トレたび JRグループ協力

2020.02.14旅行列車旅なら飲まなきゃ損! 日本全国酒蔵めぐり 四国編

四国の酒蔵を訪ねる列車旅

電車にゆらゆら揺られて出かける旅なら、のんびりとお酒を飲むことができます。目的地までの列車内でちょっと一杯――というのも大人の休日ならではの過ごし方。近年大人も楽しめる社会科見学として人気を集めているのが、日本酒の酒蔵めぐりです。今回訪れるのは四国。海によって本州と隔てられている四国は、4つの県それぞれが独自の個性を持っています。その土地の風土を知って味わうと、あら不思議。今までより美味しさが増すから、お酒って面白いものです。

まわりを海に囲まれた四国4県の個性ある日本酒


四国

香川、徳島、愛媛、高知の4つの県からなる四国。瀬戸内海と太平洋に接し、西日本最高峰1982メートルの「石鎚山」がそびえ、四万十川、吉野川、仁淀川といった全国的にも有名な清流があることから、清らな仕込み水が豊富で日本酒づくりに適した地といえるでしょう。日本の原風景が残る場所も数多く存在します。
100万都市はありませんが、松山、高松、徳島、西条・新居浜、高知と20~70万規模の都市圏が点在しています。このことから自然環境、産業、歴史、食と日本酒、すべてにおいて多様な文化を形成しています。

司牡丹酒造(高知県)

龍馬にゆかりあり! 日本一の「仁淀ブルー」に支えられた滑らかな口当たりの辛口酒


司牡丹酒造1

高知駅から電車で西へ普通列車で約50分いった佐川町に、司牡丹酒造はあります。関ケ原の合戦での功績によって徳川家康から土佐を賜った山内一豊についてきた主席家老の深尾和泉守重良が佐川1万石を与えられました。彼とともにこの地に入った「御酒屋」が司牡丹酒造の前身です。その後4軒の酒蔵の合併によって、現在の姿になりました。 また坂本龍馬の本家「才谷屋」との交流が頻繁にあり、司牡丹酒造の竹村家の本家には坂本龍馬の手紙が現在でも残されています。つくられるお酒は「船中八策」と、龍馬亡き後の陸援隊長である田中光顕伯爵が名付けた「司牡丹」という2つが代表銘柄。どちらも坂本龍馬に縁深いものです。 高知県といえば淡麗辛口と表現される酒が特徴です。新潟酒も同様に表現をされますが、竹村昭彦社長は「新潟が絹のようなら、高知は木綿のような酒」と言います。

●主な銘柄:「司牡丹」「船中八策」
●創業:1603(慶長8)年


司牡丹酒造2

角地にある「竹村家住宅」は江戸中期以降に構えられた民家で、国の重要文化財に指定されており、今でも竹村家の本家のかたが住んでいます。それを過ぎると東西約80メートルにわたって道の両側に、司牡丹酒造所有の歴史ある白壁の建物が軒を連ねます。


司牡丹酒造3

現社長の曽祖父にあたる竹村源十郎さんは、品質至上主義を唱えて全国行脚の末「軟水の高知で酒をつくるには、軟水醸造法をうみだした広島県の知恵を借りるのが最善」と、1931(昭和6)年に広島杜氏の第一人者である川西金兵衛さんを佐川に招きます。


司牡丹酒造4

そして7年後「全国清酒品評会」において四国で初めて「名誉賞」を受賞したため、県内の他酒造会社も広島杜氏の招聘をするようになります。高知県が銘醸処となったのは、司牡丹酒造の歴史なしに語ることはできません。


司牡丹酒造5 「平成蔵」にある蒸米をつくる甑

2005年に建てられた「平成蔵」では、職人の経験を遺憾なく発揮するために最新の機械を導入し、さらに品質を向上させる工夫をちりばめています。観光用の酒蔵ではないため、安全衛生上見ることができない部分もありますが、そのすごさを体感することができるでしょう。


司牡丹酒造5

(左から)「司牡丹 しぼりたて本醸造生原酒」、「司牡丹 しぼりたて純米生原酒」の2つは酒造期間中の酒蔵に訪れた人しか買えない逸品です。11月中旬は本醸造酒、12月中旬からは純米酒、2月に純米吟醸酒が販売されます(いずれも数に限りがあります)。ぜひ「酒ギャラリーほてい」※で手に取ってみてください。「自由は土佐の山間より」はスッキリとした超辛口。定番の「豊麗司牡丹」は2人の高知出身の首相、吉田茂と浜口雄幸も愛飲したなめらかな口当たりのお酒。「司牡丹 仁淀ブルー」は仁淀川の清流をイメージしてつくられた、柑橘系の果実を思わせる爽やかな味わいです。

