺きの豪壮な「大門」が現れました。この先は金刀比羅宮の境内に入り、空気が一層清々しく感じます。さあ、御本宮は急勾配の石段を上りきればすぐそこです。
幸せの黄色いお守り
御本宮前の木の階段を上り、参拝後、金刀比羅宮の木札とお守りを授かりました。
健康と幸せのご利益がある黄色いお守りは、御本宮でいただける肌守り。
黄色は「溢れんばかりの恵みと愛をもたらしてくれる色」だそうです。
稲や麦の実り、豊穣の意味もあります。
魔除けや災い除けに平安朝の時代から染料として使われてきたウコンで絹糸を染めたお守りだから、効果も絶大な気がします。
さらにもう1つの目的地、奥社へと向かいます。奥社まで数えると、石段は合計1368段になるそうです。御本宮は、象の頭の形をした「象頭山」に鎮座し、奥社といわれる「厳魂(いづたま)神社」はその頂上近く(海抜421メートル)にあります。
「厳魂神社」という名前から受ける印象も強いですが、案内板には御本宮に次ぐパワースポットと書かれていました。
御本宮から片道30分程度かかるのに、引き返す人はわずかで、多くの人が奥社へと歩を進めます。途中、常磐神社、白峰神社、菅原神社などが祀られ、道中すでに荘厳な雰囲気。このあたりはその昔、修験者たちの勤行の地でもあったそうです。奥社へと向かうごとに空気はより濃密に、清くなっていくように感じました。
ご祭神である厳魂彦命は金刀比羅本教(昭和44年に宗教法人として認可)の教祖、金毘羅大権現第4代別当の金剛坊宥盛(こんごうぼうゆうせい)。戦国の兵火によって荒廃した金毘羅大権現の再興に尽力した人物で、「死して永く当山を守護せん」と言い残し、天狗になって姿を消したと伝わっています。
金刀比羅宮
住所 | 香川県仲多度郡琴平町892-1 |
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問い合わせ先 | 0877-75-2121 |
時間 | 参拝は24時間可能 お札授与所・博物館施設は9:00~16:00 |
定休日 | なし |
交通アクセス | JR琴平駅より徒歩で約60分 |
駐車場 | 町営駐車場などが町内にあり |
値段 | なし 博物館施設の拝観料は大人800円 |
URL | http://www.konpira.or.jp |
参拝後はカフェでひと休み
参拝を終えて、石段を下りる途中に、素敵なカフェがありました。
資生堂パーラーのカフェです。
こんぴらさんに来てまで東京のカフェでなくてもよかろうと思いましたが、このカフェ、自然と調和する空間でとっても気持ちいいんです。
食事は地下2階のガラスがはまったエリアですが、地下1階のカフェは屋根はあるけれどオープンエアー。緑の木々を眺めながら、鳥のさえずりを聴きながら食べるバーガーの美味しいこと!
バーガーに入っている肉はさぬきオリーブ牛100%のパテ、辛いソースは400年の歴史をもつ「香川本鷹」という唐辛子とこんぴら味噌を使っています。
かき氷や季節のパフェ、伝説のシュークリーム、アイスクリームソーダなどスイーツが結構充実しているので、ゆっくりするのもいいでしょう。
こんぴら参りの所要時間は「奥社まで往復で2時間」と土産物屋のおばちゃんに教わったけれど、ご飯を食べてゆっくり歩けば3時間程度。足元はトレッキングシューズがベストでしょう。また、宿などで貸し出してくれる杖を持っていくと上りは楽かもしれません。
カフェ&レストラン 神椿
住所 | 香川県仲多度郡琴平町892-1 |
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問い合わせ先 | 0877‐73‐0202 |
時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | なし |
交通アクセス | JR琴平駅より参道入口まで徒歩で約10分、金刀比羅宮境内、石段(参道)500段目 |
URL | http://kamitsubaki.com |
癒され小話
金刀比羅宮へ向かう石段の途中、表参道に立ち並ぶのは、昔ながらの竹細工や和菓子店、うどん店など。全国展開するはちみつ屋さんや洒落たカフェなど新しい店もできている。そのうちの一つ、天然石アクセサリーやヒーリンググッズなどを販売する「岩座(いわくら)」。東京の神楽坂にもある店なので、わざわざここで購入しなくてもいいのだけれど、石との出合いも一期一会。旅の記念に水晶のクラスター原石を購入した。その後、引越しをすることになり、すぐにいい物件に巡りあうことができたのは、聖地で手に入れたあの石のお陰かもしれないと密かに思っている。パワースポットで入る温泉もパワースポットで買った石も、何やら運気アップに効きそうな感じがしませんか。皆さんもぜひお試しあれ。
ぜひ行きたい立ち寄りスポット
疲れたら、立ち寄り入浴を
「湯元」を名乗る旅館を発見したので、立ち寄り入浴に訪れました。
こんぴら「温泉湯元八千代」です。
「先々代が井戸水を掘ろうとして掘削したら温泉が出てきた」(代表取締役の漆原康博さん)そうで、温泉の許可を得たのは、この地が「こんぴら温泉郷」を名乗り始めるよりもずっと前、1977(昭和52)年のことです。
「うちのは78メートル程度の浅いところから出ている冷鉱泉で、泉質も町の共同源泉とはちょっと違います」とのこと。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉。
自家源泉を持っているのはこんぴら温泉湯元八千代と湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭の2軒。町の共同源泉を引いているところも含めて、現在、11軒の旅館ホテルで温泉に入れます。
「湯元八千代」の混浴露天風呂は屋上にあって、見晴らしの良さが売り。参拝後の汗を流すのに立ち寄る人も多いそうです。
露天風呂からは、讃岐富士(飯野山)やことでん、瀬戸内海を旅する船人の目印「高灯籠」など周辺の観光スポットがぐるりと見渡せます。
こんぴら温泉湯元八千代
住所 | 香川県仲多度郡琴平町611 |
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問い合わせ先 | 0877‐75‐3261 |
時間 | 11:00〜15:00 |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | JR琴平駅より徒歩で約7分 |
値段 | 日帰り入浴800円(大浴場か混浴露天風呂が選べる) |
URL | https://yachiyo.cc |
ランチはガッツリ骨付き鶏!
香川県といえばさぬきうどんがポピュラーですが、たくさん歩いたからガッツリ食べたいと入ったのがこちらのお店。
創業180年、琴平では最も歴史がある「つるや旅館」の玄関横にある食事処で、「表参道の角から笑顔を届けたい」(代表取締役の小寺達也さん)と今年5月30日にオープンしたばかりです。こちらの宿には歌舞伎役者さんがよく遊びにくるそうで、オープンに合わせて片岡愛之助さんから贈られたというのれんがかかっていました。
地元の人の「食事処を作ってほしい」という要望に応えたというだけあって、こだわりのカレーうどんが500円だったり、国産牛のステーキは150g1000円で提供するなどかなり安めの価格設定です。
観光客にオススメなのが名物の骨付き鶏。テーブルのメニューには「隣町丸亀市に半世紀以上前から存在する伝統料理が骨付き鶏!伝統のニンニク&スパイスで味付けして、オーブンでじっくり焼いた骨付きもも肉は表面がパリパリと香ばしく、最高の美味しさです」とあります。
肉は「おや」と「ひな」のどちらかが選べて1500円(税込)。
ランチタイム、ディナータイムどちらも利用できます。
和風ダイニングCrane〜鶴〜
住所 | 香川県仲多度郡琴平町620表参道口 |
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問い合わせ先 | 0877‐43‐5889 |
時間 | 11:00〜15:00、17:00〜22:00 |
定休日 | 木曜 |
交通アクセス | JR琴平駅より徒歩で約7分 |
URL | https://turuya-ryokan.com |
この旅の行程
(行き)JR予讃線・土讃線 高松駅9:26発→琴平駅10:41着(所要時間:1時間15分)
(帰り)JR土讃線・土讃線 琴平駅15:31発→高松駅16:30着(所要時間:59分)
知っているとちょっと楽しい「鉄道豆マメ知識」【電車と気動車】
線路を走る乗り物をみなさんはなんと呼びますか?
“電車”と呼ぶ人が多いと思います。
でも実は、線路を走っている乗り物は電車だけではないのです。
今、定期運用されているのは大きく分けて、電車と気動車の2種類。
電車とは、電力によってレール上を走る車両。
気動車とは、エンジンを搭載した車両。
屋根の上に注目してみてください。
電車は、屋根の上にくの字の棒がついています。これはパンタグラフといって、動力となる電気を取り入れるためにつけられています。
気動車は、車両に搭載したエンジンで走るため、電気を取り入れる必要がないのでパンタグラフはついていません。
さて、記事の冒頭に出てきた土讃線は、「電車」・「気動車」どちらでしょうか?
屋根の上に注目ですよ。
ここで、通勤や通学などで普段利用している車両がどちらだろうと気になってきたあなたは、もう鉄道マニアかも。
ぜひチェックしてみてくださいね。
移動も楽しい時間になりますように
著者紹介
- ※写真/野添ちかこ、(車両写真)交通新聞クリエイト
- ※掲載されているデータは2020年8月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。