※「司牡丹」ショールーム・酒ギャラリー・直売店。少人数に限り試飲可能(スタッフ1名での対応のため、団体の対応は不可)


司牡丹酒造

住所 高知県高岡郡佐川町甲1299番地
問い合わせ先 0889-22-1211
時間 要相談 ※案内専門スタッフが存在しないため、事前相談の時点で、希望日に通常業務を調整可能なスタッフがいる場合のみ対応可能。
定休日 要確認
値段 無料
URL http://www.tsukasabotan.co.jp/

※酒蔵見学について

要予約です。
問合せフォーマットから事前申込
http://www.tsukasabotan.co.jp/contact/contact.html


酒ギャラリーほてい

住所 高知県高岡郡佐川町甲1299番地
問い合わせ先 0889-22-1211(司牡丹酒造)
時間 9:30~13:00、13:45~16:30
定休日 月曜 ※2020年4月より、年末年始を除き年中無休
URL http://www.tsukasabotan.co.jp/hotei/hotei.html

ひろめ市場で絶品「カツオのたたき」と日本酒に舌鼓(高知県)


ひろめ市場

高知で、絶対に立ち寄りたいのが「ひろめ市場」です。ところ狭しと65軒もの店が立ち並んでいます。たくさんある中から、地元の人がオススメする「カツオのたたき」がおいしい2軒をご紹介します。

やいろ亭(自由広場)


やいろ亭1

カツオの塩タタキ1300円(税込)。
冷凍ものを使う店も少なくないなかで、ここの店は生もの。厚切りのカツオに対して控えめな塩気がちょうどよく、ぎゅうっと凝縮された旨味が噛むほどに染み出してきます。


やいろ亭2

高知名物「うつぼ」のから揚げ830円(税込)。
コラーゲンたっぷりだけど、淡白で油も重たくないから気づけばひとりでも一皿ペロリ。

吉照(自由広場)


吉照1

生カツオ醤油たたき1500円(税込)。
秘伝の醤油をかけながら焼くので、何もつけず周りにある薬味と一緒にそのまま食べることができます。なかでも「醤油の実(もろみ)」を乗せたカツオを食べて日本酒を飲むと、発酵品同士で甘味と酸味と旨味を高め合い最高のコンビネーション!


吉照2

注文が入ってからじっくりと焼くから、少し時間はかかりますが待つ価値あり!県外の人は「たたき」、地元の人は「刺身」を好むそう。何人かで行ってどちらも注文するのがおすすめです。


ひろめ市場

住所 高知県高知市帯屋町2-3-1
問い合わせ先 088-856-5310
時間 平日・土曜・祝日9:00~23:00、日曜7:00~23:00
定休日 不定休
URL https://hirome.co.jp/

やいろ亭

住所 高知県高知市帯屋町2-3-1
問い合わせ先 088-871-3434
時間 平日11:30~22:00、土曜11:00~22:00、日曜10:30オーダー開始、21:00オーダーストップ
定休日 無休(ひろめ市場休館日に準ずる)
URL https://hirome.co.jp/?p=735

吉照(よししょう)

住所 高知県高知市帯屋町2-3-1
問い合わせ先 088-802-3270
時間 平日12:30~14:00/18:00~23:00、土曜18:00~23:00、日曜15:00~23:00 ※予約多数の場合は店舗が落ち着くまで予約優先となり、 入店ならびに、テイクアウトの販売などができない可能性があります。
定休日 月曜日
URL https://hirome.co.jp/?p=721

西野金陵(香川県)

香川で日本酒といえばこの酒! こんぴらさんの御神酒も担う「金陵」


西野金陵1

かつて県外に「香川は日本酒どころ」というイメージを広めたのは、間違いなく「金陵」の功績によるもの。もともと阿波で藍商を生業にしていた西野家の8代目がこんぴら参りをしたとき、琴平(ことひら)で売りに出されていた酒蔵「鶴田屋」を買収したことで「金陵」の歴史はスタートしました。藍商は現在では、化学品事業に姿を変えて大阪を本社として営業をおこなっています。また酒造も元の「琴平蔵」では手狭になったので、良質の水が豊富にある「多度津工場」敷地内にある「多度津蔵」と「八幡蔵(吟醸蔵)」へと移されています。

●主な銘柄:「金陵」
●創業:1789(寛政元)年


西野金陵2

観光用の蔵ではないため、危険な場所も多く現場のかたの引率のもと見学することができます。今回案内してくれたのは醸造責任者(杜氏)の酒井史朗さん。「ここ(多度津工場)は八幡神社の境内なんですよ」と指さす先には鳥居が見えます。水が不足しがちな香川にあって、金倉川の伏流水と象頭山から来る弘田川水系の伏流水がこの地で出合うことで敷地の地下に豊かな湧水をたたえています。この清水を使って「金陵」はつくられています。


西野金陵3 「八幡蔵」原料米処理をする設備

10~12月は「多度津蔵」で少し大きめのタンクを使って酒づくりをし、年明けから5月頃まで「八幡蔵(吟醸蔵)」で作業をして、以降は焼酎(乙類)、梅酒、ジンやラムの製造もすべて同じメンバーで担っています。一方「琴平蔵」は学校の一教室ほどの広さなので、コンパクトさを活かして2014年から醸造試験や社員教育の場として使用しています。こちらは窓から様子を覗くことができます。大小、両者の酒づくりの様子を見ることで多様性を知り、酒造について深く理解できます。


西野金陵4

こんぴらさん参りの人たちで賑わう参道に売店「讃酒館」、資料館「金陵の郷」、酒蔵「琴平蔵」はあります。1904(明治37)年築の建物のなかに、昔使われていた酒造道具が展示されています。


西野金陵5 「金陵の郷」売店の様子


西野金陵6

(左から)テーブル日本酒として料理と合わせたい「金陵 純米酒山廃仕込み」。蔵の定番人気商品「金陵 濃醇純米酒」、蔵でしか買えない「金陵 特別純米原酒 楠神」、日本酒に馴染みのない人にもオススメしたい甘酸っぱさが癖になる「金陵 ワイン酵母純米酒」、蔵限定販売の「金陵 千歳緑 純米酒」。試飲して気に入った一本を、家でも楽しんでみてはいかがでしょうか。


西野金陵 多度津蔵・八幡蔵

住所 香川県仲多度郡多度津町葛原1880
問い合わせ先 0877-33-4133
時間 10:00~16:00
定休日 土日(平日でも休業の場合があります)

※酒蔵見学について

定員
数名~30名程度
所要時間
20~60分
見学申し込み
https://www.nishino-kinryo.co.jp/warehouse_overseer/entry.php
※作業の都合上、見学不可の日もあり。
※4~10月は酒づくりをおこなっていませんが見学は可能。


金陵の郷・琴平蔵

住所 香川県仲多度郡琴平町623
問い合わせ先 0877-73-4133
時間 平日9:00~16:00 土日祝9:00~18:00
定休日 なし(年中無休)
URL https://www.nishino-kinryo.co.jp/

釜あげうどん 長田 in 香の香

永遠に飲める後味よい出汁とうどん


香の香1

香川県で今いちばん人気を集めているであろう、釜あげうどんのお店です。平日でも、店をぐるりと囲むように行列ができるほど。


香の香2

それもそのはず、つけ汁が絶品です!!出汁の旨味が詰まっているのに、後味はスッキリとしていて醤油辛くなく、汁だけでもずっと飲めそうなほど美味しいです。十分すぎる酒のつまみになるので、お土産に(持ち帰り用つけ汁は2合、1リットル、一升があります)購入することをおすすめします。


釜あげうどん 長田 in 香の香

住所 香川県善通寺市金蔵寺町本村1180
問い合わせ先 0877-63-5921
時間 9:00~17:00頃
定休日 毎週水曜・木曜 ※祝祭日は営業
値段 300円(税別)~
URL https://kanoka.jp/

足を運んでみると、四国が想像以上に広大であることに驚かされます。高知の淡麗辛口、愛媛の華やかで愛らしい味わい、徳島のビビットな存在感、日本酒の発祥のひとつに数えられている香川のマイルドな味わい。しかしさらに注目していくと、酒蔵ごとの多様で独自性の高い個性が花開いていて、現地でしか味わうことのできない地元の食と日本酒があります。ぜひ次の休みに四国旅行を計画してみてくださいね!

この列車で行こう


南風

【2700系南風】
運行区間:瀬戸大橋線・予讃線・土讃線 岡山駅~高知駅間

最新鋭2700系車両を使用した土讃線の特急列車。日本の伝統意匠をアレンジした“Neo Japonisme”をデザインコンセプトとし、安らぎと先進性を合わせ持つ特急車両として登場しました。


詳細はこちら


8000系

【予讃線 8000系 アンパンマン列車】
運行区間:岡山・高松~松山

人気アニメ「それいけ!アンパンマン」のキャラクターがデザインされた列車。1号車には、虹をイメージした指定席「アンパンマンシート」が16席あります。


詳細はこちら


著者紹介

関友美

きき酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと記事を執筆、セミナーでの講演や酒蔵での酒づくりなど、日本酒のあるさまざまな場所に出没しながら、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさを伝えている。

オフィシャルHP
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  • 写真/関友美、西野金陵(株)
  • 文/関友美
  • 掲載されているデータは2020年2月現在のものです。
  • 運転区間等は変更となる場合があります。
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